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#171墓や石碑の管轄について(二)

 前回に引き続き、警察による墓や記念碑の管轄についての話を記したいと思います。前回は「衛生警察」という観点から、警察が墓や記念碑を管轄しており、その根拠として「墓地及ヒ埋葬取締規則」という法令がある、ということを記しました。

 「墓地及ヒ埋葬取締規則」によると、第二条に、墓地や火葬場は警察が所管する旨が記されており、第八条には、「凡ソ墓地ノ内外ヲ問ハス碑表ヲ建設シ履歴伝賛ヲ彫鐫セントスル者ハ所轄警察署ノ許可ヲ受クヘシ」とあり、墓碑や記念碑なども含めて石碑などを建設する場合には、所轄の警察署の許可を得なければならない、ということが書かれています。つまり、石碑を建てる場合には、警察に書類を必ず提出しないといけないということです。

 このように、衛生警察の観点から、警察には墓碑や記念碑などを建設する際には、申請書を提出しないといけないとなっているため、それらの史料が集中して残される訳です。しかし、実はこの点がなかなか難しくて、警察そのものは、個人情報保護などの観点から、所有する史料を閲覧させてもらえる機会というのは、かなり稀だと言えます。そのため、著者が閲覧、調査した警察関係の史料も、警察本体に残されていたものではなく、大阪府や京都府といったところに残されていた、行政文書の中に含まれていた、断片的な史料だったといえるでしょう。

 筆者がこれまで調査した中で、大阪府公文書館所蔵の公文書を例に挙げると、「建碑参照録」などの名前で、各地の警察署に提出された書類が残されており、どのようなものがあるかの一覧をうかがい知ることが出来ます。石碑には個人名がいくつも記載されているため、残念ながらインターネット上の目録では、詳細は非常に判りにくくなっていますが、実際の史料には、申請者、建設地、碑の表題、碑に刻まれる碑文、建設の可否などの項目を記す専用の用紙によって情報がまとめられており、申請者による申請書に記載された情報に精粗はあるものの、地域の人々がどのような碑を建設しようとしていたのか、あるいは建設されたものの戦時下の金属徴発や敗戦時などに撤去されていることなどをうかがい知ることが出来ます。

 とはいえ、地域の歴史などを調査、研究するに当たり、こういう史料の残り方もするんだということを知っていると、自身に居住している地域においての調べ物学習や、歴史の探求に役に立つことかと思います。知っていると知らないとで、調べ物のその道のりが随分変わってきますので、地域の歴史や文化を学ぶにあたって、どのようにして史料が残されているかということも知っておくと便利なのではないでしょうか。


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