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鬼滅、シン・エヴァ超えなるか? 12月24日公開 「劇場版 呪術廻戦 0」 ガチの興行収入予想。

ついに本日、12月24日0時を持って、
2021年の大ヒットアニメ「呪術廻戦」の初劇場版作品、
「劇場版 呪術廻戦 0」の公開が始まった。

本稿では「劇場版 呪術廻戦 0」がどれほどのヒットとなりうるのか、昨年、国内歴代興行収入1位を記録した「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」、2021年現時点での最高興行収入を記録した「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」を引き合いに出しつつ、考察をしてみたいと思う。

ちなみに結論をまず申し上げると、
本作は「鬼滅の刃」超えはさすがに難しいが、
「シン・エヴァ」興収は超えると予想する。
以下にて詳細を述べる。
※本稿は公開日になる前に執筆を終えるつもりだったが、
想像以上に長くなってしまい、公開初日での公開となってしまった。
(ただし、公開後の興収データのない時点での予測となる)

前提:2021年(前々年/前年含)国内映画興行おさらい

一昨年の2019年、年間を通じて興行収入が歴代最高の2611億円を記録したものの、翌年、コロナウイルスの蔓延により大きく暗転した映画業界。
年間の興行収入は1432億円と2000年以降では過去最低となってしまった。
(一方でリアルの劇場ビジネスが大きなマイナスインパクトを受ける中、社会全般のデジタル化、エンタメ領域ではデジタル配信・ストリーミングが大幅に浸透したことは特筆すべき点である)

ただそんな状況の中、「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」が403億円と、
国内歴代興行収入一位、世界興行収入では517億円と、コロナウイルスが猛威を振るった2020年では世界最高興行収入作品となる
など、信じられない記録を残すに至った。

ちなみに映画興行を常にウォッチしている自身としては、昨年の鬼滅の刃劇場版の爆発に関して、国内興行収入1位作品となることは公開数日前に確信した次第だ。(下記記事参照)

(ただもちろん、ここまでのヒットになるとはさすがに想像することはできなかった。)

なお、本作がなぜここまでヒットしたのかについての考察は「劇場版 呪術廻戦 0」のヒットに紐付いてくるので後ほど詳述したい。

さて、そうした流れの中、2021年は昨年に続きコロナウイルスの感染状況に応じて劇場興行も営業縮小を余儀なくされるなど影響を受け続けた。
しかし、年間を通して作品が公開され続けたのは救いであり、「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」(102.8億円)、「名探偵コナン 緋色の弾丸」(76.5億円)、「竜とそばかすの姫」(65.3億円)、「東京リべンジャーズ」(44.7億円)等のヒット作が生まれた。

さて前さばきはこれくらいにして本題に入りたい。

定量比較:「鬼滅の刃」vs「呪術廻戦」vs「エヴァ」

「劇場版 呪術廻戦 0」は、どれだけのヒット=興行収入となりえるのか?

昨年あらゆる記録を塗り替えた「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」(2020年10月16日公開)、及び今年の最高興行収入を記録している「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」(2021年3月8日)との比較から考えたい。
※一部Googleトレンドの各イベント詳細など定性面の要素も含む。

※以後、3作品を比較しつつ、動員を最大化する上で何が優位に働くかという論点で記述をするが、決して作品そのものの優劣に言及するつもりはない。(いずれの作品も個人的には好きで、どれも素晴らしい作品だと思う)あくまで本稿の目的は此度の呪術劇場版の興行収入予測が目的となる。

さて、長いので結論を先にいうと、いずれの指標においても「鬼滅」>「呪術廻戦」>「エヴァ」というボリューム感であることが見えてきた。


具体的な定量的な数値データとしては以下の4つの指標を検証してみる。
①Youtube劇場版予告編視聴回数
②原作コミック購入者(=作品コアファン)
③Googleトレンド(=作品興味者)
④SNS(Twitter・インスタ・Tiktok)フォロー数・ ハッシュタグ件数


①Youtube劇場版予告編視聴回数
直接的な映画作品の視聴に紐づく可能性が高い、予告編(複数本あれば最高値)の再生数を見てみる。

1ヶ月前に公開された「劇場版 呪術廻戦 0」の本予告編は現在約1370万回再生となっている。
ちなみに鬼滅の刃は昨年公開前に確認した際は、予告編第一弾、第二弾ともに1000万回、2000万回を超えているという感じであった(作品公開前の詳細数値は不明)。
また、シン・エヴァンゲリオン本予告編は現時点で942万回を記録している。公開から既に1年程度経っていることを考えると、作品公開手前では3桁万回後半位にはなっていたのではと想像する。

①予告編視聴数という所でまとめると、
鬼滅(2000万回以上)>呪術(1370万回)>エヴァ(500-900万回程度)
という規模感、順番
となる。
仮にエヴァは中間をとって750万回再生と置き、鬼滅を最大100%とすると、3作品の視聴ボリューム比率は100%:68.5%:37.5%、つまりざっくり3:2:1となる。

②原作コミック購入者(=作品コアファン)
次に、作品のコアなファンがどれくらいかを見てみたい。原作の漫画を購入する層をコアファンとすると、呪術廻戦では、現在累計発行部数は18巻で6000万部を突破する見込みとのことだ。平均すると約333万人となる。

