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一切ライティングに携わったことがない学生に向ける物語の書き方

 皆さんこんにちは。
 今回の記事は、以前私が通っていた高校の漫研で、「面白い作品を書くためにはどうしたらいいのか?」という講義を行った時の資料を、読み物として読めるように編集しましたので、公開しようと思います。

 「ライティングに興味があるけど、仕事にするにはどうしたらいいのかな?」と考えている人に向けたものですので、初心者の方はぜひ読んでみてください。

Q,面白い作品を書けるようになるためには?

 これから創作に関わってみたいと考える人は、まず問いのような疑問を覚えると思います。一番手っ取り早いこの問いの答えは、

A,面白い作品を見よう!

でしょう。

 具体的にどういうものを見るのがよいのか?
 例を挙げるなら

・映画 (特に洋画)
・漫画 (ジャンプ作品とか)
・アニメ (きらら系はストーリーという面ではあまり参考にならないかも、ぼっち・ざ・ろっくのアニメはいい)
・小説 (大衆文学、でもラノベばっかり読むのはよくない)
・ドラマ

 など、さまざまなジャンルの作品をまんべんなく見るのがよいと言えます。
 ひとつのジャンルしか見ていないとアイデアが似たものになりやすく、「あれ?これパクリじゃない?」となりやすくなってしまいます。

◇物語の中で最も比重が大きいものはなに?

 次に、作品を作る上で最も比重が大きい要素について話しましょう。

 創作作品において、何が大事なのでしょうか?
 突飛なアイデア?怒涛の伏線回収?素晴らしい結末?

 いやいや、それらの比重はそれぞれ10%にも満ちません。
 物語の70%以上は「読者が物語に共感できるか」で決まります。

 共感できるかとはつまり、「キャラクターの設定や物語の流れにしっかりと整合性を確認できるか」ということ。

 キャラクターたちが突飛な行動をしたり、思いもよらない展開になると読者は物語に共感できなくなって読む/見るのを辞めてしまう。
 物語の中に整合性があるのかはしっかり確認しながら書いていきましょう。

☆見ておいた方がいい作品十本

 面白い作品を作るためには、これまでに生み出されてきた数多くの作品の原典ともいえるような作品を見ておくことは大切です。
 例えば、ロード・オブ・ザ・リングは「現代のファンタジーの基礎を作った」と言われるほど、ファンタジー作品に備えておいた方がいい要素の殆どを持っています。
 そういった、「創作者なら誰もが一度は見たことがある前提で話が進む作品」を見て、きれいな話の流れを学びましょう。

・インディージョーンズシリーズ
 (特にスピルバーグ監督が担当した「失われたアーク」「魔宮の伝説」「最後の聖戦」)
・ロード・オブ・ザ・リングシリーズ
(エルフやドワーフ、トレントといった言葉はJ・J・トールキンが生み出したもの、ファンタジー作品に携わるなら見ておくべき)
・黒澤明監督作品
(特に七人の侍。全世界の映画監督が影響を受けていると言っても過言ではない監督。スターウォーズなども黒沢作品に影響を受けた)
・エイリアン(無印)
・バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ
・ダイ・ハード(無印)
・マトリックス(無印)(この映画の影響を受け、自身を救世主だと思い込む若者が続出するほど当時のSFとしてのクオリティではトップレベル)
・フォレストガンプ
・スタンド・バイ・ミー
・ジョーカー(アメリカでの公開当初は都市封鎖が行われるなど、社会的に多大な影響を与えた)
☆そのほかの見ておくといいもの
・スターウォーズシリーズ
・アバター
・魔法少女まどか☆マギカ(それ以前と以後でアニメの在り方が変わった)

◇これがあったうえでのテクニックの話

 テクニックやこて先の技術というのは、基礎があったうえで初めて役に立つものです。
 ここまでに挙げたことをやったうえで、覚えておいた方がいい話の作り方は三つあります。

・三幕八場構成
・プロット
・1センテンス1ミーニング

 この三つの技術は職業ライターに必須です。

☆三幕八場とは……?

 それぞれ説明していきましょう。
 三幕八場とは、ハリウッド映画120分をシークエンスごとに分解したものです。

 起承転結の考え方に近く、三幕八場はそこからさらに物語をうまく進めるためにはどんな書き方をすれば面白い作品が生まれるのかを分析したものです。

 似たような考え方で「SAVE THE CATの法則」というものもあるため、そちらも参考にするとよいでしょう。

☆プロットとは……?

