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併読のすすめ 清二の西武が成瀬で深まる

本は幾つか並行して読んでいると思わぬ発見があったりして面白いものです。

多くのビジネスパーソンが読まれたであろう「トヨタ 中国の怪物 豊田章男を社長にした男」当然ながら読みました。その内容も然ることながら、この本の著者である児玉博さんの取材力と文章力が気になり、他の作品もポチリ「堤清二  罪と業最後の「告白」

ご存知のとおり、西武百貨店、西友そしてパルコ、ロフト、無印良品、ファミリーマートとセゾン文化を築き、糸井重里をトップクリエイターに仕立て上げた、企業家堤清二、その大人物のルポルタージュ。

西武鉄道と西武百貨店は義明と清二が経営していたが敵対的関係であったのは、これまた多くの方がご存知のことでしょう。その中でワタシが大好きなエピソードは、清二と懇意な関係であった手塚治虫を清二から引きはがすため、義昭はクラウンライターから渡り受けたプロ野球チーム西武ライオンズのマスコットのデザインを手塚に法外な金額で委託する。そしてその条件として清二との縁を切るというもの。そしてご存知の通り、西武ライオンズのマスコットはジャングル大帝そのまんまの白いライオンが使われる。

これは、清二と義明の確執だけでなく手塚治虫のマンガ家として神、人としてクズを示すエピソードとして好きだったりします。

そんな堤清二の生涯を振り返るような本を電子書籍で読み始めたところ、娘からこの小説面白かったよっと推薦されたのが「成瀬は天下を取りに行く

何とまあ、表紙には西武ライオンズのユニフォームを纏った少女、そしてその背景には西武百貨店。何この所沢100%な雰囲気。

と思いきや舞台は滋賀県大津市。西武百貨店を舞台とした小説を読みながら、西武百貨店の社長のルポを読む。なるほど、義昭と清二の父、堤康次郎は滋賀県出身なのか。おそらくルポを読んだだけでは忘れてしまう大人物の出身地も小説と併読することで鮮明に記憶される。

小説を読み進める。背番号1のKURIBAYASHIに背番号3のYAMAKAWA、からのプリンスホテルで同窓会と何とまあとことん西武。

しかし一瞬疑問が残る場面が、西武百貨店内で「吠えろライオンズ」が木霊する。いやいや私の記憶が確かなら、このルポにある通り西武百貨店と西武ライオンズを運営する西武鉄道は敵対的関係で応援歌なんてながれるはずがない。

1988年日本シリーズで西武ライオンズと中日ドラゴンズが激突したあの頃、豊橋の丸栄百貨店がドラゴンズ応援バーゲンをし西武百貨店は無風だった。そんな記憶がかすかだがある。

西武百貨店がセゾングループから離れたからライオンズと雪解けしたのか?と思わず調べる。なるほどセブン&アイ参加となってからジャイアンツ、ベイスターズ、ライオンズいずれかの成績の良かったチームの応援感謝バーゲンをやるようになったらしい。

ルポを読み進める、西武鉄道の不祥事、西武百貨店の衰退、康次郎の墓は東京から滋賀に移される。まるで小説が西武創業家のレクイエムのように思えてくる。

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」

小説の出だしの成瀬の言葉がより意味深く思える。しかし成瀬は完璧超人のようで変なヤツだ。そしてそれに付き合う島崎もなかなか変なヤツだ。

滋賀県出身の女子中学生が西武ライオンズのユニフォームを着てM-1予選を敗退。

ルポと小説を読み終えて、娘に頼む「成瀬の続き貸して」第2巻の「成瀬は信じた道をいく」これまた面白いのです。

これを読めば2025年の紅白歌合戦のミスター・ケンダマンこと三山ひろしのステージがどんなものになるか気になるはずです!

きっと来年NHKの夜のドラマになる、はず、とか思って楽しみにしています。


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