2023ファジアーノ岡山にフォーカス29『 新陳代謝と継続の決断~非情と有情~ 』J2 第19節(H)vs徳島ヴォルティス
1、木山 隆之 監督の決断~マジックの裏~
監督が、スタメンの11選手とリザーブの7選手を選出すること。これは、簡単なことではない。チームとして勝利を目指すためには、実力や戦術理解度、攻守のバランス、対戦相手などに応じたメンバーの選出が的確でなければ、チームとして機能せず試合に敗れる原因となってしまう。
そして、選手の状態を見極めを誤れば、選手の持っている力を出す事ができなかったり、怪我に繋がってしまう可能性もある。監督として、一番に意識すべきことは、選手が怪我をしないように、細心の注意を払って、観察することで選手のコンディション見極めることだ。それは、選手が現在の所属クラブを離れる事があっても、次のクラブでプレーする時に影響がでてしまい、その選手の未来の道への影響が決して小さくないからである。
また、勝利だけを追い求めすぎると、チームとしての成長曲線は頭打ちとなり、いずれ下降線を辿る可能性も生じてしまう。
つまり、監督として42試合をどういった選手達で、どのような戦い方を選択するのか。それは、今季だけの成績ではなく、来季以降にも繋がる。チーム数が少なくて、同じチームとの試合数が100試合ぐらいある野球では、特に毎試合の選択によって、中盤から終盤のチームの状態や次のシーズンのチーム状態への影響が大きいスポーツだ。だからこそ、野球に毎年多くのドラマが生まれる。
対するサッカーは、1試合の重く、90分間という短い試合で、勝利を目指さないといけない。修正できる期間や準備する期間があるようで、現場にとっては、想像以上に短く感じるかもしれない。
野球のスコアとサッカーのスコアの違いのように、監督の決断の重みは、どちらのスポーツでも重く圧し掛かるが、野球は積み重ねの重み、サッカーは、1つの選択の重みをより感じるスポーツだ。
改めて、監督として簡単ではない選択を繰り返す木山 隆之 監督は、監督向きの監督であると感じる。その理由は、チームを良くするために、決断を躊躇いもなくできるからだ。常にチームが良くなるための化学変化を探している。
主軸であっても早い時間帯に下げる事や勝利のためにベストであれば、メンバー外にする決断を下すことも少なくない。選手層が厚くなったこともあるが、これだけフォーメーションや選手の入れ替えを繰り返す監督は、岡山史上で、初めてと言っても良い。
何故、始めにこの試合の話をするかというと、天皇杯を挟むといってもこのメンバーに23ヨルディ・バイス、22佐野 航大、48坂本 一彩を入れて行くという選択肢を考えていく必要があるからだ。
復帰時期は不明だが、6輪笠 祐士が戻って来た時にどうするのか。9ハン・イグォンをこのまま、メンバー外の状態を続けるのか。38永井 龍や19木村 太哉の長期離脱の選手が戻って来たらどうするのか。夏休みで、合流が予想される藤井 葉大君の大抜擢はあるのか。
今後の木山 隆之 監督には、多くの決断の時が待っている。6月7日の天皇杯を経て、3位につける東京Vに対して勝利できれば、1差に迫るチャンスでもあり、プレーオフ圏内から自動昇格を狙える順位も視野に入って来た。天皇杯を勝ち抜くこととリーグ戦で昇格を目指す必要があり、難しい決断となるだろう。
本稿では、上記の部分を意識しつつ、読み進んでいただきたい。
そして、もう1点。本編に入る前に、木山 隆之 監督の公式コメントも紹介したい。
こちらが戦い方も重要だが、選手の気持ちの部分の重要性を語っている。
こちらは、選手を「選ぶ」難しさに言及しつつも勝利だけに走らず、選手の気持ちを汲む意識も感じ取れる。
こういった決断が、この試合の勝利へと繋がった。こういった決断の上で、勝利と気持ちのバランスの難しい舵取りを行い、勝利の先を見据えている。本編では、より具体的な部分にフォーカスを当てて、レビューを作成した。よろしくお願いいたします。
2、徳島への強い警戒感~リスペクト~
23バイスが不在であったとはいえ、この試合の岡山は、開始から3バックのスタートを選択した。これは、今季の徳島のサッカーへの分析からの対策と22シーズンのアウェイ徳島戦での完敗があったからこそ、かなり意識しての対策であったことが予想される。
22シーズンでワーストゲームというか一番完敗した試合は徳島戦であった。22シーズンも徳島対策があったかどうかも分からないぐらい岡山のサッカーができなかった。
