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パンダ珈琲店さん(その3)

 
 勤め人時代、その仕事の性質から、毎日電車であちこち移動していました。とりあけ多かったのが、中央線沿線。降りてはとなりの駅へ、そしてまた3駅となりへ、という感じで、駅から駅へと渡り歩く感じでした。
 
 阿佐ヶ谷へもよく行き、その時からパンダ珈琲店さんがあることは知っていました。一つのことに特化した店が生まれては消えていく中、長く存在していることは、とてもすばらしいことだと思います。
 
 その勤め人時代のいちばんの楽しみは、仕事! ……と、言いたいのですが、実は仕事ではなく、移動時の読書でした。
 
 とにかく、読みまくりました。帰れば、書く方に時間を充てますので、電車内の読書だけ。そこでほぼ、年間100冊読んでいました。分厚い本や仕事関連の小難しい本も避けずに読んでいたので、なかなかの冊数だと思います。でも作家の夢枕獏さんは大学時代に1日2冊読んでいたというから、年間100冊なんてたいした数字ではないとも思っています。
 
 そのときだったか、もうちょっと前だったか、新潮文庫さんが、『Yonda? Club』という販促キャンペーンをやっていました。けっこう長い期間だったと思います。
 簡単に言うと、文庫のカバーの端に印刷されている三角を切って、集めて送るとグッズがもらえるというものです。ネットが出てくる前は、こういうフェアやキャンペーンが多かったのです。森永チョコボールは発売当初から『金なら1枚、銀なら5枚』と、エンゼルマークをはがきに貼って送るキャンペーンをやっていました。景品は「おもちゃのカンヅメ」です。
 
 『Yonda? Club』の景品はさまざまな種類があり、送った応募券の数によってランクがありました。Yonda?君という、このキャンペーンのキャラクターのパンダをデザインしたものがほとんどでしたが、文豪がデザインされた小物もありました。
 
 その景品がもらえる数は、最小が5冊分で最大が100冊。100冊は、かなりの量ですね。当時のぼくだと1年かかります。夢枕獏さんなら50日!!
 
 その100冊分の応募券の景品が、ここ、パンダ珈琲店にありました。

リサ3

 リサ・ラーソンさんの、陶器のYonda?君。
 
 とても貴重です。そのちょっと猫背なパンダの背中に、100冊分の本の内容が詰まっています。比喩です。

リサ2

 とにかく、本好きにとっては、垂涎の品です。まじまじと見ていると、店主さんが持ち上げてくれて、

リサ1

「直筆サインが書かれているんですよ」、と教えてくれました。貴重度が上がります。
 

パンダ珈琲店2

 店主さんとお話ししていると閉店時間になったので、お礼を言って、お店を出ました。もちろんお代も払ってです。
 
 中央線沿線にはパンダはいませんが、なんとなくオレンジラインにパンダが合っている感じがします。ぜひ、長く長く営業を続けていってほしいお店です。落ち着ける雰囲気の店内なので、おススメです。ぜひ!


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書き物が好きな人間なので、リアクションはどれも捻ったお礼文ですが、本心は素直にうれしいです。具体的に頂き物がある「サポート」だけは真面目に書こうと思いましたが、すみません、やはり捻ってあります。でも本心は、心から感謝しています。