2023ファジアーノ岡山にフォーカス55『 布陣から振り返る木山ファジ23総括~結実の道筋~ 』



1、前置き


 多くの方が、2023シーズンをそれぞれの視点で振り返っている中で、私も遅れること約3か月。構想として考えていたのが、フォーメーションからそのシーズンを振り返る総括でした。

 記憶を掘り起こしながらではありますが、スタート布陣(スポーツナビの布陣)をベースに、木山ファジの「サッカーの方向性」と「武器と課題」の2点をテーマに「スギさん的視点」で、ストーブリーグの動向と合わせて今季を振り返って行く事で、来季への話へと架け橋をかけていきたい。

 やはり、今季を振り返り、来季を見据える上で、漠然として「波に乗り切れなかった」というイメージもあるはずで、そこにフォーカスを当てつつも「良かった点・継続したい点」にもしっかりフォーカスを当ていきたいと思っています。

 読み終えた時に「来季は期待できる。」や「今季の悔しさは来季で!」と前向きになれる総括をテーマとして書きました。

 また、このフォーカスはあくまで「総括」が主体であり、布陣に関する考察は別にする可能性(未定)もあります。後は、断言できる事に関してついて言えば、昨年の反省を踏まえて、1選手(監督)当たりの文字数が少なめの「選手名鑑」で、2024シーズンこそは、完成させたいと思っています。

 そして、今回のフォーカスは、いつも通り冷静に書こうと思ってましたが、気が付いたら熱が籠って最終的に暑苦しくなってしまっているかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

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2、4-3-1-2(可変式)~推進力×厚み~


「システムの結果」
4-3-1-2の成績

2勝5分1敗(13得点10失点)
3-4-2-1の成績
0勝1分0敗(1得点1失点)

「試合結果」
1節(A)磐田 2-3 岡山〇
2節(H)岡山 0-0 清水△
3節(A)水戸 1-1 岡山△
4節(H)岡山 3-0 金沢〇
5節(H)岡山 2-3 甲府×
6節(A)千葉 1-1 岡山△
7節(H)岡山 1-1 いわき△(3-4-2-1)
8節(A)藤枝 2-2 岡山△
9節(H)岡山 0-0 熊本△

・4-3-1-2考察(武器)

 開幕戦は、磐田相手に3-2という自信が付く1勝から始まった。開幕戦でありながら、高い戦術理解度と得点力で、守備や試合のクローズに課題こそ残ったが、希望に満ちた開幕戦と言えた試合でした。

 この布陣のポイントとして、後方からしっかり繋いで行くという方針と共に、22佐野 航大 選手と14田中 雄大 選手が、推進力のあるドリブルで全体を押し上げつつ、43鈴木 喜丈や16河野 諒祐 選手のオーバーラップにより、厚みのある攻撃を可能とできたことと言えるでしょう。

 更に43鈴木 喜丈 選手が、可変式という形で、ボランチの位置に入ったり、43鈴木 喜丈 選手が、前に上がったスペースを6輪笠 祐士 選手が埋めるなど、流動的かつ柔軟に動く事で、攻守共にバランスがとれた事も、ポイントでした。

 また、8ステファン・ムーク 選手、18櫻川 ソロモン 選手、48坂本 一彩 選手は、受ける事も得意ながらキープする力や運べる力がある上に、決定力もあるという事で、高い得点力に繋げることができたシステムと言えました。

・4-3-1-2考察(課題)

 システム図を観ても分かる通り、前方の人数とシステム上の噛み合いから、多くのシステムに対して、前から抑えていくという点に難点があったと言えます。攻撃特化の横綱のサッカーをしていた磐田であれば、岡山の土俵で戦ってくれましたが、2023シーズンのJ2では、攻守共にハードワークすることが前提とした戦い方のでチームが多く、2節以降は、そのプレス網に苦しんでいくことなった。そのため、ほぼ毎試合、特に前半でフレッシュな時間帯は、守勢に回ることが多かった。

 また、このシステムを採用する上で致命的な弱点となってしまっていたことは、ロングパスが有効な選択肢に成り得なかったことでしょう。押し込まれても1本のロングパスでカウンターに持ち込んだり、前線で収めて、そこから少ない人数で、得点できれば、相手も前からプレスにいくことを躊躇うこともありえたでしょう。

 対岡山でハイプレスが有効で、そこ対抗手段を岡山が発見できなかったことで、見切りをつけた熊本戦では、2トップは、99ルカオ 選手と9ハン・イグォン 選手であることからも分かる通り、前述した狙いのロングパスのターゲットになることを意図していると考えても良いでしょう。

 そして、DHの6輪笠 祐士 選手が欠場した理由は、覚えていませんが、もしアクシデントではなく、戦術的な理由による欠場であったのであれば、対プレスのポゼッションに限界を感じていた可能性も高く、41田部井 涼や27河井 陽介で、どれだけやれるかテストした可能性もある。

 もしくは、勝利が遠いこともあったとは思いますが、99ルカオの2試合目のパフォーマンスが良かった事で、次の一手を思い付いた可能性が高いかもしれません。

・4-3-1-2考察(24シーズンの解答)

 FWの選手をタイプの違うFWの選手へと一新したことによりロングパス主体の攻撃が可能となったことで、2023シーズンの課題は、ほぼクリアできたのではないでしょうか。しかしながら、私見では、多くのシステムが採用できる中で、スタートから採用する理由は弱いと言えるので、私が、このシステムを採用するのであれば、後半からの採用を推したい。課題で述べた通り、どうしても噛み合わせの部分で、守勢に回る可能性が高いのでスタートからは不向きというか、相手を選ぶシステムと言えそうだからです。