23シーズンでの岡山のホームで迎えたこの試合。岡山は、5-3-2の守備ブロックで、徳島のゴール前で、自由にプレーできるスペースを消す作戦を選択した。
23ヨルディ・バイスの代役は、4濱田 水輝ではなく、15本山 遥であったが、その狙いは、見事に当たった。
岡山は、ロングパスを跳ね返す空中戦の強さやゴール前でのデュエルの強さよりもスペースを埋める強さやパスワークに対して、カバーや反応できる選手でDFラインを組んだ。
もちろん、最後の壁の部分で5柳 育崇の空中戦の強さや圧力の強い寄せという守備の部分ではなく、パスやシュート、クロスとして壁となる体格の良さもこの試合では武器となった。まさにキャプテンとして、GKの前の防衛線の壁を構築し、心身のDFリーダーとして、素晴らしい活躍を見せた。
15本山 遥と43鈴木 喜丈もゴール前のブロッカーとして、パスワークやドリブルに対して、強く対応。パスがカットされるシーンが何回かあったが、守備面では、この試合のタスクである「対パスワーク」と「対ドリブル」の部分で、無失点であった通り、ほぼ満点の解答であったように感じた。
15本山 遥は、今季初の右CBでの出場となったが、どういった事を意識していたのか?公式コメントでは、次のように答えている。
やはり「自由にやらせないところ。」ここを強く意識していた事が分かる。また、個人ではなく、「3人で協力して守るところ」も意識していた事もポイント。ここが、初の3人の並びであったが、巧く機能した理由の一つと言える。今後の岡山の選択肢の一つの成り得る形となったことは、岡山として大きなプラスで、新たな武器が増えた。
左右のCBがSBもできる選手という事もあり、ポジションを離れる対応やカバーリングの意識、1対1の強さは、非常に安定して、組み立ての部分でも、岡山が主導権を握るというか、前に運ぶ上で、持ち上がるプレーやパス交換や素早く展開できるポジション取りの良さも際立った。まさしく伸縮自在のスポンジのような守備対応が出来たと言える。
この最も恩恵を受けたのが左右のWBで、特に16河野 諒祐は、WGのタスク以上のプレーもできていた。サイドの深い所で受けて、徳島の対峙する選手の虚を突くフェイントや裏を取る動きで徳島の右サイドを切り裂いた。
自由に攻撃できる機会が多かったことで、クロス精度やシュートも良い形で打つことができていた。アシストこそ記録できなかったが、右サイドで効果的な上下動ができた彼にとってのベストパフォーマンスに近い素晴らしい働きであった。
15本山 遥が後にいることで安心感に繋がった。パス交換のスムーズさや対応できる守備範囲の広さからその存在の大きさを感じた。
実際に、16河野 諒祐は、次のような手応えの感じたコメントを残している。
「ボックス付近でしごとしたいなと思っていました。」ここが、本音であることは間違いなく、サポーターの間でも、16河野 諒祐は、攻撃の場面が多い試合こそ、16河野 諒祐の良さが出やすいと感じている方は多いだろう。
また、逆サイドの2高木 友也もサイドの深い位置に進入していくプレーも多く見る事ができて、サイドからの仕掛けは、90分間通して有効であった。そして、守備時の5バックは、スペースを消して、徳島のパスワークの自由を許さなかった。
まさに攻守のバランスが比重に優れていた。
DFラインの前の中盤に目を向けると、驚異的な運動量の44仙波 大志と14田中 雄大が、攻守に縦横無尽に走り回り、攻守でのアグレッシブさに磨きがかかっている。27河井 陽介が、技術でバランスをとることで、持続可能な攻撃の厚みと守備ブロックを構築し、攻守での主体性をチームに生み出す事ができている。
そして、この試合では、16河野 諒祐と2高木 友也が、WBとして中盤の守備に参加することで、中盤での徳島の自由を著しく制限することができた。
ただ、それだけで主導権を握れるほど、徳島は簡単なチームではない。それでも主導権を握る事ができたのは、27河井 陽介のテクニック、44仙波 大志のテクニックとアジリティ、14田中 雄大のアジリティ。近いようで全く違うとも言えるプレースタイルの3人が特性を活かして、「前を向くプレー」ができたからだ。
守備時には、DFラインでも5人、攻撃時には中盤でも5人という数的優位の状況を、左右のWBが上限動するという運動量と選手の特性を巧く組み合わせる事で、チームとして、組織として巧く機能させることができたのだ。