 次に、プロットについて説明しましょう。

 プロットとは言わば物語の設計図です。
 これがないと物語は混迷を極めてしまいます。
 似たものであらすじというものがありますが、プロットはあらすじじゃありません

 あらすじは数行で物語を説明し、結末まで書かないことが多いのに対して、プロットはこれから作る物語を詳細に、最後まで書ききらなくてはなりません。

 このプロットをうまく書けるようになるためには、プロットの時点から三幕八場に落とし込んで書いていくとよいかもしれませんね。

☆1センテンス1ミーニングとは……?

 最後に、1センテンス1ミーニングについて説明しましょう。

 まずこれを読んでみましょう。

「昨日の演劇、こう、ズババって演技ですごかったね!」
「確かに、俳優の人の演技力がすごかったよね」
「ちょっと、私行ってないんだから言われても解らないよ。レミゼラブル、だっけ?」
「そう! わざわざ渋谷まで言ったんだよ!? とぉかったぁー!」
「でも、あの演劇はそれだけの価値はあったよね」
「ふーん。そんなに良かったなら私もバイトさぼって行けば良かったかな」

 こちらのセリフ、キャラクターは何人いるでしょうか?
 ここにいる人たちはどこへ、何をしに行ったでしょうか?
 そのほかにはどんな情報があるでしょうか?

~シンキングタイム~

 答えは「三人」「渋谷へ、二人でレミゼラブルの演劇を見に行った」「一人はバイトで参加できなかった」

 1センテンス1ミーニングとは、文字通り「1行に1つの意味を与える」ということです。
 逆に言えば、一行に含むべき情報の量は多くても少なくてもいけない。
 大事なのは

☆「受け手が説明的だ」と感じるような内容ではいけない
☆次のセリフに自然につなぐためには、情報を小出しにする必要がある

 ということです。

 さっきの六行を「昨日渋谷で見たレミゼラブルの講演、俳優の人の演技がハリウッド並みに上手かったね!」と一行にまとめると、一見簡潔になったように見えますが、これでは「状況をキャラクターに説明させている」だけで、伝えられている情報は減っています。

「昨日の演劇、こう、ズババって演技ですごかったね!」

 このセリフはかなり説明的で、だけど説明されているようには感じません。

 ですが、このセリフは何が説明的なの?と感じるのは当然だと思います。
 これは、この一言だけで「思ったことをそのまま口に出し、オノマトペを多用する」というキャラクターの性格や癖を読み取ることができるのです。

 また、「昨日渋谷で見たレミゼラブルの講演、俳優の人の演技がハリウッド並みに上手かったね!」、このセリフから次にセリフを繋げる場合、かなり不自然なつなぎにするか、その次のセリフは「確かにね」みたいな、ほぼ中身がないものとなってしまう可能性があります。

 シナリオというのは基本会話の形式で進んで行くため、次のセリフを引き出すセリフを書く必要があります。

 例えばキャラの質問をおうむ返しにするとか、「あぁ」「そうだね」「なるほど」など、意味のない言葉をキャラに喋らせるのは何より文字数がもったいないのです。

Q,ならどんな相槌がふさわしいの?
A,一つの意味が含まれていればいい!

 例えば「なるほど……。なら犯人の正体は……?」という相槌なら、そのキャラが別のキャラのセリフを引き出すためのトリガーになっています。
 これは相槌でもセリフが意味を持っているためOK。
 重要キャラのセリフというものは「モブが言っても変わらないセリフ」ではいけません。セリフにキャラクターの性質を付与してあげる必要があるのです。

☆意味のないおうむ返しや相槌は文字数を無駄に消費しているだけでなく、ストーリーを中だるみさせ冗長にするため、あまりするべきだとは言えない!

「一行で説明する内容はひとつまで!」

 覚えておきましょう。

◇職業ライターは何を意識してライティングしてるの?

 趣味で作品を書いているときは自分が楽しければいいと思います。が、もしそれを仕事にするなら何を意識したらいいのでしょう。

 色々ありますが、やっぱり一番は「ペルソナ」を意識することです。
 これは、ゲームタイトルのペルソナではなく、マーケティング用語の「サービス・商品の典型的なユーザー像のこと」をさしています。

 例えば

タイトル:「物乞い少女を拾ったので匿った結果……」
(あらすじ:心優しい主人公夫婦。彼らはある日、道端で蹲るホームレスの少女を見つけた。汚い恰好だったため、まずはシャワーに入れた主人公夫婦。風呂から出ると、そこには豪華な食事が……)

妻 「話を聞く前に、まずはお腹が空いているでしょう? お寿司にピザ、グラタン、好きなだけ好きなものを食べていいわよ」
娘 「……い、いいの?」
夫 「ダメじゃないか。確かにおいしいものを食べさせたいのは分かるが、ろくに食べ物を食べてないお腹じゃ、逆に体を壊すかもしれない。まずはおかゆを用意してもらえないかな」

こういう作品があった時に、どこが悪いと感じますか?