また17巻の初版は、215万部とのこと。作品公開と同時に動きうる初動の人たちと考えると、初版購入者の数字を参考にしたいと思う。※18巻の初版は調べたがわからず。

一方で鬼滅の刃に関して言えば、劇場作品公開前の単行本の発行部数は、2020年10月2日時点で、累計1億冊、平均では約455万部。また、初版は370万部とのことである。

従って規模感としてはいずれも約200万〜450万人程の(特に初速で動く)コアなファンがいると言えそうである。

エヴァに関してはノベライズはあるものの一律比較は難しいので割愛する。

②原作コミック購入者(=コアファン)という所でまとめると、
鬼滅(370万人)> 呪術(215万人)
鬼滅を100%とすると比率は、鬼滅:呪術=100%:58%。
※一応平均でも出しておくと鬼滅:呪術=455 : 333 = 100% : 73%という具合。

③Googleトレンド(=作品興味者)
3つ目は、作品に関心を持つ=検索行動をとる人のボリューム比較がわかる「Googleトレンド」を見てみたい。このツールでわかるのはボリュームの絶対数ではなく、各要素の相対的な割合だという点は留意しておく。

スクリーンショット 2021-12-23 20.10.08

参照;Googleトレンド(画像を元にメモは作者追記)

上のグラフは、2020年1月〜2021年12/23日現在までの、Google上での検索ボリュームの比較である。(「鬼滅の刃=赤」「呪術廻戦=青」)
対象期間内での検索数比率の平均では鬼滅(=「25」)が呪術(=「9」)の約3倍程の数値となってはいるが、映画公開期間を含む鬼滅が多いのは当たり前なのでどこまで参考にできるか、という所はある。

その前提でまず、「鬼滅の刃」に関しては以下がポイントと言えそうか。
・2020年以降でほぼ全期間呪術廻戦を上回っている
・対象期間内では「映画公開時期(特に公開3週目)」が話題のピーク
・映画公開期間を除いたピークは単行本発売+TV(神回)放送時

一方で「呪術廻戦」に関しては以下のことが言えそうだ。
・2020年は前半対「鬼滅」で無風だが、アニメが開始した9月から上昇。
・9月以降は上昇を続け、単行本15巻発売の3/4にピークに。

上記の前提がある上で、両作品について注目すべき点としては
・鬼滅の刃の劇場版公開前週の数値が「32」に対し、現在の呪術の劇場版公開前週の数値は「9」。鬼滅:呪術=100%:28%となる。
→劇場公開時の風速としては鬼滅の方が3~4倍の大きな波を起こしていると言えそう。(全方位的なコラボ展開+放送による露出の最大化が原因か。)
・直近の数字はそれぞれ鬼滅「14」、呪術「16」とほぼ同じも呪術がわずかにリード。
→「遊郭編」が始まり話題に豊富な鬼滅を、劇場作品公開前呪術の話題量が上回っている。

これらを踏まえると、劇場版公開前の鬼滅の話題のスパイクの凄まじさがわかる。従って今の風速で呪術がそこまでになるのはさすがに厳しい様に思われる。

とはいえ、劇場公開前期間全体での盛り上がりの最高値では、鬼滅が「42」、呪術が「33」とそこまでの差はなく、コミックを買うコアなファンがこのピーク時同様に動くとすれば、鬼滅に匹敵する盛り上がりを見せうるのではとも考えられるのではないだろうか。
比率にすると、鬼滅:呪術=100%:78.5%となる。

なお、検索行動と劇場動員の直接的な相関は数値的に示せるものがない、かつ昨今ではGoogle以外のプラットフォームでの検索行動も若い人を中心に増加している背景はある。ただやはり検索PFとしてのGoogleの浸透及びチケット購入や映画鑑賞前の検索行動は自然と発生しうる行為でもあるので、参考にできる部分は十分にあると考える。

さて次に、このグラフに面白いデータを加えてみたい。

スクリーンショット 2021-12-23 2.17.41

参照;Googleトレンド

2021年の興行収入ランキング1位となった「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」(検索ワードとしては「エヴァンゲリオン」)を加えたのが上図だ。

これを見ると、2020年以降の検索対象期間内に話題の全てがほぼ包括される「呪術」と「エヴァ」では、話題ボリュームの比較では呪術=9、エヴァ=3と「3:1」であることがわかる。鬼滅;呪術も同様におおむね3:1の比率だったことを踏まえると、ざっくり鬼滅:呪術:エヴァ=9:3:1という比率となる。

③Googleトレンド(=興味喚起者ボリューム)という所でまとめると、
鬼滅:呪術(劇場版公開前週比率)=100%:28%
鬼滅:呪術(劇場版公開前ピーク比率)=100%:78.5%
鬼滅:呪術:エヴァ(全体話題総量)=9:3:1
といった規模感が見えてくる。

ちなみに、シン・エヴァに次ぐ今年のヒット作品関連のワードも同様比較をしてみた所、下記のような結果となった。呪術のピークを100とすると、東リべや竜そばは完全無風、コナンでさえ劇場公開のピークが呪術ピークに対して67%という規模感だった。これを見ると呪術・鬼滅の刃の興味社ボリュームがいかに多いのかがわかる。※検索ワードは最大5つなので鬼滅の刃は本グラフ上割愛)

スクリーンショット 2021-12-23 20.47.20

出典;Googleトレンド

④SNS(インスタ・Tiktok) ハッシュタグ数定量面の最後に、#(ハッシュタグ)の検索数が明示されるインスタとTiktokのハッシュタグ件数を3作品で見てみたい。