DFラインと中盤において、守備の形をしっかり構築できた要因として、99ルカオと8ステファン・ムークの速さ・強さ・運動量を兼ね備えた献身的なプレスや受け手として、起点になれたことも大きい。
徳島のDFラインに対して、隙があればしっかり寄せて行く。8ステファン・ムークは、回数と強さ、99ルカオは、速さと強さを武器にしっかり寄せて行く。特に99ルカオは、あの体格でありながらスピードもあり、相当な重圧をDFの選手は、感じた筈だ。
実際にボールを奪えたシーンや外に逃げるプレーやロングパスを選択させて、スローインやセカンドボールを回収するという形を作れた。
前半は、岡山のメンバーで考えられる守備の形に全振りした上で、徳島対策のエッセンスを強く取り入れて、良いカウンター(守備→攻撃)の形に繋がった。
その攻守での岡山の手応えを感じる16河野 諒祐の公式コメントと集中して守れたという5柳 育崇の公式コメント。
3、岡山と徳島の対戦は新章へ~噛み合わせ~
2-0というスコアで、シュート数も岡山が圧倒したが、決定機は徳島に何度もあり、簡単な試合ではなかった。何故、ここまで徳島に対して、シュートを多く打てる展開に持ち込むことができたのか?については、2章にて、岡山の守備と徳島対策を徹底できた事が大きかったという部分をある程度、主張してきたが徳島以外の相手に、同じサッカーができるかと言えば、また別の話である。
それは、やはり徳島もまた攻撃的な布陣だからである。44仙波 大志、27河井 陽介、14田中 雄大がターンして、前を向けるシーンを何度か作れていたが、それは徳島にも何度かあり、そこから駆け上がりそうなシーンも何度か作られていた。
岡山は、攻撃的な選手もほぼボランチの位置でスタートした事で、セカンドボールを拾えて、そこから前に向かって行くことができた。
システム的な噛み合わせや攻めを強く意識した選手起用が、岡山のカウンターを加速させた部分は否定できない。
もし岡山が、これだけの守備ブロックを布いてなければ、徳島の攻撃に圧倒された可能性は十分有った訳で、岡山の守備ブロックも完全に崩されてしまうシーンや岡山の武器となりつつある中盤のパスワークも囲まれて奪われてしまうシーンも増えた可能性すらある。内容を結果を覆せるだけの地力の高さから、徳島のサッカーに対して怖さを抱いた。
そういった中で、16河野 諒祐に、マッチアップした37浜下 瑛のコメントからは、岡山の方がサイドにおいて、優位性に立っていたことが感じられる。
この試合のサイドで主導権をどちらを握るかというのは、3バック同士の対戦で、勝敗を左右するということを改めて感じた。
もし、ここで、16河野 諒祐や2高木 友也のように良い状況で、クロスを上げる事ができていたり、サイドで形を作れれば、やや前ががかりである徳島の攻撃は、人数が伴った攻撃ができていた可能性は十分ある。
それこそ、元岡山の7白井 永地が、ゴールに飛び込んで来るというシーンがあっても不思議ではなかった。8柿谷 曜一朗を軸とした攻撃こそできていたが、この日の岡山から得点を決めることができなかったが、どちらが勝つ、得点ができるとは別であったとしても、印象的には岡山が、チームとしてプレーし易い、分かり易い戦い方ができたと言える。
ただ、もしエウシーニョのようなスペシャルなサイドの選手が、出場できる状況であれば、岡山が攻められる回数や時間帯も長くなったかもしれない。そして、他にも若い選手主体の徳島であったが、スピード感のあるドリブルが得意な24西谷 和希や22シーズンに岡山の協力2トップを抑えたCBコンビの一角を担った14カカがいれば、また違った展開になっても不思議ではなかった。
この試合では、岡山が攻める時間帯が長くなったのは、中盤で前を向けた回数が多く、ゴール前の守備ではスペースを埋めて、自由を与えなかった事が大きい。
対する徳島は、前を向けずにやり直すシーンやロングパス入れて行くシーンが多くなってしまった事や、失点したシーンのようにカウンターを受けた時に、岡山の選手が攻める時に自由にプレーできるスペースが与えてしまいがちで、良い形でのシュートを許してしまうという展開に岡山に持ち込まれてしまっていたからだ。
この差が、そのまま勝敗に繋がり、2-0の快勝に繋がった。徳島対策が、ここまで嵌った快勝ではあったが、完勝とまでとはいえない。繰り返しになるが、岡山と比べてシュートの総数こそ少なかったが、徳島にも多くの決定機があったからだ。
