[玉造温泉街 再生秘話⑤]専門家も絶賛‼ まず最初に決めたこと。
いつもご覧いただきありがとうございます!
第5話にしてまだ2007年から抜け出せないことに驚く角さんです。
やはり13年の積み重ね、というものは重いですね。
さささーっとまとめて書けるかと思っておりましたが、予定通りにならない。←まあそれも面白いです。
さて、第⑤話は非常に重要なお話だと思います。
角も最初は本当の意味がわかっておりませんでした。
でも周藤さんと一緒に働くうちにだんだんわかってきました。
今回は「まちのありかた(スタンスを決める)」です。
周藤さんが観光協会に勤めるようになって最初に手掛けた仕事のお話です。
※視察に来られる専門家が大絶賛されたブランディングのお手本のようなお話です。
観光協会の活動が始まる
2007年6月
周藤さんは観光協会に勤務をはじめて2カ月がたちました。
丁度、角も6月から観光協会への勤務が始まりました。←3カ月くらいはとにかく引き継ぎの日々でしたがそのお話はまた後程です☆
そのころの角はこんな感じでした。
まさに…無いものねだりマンです。。。
若さとアイデアで新しいことに挑戦したいマンです。。。
そりゃ、旅館から移籍して温泉街を再生させる!みたいなミッションを背負ってますから…結果の出やすそうな事、目先の事を考えるのも無理はありません。
しかし、周藤さんは違いました。
※今思えば、やはり周藤さんがいてくださって本当によかった!
周藤さんがいなければ今頃どうなっていたのか、と…恐ろしい気持ちになります。
無いものねだり と あるもの探し
話の舞台は変わりますが、玉造温泉街の整備事業についての会議の事です。
【補足】玉造温泉街の整備事業とは
H19~H23年度の5ヵ年計画。国土交通省のまちづくり交付金を活用。5年で5億円の予算。主にハード整備に活用される。松江市の事業で地元との協同事業。検討会議を設置して地元の意見を集約して事業に反映させる。H19年から毎月2回、年間24回行われた。(出典:角の記憶)
その日の会議の議題は、「どんな整備をしましょうか?」でした。
主席者(地元の方)からは
「道路を石畳にして大正ロマンのまちにしたらいいんじゃないか」
「石畳!イイですねー」
「そういえばこの前映画で見たalways三丁目の夕日みたいな昭和のノスタルジーみたいなのはどうだ?」
「昭和ノスタルジーですね!いいですねー」
「電柱も地中化したいねー」←(いや昭和はどこいった?)
「街全体をイルミネーションで明るくしたらどうかな」←(ノスタルジー感ゼロやん)
などなどなど。。。。
楽しそうな話題で盛り上がったそうです。
その話をじーーーーっと聞いていた周藤さんは…
静かに、何も発言せず、こう思っていたそうです。
「みんな無いものねだりをしているが、それじゃダメだよ」
「玉造温泉にすでにあるもので、全国に無いものを見つけて磨かないと」
▲まずは皆さんの意識を変えんと...いけんだねか。と思っていた周藤さん。
周藤さん視点の街の課題
この時、周藤さんはこんな課題を見つけておられました。
このなかで①と②の課題から、
『街の人の意識が今の街の姿を作っている』
と考えたのです。
(新しい事への挑戦ばかり考えていた角とは大違いです。)
「まずは街の人の意識から変えないといけん」
「まちづくりはひとづくりだ」
こう考えた周藤さんは玉造温泉の歴史を見直します。
勉強家なので、もう、徹っ底的に調べ上げます。
なんと
昭和 ⇒ 大正 ⇒ 明治 ⇒ 江戸 と調べていきました。
その結果…行き着いたのが…
まさかの奈良時代でした!
古代日本!? 大和朝廷…ですか!?
ハイ。
周藤さんはそうゆう人なのです。
歴史が深ければ深いほど、他の温泉地との差別化ができると考えていました。
そして
歴史=我々のご先祖さまのお話
⇓
住民の誇りになりやすい
⇓
まとまりやすい
と、考えたそうです。
このような理由から、とにかく歴史事実から地元意見のまとめ上げを計画します。
そこで見つけてきたのが古い書物です。▼コチラ
▲出雲国風土記(写本) 733年編纂。なんと1300年前!奈良の大仏の頃!
