Jリーグにフォーカス2『 ≫≫途切れぬ粘りと結束vs驚異の走力と勢い≪≪ 』2024 J2 第8節 ベガルタ仙台 vs 愛媛FC



1、前置き~稀に見る激闘~

2024 J2 第8節 ベガルタ仙台 vs 愛媛FC
2024年4月3日(19:03kick off) ユアテックスタジアム仙台

 愛媛戦のアウェイ遠征を前に、愛媛の試合を観たいという事で、事前に情報を整理した上で、結果とデータで予習したが、愛媛の得点力と仙台の堅守。この秘密を知りたいと思い。そこにフォーカスを当てて、試合を観た。

 結論から言えば、両チームともかなり深い戦術理解度の高さに驚かされた試合となったが、仙台の方が崩した得点であれば、愛媛は勢いで、スーパーな得点を決めての逆転勝利であった。

 内容でも途中から愛媛が押していた試合ではあったが、同じゴールを決めれるかという得点であったので、再現は難しいが、チームとしてのシュートしては、再現性は高そうと感じたので、愛媛の幸運であったのではなく、紛れもなく愛媛の底力であるだろう。

 それでは、非常に面白い両チームの試合を簡単ではあるが、振り返っていきたい。

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2、J2の基本戦術~巧くても大きく蹴る~


 両チームの戦い方を90分間観た印象だと、繋げないから大きく蹴るのではなく、リスクを小さくするために大きく蹴るという判断の下で「無理をしてまで繋がない」という事がJ2で勝ち点を積み重ねることにおける定石と言える形で、この試合も例外なく始まった。

 他のクラブであれば、5分ぐらいで蹴り合いが終わることもあるが、両チームとも落ち着くまで15分くらい蹴り合うという探り合いが非常に長い立ち上がりとなった。

 その15分を観た印象だと、ホームの仙台は、98番 エロン 選手のポストプレーを中心に収めて繋ぐことができるという攻撃時における競り合いのアドバンテージがあったのに対して、愛媛は、前線で収めるというよりは「落とす・拾う」という事に重点をおいて、2列目に3枚並べて、攻撃の形を作れたら、多くの選手が雪雪崩のような勢いで、相手に襲い掛かるような守備と攻撃の形を狙っていた。

 前半に関しては、前線で形を作って、2人で攻めることができたり、サイドを使って攻めることができる仙台が流れを作った。愛媛も前から攻守でアグレッシブに攻める姿勢を鮮明に打ち出すも両チームともなかなか形を作れない中で、スコアを動かしたのは、仙台であった。

 ピンポイントとクロスに7番 中島 元彦 選手が、頭で決めた。枠内シュート率2位でありながら今季初ゴールという事で、怖い選手が目覚めたかもしれない。ここから得点量産も十分ありえるのではないでしょうか。

 前半の内に追いつきたい愛媛も9番 ベン・ダンカン 選手が、快速を活かして決定機を作るも枠内に蹴り切れず、決定機を活かすことができず、そのまま1-0で、ホーム仙台のリードで前半を折り返した。


3、運動量が堅守を超えた時~手数で打破~


 両チームチームデザインを変更したかと言われたら決してそうではなく、リスクを嫌う両チームの密集地を避ける長めのパスを採用する。プレスが来なければ、繋いで少しずつ前進するという焦れるような我慢強い攻防が繰り広げられた。

 それでも1点リードしている仙台が、無理することなく、無難にプレーしていた事で、無意識の内に守備をセットして「受ける」という事を念頭に1-0で勝ち切る戦い方をしているようにも映った。

 ただ、この日の愛媛は、その逃げ切りを許さなかった。HTで2選手を交代したように、前に前にと人数を掛けた攻撃がどんどん増えていった。

 そのため、両チームが意図してそういった戦い方や内容を選択した訳ではないが「守る仙台」vs「攻める愛媛」という構図になっていた。

 結果的にこの構図で、愛媛が押し切ったという試合ではあったが、得点シーンを観て頂ければ理解できると思うが、どちらのシュートも非常にハイレベルなもので、GKの元日本代表の33番 林 彰洋 選手をもってしても、ノーチャンスであった。

 仙台サイドとすれば、攻められていた感覚はあっても崩されたという感覚まではないはずである。それだけ凄い2ゴールであった。

 とはいえ、冒頭で話した通り同じシュートを決めるという再現が難しくても、同じ形を再現することは十分可能である。そう考えると、後半にあれだけ何度も人数をかけた攻撃を何度も繰り返せる愛媛の運動量というのは、改めて凄いと感じましたし、そこが今季の愛媛の武器であることは間違いないでしょう。

 ルヴァンカップでも退場者が出るまでは、長崎に対して、点の取り合いを演じるなど、運動量が落ちてくることで生じる組織的な隙を執拗に何度も何度も突き続ける。啄木鳥(キツツキ)のような攻撃ができるのが、愛媛FCである。

 仙台としてもそういった攻撃に対して、組織的に埋めて人数も揃っていて、怖いシーンというのも限られていて、いつもであれば、悪くても引き分けという感じに感じていたのではないでしょうか。