攻撃的な両チームが再び戦う来月のアウェイでの徳島戦でもどちらのチームが前を向けるか。どちらのチームが、ゴール前で有利な形を作れるか。そういった激しい戦いが予想される。スタメンメンバーだけではなく、リザーブメンバーも含めて、チームとして成長できなければ、今節とは逆の結果になってしまう可能性を感じさせる強さの片鱗を徳島はみせていた。特にゴール前の崩しで、その部分を強く感じた。
次回の対戦でも徳島に対して、守備から入る事が予想されるが、DFラインの並びをどうするのか。どういったメンバーで戦うのか。
徳島としては、アウェイの岡山戦の雪辱のためにしっかり準備した上で対策してくることも予想される。岡山としてもアウェイ徳島戦でも勝利できるようにホームでの試合の再現を狙う事となる。
「どちらが前を向けるか」「どちらが相手に自由を与えないか」このサッカーの本質の部分で、「白」か「黒」かというスリリングな試合が、きっとこの両チームで有れば、再び目にすることが叶うと信じたい。
まさにこの部分について、ベニャート・ラバイン監督も言及されたコメントを残している。
次戦もきっと「前を向けるかどうか」「良い前進ができるかどうか」。この部分が、問われる事となる。
4、試合を決めた後半~着眼点~
レビューと言えば、得点を中心に振り返る事が多いが、実は前半の戦いの先の延長に得点があった。どちらかと言えば、後半のゲームプランを中心に4章では触れて行きたい。
ゲームプランとして、前半の岡山が前からプレスをかけていくというアグレッシブに守備でも攻撃でも戦う事を選択した岡山。しかし、後半は、99ルカオ→18櫻川 ソロモンになった事で、スピード感のあるプレスはできなくなった。
回数自体は維持できたが、徳島がより「幅」を広く使う組み立てを意識を強くしてきた事で、岡山がプレスで奪える形を作ることが難しくなった。その結果、徳島の「良い前進」の回数が増えた。シュート数も前半よりも伸びた。
しかし、岡山としても流れを渡すのではなく、試合を決めるために選手交代で、どちらかと言えば、チームの狙いを変更した。
99ルカオは、攻撃ではゴールに向かって行く推進力や守備の時はファーストディフェンスとしてスイッチを入れて、99ルカオに動きに、他の選手が連動して、チームとしてプレスをかけていくという狙いであった。
18櫻川 ソロモンは、99ルカオとは違って、担当できるエリアこそ狭くなるが、前線での起点を作るという事に重点を置く事で、先制点や追加点のようなシーンの形に繋げた。
8ステファン・ムークの得点も、18櫻川 ソロモンと8ステファン・ムークの二が、大きく絡んだ得点と言える。セカンドボールを回収した14田中 雄大のロングパスは、18櫻川 ソロモンへと通らなかったが、8ステファン・ムークが毀れ球を拾って、そのままゴール前まで運び、18櫻川 ソロモンがスペースで受ける動きをみせて、そこへのスルーパスこそ通らなかったが、幸運にも8ステファン・ムークの下に再び転がって来たことで、そのままシュートに持ち込むことができた。8ステファン・ムークの利き足とは逆の左足ではあったが、そこにしかないというコースにしっかりシュートを蹴り切ったという得点であった。
徳島のゴール前の時間のプレーこそあったが、前半後半を通じて、前線でのパワーがなかった中で、前線での起点を作れなかった事が、徳島にとって攻撃を難しくしていた。
岡山は、18櫻川 ソロモンと同時に42高橋 諒を投入していたが、2高木 友也や16河野 諒祐といったSB型の直線的なプレーではなく、22佐野 航大のプレーに近い選手であると感じている。
左サイドで、スペースで受けたりドリブルで縦に進入していくというよりは、よりMFらしく中に入っていく動きができる。42高橋 諒の中と絡む動きというのは、J1の攻撃や守備の基準でプレーした経験の中で、培ってきたものであり、やはり岡山の他の選手とは、クロスの性質やゴール前でのアイデアの部分で、ワンランク上と言える。
ただ、2高木 友也や16河野 諒祐の直線的なクロスや仕掛けというのもまた42高橋 諒にはない武器でもあり、巧く組み合わせて行く中で、ここ数試合の42高橋 諒のように躍動する姿というのをチームとして表現できることが理想である。
