リサーチを文化にするためには「個人情報保護」や「予算」とかを乗りこなそうって話
世はまさにリサーチ時代である。\ドンッ!!/
富、名声、力、この世の全ては手に入れてないちゅうさんです。最近はどこの会社もリサーチを社内で推進していこうというダイナミズムを感じる。超素敵。
これまでの仕事の中でインタビューを何十回もやってきたが、リサーチ文化を浸透していくうえで肝なのが個人情報の取扱いや謝礼の考え方とかを、ちゃんと社内的に問題ないようにオーソライズを取ることだと思う。
このあたりは誰も教えてくれなかったりするので、書いてみたいと思う。
リサーチを文化にする土壌はどこにでもある
JTCと呼ばれる大企業であったり、サービスにユーザーが定着し、一定の成熟期を迎えたデジタルプロダクトの企業などがリサーチの浸透に取り組んでいる。
浸透施策や仕組み化を考える際に、「リサーチの重要性を説く」ことが大事とされたりするが、UXデザインやデザイン思考などが当たり前になってきている時代において、企業の代表レイヤーからビジネスサイドのメンバーまで「ユーザーリサーチをやることは良いこと」という認識を当たり前に持っていることを前提にすべきである。(もちろん企業によるが)
大企業も顧客ヒアリングやお客様の声を聞く、ということを当たり前にやってきているから成長してきたし、その地位を築くことができた。
デザイナー視点の物差しで出来ていないと判断するのは危険で、誰もが「ユーザーの声を聞くべきだし」「聞いたほうがいいものができる」ことを知っている。
ただ情報の蓄積が一部の部署に閉じてしまっていたり、リサーチスキルが属人化していたり、ルールが全社的に決まってなかったりするケースは多い。
浸透のための巻き込み方やDBの設計や方法のルール化などは、素敵な事例が沢山あるので是非そちらを参考にしてほしい。
リサーチを文化にするための5つの要素
リサーチを文化にするためには、自主性、即時性、透明性、公正性、参加可能性の要素が必要だと考える。
ここで厄介なのが「自主性」と「即時性」だ。ここは社内の規定だったり、事業部の運用や予算に非常に触れてくる。
自社でインタビューをするとして、スキルや知識があってもデータの保管や、録音・録画をどのようにするかルール化されていないなら、根付かないし、そもそもやってはいけない。
すぐにやりたいといっても、他部署との都合で被験者にメールが送れなかったり、予算がすぐに出なかったりする。
決めなければならないポイントは多くあるが、特に肝となりそうな部分を説明していきたい。
個人情報の取扱いルールを決めよう
リサーチにおける個人情報って?
そもそもなにが個人情報にあたるのか?個人情報保護委員会や政府候補オンラインの「個人情報保護法」を見てみよう。
メールアドレスなどは特定の個人を識別することができる場合は個人情報に該当し(個人名や企業名が文字列に入っているなど)、ユーザーIDやニックネームも同様。
取扱いにレベル感はあると思うが、リサーチ=ユーザーリサーチとするなら、インタビューなどの録画データは、その人のプライベートやパーソナリティに触れるし、名前を呼ぶしでど真ん中で個人情報になるし、ユーザーの氏名はもちろん、メールアドレスもそれが個人を特定しうるか判断できないので、個人情報として取扱う。
法務観点からリサーチでなにが必要かを見てみよう
個人情報保護委員会のチェックリストによると個人情報保護法のルールは5つあるとのこと。リサーチにおいて特に関係あるのは⭐をつけた。
インタビューを例にとると下記のようなことが必要になると思う。
【取得】個人情報の取得や利用目的を明確化、法務確認を行い被験者に同意いただくための同意書を用意。
【利用】決めた取得目的以外では利用しない。例えば分析にしか録画データ使わないと同意したのに、◯◯さんの声としてサイトに掲載したり、顔を資料などに使用したりする。
【保管】録画データを特定の人物かつ、パスが必要な形で保管する。紙媒体であれば施錠できるところに保管する。また録画データであっても企業によっては施錠できるところに保管する。
もしかしてあなた、PCのローカルで録画データ保管してない???
誰も見てないかもだけどアウトなので止めようね!!
