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適応障害の私が健やかになりたくて読んだ本たち

2023年9月、思いっきり強めに精神をやった私は、押上を歩きながらぼたぼたと涙を流していた。ソラマチでぼたぼた、牛タンを食べながらぼたぼた、川のほとりでぼたぼた。そして、こりゃあ参ったどうしようの気持ちで本屋に駆け込み、それっぽいコーナーの前を長いこと占拠し、祈る気持ちで数冊を手に取って帰宅した。当時から今まで、適応障害と立ち向かうために読んだ本たちの記録を、サマリーと共にここに残そうと思う。これからも読むつもりなので②に続くかもしれないが、この間カウンセリングで「お前さんはまだ傷が癒えてねぇからゆっくりやろうや、本屋に行っても心理系のコーナーには立ち寄るんじゃねえぞ」と言われてしまったので当分先になりそう。



まずは優しそうなやつから

とりあえず涙を止めてもらわないことには本も読めない状態だった私は、絶対に傷つけてこなさそうな、見た目にも優しさ溢れる2冊に縋るように手を伸ばした。

まず、2冊とも色味がパステルなところが素敵。しんどい時はさまざまな刺激に対して敏感になり、いつもなら奪われないエネルギーを奪われ、はじけるようなオレンジ色や大阪のおばちゃんが好きそうな紫色なんかが使われていた暁には、ただでさえ底をついているエネルギー入れの底がごりごりと削られていってブラジルまで貫通してしまうので、色なんてものは薄けりゃ薄い方が良い (個人の見解です)。

疲れ果てて、自分自身にうんざりして、受け入れがたい。そんな人生を投げ出したいと思うときもある。でも、自分以外に自分の人生を生きてくれる人はいない。

キム・スヒョン著「私は私のままで生きることにした」

1冊目は、私にひたすらに「あんたの人生はあんたのものだろ…あんたが生きなきゃ誰が生きるんだ…」と語りかけ続けてくれた。何者でもない凡の凡な人間だけど、平凡にだってできることはたーくさんあるんだから、憧れや不安ばっかりを抱きすぎたりして、自分という人間が生きている今を見失うんじゃないよ、自分の幸せに関心と責任を持つんだよ、と。

私たちは人生が不安だからと、
あまりにも多くの荷物を持っているけど、
生きるのに、そんなにたくさんの荷物はいらない。

キム・スヒョン著「私は私のままで生きることにした」

それから、人生をもっとシンプルにしていこうという話も。私はいつも、勉強や仕事などの世間的に「ちゃんとやるべき」とされるものごとに対しては、自分ができ得る行動は全部やってやりたくて、あれもこれもと色んな荷物を持ち抱えていた。それに加えてもちろん、自分が個人的にやりたいことや繋ぎ止めたい人間関係もある。どうやら私は、どれかを捨てなきゃいけない場面でも、全部持っていきたいから詰め方を工夫しよう、とリュックサックにぎゅうぎゅうに詰め込んでしまっていたようだ。人生の旅路で私が背負っていける荷物って、思っているよりも少ないのかもしれない。本当に持っていきたい荷物はなんなのか、これからは定期的に点検しようと思った。

ミスと誤差のための余白と、
バカバカしい失敗をしたときのための予算
とっておいたほうがいい。

キム・スヒョン著「私は私のままで生きることにした」

他にハッとさせられたのは、失敗をあらかじめ想定しておくという考え方。私は自分の失敗が許せない人間で、失敗しないように慎重に慎重に、石橋を叩いて壊すタイプだ。社会人になって「若いうちに失敗しておけよ〜」と先輩にはよく言われたが、その度に私の中の米倉涼子が「私、失敗しないので」と決め台詞を吐いていた。失敗できないことがある種コンプレックスだったりしたのだけど、失敗って人生の中にあらかじめ想定されているもんだよな、と、今までよりも失敗を当たり前のものとして身近に捉え直せたので、もうちょっと失敗と友好的な関係を今後は築けるかもしれない。