岡山がここから27河井 陽介→7チアゴ・アウベス、44仙波 大志→41田部井 涼と交代カードを切って行く中で、よりカウンタ―にシフトした。ほぼ、前からスピードやハードワークで、プレスをかけて徳島を抑え込むのではなく、ある程度引き込んで、18櫻川 ソロモンや7チアゴ・アウベスだけであわよくば得点を決めるという狙いを秘めていた。
追加点は、意外にも7チアゴ・アウベスのボール奪取からの15本山 遥の大きく前に蹴るところからロングカウンターの形ができる。18櫻川ソロモンが、収めてキープして味方の上がりを待つと受け手として駆け上がる42高橋 諒が、ボールを引き受けると、そのままスピードに乗って駆けあがると、同じく後方から凄い勢いで駆けあがっていた41田部井 涼もゴール前に辿り着く。そこに42高橋 涼のパスがDFに当たったかもしれないが、深く入った所を感覚で触ったボールは、ゴールへとGKの1ホセ・アウレリオ・スアレスの指の先を越えて、ゴールへと転がっていって、41田部井 涼のプロ初ゴールに繋がった。
出場機会が増えてきている15本山 遥と交代して入った全選手が絡んでの得点。まさに、理想的な追加点の形であり、試合運びであった。
また、このゴールが生まれる前から41田部井 涼の全力疾走の守備や攻撃参加するシーンは、開幕の頃より増えてきており、競争の中での危機感が、彼のプレーを更なる高みへと近づけている。
成長途上で、岡山にも来ていた川本 梨誉も2年目の運動量は目に見えて増えており、「ハードワーク」という岡山のスタイルは、確かに根付いていて、岡山にやってきた選手のプレースタイルにも影響を与えるだけの文化として、根付いている。クラブが、継続性の下で、着実に前進している事を示している。
この部分は、41田部井 涼のプロ初ゴールに関する公式コメントからも伝わって来る。
競争と成長。結果が出ていなかった時期も長かったが、チームとして着実に前進している。そう感じることができる。
5、頂への胎動と聖域の変化~天秤~
前節の栃木戦は、今季のワーストゲームであったが、今節の徳島戦は、ほぼ全てが、今季のベストゲームであった。
引き分けが続いていて時期と比べると、チームの状態の高まりと共に、「受動的な戦い」から「主体的な戦い」もできるようになってきた。
7チアゴ・アウベスや27河井 陽介、42高橋 涼の怪我からの復帰、44仙波 大志の覚醒、15本山 遥の復調。開幕の頃になかなかプレーできていなかった選手の活躍で、チームは、次のフェーズへと進もうとしている。
そこには、「頂」へ向けてチームが目指してきた形への確かな「胎動」の鼓動が、聞き取れるようになってきた。
しかし、同時に、木山 隆之 監督の決断も迫られている。
それは、「聖域」へ手を加えることだ。岡山における「聖域」。それは、怪我や体調不利、出場停止などのアクシデントがない限り、5柳 育崇と23ヨルディ・バイスのコンビを一度も崩さなかったことだ。
今節は、23ヨルディ・バイスと5柳 育崇とは違った「性質」のサッカーで、攻守で躍動するチームの姿がそこにあった。
7チアゴ・アウベスを思い切って、控え選手としてスタートやメンバー外で休養を決断することがあった木山 隆之 監督。
もしかすると、この徳島戦のパフォーマンスを受けて、起用法に変化が生じるかもしれない。
すぐにメンバー外やリザーブメンバーへの変更を選択することはないかもしれないが、試合途中で、5柳 育崇か23ヨルディ・バイスに代わり15本山 遥を投入した3バックへと変更する決断をする試合が出てくるかもしれない。
それだけの試合内容であり、今節のレビューを完成させる上で、触れるべき事であると感じた。
対戦相手に応じて、空中戦や強さに特化したチームに対しては、23ヨルディ・バイスと5柳 育崇のCBコンビ。スピードやパスワーク、プレスなどが得意なチームに対して、左右に43鈴木 喜丈と15本山 遥を起用して、真ん中に23ヨルディ・バイスか5柳 育崇のどちらかを起用していくという戦い方を使い分けていく方針に転換するかもしれない。
この辺り、木山 隆之 監督が、総合的に判断して、決断することなるが、チームとして「ココロヒトツニ」になれているのであれば、相互への信頼から受け入れられる事もできる変化だ。
時には、こうした大きな「変革」や「転換」は、チームとして前進するために、「頂」への「胎動」の「鼓動」をより大きくしていくことで、J1で戦うファジアーノ岡山の「誕生」が近づくことは間違いない。
