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「自分の人生をドライブしている感覚がある。」ラグジュアリー空間デザインのプロフェッショナルチームから水星へ。未知数な課題の中で、個性を磨く挑戦

株式会社水星に新しく入社した社員にインタビューをする入社エントリ。今回紹介するのは、大手空間デザイン会社から今年4月に水星へ転職した、プロデュース事業部の藤原直矢さん。前職では、社内の空間デザインのスペシャリストチームに所属し国内を代表する様々なラグジュアリーホテルを手掛けるなど、商環境デザインの第一線で活躍していた中、キャリアを考え直すことになった背景には、何があったのでしょうか。水星にジョイン後は、王道ではないことの面白さも逆境も全力で楽しみながら、プロデューサーとしてますます腕を磨いている藤原さんに、お話をうかがいました。

プロフィール:藤原直矢
1989年神戸生まれ。明石高専建築学科から千葉大学建築学科に3年次編入、その後、首都大学東京都市環境科学研究科建築学域へ進学してさらに建築学を学ぶ。卒業後、大手空間デザイン会社に入社し、デザイナーとして様々なプロジェクトにて空間プロデュースを手がける。2024年4月、株式会社水星へ参画。プロデュース事業部で新規開業施設を担当する。


DIY精神と空間づくりの探求 原点はクリエイターシェアハウス

― まずは、藤原さんが建築の世界へ進んだきっかけ、そして、建築から空間デザインへと興味を広げ、前職へ入社するまでの経緯について教えてください。

親戚が宮大工であったり、父の実家が町工場を営んでいたりとものづくりが身近にあった幼少期を過ごしたことから、自然と建築領域に興味を持ちました。その後、高専の建築科に進学してから大学院を卒業するまで、ずっと建築を学んできました

デザインやアートにも興味を持ったきっかけは、千葉大学時代、遊びに行った先輩のシェアハウスのパーティーでした。そこで出会った美大の先輩に声をかけてもらい、学生主体の展示会の運営に携わる中で、デザインの道を志すようになりました。

大学院時代から10年間はシェアハウス生活をしており、計4軒に住みました。中でも2015~2018年に住んだ家は、空き家になっていた一軒家を借り、入居者たちとDIYしながら生活空間を作っていったので、思い入れの深い場所です。そのシェアハウスでは、頻繁にワークショップやイベントを開催しており、そこで様々な職業の方と知り合ったことが、現在までの自分の価値観の骨格を作り上げてくれたように思います。

DIYしたシェアハウス

今ではシェアハウスやコワーキングスペースなどが当たり前になって久しいですが、当時はその「空間を共有する」という価値観や概念が注目され始めた頃で、業界では、ちょうど「半建築」を提唱しているスキーマ建築計画の長坂常さんなどが登場した時代でした。そのような時代背景や自身の経験の中で、僕は、物理的な空間というよりも、“場づくり”という概念的な空間作りに意識を向けるようになりました

大学院進学後は神戸六甲ミーツ・アートをはじめ様々なコンペに挑戦していました。そこで、いくつかの賞や実作の機会に恵まれ、大手空間デザイン会社への入社に繋がりました

東京オリンピックから温泉街の装飾まで様々なジャンルのプロジェクトを経験

― 大学、大学院とインディペンデントな活動を経た後、意匠設計・内装設計の業界最大手の乃村工藝社に入社という経歴をたどられていますが、入社後どのような仕事をされていたのでしょうか。

入社1年目はコンペ案件を中心に取り組み、2〜3年目は、大小・公民・ジャンル問わず多種多様な案件を担当していました。規模の大きいものでは、例えば、東京オリンピックに向けたプロジェクト、市議会にも出席し公共案件の進め方を学んだ某世界遺産の企画展、某グローバルメーカーの歴史記念館の案件など。海外案件では、資料の作り方もプレゼンツールも日本と全然違うことに、最初は試行錯誤していました。プログラミングを活かした某ハイブランドのショップデザインでは、初めてアワードを受賞しました。

