スミオカ

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映画と本の記録が多めです 最近はこっちによくいます→ https://sumizumin.hatenablog.com/

最近の記事

2020年に読んで良かった本ベスト6+1

今さらながら、2020年に読んだ52冊の中から良かった本を6つ紹介します! ジャンルさまざまで順不同に挙げていきます。 サピエンス全史 人類の歴史を紀元前まで遡って読み解き、数ある動植物の中でなぜホモサピエンスが繁栄したのかを探っていく一冊。 人類史って人類の起源まで遡るから膨大かつ複雑だし、色んな切り口で語ることができるゆえに主張に一本筋を通してまとめるのが難しい分野だと思う。その中で本書はわかりやすい文章で網羅的にまとめられていて、さすがベストセラーなだけあった。

    • 2020年映画年間ベスト10

      2020年に劇場公開された映画の年間ベストを載せます! 今年は44本の映画を劇場で鑑賞しました。コロナの影響で都会の映画館にあまり行かなくなり、思うように劇場で鑑賞できなかった年だった。 ビックタイトルは軒並み公開延期になりましたね。4月以降に劇場公開した海外のビックタイトルってTENETくらい? その代わり小粒だけど良い作品が多かったように思う。近所の映画館で、普段ならやらないような映画を上映してくれたのが思わぬ収穫だった。 というわけで、年間映画ベスト10にいきま

      • 映画『ジョゼと虎と魚たち』感想

        『ジョゼと虎と魚たち』を鑑賞。前半と後半で評価がだいぶ変わる作品だった。前半観ているときはこれ全人類が観るべきやつでは・・・?と思うくらい良作の予感がしていたけれど、後半にかけて物語の運びかたに首をかしげる部分が出てきた。 ただ全体としては、ティーン向けのキラキラした恋愛映画の形を取りつつ、障害を持つ人がどういう生きづらさを感じているか、その生きづらさは誰がつくっているのかといった、きれいごとではない部分もしっかり含まれていて好感が持てた。 あらすじ 生まれつき足が不

        • 『菊と刀』──現代まで受け継がれている日本文化の型とは

          『菊と刀』を読んだ。アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトが日本の文化の型を分析した本で、1946年に刊行された。 ここ半年くらいは色んな国の文学や教養系の本を読むことが多かった。日本以外の各地域について読むにつれて、じゃあこれって日本ではどうなんだろうと考えることがあり、「日本っぽさ」を海外から考察した古典である本書を手に取った。 書かれたのが戦後まもなくと、もう70年以上前なので共感よりは昔はこういう習慣だったんだなあ、と客観的な気持ちになりがちだった。いっぽうで

        2020年に読んで良かった本ベスト6+1

          映画『燃ゆる女の肖像』──視線と伏線で語られる関係性

          『燃ゆる女の肖像』を鑑賞。これはすごいものを見た・・・。数多くのモチーフ、対比が物語に織り込まれている上で、全てがバラバラになることなく繋がって意味を成している。綿密に計算された配置に圧倒されっぱなしだった。まだ2020年に観た映画ベスト10は考えていないけど、間違いなく1、2を争う作品だ。 あらすじ 18世紀フランス。画家のマリアンヌは孤島に住む貴婦人から、娘・エロイーズの見合いのための肖像画を描いてほしいと頼まれる。しかし、エロイーズは結婚を拒んでいるため、肖像画を

          映画『燃ゆる女の肖像』──視線と伏線で語られる関係性

          『動物農場』──権力の暴走を見逃した動物たちが向かう先

          1945年に刊行されたジョージ・オーウェルの小説『動物農場』を読んだ。本文が150ページちょっとしかないのに、短編小説とは思えない内容の濃密さ。読み進めるごとに真綿で首を絞められていくような苦しさがある。ハヤカワepi文庫の訳はおとぎばなし風な文体で、寓話的な内容に合っていた。 あらすじ 農場の動物たちは、横暴な農場主であるジョーンズに対して反乱を起こす。彼らは、人間を追い出して「動物農場」を設立し、全ての動物が平等であるという理念のもと農場の運営を始めた。しかし、頭の良

          『動物農場』──権力の暴走を見逃した動物たちが向かう先

          映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』感想

          映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』を観た。いつもガラガラな近所の映画館で見たので、観客自分だけかもな〜なんて気持ちで行ったら意外と人がいてちょっと驚いた。 あらすじ 1800年代後半パリ。ほぼ無名の劇作家であるエドモン・ロスタンは、スランプに陥って脚本が書けずにいた。ある日、友人であり大女優のサラ・ベルナールが、俳優のコンスタン・コクランに口をきいてくれると申し出る。劇作家として復活する千載一遇のチャンスであるものの、コクランが提示した条件は「今から3週間後に

          映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』感想

          映画『魔女見習いをさがして』──かつて魔法に胸ときめかせていた人へ

          子どものころ、いつか魔法が使えるようになるんじゃないかと考えたことはないだろうか。そうじ用のほうきにまたがってみたり、呪文を唱えてみたりした人もいるだろう。きっと、何かしらの作品がきっかけで、自分にも魔法が使えたらいいのに、と思うようになったはずだ。 『魔女見習いをさがして』は、かつて魔法があると信じていた人や、大好きな作品があった人のための映画だ。おジャ魔女だけに限らず、セーラームーンでも仮面ライダーでもハリーポッターでも、好きだったものはなんでもいい。 おジャ魔女どれみが

