2024ファジアーノ岡山にフォーカス36『 木山ファジのアイデンティティ~勝利か理想か~ 』J2 第22節(A)vs 清水エスパルス



1、徹底すれば勝利の芽もあったが…~完敗~


2024 J2 第22節 清水エスパルス vs ファジアーノ岡山
2024年6月30日(日)18:03kick off IAIスタジアム日本平

 この試合は、前半の内容通り、攻撃に関しては、清水を打ち合える可能性もあった試合であったことをまずは、伝えておきたい。

 しかしながら、試合内容を観ての通り、19番 岩渕 弘人 選手が下がってからは、得点の匂いどころか、攻撃の形すらできなかった。攻撃に関しては、19番 岩渕 弘人 選手が、岡山のキーマンであることは間違いないでしょう。

 チームとしては、彼がいる時間帯に如何にリードを奪って守り切るかというのが、岡山の勝利の方程式と言えると思います。

 ただ、それが通用するのは、22節終了地点で上位3チームを除くチームと考えても良いでしょう。アウェイ長崎戦もホーム横浜FC戦もH&Aの清水戦も結果的にチームとしての組織力ではなく、個の力で、劣勢に立った試合と言えますよね。

 90分間の中で、互角に戦えた試合があったとしても、個で圧倒されるというのは、この3チームでは、顕著でした。そう考えると、順位が示す通り、自動昇格を目指すには、まだまだ足りないものが多いというのが、現実です。

 しかしそれでも、長崎の1敗はともかく、清水と横浜FCも負けている試合が有る訳ですから、戦い方によっては、つけ入る隙は、大いにあるのではないかと感じます。

 ただ、そこを突く戦い方を良しとしないのが、木山ファジです。奇しくもそれが、敗因となりました。その理由については、次章で語っていきたいと思いますが、皆さんが、木山ファジの戦いを観て、何を感じたのかは、非常に気になるところです。

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2、清水の弱点を突かなかった岡山〜誉がある選択?~


 この試合は、99番 ルカオ 選手が、清水の(主軸選手を欠いていた)CBに対して、(今季で最も)空中戦で勝てることの多い試合でした。ここを執拗に突けば、清水に対しても戦えたと思いますが、木山ファジの傾向として、そういった弱点を突くということは良しとせず、チームとして総合力での力と力との勝負をする傾向にあります。

 この試合の前半では、スタメン選手が、持ち味を発揮して、セットプレーを含め多くのチャンスを作ることができていましたが、後半は、高さを武器とした攻撃は影を潜めて、スタミナを消耗する中で、選手が変わっていくことで、スコアも相まって、何もできない状態になって、敗れました。

 チームとして、監督や選手は、かなり悔しかったと思いますが、ホームで無敗の清水に対して、清水の土俵で戦うことを選択した木山ファジ。

 ここで大事になってくるのが、何故そういった選択を選ぶ傾向にあるかです。

 これは、私の中で、シンプルで高い山(頂)を上ることを目標としているからではないかと考えています。

 それこそ、勝つことだけ考えれば、違う戦い方を選択した方が、短期的視点での勝率だけ観れば、それなりに勝てると思っています。

 ただそれで、手にしたものに、継続性や伸びしろが無ければ、行き詰ることになります。その最もたる例が、J1時代の清水ではないかと感じます。J1で、何度も残留争いを繰り返してしまう中で、シーズン途中で、監督を何度も交代することを繰り返して、清水の勝利文化から、負けない文化へとシフトした中で、結果的に浮上するシーズンはなく、毎年の残留争いの末にJ2で戦うことになってしまいました。

 J2で、圧倒的な戦力であった一年目で、昇格できず、2年目の挑戦ですが、現状は、長崎と横浜FCと僅差ながら、自動昇格圏から追いやられる形となっています。

 ただ、今季の清水は、昨年と違い大型連勝が示す通り、秋葉 忠宏 監督の下で、勝者のメンタリティを取り戻し、戦術の魔境のJ2でも3位に付ける堂々たる戦いができています。

 岡山も、高い目標を持って、戦っていますが、この試合が示す通り、両チームの勝ち点が9差となった通り、現状は大きな差があると言っても良いでしょう。

 それでも、岡山として、この試合で、何が何でも勝つんだという気持ちよりも、自分達のサッカーで、自分たちの力で、清水に勝つんだということを、軸に置いた戦いを選択し、結果的に完敗に終わりました。

 ただ、それでも等身大の自分達のサッカーをぶつけたからこその前半があって、後半の完敗は課題は、次の試合の糧になるはずです。

 昇格するためには、上位3チームの何れかに最低限プレーオフで勝利する必要がありますし、その前に同じく、上位3チームを追走するライバルチームに勝って、勝ち進む必要もありますし、そもそも最低でも6位以上に入って、望みを繋ぐ必要があります。

 「現状」は、自動昇格は、夢かもしれませんが、良い補強が出来た上で、怪我から復帰した選手を上手く、メンバーに組み込んで、チームとしての状態が上がってくれば、奇跡を起こせるかもしれません。

 この試合で、岡山が「できることをやったが、力及ばなかった」と捉えるか。それとも「やるべきことをやらなかったから敗れた」と捉えるか。

 この辺り、この章で語った木山ファジの「J2の頂へ」というスローガンの頂を登る厳しさや意味を、どれだけ意識するかではないかと思っています。

 言い換えるのであれば、小さい山を踏破していくのか。それとも高い山に何度も挑んで踏破を目指すのか。この意識や捉え方、目標設定の仕方の違いではないかと思います。

 次章では、後半の敗因について語っていきたいと思います。


3、再構築したい90分間での戦い~最終課題~


 この試合の失点シーンを観ても、49番 スベンド・ブローダーセン 選手のセーブ力を持ってしても、そんなに簡単に失点してしまうのかと感じる失点シーンが有ったように感じます。こういった失点シーンを観ても、清水の選手のドリブル・パス・シュートのどれもが速く・正確・強烈でした。

