2024ファジアーノ岡山にフォーカス31『 届いた矛と崩れた盾~矛盾の奥にあったもの~ 』J2 第18節(A)vsジェフユナイテッド千葉



1、敗戦を覚悟した中で~成長と前進~


2024 J2 第18節 ジェフユナイテッド千葉 vs ファジアーノ岡山
2024年06月01日(18:03kick off) フクダ電子アリーナ

 千葉のメンバーを観た時に、「これはほぼベスメンバーの千葉だ。」という印象を抱いた。それこそ2006年に開催されたドイツワールドカップ大会で、当時の日本代表の監督であったジーコ氏が、ブラジルのメンバーを観た時に、「これはほぼベストメンバーのブラジルだ。」と、ショックを受けたように、私もまたショックを受けた。それこそ、主審の方が、高崎 航地さんであった以上に、厳しさを覚えた。

 しかし、試合後に私は、敗戦に悔しさを覚えていた。それは、内容的には劣勢の試合でこそありましたが、このメンバーの千葉に善戦できていたからです。結果的にチーム状態の差が出たうえでの敗戦と筆者は位置づけていますが、具体的な言及に関しては、後述していきたいと思います。

 このレビューで一番伝えたいことは、仮にプレーオフに進出できたとして、フクアリで高崎 航地主審という状況で、千葉と戦うという条件であったあとしても、今の岡山のポテンシャルを考えれば、筆者は戦えると胸を張って言えるということ。

 「成長と前進」を感じたからこそ、その先の新境地の開拓や門の突破の一筋の光が差し込んできたかのようであった。

 千葉のサポーターの方に、「それはない!」と言われても、岡山のサポーターであれば、そう自信を持っても良いでしょう。


2、三枚の盾に襲い掛かる四本の矛~数的不利~


 筆者は、千葉に岡山の3バックのサイドを何度も抉る切れ味鋭い高速カウンターを受けながら、「岡山の堅守は攻略されている。」という認識を持っていました。

 17番 末吉 塁 選手や88番 柳 貴博 選手が、守備対応するシーンも少なくありませんでしたし、千葉の高速カウンターに帰陣が追いつかず、岡山の守備として、デュレイ(攻撃を遅らせる守備対応)という選択しかできないというシーンが、今季で最も多かった試合に映りました。

 個の力や組織的にそういったシーンに近いことも多かったですが、この試合では、個の力でも組織力でも岡山の守備は、千葉の攻撃に上回られた試合でした。

 個の力では、岡山が守備のチャレンジ(ボール奪取やブロックのアクション)をした時に、入れ替わられるシーンや止められないシーンも何度かありました。

 組織力では、千葉がボール奪取後に素早く前線につけると、岡山の3バックに対して、千葉の前線と2列目の選手が、疑似的4トップのような形で、5つのレーンではなく、4つのレーンを直線的に快速を飛ばして、岡山のゴールに襲い掛かっていました。

 恐ろしいことに、千葉の4選手は、快速アタッカーで、岡山のDFラインの裏からクロスが、残りの3人の誰かに上がってくるのです。つまり、オフサイドがなく、複数のターゲットへの対応の難しいマイナスのクロスへの守備を何度も迫られていました。

 流石の岡山でも、どこかバタバタしたように映ってしまう守備対応が迫られていました。決定機的に4-1となっていても不思議ではなかったですが、千葉の決定力不足に助けられたこともあり辛うじて堪えていると、19番 岩渕 弘人 選手のゴールで同点に追いつくことに成功しました。

 千葉のカウンターが、サッカーの本質的な戦術的攻撃のカウンターであれば、岡山のカウンターは、内容の劣勢の中でのゲームカウンターと言えるでしょう。

 強いチームは、こうしたワンチャンスをものにできる決定力があります。これで試合は分からなくなった。まさにそういった得点であったように(この時はまだ)思っていました。

 3枚の盾で4本の矛を完全に防ぐということはできなかったですが、両翼をその分、攻撃に回したことで、こちらの矛も千葉に届いた。数的不利の守備は、攻撃のために、まさに自分たちのサッカーで、千葉に対して、フクアリで木山ファジは、勝ちに行っていたのですね。

 次章では、ここから勝負を分けたポイントについて語っていきましょう。


3、破られた背水の陣~大雨と猛攻~


 「この章のタイトルはいったいどういった意味ですか?サッカーのレビューですよね?」という声が聞こえてきそうですが、もちろん意味があります。それをこれから説明していきましょう。

 現在の岡山のDFラインは、この試合の3選手のみと言っても良いでしょう。55番 藤井 葉大 選手も適正こそありますが、リーグ戦では現状は左CBというよりは、左SBや左WBに近いでしょう。

 そういったこともあり、岡山のDFラインは、例え千葉の攻撃に対応できなかったり、イエローカードが出ていて、内容的に対応できていない試合でも選手を変えることで、好転させることができない。