「スタートからの採用理由」
①ハイプレスを掻い潜ることができる。
②押し込まれた形からプレスを受けつつもしっかり前まで運べる。
③ロングパスを有効に使えること。

 つまり、自陣でのボールロストのリスクを小さくできるという事と相手陣地でプレーする時間を増やす。この二大テーマをクリアできるかどうか。それを対戦相手によって、OKと判断すれば、採用する価値はあるのではないしょうか。

 守備強度考えると、9グレイソン 選手と11太田 龍之介 選手、トップ下に10田中 雄大 選手のハードワークできる3選手が良さそうですが、2023シーズンのように右CHで10田中 雄大 選手を起用して、トップ下は、8ガブリエル・シャビエル 選手というのも面白いかもしれません。

 ただ、やはり中盤やDFラインの組み合わせは、前述した通り、相性や相手チームの兼ね合いを考えて、守勢に回らないようなスタメンを組まないと、リスクが高そうなので、スタートからは、選択肢も多いだけに、難易度はやや高めかなと感じます。

「後半からの採用理由」
①FWと2列目タイプの3人で、得点できる選手が揃ったこと。
②前線からハードワークできる選手が揃ったこと。
③ミドルシュートのある守備的MFが2選手加入したこと。
④SBだけではなくCBもできる長身SBを揃えることができたこと。

 リードした局面でこそ力を発揮できるといったイメージでしょうか。長身CB(SB)のDFラインで跳ね返して、守備的MF3枚でセカンドボールを回収して、前線にどんどんロングパスを蹴っていく感じです。99ルカオ 選手、29齊藤 恵太 選手、19岩渕 弘人 選手のフィジカルが武器の3選手を前線に置いておけば、なんとかなるんじゃないでしょうか。狙いが、シンプルなだけに強力であるという事がイメージし易いのではないでしょうか。

 2023シーズンからの2024の解答としては、ロングパスも有力な選択肢となった事に加えて、守勢に回った時の守備強度がかなり高まったことの2点であると言えるでしょう。

「補足」
 あくまで、編成分布予想です。実際は、重視する事によって、攻撃的にメンバーの組み合わせにしたり、守備的になったり、ドリブルやフィジカル重視など、実際とは大きくことなることもあります。後は、現在の私の把握している情報を基に出場機会が多そうという意見やスーパーサブなどの要素も考慮した順番の分布図となっています。後ほど紹介する違うシステムの比較図も同様ですが、補足情報と記述するのは、ここだけにしたいと思います。


3、4-4-2①(バランス)~防波堤と杭~


「システムの成績」
4-4-2の成績
3勝5分1敗(10得点7失点)

「試合結果」
10節(A)仙台 1-1 岡山△
11節(H)岡山 1-1 山口△
12節(A)秋田 0-1 岡山〇
13節(H)岡山 2-0 山形〇
14節(A)町田 1-1 岡山△
15節(H)岡山 1-1 大宮△
16節(A)長崎 0-0 岡山△
17節(H)岡山 2-1 群馬〇
18節(A)栃木 2-1 岡山×

・4-4-2①考察(武器)

 このシステムを採用していて一番の武器はやはりバランスの良さです。4-3-1-2であれば、どうしても4枚以上のハイプレスをかける場合は、後方から上がっていくか、押し込んで高い所から攻める必要がありましたが、4-4-2であれば、4枚で連動してプレスに行く事も4-3-1-2よりもスムーズで、(プレスで奪いにことが)無理と判断すれば、スペースを埋める守備態勢に切り替えて、前線、中盤でDFラインの前にブロックを構築し、守備を安定させることができます。

 そして、ダブルボランチになっていることで、パスを繋ぎ易さが、4-3-1-2よりはシンプルとなることで安定しました。序盤戦は、怖いという声が良く聞こえていた自陣でのパスワークですが、4-4-2に変更した時期は、こうした声がかなり減ったように感じました。

 また、22佐野 航大 選手と14田中 雄大 選手が、SH(OH)として振る舞えることで、高い位置でプレーし易い点も大きな改善点となったと言えるでしょう。

 全体としてプレーエリアの「受」の部分は改善したことで、守勢の時間こそ短くなり、7チアゴ・アウベス 選手の一時復帰などもあって負けなしの時期も長く続きました。

・4-4-2②考察(課題)

 バランスが良くなった一方で、得点力に課題を感じていた木山 隆之 監督。振り返ってみると、この時期から焦燥感というものもあったのではないでしょうか。4-4-2が「悪かった」というよりは「足りなかった」と感じていたのが正直な所ではないでしょうか。

 木山 隆之 監督と考え方の違う監督であれば、4-4-2に手応えを感じて、このシステムで戦っていても不思議でもなかったと思います。この時期は負けなしが継続していた時期ですし、サポーター間では、勝てない不満もありましたが、同時に負けなしというのが拠り所でもありました。

 また、内容を観ても勝てる試合も多かったように感じましたが、結果がついて来ず、負けなしが途切れたタイミングで、温めていた3-1-4-2に着手します。99ルカオ 選手のコンディションも上がって来て、15本山 遥 選手も復調してきて、右CBでテストするなど、好機と考えたのではないかと推察します。

 ここで、チームとして状態をあげて、勝ち切れていれば、勝ち点が最終的に+10ぐらいは上積みできたのではないかと感じます。そう上手くいかないのが、サッカーで、一度狂った歯車というか、一度失った自分達のサッカーへの確固たる自信は、簡単には戻ってこないものです。

