さんかく
夜の静まり返った学校の教室で、小さな三角形が目を覚ました。彼は、机の上に散らばった文房具の一部であり、自分が何か重要な役割を果たすことを夢見ていたが、ただの道具に過ぎないことに少し寂しさを感じていた。
ある晩、彼は隣に座っていた古びた定規に話しかけた。「僕は、何のために存在しているんだろう?」と。定規は優しく答えた。「君は、他の道具と一緒に働いて、素晴らしいものを作り出す力を持っているんだ。だけど、その力は君一人では発揮できないんだよ。」
その言葉が心に響いた三角形は、夜の闇の中で他の道具たちと交流を深め始めた。彼はコンパスと一緒に美しい円を描き、鉛筆と協力して精緻な図形を作り上げた。消しゴムとともに、間違いを修正して何度でも新たなスタートを切ることの大切さを学んだ。
日が昇る頃、三角形は一つのことに気づいた。彼は自分が何か特別な存在だと信じる必要はなかった。自分が誰か、どこに属するかは重要ではなかったのだ。重要なのは、他者とともに何かを創り出すその過程であり、その瞬間瞬間が彼にとっての「冒険」だった。
教室が明るくなり、子どもたちが戻ってくる頃、三角形は机の上に静かに戻った。今度は自分が何者であるか、何のために存在するかをはっきりと理解していた。そして、彼はこれからも続くであろう新しい冒険に心を弾ませていた。
子どもたちが彼を手に取り、彼の助けを借りて新しい図形を描くたびに、三角形は自分が果たす役割を誇りに思った。彼は単なる道具ではなく、想像力と創造力を形にする手助けをする「仲間」だったのだ。
夜になり、また静まり返った教室で三角形は静かに眠りにつく。彼の周りには、定規、コンパス、鉛筆、消しゴムが寄り添い、共に過ごす新しい冒険の日を夢見ていた。彼らは、また一緒に何か素晴らしいものを作り上げるその日を心待ちにしていた。
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