***

意味のない時間こそ愛おしく思えるようになれたなら、きっとありふれた日常さえも、「好き」であふれる特別な世界に変わっていくのだ。

考えるOL著「がんばらないことをがんばるって決めた。」

2冊目は、何者でもない平凡な人間の平凡な日常の中にも、愛せるものがいくつも詰まっているはずだよ、と教えてくれた。働いていた頃の私にとって、月火水木金は耐え忍ぶ時間だった。自分を緩めることは許されないし、好きなことをしたって心は休まらない、来たる土日を目指して静かにじっとうずくまることしかできなかった。でも、そういえば、平日だって私の人生の日常なわけで、仕事は私の人生の上にあるはずだ。

ありふれた日常の中で「あなた」が「わたし」にくれることに意味がある、リボンさえ付いていないプレゼントを見逃さないように生きていこう。

考えるOL著「がんばらないことをがんばるって決めた。」

でも、仕事もプライベートも含め、人生がこれからも大変だってことは変わらなくて、それを受け入れてやっていくしかないけれど、そんな大変な日常があるからこそ意味を持つものごとがこの世界にはあるってことを思い出させてくれた。朝の気分を上げるためのおいしいパンとか、愚痴が溜まってきた水曜の夜に彼と励まし合う時間とか、金曜の夜の銭湯のあとの心地よい夜風とか。

不自由なこの世界を、自由に勘違いして生きていこうじゃないか。無力な私たちの、素敵な悪あがきをしようじゃないか。

考えるOL著「がんばらないことをがんばるって決めた。」

この本で一番好きな一節だ。思い通りにならないこととか、理不尽なしんどみとか、茶番のような社会とか、ほんと糞食らえな世の中だけど、私は私の小さな幸せを拾っていくことができれば、世界の見え方は変わってくる。そんな綺麗ごとを信じても良いかなって思えた一冊だった。

***

どちらの本も正直、渦中にいたときは私の上澄みの部分にしか影響してくれなかったのだけど、救いには十分なってくれた。そして仕事から離れて、生活に余白が生まれた段階で読み直したとき、私の底らへんにすとんと入ってきてくれた言葉たちがたくさんあった。


体からアプローチするという知見

疲れてしんどいのに眠気が来ない、寒いのに汗をだらだらにかく、尿意があるのに全然出ない、など自律神経がバカになっている自覚もあった私が次に手に取ったのはコレ。

同様の書籍は他にもあったので迷ったが、しんどい時にぱらぱらめくれば解決策に辿り着けそうな構成だったことと、しんどい時でも試せそうな小さなアドバイスも載っていた (生活リズムを整えよう♪とか、湯船にゆっくり浸かろう♪とか、「それができたら苦労しないよ」系ばかりではなかった) ことからこれを選んだ。

「思考やメンタルをどうこう言う前に、体の状態を整えなければ、ポジティブになれるわけがない」

小林弘幸著「自律神経が整えば、仕事も人間関係もうまくいく」

しんどい時によく「ネガティブに考えすぎちゃって、私ったらよくないぞ、この世界は捉え方次第⭐︎」と、どうにか脳内に種を蒔いて水をやってお花畑を生み出そうとしていた私よ、時代はメンタルじゃなくてフィジカルらしいぞ。

ストレスに感じる出来事があると、自律神経がなんだかよくない状態に陥って、血流が悪くなったり、呼吸が浅くなったり、フィジカル側に十分な体制が整わなくなるらしい。ストレス=メンタルだよね、どうにかできないのは私の心が弱いからだよね、と強烈にコンプレックスに思っていた私にとって、いや実は自律神経も寄与しててだな、という考え方自体に気持ちを楽にする効果があった。

ストレスを抱えて「辛いな」「疲れたな」と感じるときこそ、お気に入りの場所に行って、1時間でも気持ちのいい時間を過ごしてください。確実に体はリセットされます。もちろん、それだけで問題が解決するわけではないでしょう。しかし、何ひとつ解決しなかったとしても、それを受け止める体の準備が整い始めます。これがとても大事なのです。