 まぁ、この辺りは、清水でも昇格できなかった通り、戦力的に劣る岡山が、ベストで戦えなければ、実力や勢いのあるチームに飲まれて行く事も致し方ないかと感じます。だからこそ、バランスの良い基本に忠実なサッカーでは、中位を抜け出せれないという木山 隆之 監督の判断に繋がり、システム変更という結論に至ったのではないかと思います。

・4-4-2①(24シーズンの解答①)

 普通に戦っては、勝利はやはり難しいですが、明確な狙いを持てば勝率がぐっと高まるスカッドが揃った(「良い選手がチーム単位で揃った」時に使う表現)と言えるでしょう。

 私の中では、4-4-2は、日本語で言う「標準語」に近いイメージです。だからこそ、日本語を”正しく”話せるかどうかといった感じに、正確にメンバーを組み合わせて、90分間でのゲームプランをしっかり作って、状況に応じてどれだけ戦えるかどうかが問われます。

 もちろん、戦力差があれば、多少の誤りは覆せますが、「やるべきことをしっかりやれるかどうか」この部分が、問われるシステムです。ここができていれば、簡単に負けないですし、どんな相手に対してもある程度、攻守で戦えるシステムでもあります。

 岡山としては、近いタイプの揃ったFWを除いて、各ポジションに様々なタイプの選手が加入しました。特に全体的にはフィジカル面が、飛躍的に向上して、強力となりました。つまり心技体で総合力が高くなりました。

 そこで求められるのが、どこに強みを出していくかではないかと思います。2023シーズンは、自分達が戦えるメンバーを揃える事でいっぱいいっぱいでしたが、2024シーズンは、相手を見て戦い方を変える余地がスカッド的にあると言えます。

 例えば、岡山が大敗した千葉戦のように、岡山が千葉に敗れたように、フィジカルで圧倒できるならそういった選手を2トップにぶつけて、そこにボールを集める戦い方でも良いですし、カウンターに弱そうであれば、ハードワークできる守備の上手い選手を意識したメンバーを組んでも面白いでしょう。

 ただ、条件として、岡山の選手の特徴を掴んでおく必要もありますし、相手チームの特徴を把握できていないと、バランスが良過ぎることで、攻めきれず引き分けに終わるリスクもあります。そう考えると、木山 隆之 監督が10節辺りから採用していた事は、非常に合理的な判断であったと感じます。

 実際に、2023シーズンは、試合内容も悪くなかったので、誤算としては、勝ち点3だけ付いて来なかったことだけでしょうね。この時は、どちらかと言えば、まだ自信というか余裕があったのだと改めて感じました。

 木山 隆之 監督が、2022シーズンと2023シーズンの開幕戦で、独自色の強いスタイルをぶつけて、開幕戦で、内容と結果が伴った勝利を掴んでますので、2024シーズンもそうしていく可能性がある一方で、もし4-4-2であれば、木山 隆之 監督が、相当な自信があるのだろうと逆説的に感じますね。

 傾向で読むなら、2024シーズンもスカッドの特に尖った強みを活かせる新システムとゲームプランをぶつけていく可能性が高いと思いますが、バランスに優れた4-4-2の横綱サッカーで、栃木を迎えるということも十分ありそうな気はしますね。


4、3-1-4-2 Part①(秘密兵器)~前線に集約~


「システムの成績」
3-1-4-2①の成績
1勝1分1敗(3得点3失点)

「試合結果」
19節(H)岡山 2-0 徳島〇
20節(H)岡山 1-2 東京V×
21節(A)大分 1-0 岡山×

・3-1-4-2①考察(武器)

 8ステファン・ムーク 選手のFW起用から見える中盤の厚みを活かすという狙いと、23ヨルディ・バイス 選手のリザーブスタートに変更することで「繋ぐ」の改善を狙ったシステムであることが伝わってくる布陣です。

 フィジカルや決定力、打開力など様々な武器を持った個性派ストライカーやアタッカーの2トップで、得点増を期待していた部分もあると思います。

 徳島戦にその目論見通り、2得点で完勝して、その狙いが当たった試合でしたが、昇格を争うライバルである東京Vや大分に立て続けに敗れはしたものの繋ぐと押し込むという点では、一定の成果をあげることができた挑戦でしたが、相手が悪かったと言えるでしょう。

 また、東京V戦で怒りの声が審判に向けられた審判のジャッジも流れが掴みそこねた原因の1つとなってしまいました。守備のやり方を含めて、かなり岡山へのダメージがあっただけに、1つの分岐点となってしまいました。

 ただ、それを含めて、立て直せなかったのも事実であると思いますので、チームとして足りない部分はあったと思います。それでも3試合だけでしたが、内容が悪くなかっただけに2連敗という結果により、継続の道は、一度は絶たれてしまいました。

・3-1-4-2①考察(課題)

 やはり、連敗したことが示す通り、攻守での安定感が足りなかった点であると思います。3-1-4-2である通り、2022シーズンのように押し込んでこそ、真価を発揮できる形ではあると思いますので、パワーで押し込んで、厚みのある攻撃に繋げるということができなければ、後の弱さというのが、どうしても響いてしまうと思います。

 それでも、2022シーズンと違って、15本山 遥 選手と43鈴木 喜丈 選手の2選手が加わったことで「繋ぐ」という点が、2023シーズンの強みであり、23ヨルディ・バイス 選手をスタメンから変える事で、トライして見たかったのではないでしょうか。

 ただ、上位に勝つための完成度という点では、大分戦で無得点に終わった通り、攻守共にまだ早かった面は、少なからずあったように思います。

 3連敗できないという事で、一度目の挑戦は3試合で終わる事になりますが、このメンバーでのできる事と、できない事を把握できて、課題をしっかり見つられたという点では、意味のあった3試合であったと思います。