 確かに、現実世界では子供を匿ったらまずはおかゆなど、胃に負担がかからないものを与えるべきかもしれません。
 ですがこれはエンタメ作品で、また仕事である以上文字数の上限は決まっています。

 現実に基づいた説明は、時として必要ないことがあります。
 このタイトルでこの動画を開いた視聴者は、「物乞い少女をもし自分が拾ったらどうすればいいのだろうか?」ということを知りに来ているわけではなく、十中八九「主人公たちが、物乞い少女に優しくしているところが見たい」という目的で動画を開いていることが予想できます。
 であれば、いきなり豪華な食事に囲まれ、夢見心地な少女をまず画面に映してあげることが大事ではないでしょうか?
 それを考えるのが、ペルソナを考える、ということなのです。

 こういった、作成する作品の「ペルソナ」を想定し、時には現実では起こらないような内容も、場合によっては表現してあげることが必要になってくるのが職業ライター。

 もちろん、作品の種類によっては現実に則した表現でなければならないこともあるので、この辺りはしっかりと自分の書いている作品のペルソナを理解し、そういった視聴者層が求めているシナリオが書けるよう、使い分けの能力を身につけておく必要もありますね。

◇高校生の頃にやっておくといいこと

 もしライターになるために、高校生のうちにやっておいたほうが良いこともあります。

 それは、高校の歴史の教科書は世界観設定の参考書になるので、捨てずにとっておいた方がよい、ということです。

 昔どこかの偉人が、「歴史は繰り返す」という名言を残していますが、実際その通りです。
 創作作品のファンタジー世界を作る場合にも、その歴史の教科書を参考にすることによって、より世界の設定にリアリティがでるため、歴史の教科書は残しておきましょう。

◇サブカル業界に入るためには?

 あなたが将来、もしサブカルの業界に入りたい場合、どう仕事を貰えばよいのでしょうか?

 悲しいことながら、現在のサブカルチャー業界は実績かコネがないとフリーランスでやっていくことは難しいです。
 ので、入りとしては、アニメやゲームの会社に所属する、というのが一番の近道でしょう。
 そのためにも、個人で何かコンテストに応募してみたり、作品を作ったりと精を出すことが大事かもしれませんね。

☆そもそも……?

 サブカル業界は人生最後の職業だと思った方がいいでしょう。
 この業界からほかの業界に移ることは、できないこともないかもしれませんが、かなり厳しいです。

医者→小説家
弁護士→小説家
犯罪者→小説家
政治家→小説家

 というルートは聞いたことがあるかもしれませんが、その逆はあまり聞かないですよね?
 それくらい他の業界への転職は難しいので、もしこの業界に入る場合は将来の夢をちゃんと考えてからでも遅くはないでしょう。

 高校大学を卒業したあと、アニメやゲーム業界に携わりたいならまずはゲーム会社に新卒で2~3年就職しましょう。
 なお、本当にサブカルの業界で一生食っていく覚悟があるなら専門学校に行ってもいいとおもいます。
 ただし学校に通っている間は死ぬほど努力しないと、将来のルートはかなりキツいです。
 なあなあで遊んで学生生活を過ごしているだけだと、業界への就職は厳しいかもしれませんね。

もし専門に行くことが決まったなら……
→SKIMAやcrowdworksなんかで、専門在学中にアウトプットした方がいい

 小説家や漫画家になりたいのであれば、一番の近道はコンクールで入賞することでしょう。
 今は小説家になろうなどで、毎月書籍化作品を決めるコンクールが何かしらやっています。
 それに応募し、作家デビューのルートに乗るのもよいのではないでしょうか。

 かなり厳しいことを書いたところもありますが、サブカルチャーの業界は楽しいことももちろんあります。
 将来もしサブカルチャー業界で働くことがあれば、そのときは一緒に仕事をすることもあるかもしれませんね。
 では、いいクリエイティブライフを。

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