このあたり、会社の規定・規則と密接に絡んでくるどころか、ど真ん中である。プロダクトチームだけで勝手にやるのはNGで、会社そのものを危険に晒す可能性があるのだ。最後の章で説明するが、会社の守りの部分である組織との連携が必須になってくる。
リアルインタビューとオンラインインタビューの合意と記録の違い
余談だがリアルとオンラインのインタビューにおける個人情報の取得と記録についての違いを書いておく。
基本的には会社のルールに則ればいいのだが、なにをもって被験者の同意を取得したことにするかは確認・検討するべきだ。オンラインなら、メールに同意のための文章を書いておくのか、別で同意フォームを送るのかなど、確認しておいてほしい。
リサーチデータへのアクセシビリティ
ここまで書くと、ルールガチガチなので要素の1つである参加可能性とか難しくない?って思うかもしれない。
例えばリサーチデータベースに記録していくインタビュー発話録などは、個人を特定される情報を抜いて記録するなどで対応できると思う。氏名やメールアドレスやIDは抜き、匿名の「Aさん」という形で取り扱うのだ。
このあたりは記録時のルール作りや、インタビューのテンプレートなどを設計することで担保出来ると思う。
正直これはセーフなのか、グレーなのかわからないので有識者が入れば教えてほしい。
運用ルールを決めよう。じゃないと飛ぶぞ。
インタビューなどのリサーチは、デザイナーやプロダクトチームだけで進めてしまいがちである。その時個人情報関連の対応は、正直めんどうだし忘れてしまいがちである。
ただ1度ちゃんとルール化に力を入れれば、その後の運用は楽だし、浸透もしやすくなる。違反や事故は油断するとすぐに起こることなので、ちゃんと向き合っていこう。
素早くリサーチ対象者を集める運用を考える
自分たちで集める?リサーチ会社に依頼する?
リサーチ会社に頼んだほうがもちろん楽である。
お金に余裕があれば、ノウハウがあるリサーチ会社にまるっと依頼するのもいいかもしれない。
だがリサーチを文化にするためには、ノウハウやナレッジが自社に蓄積されないといけない。自主性を担保するためには、自社内で完結するのが望ましい。
では自分たちで集めるとなるとどうすれば良いだろうか。
即時性を考慮すると、インタビューに協力してくれるファンのようなユーザーと普段からコミュニケーションを取ったり、インタビュー協力してくれる人たちを、何らかの方法で事前に確保しておくこともできる。
最も一般的なのはメールやアプリのお知らせから都度ユーザーから募集するというのだろう。
だが一定の組織になると、マーケティングチームが運用していたり、配信数が限られていたりする。来週インタビューしたいから、アンケートメールの配信を…っていうと、それなりの調整が必要だ。
リサーチのためのメールやお知らせ枠を使うなら、各関係部署と連携して定期的に遅れるように調整・ルール化しよう。
当日までのコミュニケーションどうする
インタビューの対象者も決まって、来てくれる!となったら、その日まで基本的にやることはない。
だが予定は突然変わるし、インタビューなどの予定は優先度が下がりがちだ。(謝礼がいいなら来てくれるが)
そのためにも当日までどのような対応にするか決めておこう。
メールでやりとりするのか、緊急時は電話をするのか…などだ。電話をするにしても、実はユーザーの電話番号の取得が会社のルール的にNGだったなんてこともあるので、そのあたりも各部門と相談すべし。
謝礼の方式と出所を決める
インタビューの謝礼はどのようにすべきだろうか。ユーザーインタビューでは60分で8,000円~1万,2000円あたりが相場らしい。(感覚としても同じ)
中にはポイントやアマギフを渡す場合もあるし、会社のグッズというのも聞いたことある。無いパターンもあったりする。
もし迷っているなら、世間の相場感を調べつつ、社内に既にインタビューを実施した人がいたら参考にしてみるのがいいだろう。
謝礼の金額を決めるためのポイントは、その謝礼はどこの部門のどこの予算から出るのかというのを決めることだ。
毎週、毎月とコンスタントにインタビューをするとなると、謝礼だけでもそれなりの金額になったりする。
都度稟議という会社もあるだろうが、即時性を担保するならば年間予算を確保しておいたり、プロダクトの開発費の中から出すなど、素早く実行できる仕組みを作っておこう。
【余談】野良インタビューの取締り
リサーチが浸透していくと、素敵なことにリサーチが至る所で発生したりする。素晴らしいことだ。
だが折角作ったルールを無視してインタビューなどを実施する人が出てくることがある。そうなると全く持って意味がないし、経験と知識が蓄積していかない。
体制を構築して、リサーチするならここにまず連絡!みたいな形にするといいかもしれない。大きい組織ならば全社ルールを策定した上で、各セクションから周知してもらうなど、野良インタビューの取締りをしておこう。
「情報セキュリティ」「法務・コンプラ」を味方にしよう
リサーチはプロダクトやサービス、または組織を大きくするために必要不可欠な要素になりつつある。
速やかに、かつ主体性を持って進めるには突破しないとならない壁や、決めなければならない事がたくさんある。そういうときは「情報セキュリティ」「法務・コンプラ」の担当者に是非相談してほしい。
だが守りの組織であるため、リサーチをしたい側のやりやすい理想をそのまま話すとNGをもらうこともある。会社とメンバー、顧客を守るために作ってきたものを変えるのは難しい。
対立するのではなく、何のためにリサーチをしたくて、どのようにやりたいかを話してみよう。私達は何のためにルールがあるのか理解するべきだし、彼らは「守り」を少し「攻め」にして、出来ることをルールの中で一緒に考えてほしい。
リサーチ文化はデザイナーやプロダクトのチームだけで作るのではなく、真の意味でみんなで作るものなのだ🤝
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