企業再生メモランダム・第40回 日常業務を行うだけでは会社は変えられない
「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。
メモの31枚目は8年前に作成した「日常業務を行うだけでは会社は変えられない」と題したメモです。
タイトルだけ考えれば当たり前なのですが、いかに日本のサラリーマンの多くの方が、会社の変化を願いながらも、日々同じことを繰り返しているかについてはちゃんと考えなければならないと思います。
会社という仕組みの中では、通常スタッフが行う日常業務は決められています。一日の大半の時間はその仕組みをまわすために費やされます。そのため、プラスαで、やる気を出して臨まないと、多くの場合、会社は変わりません。
会社を変えたいと願うならば、あなたのリーダーシップが求められているのです。
メモの背景
組織や人を変えるのは、そう簡単ではありません。
企業再生をしていると、やる気ある幹部社員から、「そのスタッフには3回も話をしました。」と報告を受けることがあるのですが、「人を見て法を説けです。回数ではないのです。その人が分かるまで、繰り返し繰り返し、あきらめずに話をしてください。」とアドバイスすることがあります。
皆さんもそうだと思いますし、これは私もそうなのですが、他人から少し言われたからといって、簡単に自分は変えられないのです。
山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば、人は動かじ」の世界です。
こうやってメモを振り返ってみると、対象会社の企業再生から2年経っても、まだ同じようなことを繰り返し説明しており、私がいかに粘り強くスタッフと向き合って同じ話をしていたかが見て取れます。
この頃になると、対象会社は東日本大震災の影響もあって財政状態は相変わらず苦しい状態ではありましたが、経営成績は徐々に立ち上がってきていて、一部のスタッフは「自分たちでもできるんじゃないか。」と自信をつけてくれて、グッドサイクルの一周目ぐらいなイメージだったように思います。
私の拙いながら企業再生の経験では、会社組織の20%がやる気になってくれれば、特段これといってポリシーのない60%の人たちはそれに追従するようになります。そうなると加速度をつけて、組織と人の変化が進みます。
最後の残りの20%ぐらいの人が、変われずに会社から抜けていってしまうのも、このぐらいのタイミングのように思います。
幼い頃にあったような、「私も遊びたいから、遊びの輪の中に入れて。」と素直に言えるかどうか。同じようなことが対象会社で起こるのです。
ただ一つ、当たり前ですが、会社ですから、これは子どもに起こることではなく、年齢が40代であったり50代であったりする中堅スタッフや幹部社員が向き合わなければならないことなのです。
人によっては、過去に、やらないことを是としていたり、間違った旗振りをしていたりした人たちもいます。
この時期は、そういった人たちがプライドを捨てて、「私もみんなと一緒になって、会社のためになることがしたい!」と言えるかどうか。それが試されるタイミングでした。
メモ「日常業務を行うだけでは会社は変えられない」の中身
1.具体的にどのように変わればいいのか?
「ベストを尽くすということ」、「現状と取り巻く環境」や「いつもと同じ仕事をしない」については理解してもらえたと思います。
では、具体的にどのように変わればいいのでしょうか?
答えは簡単です。一人一人の社員が、経営者のつもりで、お金や会社組織と向き合い、何事も決断・実行すれば良いのです。
2.「私たちは経営者の集団である」
今の日常業務を行った結果、世の中の急激な変化に適応できずに危機に直面しているわけですから、今までと同じような日常業務を行うだけでは会社を変えることはできません。
つまり、決められた仕事をこなしているだけでは生き残ることができません。
もし自分が経営者ならば具体的にどのような指示を出すでしょうか?
「もっと話題になって、お客様が集まるように○○をしよう」、「もっと売上が増えるように○○をしよう」、「もっと業務効率があがるように○○をしよう」、「もっと経費が減るように○○をしよう」・・・と指示を出すはずです。
今、私たちには、このように日常業務のプラスαとして、経営者目線で日常業務を変えることや日常業務以外の仕事を行うことが求められています。
3.「Yes we can.」
対象会社は社会性のある素晴らしい事業を展開しています。歴史もあり、集客力もあり、地域に欠かせない存在だと思います。
私たち一人一人の力は小さいかもしれませんが、みんなが力を合せて、この事業を展開すれば大きなエネルギーになります。実際に一昨年に行った全社的な経費削減に関しても1億円の経費削減を達成しています。
4.「スピード!スピード!スピード!」
変化に対応するにはスピードが肝心です。変化に適応できずに、会社がオカシクなってしまっては元も子もありません。
なぜ大手優良企業の残業が多いでしょうか?他社に先んじて対応するから利益が多いのです。
会社を守る、社員の人生を安定させるという観点からは対象会社は今が勝負どころです。一人ひとりが、一生懸命努力して変わって、この激動の時代を生き抜きましょう!
※ 本連載は事実を元にしたフィクションです。
株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。
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