地獄のひすい

創作小説と日記的なものを載せていこうと思います。

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  • 短編小説まとめ

    私、ひすいがかいた小話をまとめております。

最近の記事

日刊オトナリさん

 まだスマートフォンの普及が低く、ストリーミングサービスもまだまだこれから普及していく、巣ごもり需要なんて言葉もなかった時代。  店舗型のレンタルサービスでCDやVHS、DVDを借りにお店へ足繁く通っていた。歌詞カードのついていないCDはネットなどで歌詞を探してノートに書いていた。  ある年、母と一緒に好んで見ていたロボットアニメのエンディングテーマの歌を歌いたいと母が言うので、アニメ版はノートに、フル版はネットの海から見つけて印刷して歌詞カードを渡した。それはそれは子供が

    • 紙一重の違い

       秋の陽気に照らされた今日に久しぶりに友人と喫茶店に行くことになった。私から誘わないと遊ばない友人から会う約束を持ち出されることはめずらしい。私は日差しが少し暖かかったため、アイスにしたレモンティーをストローで吸っていた。 「最近、寝起きにお香の匂いがしたことがあって」 ん?とストローから口を離して視線を上げた先の彼女は深刻そうな表情のまま続けた。 「寝る前にアロマとか香水もつけてなかったのに、変な話だよね。」 と、苦い笑みを浮かべながらミルクも入っていないホットコーヒーに

      • 残夜のギロチン

         『いっそ首を落としてしまおうか。』  寝付けない日に限ってグロテスクな事を考えてしまう。  もし、この重たい頭が身体から離れて、もしくは夜にだけギロチンが現れて首を斬り落としてくれたり、方法は何でも構わないから胴体と離れて布団で眠ることができたら幸せな気持ちで眠れるのではないか。この重たい肩こりも、脳内で繰り広げられる悪夢に魘される事もなく、幸せに眠ることができるのではないだろうか。  『誰か、誰か!私が目を閉じている間に首を刎ねてくれないか!』  幾度の夜を、胸元で

        • 品名:愛情

            「なにか欲しいものはある?」  母が買い物に行く際に聞かれるこの言葉に私は「愛情が欲しい」と、答える。  買える”物”ではないことは理解している。だが、それでも口にしてしまうのはどうしてか。   自分の事を考えてくれている時間が欲しい。  欲求だ。  私の中では常に欲しいものとして一番最初に思いつくし、物品よりも自価値の高いものと捉えている。きっとある程度の生活水準が整っていないと言えない言葉なのかもしれない。もしくは年齢を重ねたことで価値観が変化したのかもしれない

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        • 短編小説まとめ
          6本

        記事

          湯船

           夕暮れが早くなったと体で感じるようになった冬隣。手を洗う水も一頻り冷たくなり、皿を洗う手は赤くなってきた。 ”今日は早めに湯に浸かろう”  私は髪から足先まで一通り洗った体を湯船につけた。  我が家はシャワーというものを備えていない、築40年超えの一軒家が横に連なったような古いアパートだ。そのため、風呂に入る前は必ず体を洗ってからでないと次の人が入るのを躊躇うのだ。  まぁ、それも私くらいのものだけど。 数年ぶりに買ったか貰ったか忘れた温泉風の入浴剤を入れて、さぁ、一息

          味噌汁

          今夜も寝付けない夜が来た。 僕は相変わらず午前二時を過ぎたころ睡眠薬を飲む。 だが、モニターを乗せたデスクの上には下に乗せるほどの麦茶は残っていなかった。 二錠ほど唇で挟んだそれを流し込むために、二階のパソコンのそばから一階の台所に降りる。 ふと思い出したのだが、前日から体調が優れなかった。 それなのにこの昼に長らく仲良くしている友人に会ってきたのだ。疲労か、気疲れか、わからないまま沸騰しそうな体に水を与えて過ごした一日だと思う。 そんな出来事を振り返りながらも僕の息は