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描きたい絵を言語化してみる

:ある人物を見て
「なんか素敵な人だなぁ」と思ったら、
その「なんか」の部分を言葉にしてみる。
例えば「楚々としていて」「誠実な感じで」
「思いやりが感じられて」というようにです。

すると
自分の感情がはっきりとしてきて、
その人に対する思いが広がったり、また
温かい気持ちになったりします。

絵を描く時も然りで、
こんな感じの絵を描きたい」と思ったら、
「こんな」の部分を言葉で表現してみると、
自分のイメージがより鮮明になり、
制作する上でとても役にたつ
ことが
あります。

「こんな感じの絵」という ある程度の
イメージを持って描き始めたは良いけれど、
暫くすると、そのイメージが
薄れて来る
ことが多々あります。

その理由は
そのイメージが少し漠然としているからでしょう。

このイメージをどうにかしてより確実な
ものにするために、自分の思いを言語化
してみる
のです。

最初に浮かんだイメージはあくまでも感覚的
なものなので、そこに言葉が加わることで、
より具体的になり、イメージ自体の映像も
詳細なものへと変化して行きます。

言語化といっても大袈裟なものではありません。
自分の中だけで理解できる、合言葉みたいな
もので充分です

では下にその具体例を上げてみたいと思います。

◇制作の途中で題名をつける

僕は水彩画を描く時に、その絵の題名を早期に
決めてしまうことがよくあります。

題名をつけることで、制作の意図が
はっきりとして来ます。
筆の迷いが格段に減り
、それどころか
新たな発想も生まれたりして、後半の
制作が一層楽しくなるのです。

題名は最終的なもではなく、仮の題名で
構いません。むしろその方が自分に正直な
気持ちを表している場合が多いので、
好都合かも知れません。

下の水彩画2点は、制作の途中で題名を
つけた作品です。

旅先の旅館の夕飯に出てきた鮎の塩焼きです。描いている途中で「旅の肴」という
題名をつけました。日本酒を飲みながら、しみじみと味わう旅の風情を表現したい、
そんな思いを最後まで持ち続けながら描くことができました。
この題名はそのまま最終的なものになりました。
この作品も制作の序盤に「夏の光」という題名をつけました。
鎌倉にある青果市場に行ったら、「夏かぶら」が沢山売られていました。
カゴに入れて他の野菜と一緒にテラスに置いたら、夏の陽光に
照らされて輝いていたので、この題名にしました。

◇季節に思いを馳せる

ある風景を前にした時、どんな季節や
自然に置かれているのかを考えると、
思いの他 制作がしやすくなることがあります。

スイスのラウターブネンという静かな村の風景です。僕がここを訪れたのは3月の下旬で、
まだ雪が大分残っていました。春を心待ちにしている村人の思いが表現できたらと
考えていました。「春を待つ(スイス)」

◇沢山の言葉を羅列してみる

今描いている絵について、思いついた言葉を何でも良いから
書き上げてみるのも、効果的です。

休日に大勢の人々で賑わうパリの広場です。この作品を描く時に、下記のように沢山の言葉を
並べて、イメージを膨らませました。
「賑やか」「動き」「さざめき」「群像」「線」「休日」「光と影」「ラフな感じ」「会話」「ペン」「淡彩」「スケッチ」「冬晴れ」「モノクロ風」


◇技法や色彩からの発想を言葉にしてみる

この絵は「にじみを主体にして柔らかい画風に」
「ドライブラシ(かすれ)を多用して質感を表現」

またある絵は「カラフルに明るい雰囲気で」
「モノトーン気味で落ち着いた作品に」

というように、描く前に技法的・色彩的な発想
からスタートすることも、迷うことなく順調に
描き進める手段です。

沖縄のシーサーの風景をカラフルな感じで描こう、という色彩的な
発想から入った作品
です。台風災害に度々見舞われるこの地に、
魔除け役割として愛されるシーサー。様々な苦難に対し 明るく
元気に立ち向かう存在を表現しようと、敢えて鮮やかな
配色にしました。「大陸からの風」


ワタリガニの質感をどうやって表現するかを考えたら、マスキングを多用する
ことに行きつきました。硬い筆にマスキング液をつけて、それを弾き飛ばして
白く細かい点々を作って
います。技法的な発想で描き始めた典型の作品です。


◇周りの状況や物語を考えてみる

描きたいと思う風景や街の状況、或いは
そこに至るまでの経緯やエピソードなどを
できるだけ詳細に書き表してみると、
映像が浮かび上がってきます。

しんしんと降る雪、夜の街角偶然に出会った昔の友人
会わなくなって、何年経つのだろう。懐かしさ、
切なさが入り混じった瞬間を絵にしました。
「雪のめぐり逢い」



舞妓として5年間の修行を積み、晴れて芸妓になった目出たい席
イメージした作品です。周りの人達から祝福された 芸妓の慎ましやか
な喜び
を表現したいと思いました。「祝いの日」


◇インテリア的な発想をしてみる

自分の絵を部屋に飾ったらどんな感じだろう、
と想像しながら描くと、制作意欲が高まる
ことがあります。
「明るい雰囲気のリビングに飾りたい」
「茶室の床の間に合うような絵と額縁」
「寝室に飾れる優しい感じの作品」
と言うように、インテリアとしての価値を
を言葉にして考えてみるのも楽しいものです。

オシャレな総菜屋を絵にしました。この絵をどこに飾ったら良い
のだろう、玄関、階段の踊り場? それとも知人の開店祝い?
  
絵はどちたらかというとカラフルにしたいので額縁は銀箔の落ち着いた
感じに
しよう。などあれこれとと考えながら、楽しみながら制作しました。
飾ることを前提に制作すると普段とは異なる発想や画風に
なることがあり、楽しいひとときです。この作品はクリスマス前の
期間に部屋に飾るというイメージで描きました。

いかがでしたか?

絵を描くことは、自分の思いを形にすることです。
そこに至るまでには
言語の助けが必要な時もあるかと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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水彩画の作品集です。
皆さんの制作のヒントになりましたら幸いです。



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