 4-4-2の時も触れましたが、やはり結果が出なかった事で、安定感のあった4-4-2に戻すという結論に至った訳ですが、東京V戦も大分戦も良い所も多かったので、そこで運よく勝てていれば、もう少しトライできた部分はあったと思います。

 しかしながら23ヨルディ・バイス 選手をリザーブメンバーとする形で最後まで戦って行くという方針で、腹を括るには、2連敗が痛すぎたことで、ここでの固定も断念せざる得なかったでしょう。

・3-1-4-2①(2024シーズンの解答①)

 2022シーズンは、強力2トップを活かす狙い。2023シーズンは、中盤の戦力を活かす狙いがあった布陣でしたが、共通的な狙いとして、得点力UPであったと思います。

 2023シーズンも中盤戦から採用していますが、2022シーズンは、最終盤の7試合のみの採用となっています。2022シーズンは、2023シーズンと比べて、得点ができていますから、最終盤のみの大事な時の採用となったのだと思います。逆に2023シーズンは、得点力不足に苦しみ、中盤戦という早い段階での採用となりました。

 ここから見えてくるポイントとして、このシステムを採用する木山 隆之 監督の考えとして「得点が欲しい=勝ち点3が欲しい」という時の秘密兵器のシステムであることが感じ取れます。

 2022シーズンは、5勝2敗11得点6失点と成功だったのですが、2023シーズンの最初の時期に採用した3試合では、1勝1分1敗で3得点3失点と思ったような内容と結果をあげることができませんでした。

 秘密兵器が、秘密兵器ではなかったので、3試合採用したのみで、4-4-2に戻した。ここから見えてくるものとして、2024シーズンの採用は、もしかすると少なくなるのではないかという希望的観測も出てきます。

 再度、昨年レビューを執筆する上で、私の心の支えとなっていた(公開やコメントから刺激を受けた)雉球さんの発信でもありましたが、3-4-2-1を推す声も多いです。これは、シンプルに前にそんなに人数をかけなくても「大丈夫ではないか?=得点できるのではないか?」という理由からです。そう考えると、2024シーズンの採用数が、2022シーズンより少なくなる可能性もあるのではないでしょうか。

 一方で、3-1-4-2を採用し難い理由としては、アンカーの選手への負担がかなり大きいことです。だから、2023シーズンは、チームとしての成熟度が足りず、攻守共に得点からの勝ち点3に繋げることがなかなか難しかった。だから3試合で、2023シーズンは、一度見切りをつけています。

 ということは、このアンカーの所の不安と、守備的な脆さが、気にならないのであれば、逆にどんどん採用していくぞという事も考えられる訳です。GK、DFライン、中盤のどのポジションも満足の行くスカッドが揃っているので、守備的なチームに堂々と攻めに行くという事を、開幕からやっていくという事も十分考えられます。

 やはり、これは、2023シーズンのベースをそのまま2024シーズンに継続性を持って、上積みできているからです。

 整理しますと

「採用が減るという予測の根拠」
①他のシステムも有力であるので、自然と採用が減るのではないか。
②前線のタレントが強力で人数掛けなくても点が取れるのではないか。
③22と23シーズン共に、得点と勝ち点3が欲しい勝負所で採用している。
④システム自体がリスキーで採用しなくて勝てるのであれば、それがベスト。

「採用が増えるという予測の根拠」
①23シーズンのベースがあるので例年以上に安定感がありそう。
②強力な攻撃陣を活かすには適したシステムである。
③スタートダッシュを狙って行くのであれば、選択肢としてあり。
④対戦相手に応じて戦う選択肢として有力で、結果的に採用が増えそう。

 この辺りを、木山 隆之 監督が、どう判断するか、コーチ陣や選手からどういった声がでるかで、判断していくことになるでしょう。


5、4-4-2 Part②(基本戦術)~決断と誤算~


「システムの成績」
4-4-2②の成績
1勝2分1敗(4得点4失点)

「試合結果」
※天皇杯を挟む※
22節(A)甲府 0-0 岡山△
23節(H)岡山 1-0 水戸〇
24節(H)岡山 2-3 藤枝×
25節(A)徳島 1-1 岡山△

・4-4-2②考察(武器)

 1勝2分1敗という結果が示す通り、連敗を止める事ができたシステムと言えます。序盤戦で敗れていた甲府に厳しい内容ながらも勝ち点1を拾い、ホームで難敵の水戸に勝利することができました。

 4-4-2の長所として、22佐野 航大 選手のプレー範囲が、中でも増えてくる点も強みと言えたと思います。スピードがない分、サイドでは、完全に抜ききる事が難しい試合もあった中で、中で絡めるという点は、大きいポイントでした。

 44仙波 大志 選手と27河井 陽介、41田部井 涼などのダブルボランチもパスでの崩しの成熟を感じてきた中で、少しずつですが、ロングパス比率は下がりつつあるように感じました。

・4-4-2②考察(課題)

 藤枝戦の7チアゴ・アウベス 選手の負傷交代が痛かったです。32福元 友哉 選手が、代わりにリザーブメンバーに入っていましたが、流石にチームを安定的に勝たせるための得点力を持続していくには、足りなかったと思います。

 チームとして、バランスを重視して戦いかったと思いますが、同時に明確な得点力不足という課題が突き付けられて、引き分けがどうしても多くなるという状況打破には、時間がかかり、中盤戦の順位としても何か変化が欲しい。起爆剤が欲しいというのが念頭に有ったのだと思います。