前述した様に、
今では検索行動はGoogleプラットフォームだけとは限らないので、
SNSでのソーシャルインパクトを知る上では、参考になる指標と思われる。
※Twitterはハッシュタグ数が不明なので、
公式アカのフォロー数を参考までに確認。

まず下記はインスタグラムでのハッシュタグ件数である。
最も多いハッシュタグの件数を見てみると、
・鬼滅:343万件
・呪術:75万件
・エヴァ:35万件
という具合だ。

スクリーンショット 2021-12-23 20.59.11

出典;Instagram

次にTiktokでのハッシュタグ件数を見てみる。
・鬼滅:270億件(B=billion=10億)
・呪術:54億件
・エヴァ:8億件

スクリーンショット 2021-12-23 20.59.28

出典;Instagram

また参考までにTwitterの公式フォロー数は下記。
鬼滅:呪術:エヴァ=260万:113万:63万=(ざっくり)4:1.8:1
という感じだ。

スクリーンショット 2021-12-23 22.47.10

出典;Tiktok

各数値を比率にすると、
Twitter:
鬼滅:呪術:エヴァ=260万:113万:63万=(ざっくり)4:1.8:1
インスタ:
鬼滅:呪術:エヴァ=343万:75万:35万=(ざっくり)10:2:1
Tiktok:
鬼滅:呪術:エヴァ=270億:54億件:8億件=(ざっくり)33.7:7:1
という具合だ。

後述もするが、ファン層が30代以上の男性中心であるエヴァはSNS、特に上述のインスタ、Tiktokという若年層が多い(インスタは今そうでもないかもだが)プラットフォームでのインパクト・浸透率は、やはり鬼滅、呪術には劣るという所が見えてくる。

さて、ここまで色々な定量的指標を見てきたが、いずれの指標に置いても、「鬼滅」>「呪術廻戦」>「エヴァ」というボリューム感であることが見えてきた。
また、コアなファンの指標を踏まえると、
①映画予告編視聴数より、
鬼滅(2000万回以上)>呪術(1370万回)>エヴァ(500-900万回程度)
ざっくり3:2:1。
④ Twitter(フォロワー数):
鬼滅:呪術:エヴァ=260万:113万:63万=(ざっくり)4:1.8:1
という相対比率がざっくりとした規模感としてポイントとなりそうだ。

定性比較:「鬼滅の刃」vs「呪術廻戦」vs「エヴァ」

では上記の定量的な数値を、
そのまま今回の興行予想に当てはめて良いのだろうか?
答えは否である。
この3作品は公開時期や、作品自体の特性もそれぞれ違う部分がある。
下記では、各作品の共通点と相違点を踏まえ、
それらがどう今回の「呪術」劇場版の興行を考える上で、
参考となるか考察したい。
その上で、最終の興行がどれほどになるのかを考えてみたい。

まず、
鬼滅VS呪術。

両作品の共通点を踏まえると、
アニメ本編鬼滅及び劇場版の空前のヒットは、
ある程度呪術劇場版のヒットを確約したと考える。


理由としては、まず第一にファン属性の類似性がある。
両作品は言わずもがな、ジャンプ原作のアクション映えする漫画・アニメ作品である。鬼滅の本編の終了と入れ替わる様に世の中的にヒットを拡大したのが呪術廻戦であり、作品のファン層も相当にかぶりがあることが予想される。従って、鬼滅の刃アニメ版を見ておりかつ劇場に足を運んだファン層は、例外なく呪術劇場版にも足を運びうる可能性が高いと考えられる。

また、鬼滅のヒットの理由を端的に言うとすると、
劇場映画を普段見ない人を映画館に連れてきた
という一言に尽きるのではないか、と自分は考える。

あれ程の常軌を逸した爆発的なヒットは、既存の映画好き(=能動的に普段から映画を見に劇場に行く人)だけを動かすことでは起こりえないはずだ。

そうするために行われたのが、放送・配信によるリーチの最大化だ。
具体的には、アニメ放送の際に、作品を作る製作委員会にTV局を含めないことで作品を放送する放送局の縛りをなくし、結果多くの放送局、配信事業社サービスから作品を放送・配信したという背景があり、このことが鬼滅の刃のヒットの要因の1つであると言われている。

作品を見やすい環境をつくるため、異例の展開をする。通常の深夜アニメであれば4、5局で放送されるところを、何と20局と提携したのだ。「これだけ単局をつないだのは当社としても非常に珍しい」と高橋氏は話す。地上波放送だけでも人口カバー率は約70%以上。それだけで8000万人が視聴でき、BS/CS放送も含めれば、テレビのプラットフォームだけで日本全国の人が視聴できる環境をつくった。加えて、動画配信サービスも「契約できるところすべて、約20社と契約した」(高橋氏)という。

そうしてリーチを最大化させた上で、更にアニメ本編の正統続編(=無限列車編)を劇場映画として展開したことが大きい。この展開により、普段劇場映画に食指が伸びない「アニメファン(ライトな人も含め)」でさえも、映画館に足を運ばねばならなくなる。リーチの最大化とアニメ本編の正統続編の展開というこの組み合わせが空前の大ヒットの要因だと思うのだ。

簡単に図示すると以下のイメージだ。
①映画好き、②映画館鑑賞好き、③アニメ好き、という層があったときに、
上述した、リーチの最大化=③アニメ好き層の取り込みだけでなく、アニメ本編の正統続編の展開により、取り込んだ③のアニメ好きを劇場に誘引する=②映画鑑賞好きにすることに成功したと考えられる。(下記筆者作成)