この部分について、間接的に触れている木山 隆之 監督の公式コメントを改めて読み直していただきたい。
途中から入って来る選手に対しては「優劣」ではなく「役割」を重視している。ともすれば、「優劣」の上で大きな差がないと判断すれば、「役割」を重視して、控えメンバーに回る事や連戦や対戦カードを意識しての更なる柔軟な選手起用に決断に踏み込む可能性は、十分にある。
この難しい決断でもこの試合のような内容や結果に繋がるのであれば、納得できる。難しい決断も当然のように決断できる。木山 隆之 監督の木山マジックは、客観的視点と主観的視点を含めて、サッカーの本質を見抜く「慧眼」と決断できる「胆力」によって、誕生していると感じた。
「頂」への「胎動」をより大きくするために、歴史を動かすために、「木山マジック」で、勝利を積み重ねて、ここから追いあげて行くファジアーノ岡山の挑戦の軌跡をレビューとして書き綴れるように、「客観性」と「主観性」の両観点から、サッカーの魅力を発信していきたい。
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6、誇りの中心にある~熱源~
多くの試合では、スタジアムINして、ファジフーズから試合観戦を楽しむことから始まる。サポーターによっては、試合時間だけではなく、ファジフーズや観光、サポーター同士の交流を通じて、1日全てがサッカー観戦が終わる。アウェイ遠征では、ここにより長い移動が加わり、もっと長い時間、強くサッカーを意識した時間を過ごすこととなる。
中四国のクラブが、J2に少なくなったことで、アウェイ席が埋まる事が少なくなった近年のシティライトスタジアム。コロナでより苦しい時期を乗り越えて、またサッカーのある日常が戻って来た中で、久々にビジター席が埋まった。だからこそ熱い空間が、ここにはあった。
ファジフーズ。食事ブースで、火器を使える事で実現できるラインナップ。安定した観客動員と集客予測からの売り上げなどを予想して行く中で、多くの店舗の出店を実現できる。
各クラブが限られた条件の中で、サポーターを迎えるために、最高の準備をして行く中で、迎える当日。サポーターも限られた予算の中で、フーズを決断しなければならない。
一人一人に多くの戦いがそこにある。筆者のチョイスは、今回もカレーだ。
今日は、ファジステージ前も盛り上がっていた。
以前のステージと違いゆっくりし易い上に拾い。ステージの満足度は、こうした変化に伴い向上したことは間違いない。こうした小さい様な改善は、大きな一歩だ。変化も恐れない。こうした姿勢もファジの強み。
加地 亮の選手としての引退。それは、岡山からの関与が少なくなり、試合以外の面で寂しくなることを危惧していた。しかし、ファジアーノ岡山に関係する部分で、岡山にも足を運んでくれる。サポーターとしては、やはりこういった気持ちは嬉しい。欲を言えば、これからもずっとと願ってしまう。
タイトル画像にも採用したが、岡山の市民の日の写真。そういった日に勝利できたことは嬉しい。大森市長のコール後に、ゲート10で掲げられた「ファジアーノ岡山に専用スタジアムを」といった趣旨の弾幕が、多くの方に届く試合になって欲しいと、これを見て強く思った。
満席のビジター席。岡山の地まで有難うございます。今年は、特に両チームのサポーターの選手のプレーの1つ1つへのリアクションに迫力があり、ダービーに相応しい雰囲気を盛り上がりだった。
22シーズンは、岡山のサッカーへの厳しい声があったが、パワーアップした今季の岡山のサッカーの魅力が徳島のサポーターにも少しでも伝わっていたら嬉しい。
決定的な瞬間は、撮り逃したが、23ヨルディ・バイスに任せていたコイントスに慌てて向かった5柳 育崇。キックオフの時は迫っている。
空席の目立っていた席もキックオフの時にはぎっしり。通算200勝の効果か、岡山市民の日でイベントブースが盛況していた効果か、徳島サポーターも足を運んだ下さった事で、バックスタンドは、ほぼ埋まった。繰り返しになるが、スタジアムが埋まるのは、気持ちいい。
多くのフラッグが振られる様子は、見とれてしまう。鐘の音の応援と合わせて、徳島カラーが躍動する姿は、圧巻だった。
歓喜の輪は、ピンボケしていた。ついつい喜びを優先してしまい撮影を忘れる事が多いが、今回は、撮影できた。
