見世物小屋の花魁人魚 -弐-
「さぁさぁ、よってらっしゃい見てらっしゃい」と今宵も若い衆が拍子木を打ちながら格子の外を忙しなく動き回る。
初めは抵抗していたけれど、人間の様に脚があるわけでもなく、自分の意思だけでは逃げられない。
人魚が地上で生きていける訳も無く、ただこうしていつか来るか分からぬ寿命が尽きるまで『見世物』になって終わりだなんて私の性分には合わない。
言葉が分からなければ、覚えればいい、それは格子の中にいても理解しようとすれば分かる。
字が書けなければ、手習いでもすればいいのだ。
それは幸い、ここ「人魚楼」・楼主の御内儀さんが張見世までの時間、教えてくれた。
御内儀さんは幸い良い人間で、たまに、「こんな思いさせてすまないねぇ」と涙を零す人だった。
·····貴女は何も悪くないのに。
そして少しの月日が経てば、張見世に来る人間の言葉も多少分かるようになってきた。
「本当に人魚なのか?」「上が人間·····下は魚·····」相変わらず好奇の目や恐ろしく見る者は後を絶たない。
けど月日と共に見物客は増えてくる。
私はもう気にしないフリをして堂々とここで「見世物」になると決めた。
そんな中、格子に集まる人間の群れの後ろの方から、「ぴょこん、ぴょこん」と飛び跳ねてこちらを見る青年がいた。
To be continued...
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