 何度も焦りという言葉を使ってますが、クラブとして明確に「昇格」を目指しているからこその変化の必要性が迫られていることが感じられました。

・4-4-2②考察(2024シーズンの解答②)

 4-4-2①では、採用する可能性について言及しましたが、4-4-2②では、2023シーズンのように採用したくても断念する可能性はあるかどうかですが、2024シーズンも残念ながらFWに怪我人が多発すれば、諦めざる得ないのではないかと感じます。

 言い方を変えると、2トップに拘らなくても良いのではないかという事です。1トップでも十分得点力を期待できる可能性があるのではないかという事です。

 前線を見ていく中で、特筆すべき点は、9グレイソン選手と11太田 龍之介 選手の両ストライカーのできることが多い点にあります。厳密言うと、9グレイソン選手は、ペナルティボックスの中で仕事ができるタイプなので、サイドに厚い4-2-3-1でも活きそうですし、ポストプレーも得意な11太田 龍之介 選手は、3-4-2-1で、シャドーと連動した攻撃も期待できそうな選手です。

 99ルカオ 選手は、中央でという事もありますが、外から搔き乱して欲しいというのもありますし、29齊藤 恵太は、シンプルにスピードを活かして行きたいというのもあるので、起用法は、工夫したい選手ですが、今季の岡山は、組み合わせやシステムで、選択肢としてもなんでもありで、チーム状況に応じて、木山 隆之 監督のシステム選択と、試合の中での選手の判断で、自由に形を変える事も十分可能です。

 2023シーズンは、7チアゴ・アウベス 選手の怪我によって、断念した上で、勝ち点が伸びなかったことで、4-4-2の安定感よりも爆発力が求められる中で、ここでの採用が最後となりました。

 しかし、2024シーズンでは、チームのベースとして、なんでもできるという事で、1人の怪我で駄目になるという事もないだけではなく、拘る必要もないスカッドでもある。チームとして、ベストの選択ができるようにという中で、2023シーズンからの2024の解答として、強力なスカッドを揃えたという事が、2024シーズンの解答であると思います。


6、3-4-2-1(複数システム)~守備の切り札~


「システムの結果」
この期間の成績
1勝1分1敗(4得点4失点)

「試合結果」
※天皇杯を挟む※
26節(H)岡山 2-2 長崎△(3-1-4-2)
27節(A)熊本 1-2 岡山〇(4-4-2)
28節(A)清水 1-0 岡山×(3-4-2-1)

・複数システム考察(武器)

 この時期と言っても3試合ですが、ここでも1勝1分1敗とイーブンの成績で乗り越える事ができている。このことからも分かる通り、ある程度形を変えても自分達のサッカーができるというのが、2023シーズンの岡山の強みであったと言えるでしょう。

 多少は、やはり長くやるシステムよりも隙があったかもしれませんが、それでも最終的にプレーオフを争った長崎に引き分けてますし、熊本にもしっかり勝って、清水に対しても何もできなかったゲームと言われた中でも1点差ゲームにできた。これも紛れもない事実です。

 この強さからも分かる通り、28試合積み重ねてきたものをしっかり出せていたと言えると思います。岡山の何が悪かったというよりは、やはり得点力として期待されるストライカーの怪我人が出たことなどが誤算と語られていましたが、まさにこの辺りは、そういった時期であったのではないかと思います。

 しかしながら、それでもしっかり戦えるチームを作っていた。木山マジックというワードを言いにくいシーズンではあったと思いますが、現場として、ギリギリの所で踏ん張って、決断を繰り返して、覚悟を持って戦っていたという事が改めて、こうして振り返ってみると感じる訳ですが、だからこそ、勝ちたかったという試合も多く、悔しかったシーズンに感じます。

・複数システム考察(課題)

 やはり、複数のシステムを試して負けなかったとはいえ、対戦相手に応じて、戦術を変えるのではなく、自チームの都合によって、システムを変更していた側面が強く、チームのとしての戦術の幅を強さの維持にしか使えていなかったという見立ては、否定できないでしょう。

 だからこそ、ここを「対戦相手に応じて」の可変式という武器やシステム変更という武器で、「自分達のスタイルを体現するため」ではなく、「勝ちにいく目的」でのシステム変更で、勝利に繋げたかったシーズンです。

 清水戦の敗戦後に、器物破損という事件がありましたが、こうした現場レベルでのやりくりの難しさによる勝てない現実に直面し続けた事による重圧もかなりあっただろうと感じられた事件と言えます。

・複数システム考察(2024シーズンの解答)

 3-4-2-1は、実は2試合しか採用されていません。2試合しかないので、当然かもしれませんが、実は、唯一勝つことができなかったシステムです。そのためここでは、複数システムという形での考察にさせていただいていますが、3-4-2-1をベースに語りたいと思います。

 では、なぜ3-4-2-1の採用が少なかったかというと、後に重すぎるという点に尽きると思っています。現代サッカーでは「プレス」ではなく「ハイプレス」を基本戦術として、どのチームも高いレベルでできます。

 となると横並びのDFラインとサイドが一枚の布陣ではどうしても、プレスの絶好の餌食になり易いシステムとなります。

 では、どう打破していくかですが、サイドの選手の突破力やロングパスを織り交ぜることであると思っています。守備的MFやWBの選手のパスコースを完全に消してくるようなプレスのかけかた(もしくは、パスを誘導するようなかけかた)をしてくるチームも多くなっている。

 そうなると、やっぱりロングパスを蹴って、前線で収めることができないと、このシステムは苦しいと思います。プレスをかけたら、ロングパスで裏を取られると意識付けて、初めてビルとアップできる形と言えます。

