2020年映画年間ベスト10
2020年に劇場公開された映画の年間ベストを載せます!
今年は44本の映画を劇場で鑑賞しました。コロナの影響で都会の映画館にあまり行かなくなり、思うように劇場で鑑賞できなかった年だった。
ビックタイトルは軒並み公開延期になりましたね。4月以降に劇場公開した海外のビックタイトルってTENETくらい?
その代わり小粒だけど良い作品が多かったように思う。近所の映画館で、普段ならやらないような映画を上映してくれたのが思わぬ収穫だった。
というわけで、年間映画ベスト10にいきます。
ちなみに、劇場公開せずに配信のみの新作はランキングには入れていません。
入れたかったのだけど配信で観た映画をちゃんとメモっていなくて、後であれもあった!!ってなりそうで。
では10位からどうぞ!
第10位:Away
第10位は、ラトビアの25歳の青年が一人で製作したアニメーション映画『Away』。
創作する楽しさが全面に伝わってきてエネルギーをもらえた。なんだか味のある3DCGアニメーションで、ずっと見ていたくなる絵。
ストーリーは寓話的になっていて、生きることって苦しいし辛いけどやっぱ美しいよなって思える作品。
あと自分は「個人で作った」という謳い文句に弱い。
第9位:チャーリーズ・エンジェル
第9位は、アクション映画『チャーリーズ・エンジェル』。“エンジェル”の組織名を持つスパイたちが、悪の組織と対峙するシリーズ3作目だ。
これは予想外に面白かった!観る前に本国アメリカであんまり評判が良くなかったというのを聞いて、期待せずに観に行ったら全然出来が良くてびっくりした記憶がある。前評判で観るのやめることは無いようにしようと改めて思った。
「女の子は何にだってなれる。」サビーナのこの台詞から物語が始まり、作品を通して伝えたいテーマでもある。女性、もしくはこれから大人になる女の子に向けられた映画だ。
しかしフェミニズム映画だからといって男性を過剰に敵に仕立てる感じではなく、バランスがとても好みな作品であった。
あとサビーナ(ポスター右上)がめちゃくちゃカッコよくて大好きになってしまった。
第8位:ルース・エドガー
第8位は、スリラー映画『ルース・エドガー』。幼少期に紛争地からアメリカの裕福な夫妻の養子になったルースは、文武両道の高校生だが、学校で起きたある事件から急進的な思想を抱いている疑念が生まれる。
オバマ政権のときにつくられた戯曲が元になっている本作。アフリカ系の主人公の青年は一見すると「完璧な優等生」で、オバマの再来だともてはやされる。
しかしルースは白人だと見過ごされる問題が黒人だと許されなかったり、アメリカ社会で受け入れられるためには「善き黒人であること」をつねに求められるのを体感して歪んでゆく。
黒人差別、養子問題、女性軽視・・・などの社会的なテーマを、見事にスリラー映画に落とし込んでいた。ルースが何を考えているのか、次にどんな行動をとるのか全く読めなくて、終始ドキドキする。劇伴がまた良くて、張り詰めた空気に響くような低音の効果音が緊張感を増していた。
第7位:ボヤンシー 眼差しの向こうに
第7位は、『ボヤンシー 眼差しの向こうに』。これはまさに今年は大作が上映しないからなんとなく観に行って、ドストライクだった映画!
カンボジアの貧しい少年がタイで出稼ぎをするため密入国するも、待ち受けていたのは非人間的な強制労働で、逃げ出すこともできずに少年に破壊的な人格が芽生えてゆく。
現実に貧困社会で起こっている強制労働をテーマにしている。ドキュメンタリーではなく物語として当事者の少年の過酷な状況を体験することにより、どこか遠い場所で起こっている自分とは無縁な他人事とは思えなくなる。
人間がもつ残酷さや鬱屈とは打って変わって、自然の風景はひたすら美しく撮られている。光が反射して輝く海は幻想的だ。本来ならばハッピーなシーンで使われそうな晴天や穏やかな海が、絶望的なシーンで使われる(というか本作の98%は絶望的な場面)のが尾を引く後味の悪さを残していて良かった。
第6位:魔女見習いをさがして
第6位はアニメーション映画『魔女見習いをさがして』。幼い頃から『おジャ魔女どれみ』が好きな20代の女性3人が、おジャ魔女どれみゆかりの地を巡る旅行を通して、自らの悩みと向き合い進むべき道を見つける話。
かつて魔法があると信じる子どもだった人に向けた映画でブッ刺さった。「現実に魔法はないのか?」という問いへの答えが、リアルとアニメーション(=ファンタジー)の良い塩梅で、夢を見る余地も残してくれる。おジャ魔女をベースにした作品の最適解だったと思う。
可愛い系の絵で、絶妙に現実味のある20代女性を描くっていうのが新しい。記号としてのリアルさではなく、質感があるリアルさなんだよな・・・。まさに意欲作だった。
第5位:幸せへのまわり道
第5位は、『幸せへのまわり道』。アメリカで子ども向け番組の人気司会者だったフレッド・ロジャースの実話にまつわるストーリー。
優しく全身に染み渡るセラピーみたいな映画だった。トム・ハンクス演じるフレッド・ロジャースが良すぎる。5位だけど、主演男優賞を選定するなら圧倒的トム・ハンクス。
邦題で損している気がする(視点が置き換わっているし結論を先に提示してしまっている)が、もっと観られてほしい。家族と不仲だったり、これから親になる・なったばかりの人に特に刺さるはず。フレッド・ロジャースを思い出すだけであったかい気持ちになれる。
年に1回くらい心が荒んだときに観たいから、配信してほしい。
第4位:羅小黒戦記
