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東京の中の「田舎」と「都会」。

江戸川区出身の高校の友人が
「両親が江戸川区の実家を売却して、引っ越しをするらしい。」
といった。
「どこに引っ越すの?」と聞いたら、
「三鷹の方。田舎暮らしをしたくなったらしい。」と言った。
当時の私は東京の土地勘もあまりなかったもので、「へぇ」と、特に何も思わなかったのだが、なぜか時間がたった今でも印象に残っている発言であり、そして今となっては少しこの発言に対して疑問が湧いている。この友人の発言は、おそらく三鷹市民を不快な気持ちにさせるだろう。


まず、「田舎」の定義とは?緑があって、のどかで、静かで、都心から離れている、ということだろうか?このことには異論はない気がする。

三鷹は、井の頭公園もあり、のどかで、高い建物も少なく、都心からはほどよく離れている。自然の原風景と思われる景色を見られるところもたくさんあり、夏はヒグラシが鳴くスポットもあったりと、とても魅力的な地域だと思う。

一方、江戸川区は、緑は三鷹に比べて少ない印象であり、ベッドダウンと言われるだけあって、背の高いマンションだらけで、町工場もそこそこにあって、まぁ場所によっては静かといえば静かである。(私が江戸川区の実家にいたときは、週に1回くらいは暴走族が目の前の新大橋通りを爆音で走っていた。窓を閉めていてもかなりうるさい。今はどうか知らないが。)中央区や千代田区あたりの都心にはそこそこ近い。

このように比較すると江戸川区と三鷹では、江戸川区のほうが都会なのか、という風に思えるかもしれないが、そんな簡単な話ではないと思うのだ。

私の友人は三鷹を田舎扱いし、おそらく三鷹を見下していたのだと思う。今、思えばその友人の無知さが露呈した発言であったと思う。23区に属しているからといって、驕り高ぶってはいけない。上記とは別の視点で三鷹を分析してみる。

・土地値

2021年土地公示地価 東京都内市区町村ランキングを見ると

20位 三鷹市 平均199万/坪
25位 江戸川区 平均146万/坪
平均坪単価で見ると三鷹市は江戸川区より勝っている。さらに、三鷹駅前あたりとなると坪単価700万ほどになるスポットもあるくらいである。江戸川区最大の繁華街、西葛西駅の駅前でも坪単価500万ほどとのこと。
土地の値段というのは、商業地で言えば、人が多く集まれば集まるほど、商業地としてお金が回り、土地の値段が上がる。つまり、三鷹駅は人が多く集まる都会の駅なのである。

・路線

三鷹駅は、あの超人気路線JR中央線の駅であり、かつ、住みたい街ランキングに毎年ランクインする吉祥寺の隣駅である。都心の中央区、千代田区あたりからはそこそこ離れているが、新宿から中央線快速で7駅、18分ほどでつく。これで田舎とはなかなか言いにくい。

はたして三鷹は江戸川区より田舎なのだろうか。

安易に「田舎」というワードを使用すべきではない。

三鷹と江戸川区はどちらが田舎かどうかの議論はここで終える。

「田舎」というワードは本来、都市、都会という言葉の対義語であり、どちらが優れて、どちらが劣っているという話ではないのだが、「田舎モン」「田舎臭い」という言葉があるように、揶揄するような表現として使われることが多い。そのため、都会より田舎の方が劣っているという印象を持つ人は多くいると思う。ただ、安易に「田舎」という言葉を使うと、誰かを不快にすることもあるだろうし、そもそも揶揄を目的として「田舎」という言葉を使用することが適切でない場合もある。都心から離れているという理由だけで田舎と呼ばれてしまうのであれば、二子玉川や自由が丘も田舎なのだろうか?緑が多いという理由だけで田舎と呼ばれてしまうのであれば、明治神宮周辺は田舎なのだろうか?商業施設、マンションが少なく、きれいに区画整理された田園調布駅前の住宅街を田舎と揶揄できるだろうか?

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