 もし、少し前みたいにリザーブメンバーに5番 柳 育崇 選手が、控えていたならば、18番 田上 大地 選手に代えてという選択肢もあったかもしれません。

 流石に後半の19分での退場ですので、「そのタイミングまでに交代を決断できる?」という部分はあるんですが、強いチームというかチーム状況が良くて、選手層が厚いチームというのは、(18番 田上 大地 選手が、千葉のスピードに対しての守備対応で後手に回るシーンが多かった、スピードに付いていけなかったという)不安要素に対して、先手を打って交代することで消すという選択肢ができるものです。

 だからこそ、もし選手層が厚い状況であれば、18番 田上 大地 選手の退場というのは、防げたかもしれない退場であったのです。

 「窮鼠猫を噛む」や「背水の陣」といった部分は、まさに今の岡山を表現する上で、これ以上ない表現ではないでしょうか?

 岡山の『 *1*三枚の盾 』や『 *2*三位一体の攻撃〜心技体〜 』といったものは、追い込まれたことと、チームが1つとなった上で、選手編成上での選手層の厚さが活きた形で、生まれたものでもありますが、チームとしてリスクを受け入れた上での戦いでったことが突きつけられた試合でもありました。

*1* 2024ファジ造語No.23
『 三枚の盾 』

 24シーズンにおける守備におけるピッチ内での精神的支柱である3選手。中盤でチームを1つにするキャプテンである7番 竹内 涼 選手。23シーズンのキャプテンで今季の副キャプテンである熱き真っすぐな5番 柳 育崇 選手。開幕から守備を統率するDFリーダーである18番 田上 大地 選手。この3選手が揃った時には、劣勢の苦しい試合でも粘り強く守り、各選手の役割を明確にした上で、選手の持っている守備力を引き出せる。そして、声かけやコーチングも的確で、守備の判断の正確性と90分間やるべきことを徹底する集中力と簡単には折れない粘り強さを実現。毛利元就氏の「三本の矢」が有名だが、岡山には攻撃も批判も責任も3人で受け止めることで懐の深くなる「三枚の盾」がある。

*2* 2024ファジ造語No.24
『 三位一体の攻撃~心技体~ 』

 個性を攻守で大事にする木山ファジにおいて、岡山スタイルという戦術的なスタイルは、3-4-3という並びのみに留めて、統一性や相手の良さを消したり、弱点を突くのではなく、基本的な形と簡単な方針のみを決めて、尖った個性を前面に出すで対応させない攻撃や総合力や個の力、そこに連携や気持ちを乗せて、得点に繋げるスタイル。今の前線を任される3選手はまさに「心技体」の個性が光るタイプの違う3選手の力でゴールを目指す。

 つまり、見方を変えれば、DFラインであれば、代わりの選手が不在の中での戦いを強いられた中で、逆に連携や意識の上での相乗効果「窮鼠猫を嚙む」のように、強いチームに勝つことができた試合や、引き分けという結果を手にすることができていた。

 しかし、この試合では残念ながらカードが出やすいという大雨により、背後の川が増水したことで背後がより狭くなり、より窮屈な試合に追い込まれる形で、18番 田上 大地 選手が、増水した川に飲まれるように退場してしまい、前面からは、千葉の猛攻を受けた。

 陣形を整えて建て直せばまだ粘れたかもしれないが、千葉の電光石火の攻撃で勝ち越し点を許してしまった岡山。

 まさに、岡山の「背水の陣」の限界を超えた極限の中での「大雨と猛攻」を受けて、試合がまさに決した瞬間であった。そう、その時に歴史(スコア)が動いたのだ。


4、白壁微瑕(はくへきのびか)~ジェフユナイテッド千葉~


 ファジアーノ岡山にとって、フクアリでのジェフユナイテッド千葉は、完全無欠のような強さを誇っていた。

 しかし、この試合に関して言えば、チーム状況に反して、勝機もあった試合に感じた。高崎 航地 主審の恐らく誤審と言える22番 佐々木 翔悟 選手の退場もあり、勝ち点を手にできる可能性(流れ)もあった。

 そう、岡山としても千葉に対して、打開策があった初めてのフクアリでのリーグ戦での試合に感じています。もちろん、千葉が、得点になったシーン以外での決定機を外してくれた側面ももちろんありますが、千葉にも隙がありました。

 具体的には、ボールを保持することが苦手ということにある。驚異的な疑似的4トップの代償として、前線からDFラインまで間延びしている。そのため、ボール保持する上で鍵を握る中盤での距離感を維持できないという弱点を抱えている。

 岡山の『 三枚の盾 』を無力化をも可能とする驚異的な攻撃の形と、その攻撃を可能とする攻撃のタレントが揃っていて、『 三位一体の攻撃~心技体~ 』の体の99番 ルカオ 選手をほぼ完封できる40番 メンデス 選手のような屈強な選手がDFラインにいる。