 岡山の決定機を考えても混戦の中で、正面に蹴ってしまう決定力不足。少し厳しい所を狙う余裕がない岡山と、瞬時の判断と瞬時の時間で、良いコースに強烈なシュートを蹴れる清水の決定力の高さを見せつけられた試合でした。

 岡山の決定力不足は、練習でも変わらないと思いますので、チームとしてもそこを大きく上回るレベルのプレーをされれば、チーム全体の守備の遅れに繋がります。

 清水のホームの雰囲気の良さ、圧力というのもあったと思いますが、それでも3失点という結果が示す通り、攻守ともに見込みなしというのが、後半の出来であったと思います。

 前半のように、多くのセットプレーでロングパスで、空中戦をもっと増やすことができていればという想いが強いですし、9番 グレイソン 選手がいたらそういった戦い方もできたのではないかと感じますが、それを含めて、チームとしての総合力の差も出たということも感じますね。

 その中で、2失点目のシーンは、何度も何度も前からプレスをかけたのに関わらず、そこを打破されて、清水の前線に運ばれるまでが、非常に速くスムーズでした。岡山も寄せていくんですが、奪取どころかデュレイできず、その流れでセットプレーを与えると、そのセットプレーでの波状攻撃を前に失点という結果に繋がりました。

 清水が、ボールを大事にして繋ぐ意識が高くなった中で、岡山もそのサッカーに影響を受けて、安易にロングボールを蹴るということができなくなりました。ここで、99番 ルカオ 選手や29番 斎藤 恵太 選手へのロングパスを徹底していれば、違った未来もあったかもしれません。

 ただそれでも、両者のプレースタイルを考えても、それは、簡単なことではなかったと思います。

 3失点目を喫してしまった訳ではあるのですが、今季の木山ファジは、序盤戦は、9番 グレイソン 選手が下がった時にチームの攻撃が停滞して、中盤戦は、19番 岩渕 弘人 選手が、下がると停滞するという試合が続いています。

 チームとして、90分間の内で、自分達の時間をどれだけ長く作れるか。それが、少なくとも昇格に向けて、必要最低限身に着けるべき力だと感じています。

 サポーターやレビュアーとして、言葉では簡単に言えますが、それは簡単なことではないでしょう。その難題に対して、木山ファジは、最初から「J2の頂」の踏破を目標に1試合1試合を戦っていることをこの試合で改めて感じた戦いをしていましたので、勝ち点が9点も離れましたが、仮にプレーオフにいけば、関係ないことは、自分達が経験しているので、自動昇格を目指しつつも、これからも自分達のサッカーへのベクトルを向けて、木山ファジには、自分達のサッカーや可能性を信じて戦って欲しいなと思います。

 また、この試合では、55番 藤井 葉大 選手が抜擢された通り、木山 隆之 監督は、口では1試合1試合という表現を良く使って話されてますが、それと同時に、頭ではかなり先を見据えて、チーム作りや選手起用をされていると思いますので、チームとしての停滞しにくいチーム作りができる監督であると感じています。その辺り、4年目や5年目といった長期に渡って指揮があるかどうかも気になる所ではありますが、今は、一緒にJ1に上がりたいという想いが、何より強いです。皆さんもそういった方が多いのではないでしょうか?

 そういった中で、開催される本日の満員御礼の第23節のCスタでの仙台戦。ここで、強いファジを魅せてくれると信じて、足を運び応援したいですよね。

 最後まで読んで下さり有難うございました。

『 木山 隆之 監督 』
結果は非常に悔しいが、昨年ここで0-1で敗戦した時よりは勝てる可能性を感じたのは事実。
(清水とは)勝点9差になったが、まだまだ諦めない。

ファジアーノ岡山公式HP
J2第22節 清水エスパルス戦 監督・選手コメント
より一部引用
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202406302130/

『 7番 竹内 涼 選手 』
先制点は取られたが、勝ちにもっていけそうな雰囲気を出せたと思う。
だからこそもうひとつ、盛り返していける力をもう一度つけたい。
みんな自信になったプレーもたくさんあったと思うし、もう1度自分たちが成長するチャンスをもらったなと思っている。

ファジアーノ岡山公式HP
J2第22節 清水エスパルス戦 監督・選手コメント
より一部引用
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202406302130/

文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino


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筆者紹介
 冷静さと熱さを両立した上で、自分の感じた事を自分の言葉で表現することを大事にしている。ハイライトやテキスト速報をレビューを書くために確認するが、極力SNSは、情報を遮断して、レビューを執筆している。流石に通知や開いた時などに、偶然に目にすることもあるが、綿密に分析するというよりは、サッカーというスポーツの魅力を発信することを一番大事にしており、ファジアーノ岡山だけではなく、対戦クラブにも最大限のリスペクトの気持ちで言葉にしている。同時に、サポーターとの交流や魅力を語り合うことも好きで、レビューを書き始めて、中断期間や書けなかった試合もあるが、10年以上、ファジアーノ岡山を中心にサッカーのある生活をエンジョイしつつ、応援してきた。同時に、数少ないから岡山問わず、交流のできたサポーターもいて、「趣味」という「生活」の一部になっていて、サッカー観戦を心より楽しんでいる。


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