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#166戦時体制への音楽の活用-戦時下の河内音頭、続報(1)

 以前に「#081戦時体制への音楽の活用-戦時下の河内音頭」という内容で文章を書きましたが、今回はその続報です。
 国立国会図書館や大学図書館で「仏教音楽協会」について調べてみたところ、いくつかの仏教音楽協会発刊の書籍にたどり着きました。余談ですが、筆者の通っていた大学は仏教系の大学だったのですが、学生時代は明治維新史で卒業論文、修士論文を書いたので、ついぞ宗教のことなど調べたことがありませんでした。ふと、そう言えば大学が仏教系だったよな、と思い出して図書館で検索すると、いくつかの書籍に当たり、どうも当時に寄贈を受けていたことが本の記載から判りました。しかも古い本なのに貸し出しまでしてくれるということで、しっかり原本から複写までさせてもらいました。

 余談はこれくらいにして、「#081戦時体制への音楽の活用-戦時下の河内音頭」で書いた内容の、ごくごく一部については『新版八尾市史 通史編二』(八尾市、二〇二四年三月)において筆者が紹介していますが、指数が少なかったこともあって、充分に執筆することが出来ませんでした。そのため、気になっているテーマとして、執筆後にもさらに何か判らないかと調査を続けていました。今回はそれらの補足的内容になります。
   まず、仏教音楽協会についてですが、前回には「昭和二年(一九二七)に文部省宗教局内に事務所を設置された外郭団体ともいえるような組織」と記しましたが、山口淳有「近代仏教音楽の明治・大正」(『印度學仏教學研究』第四九巻二号、二〇〇一年三月)によると、明治期に入って讃美歌などを活用して教勢の拡大をはかるキリスト教を参考に、仏教の普及のために音楽を活用しようということで成立した団体であると紹介されています。
 仏教音楽協会の具体的な活動などについては、『仏教聖歌 第四回発表』(仏教音楽協会、一九三二年四月)の巻末にある会則によると、事務所を文部省主教局内に置き(第二条)、仏教音楽の大成、普及を目的とした団体として組織された(第三条)ということが記されており、仏教音楽の大成、普及のために、その研究、創作、および演奏会、講演会の開催、出版物の発行、仏教音楽研究所の経営などの事業を行う(第四条)、と記されています。筆者の見た『仏教聖歌 第四回発表』も仏教音楽の普及啓発のために発行された出版物にあたるのでしょう。
 筆者の手元には現在、『仏教聖歌 第壱回発表』(一九二九年四月)から『仏教聖歌 第六回発表』(一九三四年一〇月)までを複写しています。それぞれには、五線譜と歌詞が掲載されており、書籍というほどには非常に頁数のない、楽譜集といった冊子と言えそうです。掲載されている歌は、「花祭の歌」や「仏教青年会会歌」、「盆会の歌」、「仏さま」など、筆者などは聞いたことのないような歌ばかりが掲載されています。ここに掲載されている歌は、伝統的な声明、雅楽からくる歌ではなく、先に記した讃美歌を活用して普及啓発をはかるキリスト教に範をとって、西洋音楽で新たに作成した音楽によって仏教の普及啓発をはかるものであったと言えるでしょう。

 今回は、仏教音楽協会とその発行している書籍について紹介しました。次回は、この書籍の中で掲載されている盆踊りについてふれてみたいと思います。 





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