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企業再生メモランダム・第32回 第9回勉強会 まとめ 前編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第16回 勉強会について」に記載したとおり、私は、対象会社の中堅スタッフに言われて、希望するスタッフ向けに勉強会を開始しました。

メモの24枚目は9年前に作成した「第9回勉強会 まとめ」と題したメモです。

今回は長くなってしまったので、前編後編の2つに分けて記載します。

メモの背景

「第16回 勉強会について」でも記載しましたが、この勉強会は、中堅スタッフが私に対して発した以下の言葉からスタートしたものです。

「自分は仕事に対して一生懸命やる気があるのだけれど、マネジメント・スキルが不足しているから、いろいろと実現できないのだと思う。マネジメント・スキルを教えて欲しい。」

勉強会には、やる気あるスタッフの多くが自主的に参加してくれました。その中のスタッフには、後に企業再生において中核になるメンバーが多数含まれていました。そのため、今でも、この勉強会はやって良かったと心から思っています。

ただ、この中堅スタッフの言葉について、私は大きな勘違いをしていました。

今の私ならば、この中堅スタッフの言葉を聞いても、もう少しだけ斜に構えて、少なくとも額面通りには受け取らないでしょう。当時の私の職業的懐疑心はまだまだ甘いものだったと反省せざるを得ません。

何を言いたいかというと、「自分は仕事に対して一生懸命やる気があるのだけれど、マネジメント・スキルが不足しているから、いろいろと実現できない」という言葉は、一般的な基準・「普通の会社」の基準から考えると客観的事実に反するのです。(もちろん、「マネジメント・スキルが不足」については程度の問題がありますが、)その方の極めて主観的なコメントなのです。

冷静になって考えれば、「やる気」があれば、マネジメント・スキルぐらい身に着けるはずなのです。

そして、「やる気」があれば、いろいろと実現できるのです。

新書ならば500円程度の金額を出せば購入することができます。それで基礎的なマネジメント・スキルは身に着けることできます。ハードカバーの専門書でも3,000円から5,000円ぐらいでしょうか。もしかすると、中古本ならば、AMAZONで探せば、古本の価格は1円で、プラス送料で合計では500円以内に収まるかもしれません。インターネットがあれば、タダで、マネジメント・スキルに関する情報にいくらでもアクセスすることができます。

厳しい言い方をすれば、それをやらない程度の「やる気」しかないのです。

これは、その人にとっては大変なことなのかもしれませんが、世間一般の基準からすると「やる気」とは評価されないわけです。

人間は弱いもので、自分の責任ではなく、いつも何かの責任にしてしまいます。自分と向き合って、前を向いて、歯を食いしばって努力できるかが大事です。

この勉強会を通じて、私は、マネジメント・スキルではなく、全てにおいて根本的な論点である「やる気」をどう起こさせるか、リーダーシップ・スキルが大事であることに気付かされました。

対象会社のスタッフに、本当に必要なスキルは、リーダーシップだったのです。

メモ「第9回勉強会 まとめ」の中身

1.今、あなたが対象会社の経営者だったら、何を行いますか?

第1回と同じ質問を行います。今、あなたが対象会社の経営者だったら、具体的に何を行いますか?

2.大事なことは経営者の目線

(1)会社のためになっていますか?

会社は組織が一丸となって取り組むからこそ大きな力を発揮します。そのため、経営にあたり、指揮命令を下す経営者や管理職の考え方である経営者の目線を持つことは、会社組織に所属する全ての人間にとって重要になってきます。

経営者の仕事とは、会社を存続発展させることです。つまり、私たち一人ひとりも常に、自分の仕事が「会社のためになっているのか?」を自問自答し、会社を存続発展させることの一助となっているかを考えなければなりません。

(2)主体性を持って仕事に取り組む

経営者の仕事とは、会社を存続発展させることです。経営者は、評論家ではなく、行動するリーダーです。会社の問題は自分の問題であると主体性を持って取り組まなければ、会社を存続発展させることはできません。

今まで対象会社の多くのスタッフは日常業務を(ただ漫然と)こなすことを中心に業務を行っていましたが、これからは方針の決定や戦略の立案、日常業務の改善など中長期的に重要である業務の比重を増やしていかなければなりません。

今後は、① 自ら考えて行動するという主体性、② 考えを部下のスタッフやパート・アルバイトに対して伝えて行動をさせるというリーダーシップが重要になります。

(3)組織における自分の役割は何か?

第1回「経営とは?」において説明したとおり、経営スキルとマネジメント・スキルには断絶があります。マネジメント・スキルを身につけると題した勉強会を9回に渡り開催してきたわけですが、現時点での組織における自分の役割についても考えてもらいたいと思います。

本来あるべき会社の姿としては、経営者や管理職などの上司はマネジメント・スキルを身につけて素晴らしい経営を行い、一般スタッフなどの部下は現場スキルを活用して経営に沿った素晴らしいオペレーションを行っていくことが求められています。

これが会社組織における役割分担であり、単純に経営者や管理職など上司やマネジメント・スキルを身に付けた人が偉いわけではありません。

会社組織における役割を真っ当に果たした人こそが称賛に値するのです。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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