徳島サポーターが多く来ていた中で、TV中継もあったとはいえ、快晴の中での試合。気候的にも過ごし易かった中で、なんとか一万人。チャレンジ1に向けて、「頂」に向けて、有言実行の強いファジアーノ岡山をチームが、体現していかないと、なかなか厳しいことを改めて感じた。
順位やスコアに余裕がある時は、バックスタンドへゴールパフォーマンスをすることが多かったが、チームとして苦しい時期だからこそ、リザーブメンバーやスタッフと共に、喜びを分かち合うために、メインスタンドに向かう事が多い。バックスタンドにもカメラを構えている方は、多くいらっしゃるので、良い写真がみたいですし、メインとバックスタンドで、バランスよくゴールパフォーマンスできるチーム状態になって欲しい。まだまだ苦しい時期だが、少しずつ積み上げて行って欲しい。
気になるのは9ハン・イグォンが、輪に加わるのが、遅れていること。チームの勝利を心から喜べるような9ハン・イグォンの活躍をまた見たい。
選手の健闘を称える徳島サポーター。序盤の苦しい時期があったからこそ、今の徳島があり、スペインサッカーを意識した独自路線は、Jリーグの中でも一際大きな存在感を放っている。実際に、徳島経由で、活躍する監督も増えてきている。8柿谷 曜一朗が戻って来たように、若くて有望な選手が、徳島に戻ってくることは、今後も増えてくるかもしれない。徳島がJ1を経験した意味をこの辺りに、大きくを感じる。そして、岡山もJ1に上がりたいという気持ちが強くなった。
同カテゴリーへ移籍した7白井 永地 選手への様々な声があることは理解しているが、ブーイングも覚悟していたと思うが、徳島に帰った4安部 崇士と共にスタジアムを一周して、挨拶に来てくれた。
この試合では、岡山で磨いた粘り強い守備が、共にイエローカードを掲示されるプレーに繋がってしまいスタジアムがざわついたが、クラブを渡り歩く中で、選手のプレースタイルは、アップデートされていく。特に7白井 永地のプレー範囲の広さと運動量は、徳島で話題になっている。
多くのサッカー選手が目指している欧州の主要リーグでの活躍や代表での活躍。岡山経由でも増えて行くと、岡山サッカーも盛り上がるかもしれない。
最後にプライドオブ中四国として盛り上がったこの歓声についての岡山の選手や監督の声を紹介して、今回のレビューは終えたい。
辛くて悔しい敗戦を乗り越える原動力も勝利に繋がるプレーへの原動力もサポーターの声であると公式コメントを残した全ての監督と選手に発信していただけた事は、サポーターの1人として、とても嬉しい。
そして、TV中継があって、多くのサポーターが足を運んで試合で勝利できたこと。これが、大きな一歩、大きな前進であったと言えるように、ベストを尽くして岡山と対戦したクラブへのリスペクトの気持ちからも「1敗」を「1分」も「1勝」を次の前進に繋げていく事で、ファジアーノ岡山が、「頂」へ辿り着いて欲しい。
文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・Photo=Masaaki Sugino
2023ファジにデータでフォーカス2
『 対極の中の対極の戦い 』
J2第19節 岡山 2-0 徳島 レビュー
は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/7071421125502177281
引用元公式サイト紹介(選手と監督公式コメント)
ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第19節 徳島ヴォルティス戦 監督・選手コメント
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202306032300/
J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第19節 岡山 vs 徳島(23/06/03)試合後コメント(選手)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/060316/player/
J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第19節 岡山 vs 徳島(23/06/03)試合後コメント(監督)
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