第4位は、アニメーション映画『羅小黒戦記』。 今年は吹き替え版が盛り上がっていて嬉しかった。字幕版を観たの去年だと錯覚していたけど、ふつーに今年の3月だったのでランキング入り。
ぐるんぐるん動くアクションシーン、シャオヘイの可愛さや妖精たちのキャラデザの立ち具合、自然/都会 双方がもつ美しさ・・・とアニメーション的な良さが凝縮されているのはもちろんのこと、ストーリーもしっかり骨太だ。
敵と戦うことになるが、「悪いやつ」だから戦うのではない。幼い主人公・シャオヘイが色んな価値観をもつ人・妖精と接することで、シャオヘイ自身が「自分は何をしたくて誰といたいのか」「何が善か」を選び取る、とても優しい映画。
第3位:パラサイト
第3位は、言わずと知れたコメディ・スリラー映画『パラサイト』。お前上映してたの今年だったんか!?!?って驚くくらい昔に感じる。
あまりに名実ともに有名すぎるし除外しようかとも思ったが、初めて観たときの衝撃が大きかったのと、自分的第二次韓国映画ブームが到来・定着したきっかけの作品なのでやっぱり入れた。
貧困・格差という重いテーマをブラックなユーモアたっぷりに軽快に描き切っていて、誰が観ても面白い映画にしているのがすごい。あと地味に音ハメの技術のすさまじさが、本作が強く印象に残っている要因かもしれない。
第2位:燃ゆる女の肖像
第2位は、『燃ゆる女の肖像』。1位と2位は同率1位にしたかったくらい本当に差がないので実質1位です。18世紀フランスで、画家のマリアンヌと貴婦人の娘・エロイーズの二人が肖像画を描く/描かれるうちに恋に落ちる。
映画という名の絵画。どの場面を切り取っても美しい。モチーフ、演出、テーマが綿密に折り重なっていて、完璧と言っていいくらいだった。どこにも不必要なシーンがないし、付け加える必要もない。見る/見られる視線の応酬によって、二人の関係性の変化を物語っているのが秀逸な作品だった。
特に二人の「その後」がね、全く蛇足になっていなくてむしろあの終わり方以外あり得ないと思っちゃうのがすごい!!
第1位:ブックスマート
第1位は、青春コメディ映画『ブックスマート』!本作を観たときはもうブログを始めていたのに、タイミング逃して書いていないという。
高校時代を勉強に費やした女子高生の仲良し二人組が、遊んでばかりだと思っていたクラスメイトも良い大学に行くことを知り、高校最後のパーティではっちゃける話。
最高の青春映画。最高のシスターフッドでとにかく楽しい。ティーン青春映画が新たなフェーズに突入した作品だと思う。
客観的に見ればイケているとはいえない主人公の二人が、周りの評価を気にせずにお互いを褒め合う。クラスメイトは、誰も外見や指向をバカにしたりはしない。
一見チャラくてイジワルなクラスメイトも接してみるとしっかりした考えを持っていて、「チャラい人」と一括りにしていたのは自分たちなのだと分かる。誰も一面的な悪役にしていないのがすごい。
さすがに今のアメリカの高校生がこんなに解放的だとは思っていないけど、本作の学校空間には明るい未来が見えた。めちゃめちゃ笑えるコメディ映画でハッピーな気持ちになれるし、大切なことを思い返させてくれる作品。
次点:ナイブズ・アウト
次点はミステリー映画『ナイブズ・アウト』。鑑賞したのが下半期だったらベスト10入りしていたと思う。どうしても年の始めのほうに観た映画より、最近観た映画の方が印象が強く残ってしまう。
名探偵が富豪一家で起こった殺人事件の謎を解き明かす!というシンプルかつ使い古された設定を、見事に個性的で新しさを感じる作品に昇華していた。
殺された富豪のもとで働いていた移民に対して、口では「家族の一員だ」と言いながら見下す富豪の家族の構図は、現代社会への風刺が効いている。ラストシーンのバルコニーでのやり取りにその構図が活きていて、カタルシスのある終わり方になっていた。
名探偵役のダニエル・クレイグは意外とハマり役だったし、色んな作品のパロディが散りばめられているのが楽しい。
総評
ということで、順位一覧はこんな感じです。
1位:ブックスマート
2位:燃ゆる女の肖像
3位:パラサイト
4位:羅小黒戦記
5位:幸せへのまわり道
6位:魔女見習いをさがして
7位:ボヤンシー 眼差しの向こうに
8位:ルース・エドガー
9位:チャーリーズ・エンジェル
10位:Away
次点:ナイブズ・アウト
やっぱり今年は、上映数が少ないのに良い作品が多かった。順位をつけているけど本当はあまり差がなくて、特に5位〜10位は別の日にランキングを付けていたらまた別の順位になっていたと思う。
あとは配信オンリーの新作で鑑賞済みの映画をメモってなくて入れられなかったのが不覚だった!!来年はちゃんとメモろう。
おわりに
ほぼ初めてランキングを付けてみて、漠然とした「面白いな」「あんまり面白くないな」という感覚を順位にするのって難しいんだなと思った。
難しいのは、自分の中で大まかに2種類の「面白い」があるから。撮影技術やストーリーが良くて作品としての完成度が高いものと、別に完成度は高くなくても個人的な経験に刺さって共感度が高いもの。
この2つのベクトルの「面白い」をひとつのランキングにするのが難しい。来年はもうちょっと基準とか考えてみよう。
とはいえ、観たときの感覚を思い出すために自分の感想を見返したり、どういう映画に興味を持つ傾向があるのか考えたり、なかなか楽しい作業だった。
来年もいい映画に出会えますように!
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