 しかし、数的優位を活かしきれるだけのあえて試合を落ち着かせるような戦い方が千葉には不得意であったようだ。

 岡山は、失点こそしたものの守備時に5-3-1とこれ以上の失点をしない形で、食らいつく形で打開策を探りつつ、4-3-2に切り替えて、勝負に出た。

 もう少しでという反撃を見せるも届かなった岡山の攻撃。最後は届かなかった。

 フクアリでの千葉は、やはり強い。でもこの試合は、もしかしたら勝てたかもしれない。そういった悔しいという感情が心を支配した。

 勝てる気がしなかった絶望でしかなかったフクアリ。

 今季もフクアリでの千葉は強かった。

 運もあったけど岡山も戦えていた。

 完全無欠に思えたフクアリでの千葉に対して初めて白壁微瑕(はくへきのびか)があると感じられた。

 笑われるかもしれないけど、岡山にとってはかなり大きな一歩。

はくへきのびか【白璧微瑕】
白い珠たまのわずかなきずの意から、立派な人物や物にあるわずかな欠点。

goo辞典
URL:https://dictionary.goo.ne.jp/word/白璧微瑕/

5、岡山の未来に福有りと信じたい~結集~


 岡山は、今季もまたリーグ戦で、フクアリで敗れた。色々と語りたいことはあると思いますが、何より嬉しかったことがあります。

 フクアリに1000人ものファジサポが集まったことです。関東在住のファジサポの方が多かったということもあると思いますが、それでも岡山から足を運んだ方も多かったはず。

 そして、本来であれば、勝ち試合がみたいという方も多いと思いますし、観光したいという理由で遠征を決める方もいます。

 しかし、この試合に関しては、「フクアリで勝てるかもしれない。」そういった期待を抱いた方も多かったのではないでしょうか?

 残念ながらいつものように、フクアリでファジは負けてしまいました。sかし、私はだからこそ言いたい。そう思えたファジの強さは本物ですし、この試合の岡山は強かった。岡山らしさを出し切れなかったかもしれませんが、最後まで勝利を目指して戦えた試合であったと思います。

 どんな相手でも勝ちに行く。退場者も出て、千葉の猛攻を受けた試合でしたが、この試合の岡山は、千葉に対して、堂々と戦えていたと思います。

 近年の千葉には、ホームでも絶望に近い悔しい敗戦が多いですが、今季の岡山はやはり違う気がする。

 過度に、持ち上げて期待を高めると、この試合の私のように落ち込むかもしれません。

 でもそれで良くないでしょうか?

 映画やドラマのように恋愛、アクション、サスペンス、歴史とか色々と決まったのを観に行くのも良いですが、何が起こるか分からないのが、サッカー観戦というかスポーツ観戦の魅力ですよね?

 喜怒哀楽。喜んで怒って哀しんで楽しみましょう。

 ファジの勝利を喜んでいいんです。

 不甲斐ないチームに(ちょっとだけ)怒っていいんです。

 恥ずかしいけど目から何か零れ落ちるほど哀しんでいいんです。

 それを込みで、サッカー観戦をスポーツ観戦は楽しいんです。

 そういった体験のために、1000人もフクアリに結集した。

 本当に嬉しいことですし、誇りに思います。

 一巡目最後の試合を勝利で終えることで、再び流れを作れるように、皆さんとまたCスタで会えることを楽しみにしています。

 最近合言葉になってますが、本当に良い言葉だと改めて感じています。

 ココロヒトツニ!

文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino

PS
次節の18番 田上 大地 選手の代役の選手が、誰になるか楽しみですね!
後、10番 小森 飛絢 選手の落ち着きと技術はえぐかったですね。
岡山の10番 田中 雄大 選手も負けてない!ってとこがみたいですよね!

・アンケート




筆者紹介
 冷静さと熱さを両立した上で、自分の感じた事を自分の言葉で表現することを大事にしている。ハイライトやテキスト速報をレビューを書くために確認するが、極力SNSは、情報を遮断して、レビューを執筆している。流石に通知や開いた時などに、偶然に目にすることもあるが、綿密に分析するというよりは、サッカーというスポーツの魅力を発信することを一番大事にしており、ファジアーノ岡山だけではなく、対戦クラブにも最大限のリスペクトの気持ちで言葉にしている。同時に、サポーターとの交流や魅力を語り合うことも好きで、レビューを書き始めて、中断期間や書けなかった試合もあるが、10年以上、ファジアーノ岡山を中心にサッカーのある生活をエンジョイしつつ、応援してきた。同時に、数少ないから岡山問わず、交流のできたサポーターもいて、「趣味」という「生活」の一部になっていて、サッカー観戦を心より楽しんでいる。


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