連載『人間未満黙示録』2020/06/29~07/05までの記録
2020/06/29(月)
・子宮のなかは海の中
下腹が痛い。婦人科で検診を受ける。血液検査はオールグリーン!初号機も発進できちゃうぐらいの健康的な血液。22歳にしては、わりと日常的にたくさんの薬を飲んでるのに、よくこんなに正常な数字が出るもんだと思った。健康になるために薬を飲んでいるから、あながち間違いではないか。
婦人科の触診はいつも慣れない。女医さんであれば、少々恥じらいも薄れて楽に感じるが、女医さんほど容赦なく触診するのはなぜ。ありとあらゆる内臓を、空いている女の穴に手を突っ込んで触るのだ。びっくりするぐらい痛くて、超デカい声で「痛いです!!」と叫んでしまった。先生ごめんね。
2020/06/30(火)
・俺の将来は御社にある
第1志望の会社の面接のため、東京に向かう。緊急事態宣言が明けて以来、初めての上京だったので、かなり緊張した。面接は緊張せずに話せたと思う。周りの子達の中の誰より声がデカくて、ハキハキ話せた自信がある。受かっていて欲しい。だって働きたいから!!おい!!こんなに働きたがっている若者がいるんだから、働かせろよ!!
・初めての味
偶然同日に東京に来ていた高校時代の友達と会って遊んだ。といってもこんな時世だし、早く帰った方がいいから、あんみつのみはしで、あんみつを食べて帰った。あんみつを生まれて初めて食べたが、和の煮こごりみたいな味がして、意外とおいしかった。
2020/07/01(水)
・慣れ親しんだ場所
東京から直行で、友達と一緒に実家に帰った。これはかねてよりの精神の療養のためである。両親はもう申し訳ないくらいに優しい。でも過度に優しくされ続けると、何も返せない申し訳なさが募る。しかし実家は快適である。
2020/07/02(木)
・記憶がない
記憶がない。何をしていたか思い出せない。ただずっと焦燥感がこびりついて、形のわからない不安に襲われていた。薬の副作用で、胃がムカムカする。おいしいものを食べても楽しくない。起きてすぐ機嫌が悪くなってしまう。嫌だなぁ。
2020/07/03(金)
・課題を終えた
やった!来週発表の卒論の草稿ができた。私の先生は優しいし、全然怖いツッコミをしないのであまり不安になりすぎないけど、それでも自分が自信を持って発表できるように準備しておきたい。でも今はひとつのことに集中することで精一杯で、本や論文を、その意味を取り違えないようにつぶさに読んだり、文字を間違えないように追うことがとてつもなく大変に感じる。
2020/07/04(土)
・元気がない
お出かけ、お買い物に行こうと両親に言われていた。でも朝起きた瞬間から胃のムカつきと、形容しがたい気持ちの立ち上がれなさを感じ、体調不良を理由に断ってしまった。きっと両親は私が精神的に楽しく、また楽な環境・楽しい体験を作ろうとしてくれているのだろうけど、なんせ身体と心がうまくついていかないのだ。外出は、いつ体調が悪くなるかわからないからなるべく避けたいし、それが原因で家族を振り回すことになると思うと、あんまり何もする気が起きなくなってしまう。本当にごめんなさいと、ずっと思っていた。
2020/07/05(日)
・吹っ切れた
両親が京都まで車で送ってくれた。今日は割と元気だったので、買い物にも行けたし、ご飯もしっかり食べることができた。しかし、下宿に戻ると、この前受けた最終面接の不採用通知が届いていた。私の何がいけないの?日中あんなに楽しそうで元気にしていた私なのに、不採用通知を見た瞬間、露骨にテンションが下がってしまったので、両親にマジの心配をされてしまった。別に第一志望ではないし、万が一内定をいただいてもおそらく行かなかった会社だから、そんなにダメージは少ないように思われるけど、社会から必要とされてない感じがもうひしひしと伝わってきて、自尊心ズタボロの満身創痍になってしまいそうだった。しかし、なんだ人間ってのは、一回底まで行くと後は上がるだけだと思い、どこからか力が湧いてくるものだ。私の中でなにかが吹っ切れた気がした。今ある選考中の企業と、新しく、かなりチャレンジングだと思い、エントリーを躊躇っていた企業にチャレンジしてみようと思った。足りない箇所はいくらでもある。けれど、私には今全身でぶつかることができるだけの気力が残っている。失敗してもいいから、チャレンジしてみようと思った。偉いな私。
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