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企業再生メモランダム・第26回 第4回勉強会 組織と戦略 前編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第16回 勉強会について」に記載したとおり、私は、対象会社の中堅スタッフに言われて、希望するスタッフ向けに勉強会を開始しました。

メモの20枚目は9年前に作成した「第4回勉強会 組織と戦略」と題したメモです。

今回は長くなってしまったので、前編後編の2つに分けて記載します。

メモの背景

経営共創基盤(IGPI)の冨山和彦さんの本に「会社は頭から腐る-あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」」というタイトルの本があります。

今まで私も約15年にわたり会社経営の仕事に携わらせていただいて思うのですが、「会社は頭から腐る」という言葉に、実にそのとおりだと深く頷かざるを得ません。

末端のスタッフが不祥事を起こしたり、取引先との間でトラブルがあったり、このようなことはトップが襟を正している会社ならば不思議と起きないのです。逆を言えば、組織で何かしらの問題が生じるということは、それはやはりトップの問題なのです。

私が見てきた企業再生の現場では、まるで「愚者の楽園」を見ているかのような会社をいくつか見てきたように思います。

財務状況が悪くて、このままいくと資金ショートしてしまうという状況にも関わらず、自分の利益追求ばかりするトップ、イエスマンで固められた幹部社員。まともなスタッフは既におらず、いるのは会社の明日については何も考えない派遣社員・業務委託と若手スタッフ。協力会社は低品質で高いフィーを請求し、もしかすると社長自らがキックバックを裏でもらっているのかなと思うような不透明な意思決定。

これで、そこそこ当人たちは満足してしまう状況。まさに「愚者の楽園」だと思いました。

対象会社でも、多くの歴代の社長が、会社のために働かないという不幸が続いていました。

これも赤字会社の特徴の一つだと思いますが、こういった会社は、代々まともじゃない人が社長になっていくものです。

理由は、一度でも悪い人間が社長の座について権勢を振るうと、残念ながら、一定数まともな幹部社員が辞めてしまったりパージされてしまったりするからだと思います。

そうなると、その悪い社長が院政を敷くために太鼓持ちの人物が社長になって社長がお飾りになってしまったり、悪い社長よりもスケールダウンした小悪党の社長が新たに社長になったりと、負の連鎖が続くことはよくあるように思います。

組織がまともであれば自浄作用が働くのですが、頭が腐っていると、その腐敗は組織そのものをおかしくするのです。

もし腐った頭をそのままに、下から革命を起こすのであれば、それこそやるか・やられるかのサラリーマン人生を賭けた戦いになってしまいます。

対象会社では、企業再生が始まった当初から、どのように組織を強くするか、どのように組織としての自浄作用を獲得できるが課題となっていました。

メモ「第4回勉強会 組織と戦略」の中身

1.組織は戦略に従う

有名な経営学者アルフレッド・チャンドラーの言葉に「組織形態は戦略に従う」というものがあります。会社を存続発展させるためには利益が必要であり、そのためには戦略立案が不可欠です。その戦略を実現するためには、戦略実行のための最適な組織を作る必要があります。

組織は変革を嫌うという慣性を持っているため、通常、組織変革は戦略が転換して既存の組織が行き詰まってから始まります。まずは業務遂行の現実があり、それを後追いする形で組織が適応していくのです。

2.戦略実行のために最適な組織ができているか? 

戦略が転換する場合、それに伴って新しい仕事が発生したり業務内容が変更したりします。スムーズな戦略実行のためには、① 戦略の実現のための仕事の把握、② 組織としての役割分担が必要です。

(1)仕事の範囲の決定

戦略の実行をするうえで、組織が取り組むべき仕事をヌケなくモレなく把握する必要があります。本来ならば仕事として取り組むべき業務が現在仕事として認識されていない場合や部署間のはざまで宙ぶらりんになってしまっている仕事などは注意する必要があります。

(2)業務の範囲の決定(業務分掌)

(1)で決定した仕事を、組織内において、それぞれ担当を決定する必要があります。

(3)管理職の権限の決定(職務権限)

管理職と一般スタッフの職務権限を明確にする必要があります。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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