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このことは、よく2元論で語られがちな、昨年のコロナ禍で浸透した配信ビジネスと映画興行ビジネスの関係性に深く関わってくる所だ。配信による裾野の拡大は、既存の映画興行ビジネスのお客を取りうる側面はある一方で、裾野を拡大した層をうまく映画館に誘引できさえすればむしろ劇場映画ビジネス自体の拡大にも十分に寄与しうることを示唆している。(むしろ鬼滅の刃の劇場版の成功はそれを証明したと考える。)ただもちろん、劇場映画へのつなぎ込みという点で、制作スタジオのラインをその分押さえ、かつ配信と劇場公開のタイムラインをしっかりと管理することは容易ではないだろう。(制作側の投資面でもより中長期的な回収目線をもつ必要がある)※この点はまた一本コラムが書けるような話なので詳細はここでは割愛する。

では、「呪術廻戦」において、
アニメ放送・配信状況と此度の劇場作品の繋がりはどうなのか?

まず、放送という点では、今回の劇場版公開前に、MBSにてアニメ本編の一挙放送を行っている。また、アニメ本編放送時は、TBS・MBS系全国20局で放送されている。

配信では、以下の通り、主要サイトは全て網羅している。

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これを見るに、いつでも作品を楽しめる環境は整備されていると見受けられる。また実際の所、呪術は2021年で最も配信で視聴された作品であるというデータの裏付けもある。(from日経エンタテインメント12月号)

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これを見ると、リーチの最大化という観点では鬼滅以上に今年で見れば呪術は成功しているのだ。

では、劇場版の内容と、アニメ本編との繋がりという点はどうか。

今回映画で描かれるのは、原作者芥見下々さんが、2017年に連載していた「呪術廻戦」本編の前日譚に当たるパートである。しかしながら、前日譚とはいえ、本編の主要キャラである「五条悟」「夏油傑」「狗巻棘」「禅院真希」「パンダ」なども登場し、本編ではまだ謎の多い特級術師「乙骨憂太」をメインキャラに据えた作品となる。かつ乙骨と将来を誓いあった少女「里香」との純愛も描かれ、感動作品に仕立て上げられるはずだ。

ちなみに、前日譚とはいえ、アマゾンでのレビューは本編同様に高く、前日譚=この作品の本当の始まり=本編を知らなくても入っていける最も間口が広いエピソードと考えることができる。(つまりは、劇場版という裾野が最大化する装置に更に、間口を最大化するコンテンツをかけ合わせたというゴール設定が非常に戦略的であるように思われる。)

故に、既にアニメを楽しんでいる既存のファンは軒並み劇場に見に行きたいと思える作品であると同時に、漫画・アニメを見ていない人であっても入りやすい(=作品を見ていない友人知人も誘いやすい)作品となるその点、鬼滅の刃無限列車編以上に間口が広くなりうるポテンシャルを秘めているのではないだろうか。

加えて、本劇場版の特典には、前日譚と1巻の間「0.5巻」の特典が配布されるという。これはすなわち漫画原作購入者(※初版215万人)を軒並み映画館に動員する動機づけともなりうる。

更に言うと、この「呪術廻戦 0」のエピソードは、2017年12月24日が舞台となる。従って、劇場公開日である12月24日に見ることが、いうなればファンの中でのステータスにもなりうる。結果初日動員率を高める結果となりうる。

ここまで見てきた様に、鬼滅と呪術の共通点(ターゲット、視聴最大化 x 本編との連続性の担保)を踏まえると、今回の呪術劇場版が鬼滅と同様にヒットしうる可能性が感じられてきた。

では一方で、鬼滅劇場版との相違点は何か。

鬼滅公開時との圧倒的な違いはエンタメ供給量(=競合コンテンツの差)であろう。鬼滅劇場版の大ヒットは、当然ながら煉獄さんの勇ましい姿と家族への想いが溢れる感動的な作品であったことは言うまでもないが、ちょうど緊急事態宣言が空けたばかりで、世の中的にも楽しめる(特にリアルで楽しめる)エンタメが一般水準に戻っていない状況であった。そうした中、エンタメ深度の高い劇場での作品鑑賞は、ファンのエンタメへの枯渇を満たす絶好のコンテンツとして機能したことだろう。

一方、呪術は、ある程度平常運転がされた今年になっての公開となり、エンタメコンテンツ自体の競合数、劇場というエンタメ深度が高いコンテンツへの飢餓感という点では、鬼滅の方が劇場へお客を誘引する動機づけは強く働く状況であったと言えるかもしれない。その点で呪術が鬼滅ほどの爆発となるのは難しいかもしれないとも考えられる。

また鬼滅は呪術に比べ子供からの支持が高く、ファミリー層を取り込める点で裾野が広いことは大ヒットの一因にもなったはずだ。キャラクターや色味が豊富でコスプレやグッズ等の文脈でもSNS上で映える要素も多く、呪術に比べれば広がりを持ちやすい設計になっていると考える。

まとめると、
共通点:JUMP漫画→アニメ化作品 / コアのターゲット属性(若年男女)
    視聴の最大化(放送+配信)x本編との連続性担保
相違点:世の中のエンタメ供給度(エンタメ枯渇度)
    ファミリー層の取り込み(鬼滅有利)
    本編事前視聴の必要性(呪術有利)

