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企業再生メモランダム・第46回 サーバント・リーダーシップ

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの36枚目は7年前に作成した「サーバント・リーダーシップ」と題したメモです。

メモはロバート・K・グリーンリーフの名著「サーバントリーダーシップ」からの抜粋です。 

メモの背景

この時期の私は、それこそリーダーシップに関するありとあらゆる本を読んだように思います。

別連載の「リーダーと考える経営の現場」「リーダーシップ往復書簡」でも記載をしているとおり、今ではリーダーシップの考え方を広めることは、私のライフワークと言えるものにまでなりました。

「リーダーと考える経営の現場・第14回 リーダーシップの旅 前半」でも記載をしていますが、20代前半の頃の私は、会社から与えられた組織の地位や権限など「パワー」を用いて、常に最短距離で、効率よく合理的に売上・利益を増大させて、経営を推し進めることが仕事だと考えていました。

それを、この対象会社の企業再生を通じて、マネジメントではなく、リーダーシップという考え方に基づいて見える景色を知ったのです。

そこには職務権限も業務分掌もない、組織も立場も関係のないフラットな人と人の関係しかなく、それは全ての人に可能性のある素晴らしい景色でした。

自分にリーダーシップがあれば、どのような立場であれ、世の中を変えることができます。それは役職が下であっても、上司を、株主を、それこそ利害関係のない人だって動かすことができるのです。

リーダーとは、暗闇の中、集団の先頭で、たいまつを持って、フォロワーを率いて進む存在です。

私は、少なくとも、この対象会社の企業再生において、スタッフみんなの不安を抱えられるようなリーダーになりたいと考えていました。

メモ「サーバント・リーダーシップ」の中身

1.高い志や社会への奉仕の心を持って、スケールの大きなミッションやビジョンに導かれながらも、その実現に邁進するフォロワーに対して、リーダーが尽くすのが奉仕型リーダーシップの考え方であり、その実践が重要だ。

2.一見、リーダーっぽくない、むしろその対極のように思われるサーバントこそが、実現を望む社会的なミッションを奉仕の名のもとに掲げ、自分についてくる人(フォロワー)たちに尽くす。それがサーバント・リーダーの姿だ。

3.・・・リーダーもフォロワーも、ともにフォロワーだと言える。その理由は何か。両者とも根本的な原理にならい、合意に達して描いた共通のビジョンに従っている。両者とも同じ価値観を持っているし、互いの信頼を次第に深めていく。道徳的権限とは、互いに高め合い、分かち合うものなのだ。

4.道徳的権限(良心)の四つの特徴
(1)道徳的権限または良心の本質は、犠牲である。
(2)良心によって、われわれは身を捧げるに足る大義の一部になろうという気にさせられる。
(3)目的と手段は切り離せないということが、良心からわかる。
(4)良心によって、人と人とが結びつく世界へ導かれる。

5.形式的な権力を早い段階で使ってしまう人は、道徳的権限が弱まることになる。力を外部から借りてくると、三つの場に弱さを形成してしまう。ひとつは自分自身。なぜなら、道徳的権限を高めていないからである。ふたつ目は他者。というのも、われわれが使う形式的権限に、共依存するようになるからだ。そして最後は、お互いの関係の質。真に開かれた、信頼感のある関係を絶対に作れなくなるからである。

6.「私は本当に耳を傾けているのか。コミュニケーションをとりたい相手の話に耳を傾けているか。相手と対面したときには、その人を理解したいという基本的態度をとっているだろうか」

7.サーバントはどんなときでも受け入れ、共感し、決して拒絶しない。サーバント・リーダーはいつでも人に共感し、常に受け入れる。だが、ある人の努力やパフォーマンスなどは、その成果に応じて受け入れを拒絶する場合もある。

8.リーダーには、知ることができないものを感じ取り、予見できないものを予見する能力が必要なのである。・・・リーダーは、そのリーダーシップを受け入れる者たちよりも、未知のことに対峙する自信を強化しなければならない。

9.説得によるリーダーシップは、威圧ではなく、本人の自覚によって人を変えられるところに利点がある。

10.喜びとは、世の中の良い部分も悪い部分もありのままに受け入れ、そこに少し平穏さをつけ加えて、その良い部分と自分を一体化する人のものだ。・・・「人は誰でも、自分の苦しみと喜びを土台にして、みんなのために成長するのだ」

