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企業再生メモランダム・第3回 改革案骨子 後編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第2回 改革案骨子 前編」では、メモを作成した背景について記載をさせてもらいましたが、後編では、対象会社の幹部社員との打ち合わせのために作成したメモである「改革案骨子」の中身をご紹介したいと思います。

なお、この「改革案骨子」ですが、企業再生が進んでから、一部の幹部社員から言われて明らかになるのですが、表現にカタカナ(専門用語)が多く、発表時はよく分からなかったという方もいたそうでした。地方の赤字企業のマネジメント・スキルのレベルを読み違えた私の経験不足でした。

メモ「改革案骨子」の中身

1.目  標

会社には、お客様、スタッフ、株主、協力企業及び地域社会など様々なステークホルダーがいますが、まずは赤字体質を脱し、会社を倒産させないように、スタッフの生活基盤を守るため「スタッフの、スタッフによる、スタッフのための経営」を目指します。

2.コンセプト

(1)全社一体となって、「経営の安定化」を目指します。

(2)「経営の安定化」のために、引き続き、顧客第一を堅持します

(3)「経営の安定化」のために、科学的な経営を取り入れます。

3.まとめ

会社改革にあたり、経営陣はもちろん、スタッフをしっかりと巻き込みつつ、① 自社の正確な問題点の現状把握を行ったうえで、② 経営理念を今一度明確化し、③ お客様視点で「戦略再構築」と「現場の改善」を行い、④ それを組織と管理会計でフォローするというマネジメントサイクルのインフラ作りを行い、⑤ 数値計画の策定を行います。

これにより経営成績の向上と企業文化の刷新を目指します。

4.改革案

(1)自社の正確な問題点の現状把握(自社分析)

特に幹部社員を重点的に、全スタッフに対して、アンケートやヒヤリングを実施します。

これによって、全スタッフに、自社の現状認識を共通化させ、自社の経営危機に対する危機感を持たせます。

(2)経営理念の再定義

経営陣が中心となって経営理念、ビジョンを策定し、それらを社内会議、会社資料やホームページなど社内外のコミュニケーションで発信し、将来像を全スタッフ、お客様や社会に対して提示します。

会社の方向性を提示することにより、スタッフの仕事への動機(インセンティブ)や行動規範の向上を図ります。

(3)お客様視点での「戦略再構築」と「現場の改善」

① CFTの組成

改革チームの責任者の下、中間管理職(ミドル・マネジメント)を中心に、部門横断組織(クロス・ファンクショナル・チーム(以下「CFT」といいます。))を組成します。

このCFTを通じて、部門横断的なテーマについて検討し、経営陣に対して解決策を提案するとともに、経営陣からのトップダウンではなく、スタッフを巻き込んだ改革を行い、企業文化の変革を図ります。

②「戦略再構築」

持続的な競争優位性を確立する全社戦略や機能別戦略などアクション・プランの設定をします。

③「現場の改善」

再構築した戦略に則したオペレーションを実現します。

プロフィット・センターとコスト・センターを明確化し、業務改善を図ります。前者は営業戦略に基づき、後者は機能別戦略に基づき、コスト削減と業務効率の追求を目標にオペレーションを実現します。

(4)マネジメントサイクルのインフラ作り

パフォーマンスを持続的に改善できる組織へと変革を遂げるため、意識改革も含めたインフラ作りが必要となります。

① 組織の最適化

再構築した戦略に則した組織の構築をします。

組織ごとに戦略目標の成果を定量的に測定する指標であるKPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)を明確にし、改革の進捗チェック機能を導入します。

② マネジメントシステムの整備(管理会計)

再構築した戦略に則した管理会計システムの構築をします。

(5)数値目標の策定

経営計画と整合性のある全社的な目標値の策定をします。また、数値目標からの経営計画のチェックをします。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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