といった感じだろうか。


では次に、上述の内容も踏まえ、
「鬼滅&呪術 VS エヴァ」
という比較を行ってみたい。

両者の一番の違いは、ファンの属性である。
鬼滅&呪術は前述の通りJUMP連載という特性から主に10-20代を中心とする若年層のファンが多い。一方で、エヴァは1997年の放送から25年続くコンテンツであり、当時14歳で視聴し衝撃を受けた根強いファンであることを公言する中田敦彦氏(39歳)を筆頭に、30-40代の男性を中心としたファン構造となっている。

これがどう映画興行に影響するのか。
ポイントはSNSの浸透度である。

前述のSNSのハッシュタグ比較(&Twitterフォロワー数)で見られたように、若年層を中心に利用されているSNS(Twitter/Instagram/Tiktok)などの数値ではいずれも鬼滅>呪術>エヴァとなっており、インスタ/Tiktokのハッシュタグ件数=投稿された数=情報発信の数で見ると、各作品の比率は単純なTwitterのフォロワー数の差よりも一層顕著になる。

(下記再掲)
Twitter(フォロー数):
鬼滅:呪術:エヴァ=260万:113万:63万=(ざっくり)4:1.8:1
インスタ(ハッシュタグ件数):
鬼滅:呪術:エヴァ=343万:75万:35万=(ざっくり)10:2:1
Tiktok(ハッシュタグ件数):
鬼滅:呪術:エヴァ=270億:54億件:8億件=(ざっくり)33.7:7:1

発信数が多い程、認知の拡大、興味の拡張につながる可能性は高い。作品コンテンツ自体のファンが若年中心であることから、公開と同時に、鑑賞投稿、感想投稿が盛んに行われることが容易に想像される。それらがシェアされることで、ヒットを加速させる。

この点で、劇場はある種の「体験深化装置」であるのに対し、SNSは「(ある種複利効果的な)ヒット加速装置」といえる。若年層に根強いファンを多く有する、鬼滅並びに呪術はその点で圧倒的に対エヴァで動員の誘引力を持っているといえる。

また、前提としてSNSとの親和性が高いことに加え、エンタメコンテンツとSNSの相性という所もヒットを加速させる要因といえる。昨今よく耳にする「推し活」がまさにそれだ。

二次元やリアルの自分の好きな人物やキャラクターを推す活動「推し活」。これらの活動はもちろんSNSを通じても繰り広げられており、トレンド評論家の牛窪恵氏は「Z世代」と言われる10-20代では「推し」がいると回答した人は全体の98%以上、一日の内、50%以上を「推し」のことを考えることに時間を充てると答えた女子高生・女子大生の割合が全体で8割以上にも昇ると言う。(そんなに考えてるのか...と驚きだ)また、エンタメ社会学者の中山淳雄氏は、そうした推し活が盛んに行われる背景には、エンターテインメントが「不公平感」を生み出しにくい特性から、SNSでもシェアされやすいコンテンツであることを指摘する。(ちなみに氏の最新著作「推しエコノミー」は激しく今のエンタメ界の動向が俯瞰できる名著なのでおすすめしておく)

「『推し』がいる」と答えたZ世代は98.4%
(中略)
先の調査(Trend Catch Project)でも、1日(24時間)のうち50%以上の時間は、推しについて考えている、とする主旨の回答が、女子高生・女子大生全体の約8割にものぼりました。
(中略)
「しかも、推しは恋愛と違って、対象と『1対1』である必要はない。限られた魅力的リソースを奪い合うのではなく、皆でシェアして共に高め合えるわけですから、連帯を感じやすい一方、争いも不公平感も生まれにくいわけです」と中山さん。さらに推しの対象が「仮想キャラ」など人間以外であれば、第三者と恋愛・結婚されてしまうなど、裏切られるリスクも低い。その分、心理的ダメージも受けにくいでしょう。

人口ボリュームという点では若年層は30-40代よりも少ないが、彼らに支持されるということは、言わばSNSという強力な拡散装置を備えることにつながる。

また、エヴァに対して、鬼滅&呪術が大きく異なるもう1つの点は、メディアミックスの展開スパンである。後者はコミカライズからアニメ化、そして劇場公開と流れるように展開することで、他のコンテンツへのスイッチ、または忘却を抑止し、作品のファンを劇場へ誘う確立を高めている。一方エヴァは25年という歴史が生み出したアニメシリーズ+劇場公開作品が、予習必死のコンテンツ(よりハイコンテクストな作品故にベストな状態での鑑賞が望ましいという意味では)として鑑賞者にある種課題としてのしかかる結果ともなる。そうしたスピード感、予習不要のノーストレス性という点で、今回の呪術はエヴァ以上にヒットとなる可能性は十分あるといえるのではないだろうか。

結論、では呪術劇場版の興行収入は如何ほどに?

