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企業再生メモランダム・第50回 変革のとき

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの40枚目は7年前に作成した「変革のとき」と題したメモです。

メモの背景

今までは現場スタッフの不安が社長の耳に入ると、必ずと言ってよいほど、経営改革に横やりが入っていました。

しかし、このメモを作成した時期には、反対する社長もいなくなり、対象会社では経営改革が急ピッチに進むようになっていました。

「第40回 日常業務を行うだけでは会社は変えられない」でも記載をしましたが、会社組織の20%がやる気になってくれれば、特段これといってポリシーのない60%の人たちはそれに追従するようになります。そうなると加速度をつけて、組織と人の変化が進みます。

そして、最後の残りの20%ぐらいの人が、変われずに会社から抜けていってしまうのも、このぐらいのタイミングなのです。

この時期あたりから人材の回転も早くなり、変化に抵抗していた人は居心地が悪くなり始めたのか、転職が厳しいはずの年齢の中堅社員ですら、離職する人が出てきていました。

そして、その人の代わりに新たに中途入社してくれる人は、スキルも高く、モチベーションも高く、会社全体としては、ますますケイパビリティの獲得が進んでいきました。

ケイパビリティさえ獲得でければ、ロジカルに正しい、合理的な経営戦略を実行することができます。

そのため、対象会社では、今までは意思決定できなかったようなシステム導入や設備投資、価格改定など、経営上でも利益にインパクトある大きな意思決定をすることできるようになっていました。

まさに組織と人が変わろうとしている機運を感じていました。私は、歯車がかみ合って、ものごとが一気に前に進むような感触を覚えていました。

対象会社は企業再生の苦しい時期を抜けて、組織が一体感を持って、昇っていく感覚を楽しめる時期に差し掛かっていました。

私は、ターンアラウンドマネージャーとして、ここで加速度をつけて、企業文化を一気呵成に変えたいと考えていました。

メモ「変革のとき」の中身

対象会社は変革のときを迎えています。

何を変革しなければならないのかというと、それはスタッフ一人ひとりの意識・行動です。

会社は、スタッフ一人ひとりが集まって、みんなで会社を作っている・動かしています。

そのため、スタッフ一人ひとりの意識・行動が変わることは、つまり企業文化を改変すると言うことができるでしょう。

対象会社は今までの企業文化を改変しなければなりません。

改めて考えてみましょう。過去に対象会社が倒産の危機に何度も直面している理由ですが、労働組合の問題でも、前の経営者の問題でもありません。それは私たちスタッフ一人ひとりの弱さが原因です。

私たちはみな、お客様に喜ばれたい、会社を良くしたい、仲間に認められたい・・・など「善の気持ち」を持っていると思います。しかし、例えば、目の前の仕事よりメンドクサイが勝ってしまったり、会社にとって良い提案にもかかわらず上司に否定されたらそれですぐに諦めてしまったりと自分の弱い部分が、「善の気持ち」を邪魔します。

今の対象会社の企業文化は、① 会社のためより個人のため、② 主体性の欠如(常に他人のせい、まるで評論家、誰かがやってくれる、指示待ち)、③ 上司に逆らわない、自社に興味を持たない、事なかれ主義の官僚主義(見て見ぬふり)などであふれてしまっています。

このような企業文化を変えるために、まずは自分自身が変わらなければなりません。

そのために会社は、より良いルール・仕組みを作ったり、時には叱咤激励をしたりして、スタッフ全員の変化・成長をサポートしたいと思います。

このタイミングで今一度、「弱い自分」と向き合って、人として正しいこと、会社として正しいことをやるようにしましょう!

お客様のために目の前の仕事を一生懸命やるなど当たり前のことを行えば利益は必ずついてきます。

ぜひとも新しいことにチャレンジしましょう!

大切なのは、現状維持に甘んじず、世のため人のためにビジョンに向かって頑張ることです。その一歩が踏み出せれば、視点が変わり、もっと自分たちの仕事に誇りとやりがいを見つけることができると思います。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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