 2023シーズンは、38永井 龍 選手は怪我で、18櫻川 ソロモン 選手もシーズン途中から不振に陥り、99ルカオ 選手も空中戦よりもスペースでの地上戦の方が得意な選手で、7チアゴ・アウベス 選手も体を張るタイプではないため、3-4-2-1でもロングパスを蹴り辛くどうしても重くなってしまう。

 いわき戦では、守備に特徴のある15本山 遥 選手の仕掛けが何度も引っ掛かり難しい試合になりましたし、清水戦では、守備から入ってくチームで、ロングパスにも強いですし、前からの守備強度もそれなりにあるので、ほぼ何もできないで、敗れてしまいました。

 そういった反省もあり、2024シーズンは、どの選手もロングパスのターゲットになれる選手が揃いましたし、2列目にも得点力のある選手が揃いました。

 実は、いわき戦と清水戦を見て頂ければ分かる通り、2列目には、得点力あるMFの選手が配置されています。ここから見えてくるポイントとして、4-3-1-2のように、前三枚で、得点しようという狙いを秘めていることが見えてくると思います。8ガブリエル・シャビエル選手、19岩渕 弘人 選手、10田中 雄大 選手というMFタイプのシャドーでもありですし、FWの選手を当て嵌めても良いですし、WGタイプを絡めて、外からの形を作ってもいいでしょう。それこそ、2023シーズンには採用しなかったパサータイプのお膳立てタイプの44仙波 大志 選手や14田部井 涼 選手、ルーキーの25吉尾 虹樹 選手のような選手でも面白いかもしれないですね。

 サイドに関しては、攻撃的な選択肢として、42高橋 諒 選手、19木村 太哉 選手、16河野 諒祐 選手。バランスタイプとして、17末吉 塁 選手、2高木 友哉 選手、88柳 貴博 選手。守備的なタイプとして55藤井 葉大 選手と18田上 大地 選手、15本山 遥 選手と選択肢も増えました。

 チームとして、選択肢が増えた事がここから分かるのではないでしょうか。ここまで、スタートからということで、攻撃の形を意識して触れてきましたが、サイドでタイプ別に話した通り、5バック気味に戦う守備固めも有力な選択肢となっていることが分かります。

 2024シーズンの解答としては、スタートから戦う上でのロングパス主体の攻撃とサイド攻撃のどちらでもそれなりに戦える事で、重心が軽くなり、パスでの前進以外で、前でプレーする手段が増える事で、攻守一体を兼ねることができる守備固めとしても有力な形にできたと言えるでしょう。

 2試合だった採用試合数も大幅に増える可能性は極めて高いシステムと言えるのではないでしょうか。


7、3-1-4-2 Part②(新たな色)~繋ぐ運ぶ邁進~


「システムの結果」
3-1-4-2②の成績
5勝4分2敗(13得点13失点)

「試合結果」
29節(H)岡山 1-3 町田×
30節(A)大宮 1-1 岡山△
31節(H)岡山 1-0 大分〇
32節(A)東京V 2-3 岡山〇
33節(A)いわき 1-2 岡山〇
34節(H)岡山 1-0 仙台〇
35節(A)山形 2-0 岡山×
36節(H)岡山 2-1 磐田〇
37節(H)岡山 0-5 千葉×
38節(A)群馬 0-0 岡山△
39節(A)山口 2-2 岡山△
40節(H)岡山 1-1 栃木△

・3-1-4-2②(武器)

 この時期は、チームとしてのピークがあった訳ですが、木山 隆之 監督の出場停止という岡山史上初めての試合でした。試合は、首位の町田への完敗であった訳ですが、チームとして、23ヨルディ・バイス 選手を外して、3-1-4-2に再トライするといった試合でした。

 これが、木山 隆之 監督が、外から見てみて、今回はやれる可能性を感じた試合にもなったと思っています。ここから大宮との引き分けを挟んで4連勝できる訳ですが、23ヨルディ・バイス 選手を外して、DFラインに15本山 遥を組み込むという決断を下しています。

 ここから大きくというか、ついに明確な「繋ぐ・運ぶ・邁進」という主導権を握るサッカーができた。残念なことにクラスターにより、ベストメンバーを組めなかった事で、山形に敗戦してしまい流れが切れてしまった。そして、あの千葉戦で、自信と共に、このスタイルを打ち砕かれて、そこから大失速で、最終節待たずして、プレーオフ圏外が確定しました。

 ビルドアップでも戦えるよという自信を深めることができたので、これは間違いなく、2024シーズンへと繋がる時期と位置付けても大丈夫でしょう。ただ、繰り返しとなりますが、今季の岡山がしたかったサッカーができた試合は、2023シーズンに果たして何試合あったのだろうかという事です。

 現場レベルの工夫で、善戦したことで、最後まで望みを繋げる事ができた。ただ、シーズンを通して、何か足りない状態を工夫により乗り越えてきた。そのため生じる隙も大きかったが、ほぼベストを尽くして、全試合戦って来たシーズンだったかなと改めて感じますね。 

・3-1-4-2②(課題)

 ビルドアップの弱点として、メンバーを固定しないとなかなか難しいという側面が強かった事を露呈した時期でもあったかなと感じています。ビルドアップアップは、2022シーズンの新潟を観てもそうですが、スタイルを完成形に導くには、それこそ数年単位必要であると思います。

 それを11人(後半は別のサッカー)でやりきったのが、岡山ですが、何かあった時に、脆さが出てしまう。それが山形戦であった。ただ、今季は、本当に怪我人が多く、一部の選手に負担が掛かっていた時期も多かった。それでも、日替わりのヒーローが出てきて、新たな課題と共に、新たな武器が見つかってというシーズンでもありました。

