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『カラダで感じる源氏物語』が面白い!|『あさきゆめみし』で分からなかったキャラ考察の深さ

2024年の大河ドラマ『光る君へ』を、毎週楽しく鑑賞している。


そのせいか、つい源氏物語関連の文章を読みたくなって探していたら……

何やら評判の良い本を見つけた。

最初手に取った時は
「いやいや、なんだかすごいタイトルだな……」
と思って少々敬遠していたが、読み始めたらページをめくる手が止まらなくなった。

それくらい面白い

発見も多かったので、メモとしてnoteに書いておこう。

源氏物語と私

肝心の『源氏物語』

原文は、学校の勉強関係以外では読んだことがなくて……

そらで言えるのは冒頭文くらい。

いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。

源氏物語

有名なこのくだりである。

意味はこちら。

いつの時代のことでしたでしょうか。
帝のおおぜいの妻たちのなかに、それほど身分が高くはないのに、ひときわ、帝から愛されている女性がいました。

NHK for Schoolより

主人公・光源氏の母、桐壺の更衣についての説明だ。

私が読んだのは漫画『あさきゆめみし』

源氏物語のみならず平安時代の貴族を理解するための必読書として、予備校の先生たちもオススメするほどの有名書籍。

ただ、受験勉強のために読んだのではない。

家族が漫画作者・大和 和紀(やまと わき)さんのファンで、古いほうの単行本(おそらく今は新品で売っていない)が実家にあったためだ。

中学生後半の頃には全巻読んで、既に源氏物語の大ファンになっていた気がする。

そもそも私は昭和の少女漫画で育ってきており、大和和紀さんは大好きな漫画家の1人

『紀元2600年のプレイボール』は、今でも大好きな漫画。詳細はこの記事に書いている。


大好きな漫画家がかの有名な作品・源氏物語を描いているのだから、嫌いな訳がない。

「これ、私のために描いてくれたのかな……?」
と思うほど、感激しながら読んでいた。

登場人物はほぼ全員大好きだが、強いて言えばこんな感じかな……?

