恥の多い生涯を送ってきました
はらはらと降ってきた雪を見て、かつて観た『人間失格 太宰治と3人の女たち』という映画を思い出した。主人公の太宰治が妻と子どもという家庭がありながらも、他の女性にも惹かれて関係を持ってしまう。彼が『人間失格』を執筆するに至るまで、そして彼の最期を描く作品だ。
この作品を観た人たちは、彼に対してどう感じてどう思うだろう。
だらしない人、最低のクズ、どこまでも孤独な男…
たしかに彼の行ってきたことは褒められたものではなかっただろう。その行為を肯定するつもりはない。タイトルの「人間失格」がとてもふさわしい人物像のようにも思える。
では、現実に目を向けるとどうだろうか。
この世界に浮気のようなものは溢れているし、後ろめたいことの無い人間なんていないのかもしれない。哀しいかな、これはどこにでもありふれた出来事でもあるのだろう。
「人間失格」のいう人間とは何なのだろう、失格とは何を指すのだろう。
どうしようもない主人公。魔が刺してしまって、欲望に負けてしまって、浮気してしまって、誰かを傷つけて、そんな自分に嫌悪感を抱いて、途方に暮れて…そうやって追い詰められていく主人公を見ると思う。
彼ほど人間らしい奴はいない…と。
そんな禍々しい思いを抱くのもまた人間で、踏み外してしまうのも人間で、だからこそ彼はその自分のどうしようもない部分を誰かにありのまま受け止めてもらいたかったのだろう。
話は変わるが、主人公の太宰が死んだ後、哀しみに暮れる家族のもとへ報道陣が押し寄せる。正しいことを伝えねば、報道陣としての責務を果たさねば、そう正義を振りかざして哀しむ家族に押し寄せる彼らは人間として正しかったのか。
『人間失格』とは命題のようにも皮肉のようにも感じる作品だった。
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