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トラウマ診断の難しさ

スガカオルです。
今日も無事名乗りました(笑)

私はいじめと虐待、性被害の影響で解離性障害・複雑性PTSDと診断されています。

ある意味で幸せなことです。
それまでに数々の納得のいかない診断名を精神科単科病院の研修で来た精神科医につけられてきました。

今の精神科治療の中で正しい診断を受けることが難しいこと、正しい診断と患者側が見極められないことがあります。
特にトラウマに関して言えばそれが顕著です。

何故そうなってしまったのか、その辺を今日は考察していきたいと思います。

精神科患者は誤診を訴えられない

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精神科患者はまず病識を持てないというのがスタートです。

依存症やパーソナリティ障害であれば病気を否認することで生き延びています。
統合失調症で言えば、症状を自覚することができず現実に行われていることと認識するなどが原因としてあります。

まず精神疾患と認識すること必要で、そのためには診断名をつけられることで治療のスタートラインに立てます。

初診の時には多くの問診が行われますが、その中で語られることも診断名に影響を与えます。
生育歴もその中に入っています。

しかし、その全ての情報は本物でしょうか?
抑圧された記憶が語られなかったり、親が勝手に作り上げた生育歴ではありませんか?

その場合には正しい診断名を得ることができません。
患者は正しい情報を整理して初診を迎える人が少ないです。

声が聞こえると言えば幻聴、被害妄想がある=統合失調症という方程式は正しいのでしょうか?

20代で物忘れがひどいと訴えれば、認知症の薬を出されることもありました。
それは正しい精神科治療ですか?

これらは実際に私が私が受けたことです。
今となっていえば、誤診でした。

患者はその現象が何か分からない不穏な魔物と思い込んでいます。
それは患者の見たことのない未確認物体のようなものです。
名前すら知らないのです。

それを精神科医が診断名という名前を与えてくれます。
患者は診断名をありがたく貰う立場です。

その関係図が成り立っている背景には精神疾患を持つ人を差別してきた歴史が今も影響を与えていることがあげられます。
一般的に認知されていないことが原因ではないかと思われます。

ようやく現在、義務教育で精神疾患を学ぶ方向に動き出しました。
一般人が知っている病気は大まかに言えば実際のところ、うつ病ぐらいです。
少し発達障害や依存症が一般人でも知られ始めた印象です。

精神科界隈ではブームといえる現象でも、まだ認知が足りていません。
そのために精神疾患を発症した人もその状況を即座に判断することが難しいくさせています。

精神が不安定な状況では正しい判断を失っている場合が多く、何が正しいかを見極めるチカラがありません。
常に貰う立場の精神科患者が誤診だと判断することは不可能なのです。

トラウマは発見が遅れる

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こんな記事を読みました。

とても興味深い記事でした。

トラウマを持っている場合には、その診断を得るためには更に時間が必要です。
トラウマは認識することに時間がかかる性質を持っています。

例えば、性被害をすぐに打ち明けられるのは稀なことです。
私自身無かったことにして抑圧し、無意識に記憶を追いやりました。
意識下に出てきたときには約20年の月日が経っていました。

外傷体験がトラウマ化するのには、時間が経ち熟成されないとトラウマ化しません。

トラウマになった時にはすでに手遅れ、重度な精神障害になっています。
統合失調症やパニック障害、双極性障害などの病気として蓑隠れしており、本質の病気を見落とすことになります。

トラウマに関する記憶を表出させ、患者は混乱することになります。
何が正しいことなのか、判断ができない状況に陥ってしまいます。

「この記憶は事実なのに、誰もが妄想として扱って信じてくれない」

被害妄想は過去に起きた事実に基づく予期不安であることも、精神科医は判断することができないのが一般的です。

トラウマの発見が遅れるのはトラウマという性質に原因です。

私のトラウマに関する考察はこちらの記事で紹介しております。
よろしければご覧ください。


生育歴は参考にできない

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最近の流れで、主に統合失調症の治療の中でオープンダイアローグという手法が拡がりつつあります。

オープンダイアローグ
患者と患者の様々な関係者、家族、支援者、医療者が集まり、本人を交えながら治療に向けての対話していく(カンファレンスを行なう)手法。

多くの注目を集めていますが、私は警鐘を鳴らしたいところです。

私は初診時に家族に連れられ、家族からの聞き取りもされており、統合失調症を主な疾患と診断されております。
しかし、その家族は当時トラウマの存在を知らずにいました。

私の母はアルコールとギャンブルの依存で作った多重債務がバレて蒸発しており、そのことだけに焦点が当たっていました。
確かに大きなきっかけのひとつではありました。

しかし、その時にはすでに無かったことにして無意識に抑圧していた記憶がいくつもありました。
本人も自覚しないでいることで生き延びたため、言語化することはありませんでした。
トラウマはなかったことになっていたため、正しい生育歴とは言えなかったのです。