▲その中身。 古文? 普通の人は読めません。
周藤さんはこの難しい本を読み、さらに現代語訳の本を何度も読み返して、ここに記されている「一濯則形容端正」に目をつけるのです。
まちの「ありかた(スタンス)」を決める
周藤さんは まず人の意識を変える!と決めて行動に移します。
それは…
「わかりやすい まちづくりのテーマを決める事」 でした。
周藤さんはこう考えました。
このままでは、みんなが無いものねだりをして好き勝手にバラバラなことをしてしまう。
関わる人がみんな同じ方向を向くためには…
誰もがわかりやすく、そして玉造温泉らしさ、玉造温泉にしかできないようなテーマを提案します。
そして生み出されたテーマがコチラでした。⇓
美肌・姫神の湯 玉造温泉
温泉地だから温泉をテーマとする。
派手さのないテーマで、寂れていく温泉街のカンフル剤には程遠い…そんな印象です。
さて、数日が経ち
例の会議の日がやってきました。
周藤さんが自信を持って提案をしたところ…
と、このように皆様の反応は やや鈍く… というか困惑の状況です。
出席者からは
「古代?そんな誰もイメージも出来ない時代をどうやってテーマにするの?」←(そりゃそうですね。古代って言われても前方後円墳と卑弥呼さましか絵が浮かばないです。)
「はぁ?美肌温泉?玉造温泉のお湯が??」←(無色透明匂いもないので当時は角も普通の水と思っておりました)
「そんなことより、これは何て読むかね? き…しんのゆ?」←(ひめがみです)
「いよいよ神頼みか?」←(イルミネーションしたい人より)
と、賛同する方はほぼゼロ。完全なアウェーです。
ではなぜ周藤さんはこのテーマにしようと考えたのでしょうか。
説明いたします。
☑ まず、歴史を紐解くと、わが町は1,300年も温泉と共に生きてきている。
☑ そしてこの出雲国風土記には「一度お湯を浴びると若返るように綺麗になる(一濯則形容端正)」と書かれている。
※1,300年前にすでに美肌効果が確認されていた。
☑ 全国約3,000カ所の温泉地でもこれだけ古い歴史があり、しかも美肌温泉と記されて書に残っているのは玉造温泉だけである。(唯一無二)
☑ そして、そのお湯の効能から神の湯と呼ばれていると書かれている。出雲の最大の観光資源といえる神話や神々に通ずる。(地域性がある)
☑ 出雲の神話と日本最古級の美肌温泉の記述というすでにあるものをテーマとして磨くべきだ。
☑ ターゲットは20代30代女性。温泉と美容をかけあわせたテーマで訴求する。←これについては後程さらに補足します。
☑ やるべきことをわかりやすくするために、『美肌・姫神の湯 玉造温泉』という言葉を考えた。
☑ 神の湯について、美肌の事が書かれていることから、神は神でも女性の神様の事を言っている、とも読み取れる。⇒姫神の湯という言葉を考案
☑ 専門家にも何名かに尋ねたところ、大変良いと思うという回答をいただいた。
と、かなり深く考えられた結果、生み出された言葉だったのです。
それでもこの美肌・姫神の湯というテーマには反対意見も多かったそうです。
まとまるまでには半年近くかかったのだとか。
そして周藤さんの根気強い説得の結果、最後は皆さんが『周藤を信じてみよう』とまとまりました。
こうして玉造温泉のこれからのありかた(スタンス)が「美肌温泉」と「神話」を掛け合わせた「美肌・姫神の湯」に決まりました。
今だから言えます。
このありかたを最初に決めた周藤さんは本当にすごい人だと思います。
無いものねだりでパンフやらホームページに目移りしていた角とはレベルが違います。
そして、周藤さんが「美肌・姫神の湯」と決めてくださったおかげで、その後の玉造温泉の事業はありかたからブレることなく進むことになります。
あの姫ラボも生まれます。第15話くらいで紹介する予定です。
美肌・姫神の湯 玉造温泉とテーマは決まりましたが、成果が見えはじめるまでおよそ3年かかります。続きをご期待くださいませ。
最後までご覧いただきありがとうございます!
書きながらとても懐かしく、そしてまた周藤さんの事を尊敬しております。
すごい方です。 レジェンド! Mr.玉造温泉!
このありかた(スタンス)を決めるというのはブランディングの基本中の基本だそうです。
角さんも周藤さんと一緒に働くようになって7年後、40歳になってからようやくわかりました。
皆様の何かご参考になれば嬉しいです。
参考資料:ブランディングって日本語で何?
あ、そうでした。
〔補足〕20代30代女性をターゲットにした理由
2007年当時は団塊の世代が60歳を迎え定年退職をした時期です。観光業界は「お金と時間の余裕がある60代をターゲットにする」という方向を向いておりました。ところが周藤さんは以下の事を考えておりました。
① 旅行を決めるのは女性
② メディアを動かすトレンドを作るのは女性
③ 生涯顧客という概念のリピート戦略⇒60歳と30歳、あと何回旅行するか
④ 世間の逆張り(差別化、個性化)
⑤ 美に対する欲求は不変(クレオパトラの時代からある)
など (出典:角の記憶)
さて、次回のお話はまちデコ最初の事業です。
ところがなかなかうまくいかず売上は計画の1/10程度…このままでは倒産?
そんな事業のお話です。
第6話 売上が計画の1/10見込み違いの初事業はコチラから
※第10話まで無料ご覧いただけますので安心ください。
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