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脚本を模写して見えてきたこと

脚本家・壽倉雅(すくら・みやび)でございます。

これまで、いくつも脚本としての作品を執筆してきましたが、書いている中で「こういう時って、どんな風に表現したら良いんだろう」「絵は浮かんでるのに、それをト書きにどう書くべきか」など悩むこともあります。

そこで私は、参考資料として購入したシナリオ本を読み返しています。また、ただ資料として読むだけではなく、脚本を模写することもあります。初めて模写したのは、確か高校生の時だったと記憶しています。
今回は、4名の脚本家の方の作品を模写して分かったことをまとめていきたいと思います。


長ゼリフは当たり前!~橋田壽賀子氏~

1人目は、橋田壽賀子氏です。
自宅の部屋を整理して分かったのですが、橋田氏の作品模写は、何と8作品もしてました(笑)
模写したのは「渡る世間は鬼ばかり」「番茶も出花」(共に連ドラ)「女たちの忠臣蔵」(3時間時代劇)「女たち」(日曜劇場単体作品)「おしん」(連続テレビ小説)「春日局」(大河ドラマ)「お入学」(銀河テレビ小説)「お嫁に行きたい!」(舞台作品)

8作品模写して分かったのは、やはり長ゼリフです。作品の中にはナレーションを登場させることで状況等を説明をしている作品もありましたが、そのナレーションもそれなりの文字量。また、ナレーションがなく、登場人物が人物設定や状況を説明するのもとにかく長いです。200字詰め原稿用紙で8枚、つまり時間にして3~4分ひたすら、一人のキャラクターのセリフが延々と続くのです。その場にいる登場人物は「……」が続き、結局一人が話しているという作品もありました。
また全体的にト書きが少なく、セリフが多いのが特徴でした。演技や動作によるト書きではなく、セリフだけで登場人物のキャラが分かってしまうのが、橋田氏の手腕と言っても過言ではないでしょう。

モノローグと間を大切に~倉本聰氏~

2人目は、倉本聰氏です。
模写したのは「やすらぎの郷」のみですが、これから「北の国から」や「拝啓、父上様」を模写しようかと思っています。

倉本氏の特徴で顕著だったのは、セリフとモノローグの散りばめ方が自然ということです。多すぎてもくどくなりますが、そういった違和感がないのです。私が模写したのは、作品上のある一話でしたが、200字原稿用紙で30枚つまり、1話15分で場面転換のないワンシチュエーションでした。1つの空間の中で行われる登場人物のやり取りは、クスッと笑える喜劇要素がありました。
舞台演出も手掛ける倉本氏は、頭の中でその場の空気や演出が絵に浮かんでいるのでしょう。「間」と書かれたト書きが、幾度も出てきます。1話模写した中でも「間」は何度も登場していました。セリフや動作の後の「間」。お芝居においても「間」が大事とよく言われますが、倉本氏は脚本の段階で演出に近いものが入っています。他にも音楽のフェードインやフェードアウトの指示まで、ト書きに記載されているのが印象的でした。

場面転換をふんだんに使う~宮藤官九郎氏~

3人目は、宮藤官九郎氏です。
模写したのは、「うぬぼれ刑事」と「ごめんね青春!」です。

ギャグを言わせるのではなく、日常会話におけるやり取りで視聴者を笑いの渦に巻き込むのが宮藤氏の手腕ですが、模写をして特徴的だったのは場面転換の多さです。1時間ドラマの中で柱の数(シーンナンバー)は、平均で30~40だそうですが、橋田氏はホームドラマという設定上のこともあり15~20と少なく、宮藤氏の作品は柱が60近く(多い時で90)あるというのが特徴でした。つまり尺で言うと、ワンシーンが1分あるかないかという場面も登場するということです。
宮藤氏の場合は、状況説明をセリフだけでなく絵で見せるので、回想やイメージ映像のために柱が細かく分かれています。演者が演技をする一方で、別のキャラクターが声で説明するというシーンが頻繁に登場しています。そのため、同じシーンで会話のやり取りを続けていく橋田氏や倉本氏とは違い、説明ゼリフがあまり登場しないのも宮藤氏の作品の特徴でもありました。

ト書き描写を丁寧に描く~浅野妙子氏~

4人目は、浅野妙子氏です。
模写したのは「大奥」(映画版)です。

元々大奥シリーズが好きな私でしたが、小学校の時に映画館で見た「大奥」が、どんな風にシナリオなっているのか興味を抱いたのがきっかけでした。
浅野氏の「大奥」を模写して一番驚かされたのは、ト書き描写がとても丁寧に描かれていることでした。
橋田氏、倉本氏、宮藤氏共に、テンポの良いセリフのやり取りで物語が進んでいきますが、対照的に浅野氏の場合はセリフはどちらかと言えば最小限でした。映画ということも理由の一つかもしれませんが、とにかくト書きによる演技や描写、景色、状況説明が事細かく記されていました。私自身もどちらかと言えば、セリフのやり取りで物語が多く、ト書きは最低限というタイプだったので、良い意味で衝撃を受け、ト書きの参考にしたいと思った作品でもありました。映像で見せる、という点を意識されて、ト書きを多く書かれていたのではないかとも考察します。


作品の模写をする中で、それぞれ作家の特徴が発見できましたが、同時に私は尺も意識しています。実際に原稿用紙に模写したら何枚になるのだろうかと。実際、「渡る世間は鬼ばかり」「番茶も出花」は400字詰め原稿用紙で59枚~61枚と平均60枚、つまりやはり1時間ドラマ(CM除く正味45分)は60枚が目安になるのだと。また、「春日局」は50枚、「おしん」は20枚だったので、大河ドラマと連続テレビ小説の1話の平均枚数を知ることができました。
模写からは、様々なものが見えてきました。これから、仕事の執筆をしながらも、先人の作品の模写をしていき、また新たな発見をしていきたいと思っています。

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次回もお楽しみに!

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