比較的規模が小さい案件は領域に囚われず若手が創意工夫をしてやるという体育会系なカルチャーもあり、大きな案件の合間を縫って、細々とした案件もいくつも経験しました。例えば、とある清掃工場では見学コースの設計だけでなくキャラクターのデザインもしたり、妖怪ウォッチが流行っていた頃に任された妖怪展では漫画・アニメ業界についての知識も身につけたり…。

中でも忘れもしないのが、某地方都市の温泉街のイルミネーション案件です。「友達でもいいから、イルミネーションのデザイン考えられる人連れて行って、現場の設営指揮してきて」と、突然20万円の予算(現場予算別)を渡され、なんとか友人に頼み込んで2人で大雪の中現場の電気屋さんにイメージを伝えながら設営をやりました(笑)。

規模やジャンルのなどどんな前提条件の案件でも無我夢中で3年間取り組んだおかげで、自分が作れる空間の持ち駒も増やすことができたと思います。

― オリンピックのような国規模の事業に携わりながら、一方では地方温泉地でイルミネーションの飾り付けをしていると…藤原さんのこの度量の広さや手数の多さの理由がわかった気がします。
その後、4年目で、退職されるまで在籍されていたラグジュアリー空間に特化したデザインチームに異動されています。デザインのスペシャリストチーム、花形組織の印象を受けますが、どの様な経緯で異動が決まったのでしょうか。

当時の部署は内装設計よりも展示や情報設計の仕事が多く、空間デザインをしたいという焦りがあり、会社の人にも相談をしていました。入社してから3年間、色々なジャンルの案件の経験ができている一方、空間設計以外の業務に割く時間が多く、自分が本当にやりたい仕事ができているのかと言われると、自信を持って頷けない状態が、当時あったように思います。異動メンバーに選んでもらえたのは、そのような撲の思いを汲んでもらったからなのかもしれません。

学生時代からずっとDIY的に泥臭くやってきたところから、いきなりラグジュアリーの世界に飛び込んだので、「エレガントとはなんぞや」といった常識や高価格帯の作法を知ることからのスタートでしたが、とにかくこの異動をチャンスにするしかないと思いました。

客室のカーペットの柄と毛束の色検討/客室ベッドのヘッドボードの寸法検証(前職時代)

空間デザインからラグジュアリーなブランドをつくる

― 水星は、「HOTEL SHE, 」というブティックホテルブランドからスタートしましたが、現在では、「香林居」のようなスモールラグジュアリーへの挑戦や、今後開業予定の案件でもラグジュアリーラインのホテルに携わる機会が増えています。その中で、藤原さんが前職で身につけられたことが、今後ますます活かされるように思います。改めて、デザインチームでの経験について教えてください。

デザイナー職だけで構成される部署だったので、事務や営業の人がついているわけではなく、本業のデザイン以外にも、契約周りからクライアントワークまで、基本的に全部自分たちで担当していました。

お客さんに、金額に見合った空間や満足感をご提供するというのは言うまでもないですが、「ブランドをしっかり売る」ことも、ラグジュアリーの世界では重視されていることだと感じました。多くのラグジュアリーホテルでは、ブランドのあるべき姿がすでに確立されています。そのため、コンセプトやオペレーションなどのソフト面に基づいた空間デザインやその土地ならではをとりこみ全体をデザインすることが大切になります。空間の中で何を主役にするか、空間のシンボルとなる何かをしっかり作るということが、施設のアイデンティティにつながることを学びました。

客室模型(前職時代)

また、ラグジュアリーの世界では基本的にグローバルスタンダードが意識されていて、ポジショニングマップも国内ではなく海外でどの位置にあるかになります。グローバルスタンダードで勝負できる空間をどう作るかが重要なんですね。日本の観光宿泊業界の長年の課題として、「インバウンド富裕層がお金を落とす場所がない」というグローバルスタンダードの基準を満たすラグジュアリーホテルが不足しているということが言われています。