さあここまで長々と書いてきたが、大きくは、鬼滅ほどまで行かないが、エヴァは超える、と呪術劇場版の予想を行ってきた。が、果たして呪術劇場版はどれほどの興行収入となるのだろうか。

最終的な興行収入がどうなるかは、作品そのものの出来や評価・感動の深さに大きく左右される。また劇場公開館数や興行の期間、プロモーション(宣伝費の投下予算・タイミング)、時勢(コロナ状況)など、様々な要素が絡むため一概に言うことは難しい。(エヴァの興行も最後に100億円を突破させるために、ある種力技で限定特典を配布したという側面もある)。

一般的に映画の興行収入は初週の興行収入のだいたい6〜8倍前後となるとよく言われる。ただ、鬼滅、エヴァともに世の中的に「これは見ないと行けない」という空気感が醸成され、世の中ごと化がされたがゆえに、最早その方程式にはあてはまらない例外的作品となっている。

ただいずれにしろ、それだけの大ヒットとなるには、スタートダッシュでの起爆が非常に重要である。そこで両作品の初日近辺の興行にまず着目してみたい。

下記が両作品の初速の興行である。

・鬼滅:
初日:興収/12.6億円、動員91.5万人 ※客単価:1377円
公開3日間:興収/46.2億円、動員342.5万人 ※客単価:1348円
公開10日間:興収107.5億円、動員798.3万人 ※客単価:1346円

・エヴァ:
初日:興収8.3億円、動員53.9万人 ※客単価:1539円
公開7日間:興収33.4億円、動員219.4万人 ※客単価:1522円

残念ながら、鬼滅は金曜が公開日なのに対して、エヴァは月曜公開となる。それによってか興行収入の集計タームにずれが生じている。(鬼滅は10日間、エヴァは7日間)

また、着目したいのは、鬼滅の刃の公開三日間の動員数「342.5万人」だ。
これは劇場版公開月に発売された22巻の初版370万部にかなり近い。

映画館は週末が最も賑わいやすいことを考えると、この初週末の動員数は単行本初速とある程度同じになり得るという仮説が立つ。=仮説①とする)

また、鬼滅は初日に「91万人」、エヴァは「54万人」を動員している。
ここで、これまでの定量分析を踏まえたヒット序列予想「鬼滅>呪術>エヴァ」にあてはめると、91万人>呪術>54万人となる。ちょうど間を取れば、72.5万人となる。

これは、③Googleトレンドの、鬼滅:呪術(劇場版公開前ピーク比率)=100%:78.5%をベースにした際の数値にもかなり近しくなる(91*0.785=71.4)。この初日動員をベースに興行の推移を考えることも可能かもしれない(=仮説②)

上記を踏まえ、仮に初週末3日間の動員をベースに、鬼滅同様に興行が伸びた場合=仮説①→呪術①とする(オレンジ)、初日動員数をベースにエヴァ同様に興行が伸びた場合=仮説②→呪術②(緑)、その中間を呪術③(=黄色)として推移をシミュレーションしてみよう。

下記は、縦軸に興行収入(単位:億円)、横軸に時間軸(単位:週)をとったシミュレーションとなる。これを見ると、呪術①は最終257億円、呪術②は130億円、呪術③は193億円となる。(下記Excelにて筆者作成)

スクリーンショット 2021-12-26 0.01.23

動員数及び注記を含めた一覧は下記となる。(下記Excelにて筆者作成)

スクリーンショット 2021-12-24 2.21.43

注釈部分は下記である。
※1 期間の「1」は、エヴァは初日数字、鬼滅は初週末3日間が対象。
※2 興行集計期間はエヴァの最終興行収入が確定した24週間目までとする。
(鬼滅は雪だるま式なヒットの拡大に伴い興行期間が長いため)
※3 24週間での平均客単価は鬼滅=1356円、エヴァ=1529円。ファン層(鬼滅は子供を含めたファミリー層多め、エヴァは中高年多め、であることから、呪術の客単価を中間価格の「1443円」と仮に設定。)
※4 呪術①は、仮説①=初週末3日間の動員が、単行本初版=215万部と等しいと仮定し、鬼滅の刃の動員推移率と、上記客単価(=1443円)をかけ合わせ算出。
※5 呪術②は、仮説②=初日動員 = 72.5万人、をベースに、エヴァの初日〜24週目までの動員推移率と、上記客単価(=1443円)をかけ合わせ算出。
※6 呪術③は、呪術①、呪術②の興行の中間の値として算出。(呪術①②は極端な予想となるので、その中間という意味合いでの参考である。

前述したように、今回は呪術の漫画購入者を確実に動かす漫画特典があること、そしてアニメファンもしっかりと映画を見る動機づけがされていること(かつ間口が広く初心者も誘いやすいこと)を踏まえると、初速の3日間での、動員215万人=興行収入31億円、という所はかなり固いのではないかと考える。

更に、初速動員で見た人(若年層を多く含む)がSNSで拡散する割合はエヴァに比べれば今回の呪術劇場版は圧倒的に多くなると予想する。結果ファン周辺への作品の拡散・増幅は(鬼滅ほどでなくとも)大きくなる。それを踏まえると、呪術②は超えると思われるので、呪術③の軌道=興行収入193億円あたりが、現実的な最大値となるのではと考えられる。

スクリーンショット 2021-12-24 2.49.25

出典:http://www.kogyotsushin.com/archives/alltime/

この数字は、歴代の興行収入記録で言うと、第8位「ハウルの動く城」196億円に次ぐ興行収入となる。

※ただし、当時はまだSNSというヒット加速装置がほぼない時代の話でもあるので一概比較は注意が必要だ。

呪術劇場版がここまで伸びるかどうかの懸念は、中高年層をどこまで巻き込めるか、という所になってくる様に思われる。

公開後のヒット拡大の流れのイメージとしては、
・既にTwitterのトレンドにも数日入っているが、
 SNS(Twitter/Instagram/Tiktokを中心)での鑑賞投稿、
 感想投稿で着火。

→ウェブニュース、マスのエンタメニュースによる拡散

→配信での視聴増加(ネットフリックストレンド入り)

