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ショートショートNo.2『とっておきのおまけ』

 ジョージには親友がいる。隣のベッドで過ごしているトムだ。

 小さな頃から病気がちだったジョージは入退院を繰り返していた。学校に行く日数よりも病院で検査をする回数が多いほどだ。そのため、クラスメイトは皆よそよそしく、学校で仲の良い友達ができることはなかった。
 そんなジョージの前に現れたのがトムだった。ジョージがいつもより長い期間入院することになった際、隣のベッドに入院していたのがトムだったのだ。同じような境遇の2人は入院したその日の内に意気投合したのだ。

 「よし!トム隊員、これより作戦を決行する!今日の標的は見回りのDr.ウィルソンだ。」

 「了解!あいつは眩しい光線銃を持って夜僕たちを捕まえに来るはずです。そこを狙いましょうジョージ隊長!」

 そんなことを言いながら2人はよく病院のドクターやナースにいたずらをしては怒られていた。小さな頃からジョージを診ているドクターやナースは、怒りながらも以前よりいきいきしているジョージの姿を微笑ましく思っていた。

 「ジョージ隊長、本日は特殊任務に行って参ります!」

 「健闘を祈る!」

 2人の小さな戦士には、それぞれに特殊任務が割り当てられている。ジョージは精密検査、トムは手術だ。苦い薬も、無機質な検査室も、麻酔の臭いも、2人にとっては慣れたものでトムに至ってはもう10回以上手術に挑んでいる。だが、やはりどこかに怖さを感じていた。だからこそ、特殊任務と言って励まし合うことで楽しく乗り越えていたのだ。

 「隊長!無事に帰還しました!」

 「…ん?お、おう!よくぞ帰った!」

 「隊長、さては寝てましたね?」

 いつもより時間がかかった手術。ジョージはベッドでトムを待ちながら少しばかり不安になっていたが、いつの間にか眠ってしまっていた。慌てて飛び起きたがトムにはバレてしまっていたようだ。必死に取り繕うジョージとトムは目を合わせて、ついには吹き出して笑ってしまった。
 彼らにとって夜はまだまだ寝る時間ではない。その日もいつものようにDr.ウィルソンを驚かせる作戦を決行して、ようやく2人は眠りについた。


 翌日、いつものようにジョージは目を覚ました。

 「よし!トム隊員、今日も朝礼を行うぞ!」

 そう言って2人のベッドを区切るカーテンを開け放した。
 しかし、いつものように寝ぼけ面をしたトムはおらず、ベッドはトムがやって来る前のように綺麗に整っていた。

 「トム?」

 ジョージは訳が分からず、自分のベッドを囲うカーテンもすべて引き去った。しかし、どこにもトムの姿はなく、しばらくするとドクターのウィルソンがやって来た。

 「ウィルソンさん、トムはどこ?もしかして部屋が変わったの?」

 ウィルソンは困った表情のままジョージを見つめ、ゆっくりと口を開いた。

 「ジョージ、落ち着いて聞いてほしい。…トムは昨日の手術中に亡くなったんだ。」

 いったい何を言っているんだウィルソンさんは。ジョージは困惑した表情でウィルソンに問いかける。

 「何を言っているの?トムは昨日、無事に特殊任務を終えて帰ってきたじゃないか。」

 「違うんだジョージ…」

 「違うもんか!卑怯だぞ、Dr.ウィルソン!トムを何処へ連れて言った!昨日の夜も一緒に戦ったじゃないか!」

 ジョージは大声を張り上げてウィルソンを睨み付けた。

 「昨日の…夜?ジョージ、君は昨日トムが手術に行ってから今日の朝までずっと寝ていたじゃないか。」

 「そんなはず…ウソだ!!ウソだ!!」

 その日、ジョージは一日中泣き続けた。夜中、やっと落ち着いたジョージは未だに信じられない様子ではあったが、ウィルソンの話に耳を傾けていた。
 昨日トムはいつものように手術に挑んだ。そして、いつものように無事に終えて帰ってくるはずだったのだ。これまで10回以上も手術を受けたトム、そしてその全てを執刀したウィルソン。そのどちらも、17回目の手術がまさかこのような結果で終わるなどとは思ってもいなかっただろう。

 ウィルソンが話終え、部屋から出ていった後、ジョージは昨日の夜に確かにトムと過ごしていたことを思い返していた。いつものように帰ってきたトム、いつものようにウィルソンさんを驚かした2人。そして作戦が無事成功して眠りにつく前、カーテン越しにトムと話したのだ。

 そこまで思い返した時、最後にトムが言った言葉がふと頭によみがえった。

 「ジョージ、今日の夜はね、君へのとっておきのおまけだよ。」





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お題「おまけ」「17回目」

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