二人だけで過ごす老後が長い
夫婦と住まい04
少子化で子どもが一人か二人という家庭が圧倒的に多いいま、40代後半には子どもが独立し、夫婦二人という場合も多く、おそらく夫55歳、妻50歳頃には、夫婦二人きりになってしまう例が多いのではないでしょうか。
人生90年時代に近づきつつある中で、平均で20年、場合によっては30年以上、夫婦が顔を突き合わせて生きることになるわけです。
家事や子育て、そして地域の付き合いなどを放棄して、企業に身を捧げ、企業の倫理とコミュニティしか知らない夫。妻はどんどん自己実現に向け変わっているのに、夫はそのことに気付こうともしません。
いま結婚20年以上のいわゆる「熟年離婚」 の割合は急増していますし、夫が定年を迎えた日から、寝室を別にしたり、また、表面に現れなくても、夫と一緒の長い老後に実は嫌悪感を感じ、ストレスを溜め込んでいる妻も相当いるはずです。
熟年離婚や家庭内別居、そして夫婦別寝室などは殆どが女性側からの申し出であるという特徴に、現代夫婦が直面している問題の根の深さを見る思いがします。
子育てが終って、定年を迎え夫婦二人になっても、夫は語るべき言葉を持ちません。夫婦のコミュニケーションを先送りし、直視せずに済ませてきた夫婦の関係性が剥き出しになってしまうといってもいいでしょう。
会話は続かず、家で過ごそうとしても居場所もなく、時間の過ごし方も知らないため、一人になれる書斎が欲しいという声も多い。こんな状態のまま、20年30年、同じ住まいの中で過ごさなくてはならないという悲しい現実も、高齢化社会のもう一つの大きな側面でもあるのです。
子どもを基軸にライフサイクルを考え、ローンの返済を組み立てて、住まいを購入したり人生を設計していくより、夫婦を軸にしたライフスタイルを考えていかなくてはならない時代が、既に来ているのではないかと思います。
住宅問題は家族間題です。夫が妻との気持ちの食い違いに気づき、老後を過ごす空間を積極的に作ろうとすれば、状況は大きく変わり得るのです。住まいの建替えやリフォームによって、崩れかけた夫婦の粋が強まったり、生きる活力が湧いて暮らしが楽しくなったという例もたくさんあります。
高齢化社会や自分の老後を見つめるということは、夫婦や家庭を見つめることであり、そして住まいを見つめ直す作業でもあります。
これまでに300以上の住宅を手掛け、富な実績を元に、本当に居心地のいい、家族が元気になる住まいをご提案します。noteでは住まいで役に立つトピックスを連載形式で公開します。