  • 最も共感 → 雲居の雁

  • 素敵 → 紫の上、朧月夜、秋好中宮

  • 少し好き → 藤壺中宮、葵の上、冷泉帝

  • 気になる人 → 明石の入道、匂宮、薫

いや、好きなキャラクターが多すぎてちょっと選べないや。上記は参考まで。


オタクによる考察ブログと同じ⁈

この『カラダで感じる源氏物語』は良い意味で、ディープなファン(オタク、ヲタク)による考察ブログと似ていると感じた。

私は物語(漫画や映画など)の考察ブログを読むのが好きだ。その原点は、おそらくここだと思う。

漫画『進撃の巨人』にハマっていた頃(連載の後半以降)、毎月のようにこちらの記事を読んでおり、時にはコメントも書き込んでいた。


管理人のアースさんと、Twitterでオタトークをすることも。

次の展開について、夫とああでもないこうでもないと語り合う日々。進撃好きのパパ友とも盛り上がるほど考察や予測が楽しく、世界観に浸っていた。

何より嬉しいのが、多くの人と意見を交わしながら次を待つというワクワクドキドキ感。当たり外れは二の次で、確からしい予想が出た時には心から感心・賞賛した。

そのうち、自分でも漫画考察のコラム(ほとんどが『東京卍リベンジャーズ(東リベ)』関連)を書くようになった。これらのnoteに、いくつかリンクを貼っている。


でも、自分で考察を披露するだけでなく
考察を誰かが読んで意見をくれて、更にそこから発見する
……という流れが、1番好きなのかも。

それこそ「学び」という気がする。


『カラダで感じる源氏物語』の作者・大塚ひかりさんの文からは、源氏物語を愛してやまない気持ちがよく伝わってくる。

素晴らしいストーリーのみならず
「源氏物語以前のお話と何が違うのか?」
を比較・考察
してくれている部分が、特に勉強になった。


登場人物のアラが見えていなかった

本を読んで、大きな気づきがあった。

それは
「 私の"大和和紀さんの描く人物像が好き" という大きな感情によって、源氏物語のキャラクターたちの欠点が覆い隠されてしまっていた」
ということ。

例えば、頭中将。この本では、

・もてない男特有のズボラさ

・ふだんは母など訪ねもしないで、子供を押しつけたあげく、その教育にケチをつけたりするくせに、父の法事とか母の五十歳の祝いとか、貴族社会で「しなくてはいけない」とされることは盛大にやって、親孝行したつもりになる

・相手の人柄や気持ちを二の次にしていた

・大勢の女と関係したのは、彼がそれを「できる立場」にあったからに過ぎず、それを「すべき器」ではなかった。しかも子供達とは断絶していて、でも、娘に恋人ができると、むやみに反対したり、息子の良縁を自分の誉れと思ったりする

などと表現されている。

まぁ、「一途にサイテーな父とは言えないあわれさ」「等身大」とフォローされてはいるけれど。

言われてみればその通りで、確かに妻・子ども・親の扱いがぞんざいだ。

だが、大和和紀さんの「憎めない人を素敵に描く卓越した能力」により、どこか抜けているが魅力的な男性として眺めていた。

光源氏の息子・夕霧については
「無神経な男」
「女の気持ちがみじんも分からぬ」

と表現されており、もう散々である。

だが、雲居の雁との長期間の恋愛・勉学に励む姿・光源氏に似たイケメンの表情を見せられているせいか、こちらも私は良い印象しか持っておらず……

宇治十帖編の薫と匂宮も同様で、欠点はあるものの「素敵な人達だ」と思っていた。まぁ間違いではないのかもしれないが、私好みの見た目に騙されてしまっていたのかも。


紫式部と清少納言、どっち派?

『光る君へ』でも描かれている通り、紫式部と清少納言はしょっちゅう比較される存在だ。同年代の才女で中宮に仕えた立場も同様なのに、性格が全然違うことから、対照的に映るのだろう。

「紫式部と清少納言、どっちが好き?」
というのもよく聞く質問。

そもそも本人と直接話した経験がないから、本当の性格なんか分からないと思っているけれど……芸能人・有名人も同様で、実際に話したことがないのに好きも嫌いもあったもんじゃない。

それを踏まえたとしても、断然私は「紫式部派」である。

なぜなら、彼女が素晴らしい物語を作っているクリエイターだから。
「ゼロからイチ」でストーリーを作る能力を持っているから。

もちろん、何かに影響されたりモチーフを流用したりすることはあっただろう。現実の人物をモデルにしたかもしれない。

それでも物語を創作をする人たちを単純に尊敬してしまう。悔しいけれど、彼らには到底及ばない。

子供の頃に物語と友人によって精神を保っていた経験から、やっぱり物語というものに圧倒的な素晴らしさを感じてしまうのだ。


次は現代語訳もチャレンジ……かな

そろそろ、漫画ではなく小説としての源氏物語にチャレンジしたい。とは言え原文は相当時間がかかってしまうから、とりあえず現代語訳かな?

色々な人が訳しているが、誰の訳がいいんだろう?

この本の作者・大塚ひかりさんも出しているらしい。
あとは与謝野晶子、谷崎潤一郎、角田光代、円地文子、毬矢まりえ・森山恵、……などだろうか。

大塚さんは他にも源氏物語関連本も出してるらしいから、読んでみようかな。語り口調がめっちゃ面白いから楽しめそう。

今年は私のように源氏物語にハマる人が多そうな予感。ぜひ一緒に盛りあがろう!

あと、百人一首もいい。紫式部や清少納言の詠んだ歌もあるし。
少し前に『ちはやふる』を読んだ時に友人と一緒に覚えたなぁ……こちらも楽しいからぜひぜひ!


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