→30代・40代へも本格波及
→再度マスのエンタメニュースでの取り上げ
→非映画関心層へも波及
という感じだ。

この若年層から着火し中高年・マスへと広がる流れは、
鬼滅の刃のときにも見られた傾向でもある。

長期で見たところ、連載当初は20代以下の若年層が関心層のほぼ半分をしめていましたが、アニメ化以降注目度が大きく伸びるとともに40代以上の構成が増え、直近では50代・60代以上も伸びています。「鬼滅」人気が若い世代からはじまり映像化をきっかけに上の世代へと波及している様子がうかがえます。今やファミリーで楽しまれているご家庭も多いのではないでしょう

呪術は鬼滅に比べると、
子供を起点としたドライバーが効きにくい、
結果的にファミリーをどこまで取り込めるか、というところは
懸念でもある。

常軌に加え、放送・配信により映画以上に広がりを持つアニメ層がどこまで映画館に足を運ぶことになるのか、そのせめぎ合いを見ることになる気がしている。

それらも踏まえると、
最低興行収入(呪術②):130億円
最高興行収入(呪術③):193億円
上記の中間(=現実路線):162億円
上記の規模感を予想としておいてみたいと思う。

さてさて、想像していたよりも相当に長編になってしまった...

新宿、そして京都と、
百鬼夜行が繰り広げられる本日、
幕を開ける呪術協奏曲、
果たしてどこまでのムーブメントとなるのだろうか。

いずれにしろ、
いつの時代も世の中の新しい潮流は若者から生み出されるものだ。
若者のアツい支持を受ける今作のヒットは、エンタテインメントの
新しい可能性をきっと気づかせてくれるに違いない。

数時間後、私自身も、新宿にて目撃したいと思う。


※12/25下記追記。

さて、公開日朝8時、百鬼夜行を新宿TOHOシネマズにて行ってきた。
劇場に入りまず衝撃を受けたのは、チケット・グッズ売り場を埋め尽くす女性客の数だった...(鑑賞後、パンフレットを買うために列に並んだが、今まで見たことのないほどの長蛇の列、購入まで40分以上かかったのは個人的にはじめてだった。。)少年誌であるJUMP作品であることを考えると、ある程度の男性ファンの存在を意識していたが、まさか感覚値9割以上が女性となるとは想像だにしていなかった。(もちろん若年女性でアニメ好き、もれなく呪術を見るファンの存在は意識していたが、まさかここまでとは、という印象だ)

このことから3つ感じたことがある。
最早、JUMP=少年誌であるという定義は関係ないということ。スマホの普及により、好きな作品を好きな時に誰でも楽しめる環境が整備された今、読み手を意識した発信者側の取り組みはあれど、それを誰がどう受け止めるかは、最早性別や年齢に限定されないといえるかもしれない。

・2つ目は上記にも通じるが、アニメ化によりファンの裾野が如何に拡大されるか、という所だ。おそらく漫画の利用者比率は男性の割合が多少はあると思うが、アニメ化により女性のファンをより多く取り込んだのではないかと予想する。(呪術アニメファンの女性比率は呪術漫画ファンの女性比率より一層高いと予想する)

・そして3つ目。コミュニケーションとしてのエンタメの重要性だ。劇場でグッズ売り場を埋め尽くす女性陣を見て気づいたのは、大半が女性の友達(と想像)同士、もしくはお一人の方だったということだ(9割以上女性なのでそりゃそうなるのだが)。つまりは、(新宿toho初日の様子に限定されるが)カップル映画的な側面はほぼ皆無だった、ということだ。もちろん中高大学生〜社会人の若年層でカップルでこの映画を見る人も十分存在するだろう。ただ、初速で動く熱量の高いファンは、より推し活的側面の強い女性アニメファンなのだ、つまりは(友達同士であればなおのこと)コミュニケーションの一環として推す作品の映画鑑賞が行われている、ということを改めて感じた次第だ。(最早自分が今学生だとしたら、この作品を見ていないことでの疎外感、話題についていけなくなることの劣等感は計り知れないだろう。。そうした教養としてのエンタメの重要度は常時接続・SNSが当たり前の世代では益々昨今高まっている気がする)

また、作品自体については個人的には非常に良かったと思った。特に呪いの腹の中での真希との対話の際に乙骨が放つ「誰かと関わりたい、誰かに必要とされて、生きてていいって自信が欲しいんだ。」という言葉には、緒方さんのさすがの感情表現もあって、ものすごくグッと来たし、キャラクターに共感し感情移入できる場面だった。加えて、百鬼夜行のシーンでは、漫画では描かれない冥冥さんやナナミン、ミゲル-五条のバトルシーンもふんだんに描かれ、個人的に満足度が爆上がりした次第だ。

実際の所、Filmarksの映画レビューでは、25日2:40の時点で、4.3と異常なまでの満足度を記録している。

スクリーンショット 2021-12-26 2.41.00

出典:https://filmarks.com/movies/96267

また、昨日24日の時点で、速報ニュースとして本作の初日動員数が前代未聞の100万人突破、興行収入は100億円突破が確実(最終は最早予測不可能)との発表が東宝からなされた。

いやはや、、エンタテインメントとは常に僕らの予想を超えていくものだ、とひしひしと感じた次第だ。。

前人未到の初日動員100万人。最早これは鬼滅の刃91万人を超える勢いである。もちろん、前述した様に、作品との連動性という意味で、「百鬼夜行」としての初日鑑賞がファンの中でのお祭り気分に火をつけファンとしてのステータス行動にもなる理由付けがもたらした側面はあるだろう。(百鬼夜行鑑賞として全国8館で0時からの最速上映を実施したことも大きい ※私はニュースを見逃していたせいで火曜にチケットを予約した際に気が付かず、当日8時予約後に気がついたが時既に遅しであった..)