          映画『魔女見習いをさがして』──かつて魔法に胸ときめかせていた人へ

          映画『ミッシング・リンク』感想

          1週間以上前になるが、『ミッシング・リンク』と『魔女見習いをさがして』を二本立てで観てきた。図らずもアニメーションしばり。 製作された国や手法は違えど、どちらも人生につまづいて悩む大人が主な登場人物で、旅によって自分の進む道が見えて成長をする物語。しかも完成度がメチャクチャ高い。大人の(結婚やキャリアのような外面だけではなく)内面の成長譚がふつーにアニメーションで描かれる時代に生きててよかった・・・・。 映画館での公開が終わる前に書きたいので、まずはミッシング・リンクの感

          映画『ミッシング・リンク』感想

          『銃・病原菌・鉄』──世界の格差はどこから発生したのか

          世界の歴史をたどると、富とパワーが世界各国に平等に分配されていたことはなく、つねに少数の地域に集中していた。現代では、アメリカや欧州、中国がリードしている状態が当たり前になっていて、現状に疑問を持つことはあまりない。 しかし、考えてみると不思議である。世界の富は、なぜ今あるかたちで集まっているのだろうか。中世あたりに存在した技術や社会構造の格差が、現代まで続いているから、と思うかもしれない。鉄鋼製の武器を持ったヨーロッパの帝国は、石器や木器で戦う先住民族に容易に打ち勝つこと

          『銃・病原菌・鉄』──世界の格差はどこから発生したのか

          映画『羅小黒戦記』──コアなファンだけじゃない!家族連れで楽しめる良作

          ついに『羅小黒戦記』の吹替版が公開された。去年の3月ごろに字幕版を観て、衝撃を受けた映画だ。まさか100館超えの規模で上映すると思っていなかったから、嬉しいびっくり。地元の映画館で羅小黒戦記が観られるとは。 それだけ大規模で公開するってことは、コアな映画ファン・アニメファンだけではなく、親子や友人同士で観に行くライトな層もターゲットなのかなと思う。実際に本作は、全方位的にどんな人が観ても楽しめる映画であると、自信を持って勧められる。 しかし、自分が休日に観に行ったときには

          映画『羅小黒戦記』──コアなファンだけじゃない!家族連れで楽しめる良作

          『一杯のおいしい紅茶』──ディストピア小説の金字塔、ジョージ・オーウェルの意外な一面

          ディストピア小説『一九八四年』や『動物農場』で有名なイギリス人作家、ジョージ・オーウェルのエッセイ集。おもに晩年である1945年〜1948年に書かれたエッセイが集められている。(と言っても早世なので40代なのだが) 題名になっている『一杯のおいしい紅茶』は、本を開いて一番はじめに載っているエッセイのタイトルだ。この篇では、オーウェルの考える最強の紅茶を淹れるために、守らなければいけない11項目を挙げている。いきなり、想像上のイギリス人っぽくて面白い。 特にこだわりが感じら

          『一杯のおいしい紅茶』──ディストピア小説の金字塔、ジョージ・オーウェルの意外な一面

          映画『スパイの妻』感想

          『スパイの妻』を観てきた。実写の日本映画を観たのは久しぶり。結論からいえばなかなかに面白かった。どう展開してゆくか分からない不気味さに引き込まれるし、日本でタブー視されてきた歴史に切り込んだ点も意義深い。娯楽的な楽しさと社会的なテーマをみごとに両立させていた。 なんというか、せっかく国際映画祭で大きな賞を獲ったわりに、鬼の映画と公開日が丸かぶりしたからか影が薄い気がする。こういう社会的な娯楽映画、どんどん作られてほしいからもっと盛り上がってくれ〜〜!! あらすじ 1940年

          映画『スパイの妻』感想

          映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』感想

          『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』を観てきた。いやー、映像の美しさが抜群。安定のA24クオリティだ。A24ってだけで、一定の品質が保証されている感がある。まずオープニングのショットが目をひいて、これからどんな物語が始まるのかと引きこまれる。 しかも美しいだけではなくて、挑戦的でもある。序盤のほうにあった、周りの人は静止画のように止まっているなか、主人公ジェイミーと親友モントがスケボに乗って、スローモーションで坂をくだっていくシーンとかおもしろかった。 あらすじ

          映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』感想

          映画『82年生まれ、キム・ジヨン』感想

          先週、映画のほうの『82年生まれ、キム・ジヨン』を観てきた。小説と映画では別物といえるくらいつくりが違っていたが、映画は映画でよい作品だった。 33歳のキム・ジヨンはまだ幼い娘のジウォンと夫チョン・デヒョンとの3人暮らしだ。ある日、彼女に異変が起こる。突然、身近な人が憑依したような言動をとるようになったのだ。なにが彼女を追いつめ、心を壊してしまったのか。 小説と映画でどのようにつくりが違うかというと、小説ではキム・ジヨンが幼少期から社会人になるまでの「過去」に重きをおい

          映画『82年生まれ、キム・ジヨン』感想

          『82年生まれ、キム・ジヨン』──地獄のごった煮から救いは生まれるのか

          書籍のほうの感想。韓国の作家であるチョ・ナムジュの作品で、韓国で100万部を突破したベストセラー。 33歳のキム・ジヨンは、まだ幼い娘のチョン・ジウォンと3歳年上の夫との3人暮らしだ。彼女は広告代理店で働いていたが、育児を自分ひとりで行わなければならなかったため、出産とともに退職した。ある日、キム・ジヨンに異変があらわれる。まるで誰かが憑依したように突然言動が別人になったかと思えば、次の日にはもとに戻っているのだ。本人はそのことを覚えていないらしい。いったい何がキム・ジヨ

          『82年生まれ、キム・ジヨン』──地獄のごった煮から救いは生まれるのか