 雉球さん(何度もお名前をお借りしてすいません。)も今季のストーブリーグとかでも言われていましたが「繋ぐ」に捉われないのではないかと仰られていました。これは、まさに振り返ってみて、私も強く感じた所ではあります。

 今季は、自分達の形を体現するに留まってしまったシーズンであったかなと改めて感じています。来季こそは、相手をより意識したサッカーができたらなと強く感じます。

・3-1-4-2②(2024シーズンの解答)

 ①では、骨太となったチームの中で、採用が増える可能性と減る可能性の両面について言及しましたが、パート②では、「繋ぐ・運ぶ・邁進」のポゼッション色についての課題についての解答についてより深く言及していきたいと思います。

 実は、この部分に関しては、「繋ぐ・運ぶ・邁進」を狭義の意味で捉えると、現状維持に近いのではないかと感じています。細部に触れて行くと、中盤は、アンカー(AN)適性(守備がでのある選手(守備もできる選手)が、5選手(6輪笠 祐士 選手、7竹内 涼 選手、24藤田 息吹 選手、15本山 遥 選手、20井川 空 選手)となったこと。このアンカー適性の選手の中には、IHもできる選手がいること。そして、IHでの得点力のある19岩渕 弘人 選手と8ガブリエル・シャビエル 選手が新たな選択肢となった事で強力となっている事が分かりますね。

 恐らく、パスで繋いで、キープしつつ前進して、厚みのある攻撃もできるというベースの部分は、地味ではあるが、強力となった上で、縦パスやスルーパスをアンカーの所から劇的に増えるという所やパススピードが劇的に良くなるという点に関しては、過度に期待こそできないだろうとは思いますが、本当に「骨が太くなった=怪我に強くなった=長いシーズンを戦えるスカッド」という印象を抱いた。

 一方で、広義の意味で、FWやDFラインに向けて「繋ぐ・運ぶ・邁進」を考えてみると、サッカーのスタイルを強化したというよりは、弱点を克服したという表現の方が適切であると言えそうです。

 FWに関しては、2023シーズンの終盤に減ったロングパスが有力な選択肢となり得るターゲットとなるストライカーやスペースへ走れる選手もより揃った。サイドからパスで崩していた攻撃に関してもペナルティボックス内での仕事できるボックスストライカーとして仕事できる9グレイソン 選手と11太田 龍之介 選手の加入で、WBや外に流れたIHの選手からのクロスや2トップ一角の99ルカオ 選手や29齊藤 恵太 選手のクロスから頭という形での得点パターンも増えそうな点が、2024シーズンの新たな武器と言えるでしょう。

 DFラインに向けると、繋ぐサッカーの新潟から来た18田上 大地 選手こそビルドアップが期待できるものの180cmとサイズもある通り、どちらかと言えば、屈強なディフェンダーが増えた印象。秋田から復帰した4阿部 海大 選手は、自信を取り戻し、自由を奪う守備と秋田スタイルの軸となるロングパスを武器として磨いて復帰した。88柳 貴博 選手も5柳 育崇 選手に負けない長身でありながらスピードもあり、WBやSBもでき、右足の精度の高いクロスも武器なので、ロングパスも期待できるかもしれない。ルーキーの55藤井 葉大 選手に関しては、高卒のルーキーとは思えない心技体で、「不動」という言葉がしっくり来る安定感があり、既にハイレベルにでき上がっている選手と言えるでしょう。

 GKに関しては、49スベンド・ブローダーセン 選手という足下に不安こそあるものの抜群のシュートへの反応からの守備範囲の広さを武器に”J2”屈指ではなく、”Jリーグ”屈指のセーブ率を誇るGKが加わった。2023シーズンのように後から繋いでというよりは、危ないと感じたらアバウトに前線に蹴っていくというプレーが中心の試合も増えそうではありますが、先ほどFWでも触れた通り、アバウトなボールでもチャンスになっても不思議ではないですし、ターゲットになりえるFWでありながら、ハードワークできる選手やスピードのある選手なども多く、2列目の選手を含めて、セカンドボールの回収やファーストディフェンスの強度の高さも期待できる。

 DFラインは、基本的にロングパスからボールを失っても跳ね返せる選手が揃った事で、ロングパスの「ボールを失うリスク」や「守勢に回るリスク」を、小さくできそうなうえに、中盤も分厚くなっていることから、ハードワークによる、シーズン通しての各選手の負担も軽減も期待できる点も強みと言えるでしょう。

 怪我に強い選手を集めるだけではなく、「怪我に強い編成=負担を分散できる編成」とできていることを2024シーズンの新たな武器だと感じます。

 野球の打法で例えるのであれば、「繋ぐ・運ぶ・邁進」のパスの成功率やボール保持率の確実性のある打率の高い「振り子打法」のみであったのが、ロングパスが増えて、攻守でのプレー強度UPしたことで、「一本足打法」のパワーも付いた。

 「一本足打法」から「振り子打法」へシフトしたり、「振り子打法」から「一本足打法」のように溜めてからスイングに移るみたいな、良い所取りができるような「心技」であった2023シーズンから「心技体」の2024シーズンへと、パワーアップした。

 3-1-4-2②の2024シーズンの解答としては、「骨太編成で、弱点克服」と表現でき、3-1-4-2の「繋ぐ・運ぶ・邁進」を間接的に強化できていて、これは、他のシステムにも当て嵌まる共通の強化できたポイントと言えるでしょう。


8、3-1-4-2 Part③(想いの継承)~結束と結実~


「システムの成績」
3-1-4-2③の成績
0勝1分1敗(1得点3失点)