― 日常で中々接点を持ちづらい富裕層が求めるものを、どうやってキャッチアップされていたのですか。

今でも続けていることですが、とにかく様々なホテルやレストランへ足を運び自分の五感で体験すること。もちろんそのほとんどがプライベートなので、自腹です。ベッドや窓の大きさ、通路の幅、照明の明るさなどは、本やWEBには書いていませんよね。でも、そういう情報全てが空間設計に必要な観点なんです。だから、僕がホテルに泊まりに行く時は必ずメジャーを持参し、客室に入るや否や、あらゆる場所・ものを測り出します。もちろん公共の場所ではしませんよ(笑)。

先日も、出張先のホテルで「ここのホテルはどこのブランドの水栓使ってるんだろう」と洗面台を覗き込んでいたら、「そんなとこ見るの!?」と同期に笑われましたが、水栓ひとつ取っても、見る人が見るとそれだけでホテルのクラスがある程度分かってしまうもの。空間にある全てのものが、ひとつひとつ塵も積もって、そのブランドのステータスを維持していくのです。

特注照明の模型実験(前職時代)

僕はどうしても「自分のデザインの参考になる材料やアイディアを探しに行く」という思考になってしまうので、空間デザインの密度感を求めてしまうんですよね。そこで、やはりラグジュアリー空間であるほど、細部のデザインまで徹底的にこだわって全体の空間設計がされているように感じます。それは、ラグジュアリーだから良い、お金をかけさえすれば良い、というわけではなく、その場所・ホテルにしかない上質感を追求すれば自ずとデザインの密度が高まるということだと思っています。

水星の魅力は、王道ではない未知数の面白さ

― 前職でのキャリアは順風満帆に見えますが、キャリアを見直そうと思ったのはなぜですか。

デザインチームで数年やって、いちデザイナーとして専門性も出てきて、同世代のデザイナーとの差別化を意識するようになったんです。まずは、大手にいるからこそ出来ることを活かしながら、デザイナーとしての個性を磨く道を考えました。そして、このラグジュアリーの世界で積んできた経験を活かして、「ホテル」を軸としたデザイナーになれたらと思うようになりました

大規模なホテルの開発案件は長期プロジェクトが多く、1回始まるとなかなか抜けづらい。1つの案件を終えると数年歳をとっていて、いわば浦島太郎状態(笑)。気がついたら40歳の壁も見えきて、このまま同じ環境で仕事を続けることに怖さのようなものを感じたんです。仕事のやりがいや楽しさはある一方、限りある時間をどう使っていくか、自分の人生を見つめ直すようになりました。大手所属のデザイナーという肩書きを捨て、もっと自分の名前で勝負をしてもよいのではないか、と。

もちろん、大手に所属して名だたるホテルの大きな案件にコミットすることは、若いデザイナーにとっていわば目標ともなる仕事なので、ありがたい環境で働けていることは常々忘れないようにしていました。ただ、9年間やって、肩書きやブランドを手放してでも、自分の名前で作ったものに対して誰かに喜んでもらえるのを見れた方が、モチベーションも幸福度も高いのではないか、という思いが強くなったんです。

コロナ後は、前職で働きながら個人でも仕事を受けるようになりました。独立も選択肢としてあった一方、同世代のデザイナーとどう差別化すべきかと考えていたところ、Wantedlyを通して連絡をいただいたのが、水星との最初の接点です。

個人案件での現場写真(前職時代)

ー 藤原さんの場合は、業界大手で王道の道を極めて行くよりも、藤原さんご自身の名前で自分の個性で勝負をする道を志されたのですね。独立も選択肢としてあった上で、水星を選ぶ決め手となったのは何だったのでしょうか。