いずれにせよ、当初予想した通り、週末3日間の初速動員231万人=興行収入31億円という所は固いであろうし、初日動員100万人も、当初の予想78.5万人という所から大きくはずれてはおらず、下記当初の予想と方向性として大きくずれはないことが見えてきた。

====再掲====
それらも踏まえると、
最低興行収入(呪術②):130億円
最高興行収入(呪術③):193億円
上記の中間(=現実路線):162億円
上記の規模感を予想としておいてみたいと思う。
==========

去年の鬼滅の刃の興行予想は、定性的なニュースや自身が実際に見た情報から、ある種地響きのような、爆発が起こる胎動を感じた故の予測だった。今作も個人的にはそれを感じてはいたが、それを定量的な視点も踏まえ予測を行ってみた。今回見た定量的なデータ(予告編視聴回数、初版発行部数、SNSフォロー・投稿数)は全て意識データでなく、行動データである。予測をしながら思っていたことだが、人の行動はあまり変わるものではない(だからこそ新しい行動を喚起するのは容易ではない)。だからこそ鬼滅の刃の結果を踏まえると、ある程度同じ行動が自然と起こりうることも含め、データを冷静に見さえすれば、今回の爆発を予測することは決してできないことではないのではないか、と改めて思った次第だ。

予測ができると結果どんないいことがあるのか?

さて、最後にこの問に答えたい。私見だが、もし今回この予測を事前に当事者として行えていた場合、自社への利益還元が(最低限)どれくらいになるかが見えてくる。そうすると、先回って、この作品をより広く届け、劇場鑑賞を少しでも増やすための打ち手を考え講じる可能性が広がると考える。(もちろん過度な先行投資はリスクが伴うので結果的に跳ねた時の2番手、3番手の策を整えておくことが重要なのだろう)今回の作品で言えば、今後の課題は、マスに広がった際に一般層はどれだけこの作品を見てくれるのか?(ファミリー層、中高年層の取り込み)ということが一つあげられる。もちろん若い年代を中心に複数回鑑賞も起こりうるので、トータルの動員数の内、かなりのボリュームを10-20代の若年層が占めることにはなるだろう。とはいえ、より興行収入を最大化させていくためには、やはり人口ボリューム的に多い上の世代の取り込みが不可欠となる。10~20代の人口は合計約2422万人。予測した呪術①(=本作が鬼滅の刃と同様に推移した場合の予測最高興行)の動員は1779万人。この年代の約7割が(複数回は除くとして)鑑賞すれば概ね届きうる数値となる。(ちなみに鬼滅の刃は最終の動員が2896万人。)いずれにしろ、ある程度上の世代を動員する結果となれば、最終的な興収も伸びてくるはずではあると考える。

スクリーンショット 2021-12-26 3.01.23

さて、最終どれほどになるのか。
引き続き動向をウォッチしていきたいと思う。

※2022年2月/13日(日)下記追記。
昨日、ついに劇場版「呪術廻戦」の興行収入が108.3億円を突破したというニュースが、アニメ版第二期の制作発表とともに発表された。

アニメ二期では、漫画でとんでも展開が繰り広げられる渋谷編が描かれるとのことで、一ファンとしては、見たいような見たくないような、という心境であるが、いずれにしろとてつもなく楽しみである。そして、今回の発表で、当初予測した、呪術の興行収入が鬼滅には届かないがエヴァは超える、という見立てが間違いでなかったことが証明された...とひとまず安堵、という心境だ。

さて、改めて下記のシミュレーションの図を再掲してみる。
今回呪術は50日目で108.3億円の興行収入に到達したとのことだ。下記の図だと、呪術①は鬼滅に倣い初週は3日間、呪術②はエヴァに倣い初週は1日分に該当する。鬼滅ペースは既に無理があるので、呪術②の方向で考えると、50日目はちょうど、1日(=1週目)+ 49日間(=7週間)=50日目、計8周目に該当する。呪術②の8周目は101億円の予測だ。つまりは、エヴァの最終興行到達のペースよりは、呪術の方が若干ペースが早いことになる。

画像15

改めて、当初の予測値は下記だった。

====再掲====
それらも踏まえると、
最低興行収入(呪術②):130億円
最高興行収入(呪術③):193億円
上記の中間(=現実路線):162億円
上記の規模感を予想としておいてみたいと思う。
==========

仮に、先述の呪術②のペースで、今今の上振れが維持されたとすると、
130 * 108.3 / 101 = 130 * 1.072 = 約139.4億円となる。 
おそらくは、今今のペースでは、162億円まで到達するのは厳しいと考えられるが、最終的には130億円を上回る、140億円前後での着地となりそうである。

結果的には、やはりファミリー層の取り込み、中高年世代の取り込みは厳しかったのではないかと思われる所はあるが、コアな若いファンを中心に動員し、これだけの興行収入を残したことは、記録にも、記憶にもエンタメ業界に刻まれたはずだ。まさしく、作品やキャラクターに対する、ファンの純愛の力に他ならないだろう。

END. 

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