11.本当の敵とは、善良で知的で、重要な立場にある人々が不明瞭な考えを持っていることであり、彼らが人を導けないこと、そしてサーバント・リーダーに従わないことだ。これらの人々のあまりに多くが、批評家や専門家で終わっている。・・・つまり敵とは、導く能力があるのに導かない者、あるいは、生まれながらの強靭なサーバントでありながらサーバント以外の人に従うことを選んだ者だ。・・・組織の質の危機・・・は「悪い」人間による破壊行為からではなく、「良い」人間が仕事をおろそかにしたことから起きた危機だ。

12.トラスティはその法的権力を使って情報を入手して、監視し、運営に用いるコントロールする。・・・トラスティは最高権力を保持するが、その権力を運営には使わない。だが、権力の使用には責任を持っているのだ。・・・トラスティは、組織におけるほぼ絶対的な権力を保持しているが、その権力を運営に使うのは、めったにないような緊急時のみで、できれば行使しないほうが望ましい。トラスティは経営陣やスタッフに運営面で権力を行使させるが、その行使に関しては、資材や金を使う場合と同様に厳しい態度で責任を負わなければならない。

13.組織にとって本当に正当化されることはただひとつ、組織内の人々の資質が、組織に属していない場合よりも優れたものになることだ。

14.権力は人を傷つけるためではなく、人に奉仕するためにあると主張する唯一の集団がトラスティなのだ。

15.仕事のために人間が存在し、また、人間のために仕事が存在する。

16.人は成長を経験するとき、モチベーションを自ら生み出すのだ。

17.・・・働き手の人生が実り豊かなものとなるために仕事が存在する・・・社員の人生の目的が労働によって達成されること、それが仕事の存在意義の少なくとも半分を占めている

18.重要なコンセプトは、仕事は社員のものだということです。

19.複雑に<組織>された社会で強く人の心を動かすには信念を持って振る舞わなくてはならない

20.感謝の気持ちを伝えられるのは成熟した者の才能だ。

21.社会を変革すること、美徳と正義、自分自身の信念に従って、より良い世界へ導いていくことを自分の責務だと心から信じるなら、今からでも自身の生き方を開拓する準備に取り掛からねばなりません。生き方こそ、自分の役割を果たそうという理想を叶えてくれるのです。

22.気づきは、何か重要で心をかき乱されるようなものが自分とその象徴との間で発達するままに任せ、求めることによってではなく、じっと待つことによって現れてくる。

23.「<組織>内をくまなく回って、社員に自分たちのビジョンを語ってやる。権限を分配する自分たちの責務について語ってやる。すると、彼らは所属部門がどこだろうと、その業務に強い意気込みを感じるようになる。それから、信用について、透明性について、政治的な駆け引きの排除について、秘密裏にではなく公に困難な問題に取り組むことについて語ってやるんだ。驚くべきことに・・・『そういったことに興味はありません』なんて誰ひとり、口にしない。それどころか、ほとんどの者がこうした創造的な職場環境に対する考え方に魅力を感じている」

24.最も意義深い目標を立てたとき、人は自分のやるべきことをなんとなく直感し、肌で感じたり、何かの声が聞こえたりする。「自分がやるべきことをする」のと、「人に言われてする」ことの違いをわれわれはよく知っている。

25.「われわれは、われわれが創ろうとしている変化そのものになる必要がある」。それは能力開発の原則で、「向こうにではなく、ここに」で具現化している。そのような変化が「今ここで」、われわれの中で起こらないかぎり、<組織>や社会に変化を期待する余地はない。

26.「サーバント・リーダーとは、第一に奉仕する人だ。それは自然な感情として湧き上がり、人に奉仕したい、まず奉仕したいと思わせる。権力、影響力、名声、富を欲したりはしない」。

27.真のコミットメントは、実際にほかの人のための選択を生み出すのだ。

28.サーバント・リーダーシップの厳しい判断基準を思い出す。・・・「その人のまわりの人々が成長していますか」

29.リーダーシップとは「人間社会の未来を方向づける、人間社会の能力だ」

30.「上司に答えがわからないなら、おれたちが行動に出る準備をしたほうがいい。待ち望む相手なんていないだろう?」。・・・「私たちこそ、自分たちが待ち望んでいたリーダーだ」

31.真のリーダーシップとは、きわめて個人的なものでありながら、本質的には集団的なものなのだ。

32.本社スタッフ部門が現場に喜ばれている会社では、サーバント・リーダー的になるのがいいのではないか

33.フォロワーに対して、いかにもリーダーらしく偉そうに振る舞うと、リーダーシップを失い、逆に、フォロワーに対してサーバントとして尽くすほうがかえってみんなに慕われ信頼されて持続するリーダーとなる。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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