トラウマは姿を隠します。
そして本人も意図せず、既成事実が歪められてしまいます。

本来の生育歴は得られない中で、家族を交えながらの対話では永久に事実には辿り着けません。

実際に私は虐待を虐待ととらえていませんでした。
どこの家庭でも同じことが行われていると認識していたのです。

家庭内のことは外から見えません。
家庭内で行われていることは家庭内にいても見えないこともあります。

単身赴任や出張も多く、帰りが遅く朝も早い仕事人間だった父には母の行動を知ることができませんでした。
そのために私が母から受けた虐待にも気づかずにいたのです。

もし、母が家族として存在しており、オープンダイアローグに入っていたらどうでしょうか?
患者は真実を知った時、対話することができるでしょうか?
事実は歪められるでしょうし、妄想があると言われてしまう可能性があります。

虐待があるときには安全を優先することが第一条件です。
しかし、虐待があることが見えずに新しい手法を取り入れてしまうことで被害が永久に闇に葬り去られることになることを忘れてはならないと思うのです。

患者は嘘をつきます。
意図して嘘をつくのではなく、症状として嘘をつきます。

同じように患者の家族も嘘をつきます。
しかし、こちらは意図して嘘をつくのです。
自分の都合の良い事実に仕上げていることで家族は体裁を守っています。

ある意味で私は母親が蒸発したことで安全が守られました。
今も母親がいたら、トラウマと認められる日はもっとおそくなっていたことでしょう。

トラウマと認められた日

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私がトラウマ関連の病気であること、つまり解離性障害・複雑性PTSDと診断名をつけられた時には初診から約20年近くが経過していました。

それまでトラウマ関連の病気を疑われたのも、かつて流行した境界性パーソナリティ障害です。
しかし、コアな境界性パーソナリティ障害ではないと言われます。
じゃあ何なんだ?と自分が何者なのか分からない状態でした。

「精神病と神経症の交わるところ」という語源がある境界性パーソナリティ障害。
私はその精神病ゾーンが一般的な境界性パーソナリティ障害(生粋の境界性パーソナリティ障害)よりも多く占めています。

確かに精神病ゾーンのアナザーワールドへ行ってしまうことが多くありました。
かつて、昏迷状態に陥り、医療保護入院も経験しました。

解離エピソードも存在していました。
しかし、一過性の解離として境界性パーソナリティ障害とみられていたのです。

しかし、トラウマの勉強会を院内でしていた精神科医(現在の主治医)に出会い、状況は変化します。
今の主治医に変更を申し出た初めの診察では様々な質問をされ、身体反応が出てトラウマを認めてもらえました。
その時のトラウマ反応は咳、ひとつでした。

特定不能の解離性障害、複雑性PTSDと入院計画書に記載されて、安堵しました。
ようやく自分がしっくりくる病名と出会えたのです。

残念ながら、現在の主治医は初診を診てくれた精神科医でした。
実際のところ、本当の初診の時には「何なのかよくわからなかった」と白状しています(笑)

治療を続けても改善されずむしろ色を変え、症状が快方に向かわない患者がいる現状に、視点を変えた精神科医は精神科単科病院でで現在の主治医ただ一人だと認識しています。

タイミングにはトラウマ化するまでの熟成期間が必要でした。
それまで患者は患者として生き延びなければトラウマ関連の病気と診断される日はこないのです。

すべてのトラウマ保持者が正しい診断を受けることで精神障害の治療は進みます。
それには精神科医がトラウマ治療ができることが大前提で、正しい診断名をつけられることが必要です。

精神障害の症状が緩和されれば、就労に挑戦できます。
精神障害者が就労できると、入院患者が減ることで医療費が減少し、就労することで経済を回せる人間が増えます。

世界でトップレベルの精神科病床を持つ日本の精神科患者が正しい治療を受けられることは結果的に社会に大きな経済的影響を与えます。
そんな社会になっていくことを私は夢見ています。

道は険しいかもしれない。
しかし、正しい治療が当たり前に受けられる医療であることを精神科医療に求めます。


スガカオル

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