ひと言で言うと、王道ではない未知数の面白さ。多くの会社は、ホームページなどを見れば大体何をやっていてどういう会社なのか予想がつくのですが、その点、水星は本当に想像がつかなかったんですね。今まで仕事上付き合いがあったどのホテル会社とも違う感じがして、純粋に「どうやってホテル作っているんだろう」という強い好奇心や興味を持ったのが、水星への入社を決めた理由の原点にして頂点のように思います。カジュアル面談時に、会社としても個人としてもボーダーレスに働けて自分のキャラクターや幅を出すには最適な環境だと感じたことも、理由のひとつです。

水星は未知の課題への挑戦の連続 人生を自らドライブしている感覚がある

― 未知数な可能性に賭けるそんな思いで、水星に入社してみて実際いかがですか。今、水星で取り組んでいる仕事についてもお聞きしたいです。

入社前の期待を裏切らないくらい、想像以上に面白くて、想像以上にチャレンジングで、想像以上に手探りな会社でした。また、プロジェクトの進め方もホテルの作り方も、これまでと全然違うことばかりで、今までやってきたやり方が普通だと思っていた自分がいたことに気づきましたね。

水星には、異業種・異業界から転職してきたメンバーも多いので、それぞれが持つバックグラウンドで培ってきたナレッジやメソッドを「ここはもっとこうした方がいいんじゃないか」「これはやらない方がいいんじゃないか」と出し合って、チーム一丸となって突き進んでいる感じ。今の水星は、そうやって手探りで最適解までの道を切り開いていく時期なのだろうと思っています。

現在は、来年以降に開業予定の複数の施設の案件を中心に様々な業務に挑戦しています。ある大型複合施設の中に入居予定のホテルの企画では、ハード的なスキーム整理や図面の書き換えなどの前職のスキルをそのまま活かせるものから、某大型リゾートホテルのリブランディングのような、これまで関わったことのない領域のプロジェクトまで幅広い経験ができています。ペルソナで上がってくる人や店舗も全く知らないものばかりで、自分がまだまだ勉強不足なことを身をもって感じつつ、知らない知識や新しいものを吸収できて面白いです。

地方都市のホテルのプロデュース案件では、リアルに人口減少によって商業が立ち行かなくなっている街の様子を目の当たりにして、大きな衝撃を受けました。そのような現状が日本の地方で起こっていることを知識では知っていたのですが、結局今まで他人事としてしか捉えられていなかったんだなと、反省しました。商業が周辺にない過疎地域で、ホテルを起点に地域にどのようなアプローチをしていくことができるのか。過疎地の再生という今までにない新しいテーマを念頭に取り組んでいます。資本主義ど真ん中の仕事しかしてこなかった自分の限界を痛感しながら、どうにかこの課題を突破したいと考えています。

― むしろそういう場面でこそ、藤原さんがもともと学生時代から培ってこられたアート思考やDIY力を応用させて、新しいものが 生み出せそうな気もします。
最後に、藤原さんが考える水星らしさを教えてください。

未知数だからこそ、会社の未来や進んでいく道に、一人ひとりの働きが大きく影響するのが、水星で働く面白さだと思います。人生を自らドライブしているような感覚を、会社に属しながら感じられる。そして、クリエイティブを大切にしているカルチャーなので、クリエイトファーストで人生を考えている方にはぴったりの環境だと思います。あと、この人数規模だからこそ、代表である翔子さんと話す機会が想像していた以上に多いことにも驚きました。翔子さんとの会話のなかで気づきを得られることも魅力の1つです。

最後に余談ですが、先日プロデュース事業部のと先輩大丸さんから「事業は描くものだ」「ホテルというビジネスを納品する」という名言を授かりました(笑)。僕はそういう視点でプロジェクトを眺めたことがなかったので目から鱗で、「こういう人がいる会社なんだな」と、改めて水星らしさを垣間見た場面の1つでした。

株式会社水星 プロデュース事業部では、事業拡大にともない、観光とライフスタイルの選択肢を広げるコンサルタントを募集しています。

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