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平和ボケしている自分に気付かされた。『同志少女よ、敵を撃て』

これが今も起こり続けている悪夢だと考えると読み進める手が止まりそうになる時があった。

ソ連出身の主人公はドイツを敵だと見做している。けれど、今はおそらく逆だ。ロシアが敵であり、ウクライナが侵攻を受けている側だ。

戦争が人間を戦地に適応させ、感性や思考を大きく変える。彼女が撃った「敵」は彼である。けれど、戦争そのもののような気もした。

あまりに切なく、未来が失われた最後だ。とても長い物語を最後まで読み進める中で感じたのは、戦争がなくなってほしいという願いだ。

 セラフィマは自分の親や家族のような村人たちを失い、復讐のために自分の人生を賭けて狙撃手となった。けれど、彼女は何かを得ることができたのか?

 戦争中だけでなく、終わった後も描かれていたのが印象的だった。PTSDに苦しみ、自分が殺した人たちへの罪の意識に苛まされる。戦地へ適応することは日常生活とは大きく異なる。

 けれど、それは過去の問題ではなく、現代の問題でもある。今も戦争は続いている。テレビで見ると、つい自分とは離れた遠くの話に感じてしまう問題を自分ごととして捉えられた瞬間だった。

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