 岡山のように最後でスパークをかけるという感じでペース配分していた部分もあったかもしれません。それでもやはり、90分間、同じ姿勢で戦いきれる愛媛の走力の凄まじく、守りに入っていた仙台の足が止まっていたように錯覚するような戦いは、正直驚きであった。

 仙台も試合最終盤に猛攻を仕掛けたが、そこで得点こそできなかったが、そのクオリティは、90分間戦って、ATでのプレーのものではなかったですし、どちらが勝っても不思議ではないハイレベルな試合であった。

 この試合に関しては、愛媛が走り勝ったが、ホームの仙台の最後まで諦めないサポーターの応援を力に粘りを見せた仙台も強かった。非常に見どころがあって、面白いゲームであった。


4、印象に残った選手~ベガルタ仙台~


CF:98番 エロン 選手
 収まるし巧い。仙台の堅守速攻のサッカーを体現するにはなくてはならない存在に感じた。チームとして、人数をかけて、多少無理して攻めるというサッカーではないので、得点を積み重ねることは難しいかもしれないが、チームの勝ち点を積み重ねることができる力を持った選手に感じた。

CH:6番 松井 蓮之 選手
 ボランチでありながら中央だけではなく、サイドの深い所まで侵入して、サイドでもチャンスメークするサイドを抉る推進力というか潜る感覚を持っている選手。もちろんボランチの選手らしく、守備でも繋ぐプレーでも仙台の攻守で安定させることができる力を持った選手。

GK:33番 林 彰洋 選手
 33番 林 彰洋 選手が、日本代表に招集されていた時期は、これだけ後ろで繋ぐという時代ではなかった。当時は、どちらかと言えば、大型GKとしてのセーブ力が評価されてのものであった。この試合では、ビルドアップに加わるだけではなく、9ベン・ダンカン 選手のプレスを切り返しで、避けるなど、判断力の凄さが際立った試合であった。2失点であったもののあれは、誰もセーブできないぐらい凄いシュートであったので、それ以外では安定感は素晴らしかった。


5、印象に残った選手~愛媛FC~


右SB:19番 尾崎 優成 選手
 長身SBであるので対人守備は、まるでCBのようで、この試合でも高さでも1対1でもその体格を活かしての守備が光った。攻撃参加した時にも精度のクロスを配給するなど、運動量も豊富で抜群の存在感であった。まだ20歳とこれからがとても楽しみな選手。

DH:8番 深澤 佑太 選手
 後半に得点とチャンスメークで印象に残ったのは、14番 谷本 駿介 選手であったが、90分で考えると、守る・走る・繋ぐという愛媛のサッカーを体現する上で、欠かせない能力を全て兼ね備えた総合力の高い選手とより強く感じたのは、8番 深澤 佑太 選手。仙台が、やや優勢の前半でも、多くの局面で、気の利いたプレーと、決定的なプレーの両面で、存在感を示した。チームとして安定的に戦う上で、そして、90分間繋いで走り切る上で、欠かせない選手だと感じた。

左右SH:13番 窪田 稜 選手
 プレースキックの精度で印象に残ったのは、17番 茂木 駿佑 選手であったが、それ以上のインパクトを残したのは、13番 窪田 稜 選手であった。何といっても右サイドと左サイドで、それぞれ1アシスト。つまり2アシストを記録するという離れ業をやってのけた。どちらもゴール前に入れるという意識と共に、どこに入れることで合わせることができるかというとこまで、意思疎通できている連携や感覚の凄さが際立った。


6、総括~複雑な勝因と敗因~


 この試合を観て、どちらが強かったかと問われたら、結論を出しにくい試合であったのではないかと思います。どこをどう評価するか。どちらの立場に立つか。守備と攻撃のどちらを評価するか。などなど。結論を出し難い試合であったのが、正直な感想で、とても情報量が多い試合であったように感じた。

 同時にJ3のレベルは間違いなく上がっていて、J2のクラブが、ルヴァンカップでJ3勢に多く敗れたのも納得であると改めて感じた。それだけJ3王者が、当然のようにJ2で堂々と戦い。また次のシーズンでは、そういった強力なクラブが、降格したクラブと入れ替わって昇格してきている。

 J1から降格してきたクラブが、J2で無双する時代は、よっぽどでない限りもう訪れることはないのではないかと改めて感じた。だからこそ最終的な評価は、38節まで出ることない実力均衡リーグへと近づいている。どちらのクラブもプレーオフ進出どころか、自動昇格しても何ら驚かない。それだけ1つの歯車が噛み合えば、一気に連勝できるし、その逆も然り。

 改めて戦国J2を感じた試合となった。

文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino


筆者紹介
 冷静さと熱さを両立した上で、自分の感じた事を自分の言葉で表現することを大事にしている。ハイライトやテキスト速報をレビューを書くために確認するが、極力SNSは、情報を遮断して、レビューを執筆している。流石に通知なので、軽く目にすることこそあるが、綿密に分析するというよりは、サッカーというスポーツの魅力を発信することを一番大事にしており、ファジアーノ岡山だけではなく、対戦クラブにも最大限のリスペクトの気持ちで、サポーターとの交流や魅力を語り合うことが好きで、レビューを書き始めて、中断期間や書けなかった試合もあるが、10年以上、ファジアーノ岡山を中心にサッカーのある生活をエンジョイしつつ、応援してきた。


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