小林弘幸著「自律神経が整えば、仕事も人間関係もうまくいく」

とにかく体から整えろ、話はそれからだ、ということらしい。具体的には、深呼吸をする、一度その場を離れる、動作をゆっくりにする、といった、いつでもどこでもできることが紹介されていた。今度から上司に嫌なことを言われた時は、ゆっくり喋ることにしようと思う、ファインディング・ニモのクジラさんくらい。

「自分は、こういうストレスに弱いなぁ」と客観的になれた瞬間から、自律神経は整い始めます

小林弘幸著「自律神経が整えば、仕事も人間関係もうまくいく」

ありがたかったのはこの一節。まずは自分がストレスを受けたときに自覚することが必要 (自覚しないと対策もとれない)、という教えなのだが、私はこの言葉がプラシーボ的に自分に効いてくれそうな気がしている。なんせ私は、胃薬を飲み込んだ瞬間に胃もたれが治るような超単細胞人間なのだ。「ああ、今自分、嫌な気持ちになること言われてるなぁ…東京湾に沈めてやりたいと思っているなぁ…」と客観視できただけで、「ふぅ〜、これで自律神経整い出したわぁ、私の神経、あとは頼んだぜっ⭐︎」と、なんだか今後はそうやって勝手にスッキリできそうな気がしている。著者の期待する受け取り方とはずれている気がするが、なんか良い作用がありそうなので、積極的に客観視していきたい所存。



医者の言い分が学べたやつ

休職が決まったタイミングで、復職に向けてやっていくことを整理したいと思い購入した一冊。私はうつ病ではないが、適応障害の場合にも当てはまりそうなことが多く書いてあった。なんせ何人もの患者を見てきた医者の言うことだ、信用させてもらおうじゃないの。


この本で学びだったのは、「マインドフルネス」と「コーピング」。

「目の前には実際に何もないのに記憶や想像力の産物にストレスを感じるって、きっと人間だけだよね。過去や未来について勝手に考えを巡らせてストレスを感じ、ストレス反応を慢性化させていく」(中略)「このように目の前の現実ではなく、それ過去や未来についてあれこれ考えを巡らせてしまう状態を"マインド・ワンダリング"って呼ぶんだ」

亀廣聡、夏川立也著「復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らず、うつを治す方法」を聞いてみました」

であれば、私は常にマインド・ワンダリングだ。過去や未来のことをひっきりなしに考えているし、なんなら3本くらい思考が同時並行していることもあるので、ワンワンワンダリングって感じだ。ストレスを受けている状態が慢性化していたし、脳みそフル稼働ってことだ。私の脳みそ、今までお疲れさんでした。これからはちゃんと労わりますんでどうかお許しを。

マインドフルネスのための具体的な方法は、呼吸に集中する方法、自律訓練法、実況中継などが紹介されていた。私は最近、歩くときに「右足、左足、右足、左足、、、」と脳内で繰り返しながら歩いてみているが、そもそも今以外のことを考えながら生きることが私のスタンダードになりすぎていて、なかなか苦戦している。もう少し頭の柔らかい時代に知りたかったぜ。

気分を上げるのではなく、あくまでニュートラルを目指すイメージを大切にして

亀廣聡、夏川立也著「復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らず、うつを治す方法」を聞いてみました」

コーピングについては、この一節がイメージしやすかった。そして自分のトリセツとして予め持っておくことが重要なようなので、作ってみようと思います。出来上がったものがこちらです。


それから、青魚を食べろとも書いてあったので、最近はサバ缶とイワシ缶を積極的に食事に取り入れている。レトルトカレーにぶち込むのがマイブーム。

***

私が思うに、精神疾患は適切かつ充分な治療を受けることが難しいという現状と、そもそも自分の病状を医者に的確に伝えることすらままならないという現実とがある。なので私が健やかになるためには、人間の仕組みや病気についての理解を深めて、必要な医療を自ら選び取っていくことが必要。こんなことになるなら、心理学とか専攻しておけば良かったな〜〜。


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