「試合結果」
41節(H)岡山 0-2 秋田
42節(A)金沢 1-1 岡山

・3-1-4-2③(武器)

 プレーオフが消滅した中で、来季に繋げるというテーマの下で、戦った2試合でした。5柳 育崇 選手は、肋骨骨折していたという事で、無理をすることなく、シーズンを一足早く終えました。

 秋田戦は、力及ばず2年連続で、敗れてしまう事になりましたが、金沢戦は、20井川 空 選手が、少ない時間でアピールに成功し、完全移籍を勝ち取り、38永井 龍 選手も今季初ゴールを含めて、ポストプレーが光り、岡山の契約満了からの北九州への移籍を勝ち取れた試合になりました。

 23ヨルディ・バイス 選手から4濱田 水輝 選手に交代する際の抱擁は印象的でしたが、この2試合を最後に岡山を去った選手も多かった中で、残ってくれた選手も多かった。色々と辛い2試合でしたが、金沢の降格を含めて、J2の厳しさも感じた試合となりました。

・3-1-4-2③(課題)

 やはり、ベストメンバーで無かったとはいえ、勝利で終える事ができなかったこと。出場機会の少ない選手も出ていたとはいえ、やはり主軸選手との差が大きかった事は明確であったと言えるでしょう。

 昇格を目指す上での選手層が薄かった点は、2023シーズンの課題でもありました。また、FWの38永井 龍 選手のパフォーマンスを考えた時に、彼が不在であった影響の大きさも感じました。

 長いリーグ戦を戦い切れる強靭な選手層は、昇格を目指すためには、必要不可欠と言えます。

・3-1-4-2③(2024シーズンの解答)

 あえてストレートに言いましょう。2023シーズンに契約満了となった選手の多くは、「試合にあまり絡めなかった選手=戦力としては貢献できなかった選手」が多かった。しかし、どの選手もサポーターに、岡山を離れる事を惜しまれた選手が多かったですし、選手自身も涙する選手や別れを惜しむ選手も多かった。

 そして、試合に絡めない中でも、各自ができる事を考えて、チームのために尽くしてくれた選手ばかりでした。こうした選手の想いは、主軸として活躍していた若い選手にも伝わり、同じようにベンチや関係者席から見守っていた選手も、勝利のために、昇格のために、という気持ちが1つとなり、岡山での2024シーズンもプレーするという決断に繋がった選手もいるのではないでしょうか。

 スタジアムの雰囲気が良いとか、サポーターが優しいとか、クラブが信頼できるという表だって理由も確かに大きいですが、恐らく一番大きかった事は

「1つの目標に対して、クラブ・チーム・サポーター・スポンサーがココロヒトツニできていたこと」

 こういった気持ちを一つに「結集」し「結実」した編成にできた。それが、2024シーズンのファジアーノ岡山のストーブリーグの解答である。

 選手の契約を見てみると、24選手が、完全移籍を含めて、完全に岡山所属の選手で、新人選手の4選手全てが、実績と実力十分の選手で、最後に発表された44仙波 大志 選手に関しては、期限付き移籍延長であったことから広島との契約が、残っていた可能性も高い。

 基本的には、不退転の覚悟というか、期限付き移籍のチームに戻る選択肢を断った選手や愛着のあるクラブとの契約更新ではなく、岡山の挑戦を選んでくれた選手や出場機会や選手としての評価である待遇面よりも岡山での挑戦を選んで、復帰してくれた選手、他クラブからのオファーを断って岡山に残ってくれた選手も多い。

 引き抜き0で、岡山がほぼできる中で、ベストの選手が揃った。このストーブリーグを100点満点のストーブリーグと言わずして、いつのストーブリーグを100点と言えばいいのかと言えるぐらいのスカッドが揃ったと言えます。

 後は、結果を残すだけという状態にできた。既存のスポンサー様だけではなく、新たに鎖骨部分のスポンサーになって下さった企業もあり、プレミアリーグへと昇格したユースのスポンサーになって下さった企業もある。

 こうした2024シーズンのユニフォームのテーマである「うねり」を強く感じますよね。

 だからこそ、「今季こそは昇格という想いの基に結束し、結実のシーズンとしたい」ですね。

 2023シーズン(既に2024年ですが…)の記事も最後まで読んで下さり有難うございました。2024シーズン(既に多くの記事が公開してますが…)の記事もよろしくお願いいたします。

文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino


筆者紹介
 冷静さと熱さを両立した上で、自分の感じた事を自分の言葉で表現することを大事にしている。ハイライトやテキスト速報をレビューを書くために確認するが、極力SNSは、情報を遮断して、レビューを執筆している。流石に通知なので、軽く目にすることこそあるが、綿密に分析するというよりは、サッカーというスポーツの魅力を発信することを一番大事にしており、ファジアーノ岡山だけではなく、対戦クラブにも最大限のリスペクトの気持ちで、サポーターとの交流や魅力を語り合うことが好きで、レビューを書き始めて、中断期間や書けなかった試合もあるが、10年以上、ファジアーノ岡山を中心にサッカーのある生活をエンジョイしつつ、応援してきた。


9、アディショナルタイム(ファジ造語)


力を出し切る三原則
「決め切る・勝ち切る・逃げ切る」という課題と語ったGMの服部 健二 氏の言葉から想起した「力を出し切る三原則」という2024シーズン第一弾のファジ造語とさせていただいた。来季を観て行く上で、勝利するために、チームがどう強くなったのか、是非、結果から「力を出し切る三原則」をクリアできているか注目したいですね。


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