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贅沢な暮らしのために必要なもの

以前、読んだことのある「イギリス人の住まい術」を扱った本によると、イギリス人は住まいを決めるとき、間取りや内装よりも、家の中から見える外の眺めを重視するのだという。

家の中と外をつなぐ、その「結びつき(connection)」こそが、居心地のよさを決めるというのだ。

たとえ狭くて小さな家でも、窓から美しい緑や大きな空を眺めることができ、鳥の声や小川のせせらぎが聴こえるなら、それに勝る贅沢はない
そう考える人は、日本にも増えていると思う。

土地には所有権があり、それは必ず誰かの所有物という決まりになっているわけだが、よくよく考えてみると奇妙な話だ。
だって、土地は本来、誰のものでもないはず

「暮らしの重要な一部として眺望を取り入れること」は、人間の卑しい縄張り争いを無効にするための、ささやかな抵抗の証といえないか。
「眺める」という行為を通して、「所有」の堅苦しさを軽々と超越してしまえるのだから。

もちろん、「眺望の素晴らしい家」に住める人は限られている。
そこで想像力の出番となる。
例えば、窓の外に薄汚いビル群しか見えないとしよう。
陰鬱で気が滅入るような眺めだと思えばそれまでだ。
だが、そこで暮らしたり仕事をしたりしている人々の姿を想像し、自分と同じように頑張って生きているんだなあと想像するだけで、世界は変わって見える。そうすれば「自分だけの世界」が手に入れる。

私たちは皆、空間の中で生きている。
ただ、どこまでを自分が生きている空間(=世界)と見なしているのか、その区切りは人によってまったく異なっているように思う。
かつて出会った美しい風景、それは窓の外に広がる世界とつながっている。
だから、現実に目に見える空間だけでなく、心象風景までも含めて自分の生きている世界にしてしまえば、とたんに豊かな気持ちになる。

外部との結びつきを増やしていくことで、自分の生きている空間は広がり、心はどんどん豊かになっていくというわけだ

もちろんその「結びつき」は、家と外の関係にとどまらない。
世界、地域、個人など、外部に存在する様々な存在との結びつきを増やしていけば、上質な暮らし、そして贅沢な人生が待っているのではないだろうか。


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