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避けては通れない「事業承継」

今回は、先送りすることが
段々と難しくなってきた
「事業承継」について、取り上げていきます。


広島県の後継者不在率

昨年の12月の発表ですが、
帝国データバンクの調査では
広島県における後継者不在率は
59.0%となっております。

広島県の後継者不在率は 59.0%、全国順位は 21 位にまで低下


業種別で見ると
建設業が70.4%で1,032社となっています。

製造業・卸売業やサービス業においても
50%前後でそれぞれ600社超となっています。

こちらのデータですが、
広島県内で分析可能な会社のみですので、
実際にはもっと多いことが想定されます。

少子化が進んでいる状況から
この結果は、当然と言えば当然ですが、
このまま後継者が見付からなければ
「技術やノウハウ」が
消えてしまう
事になります。

技術やノウハウが消えてしまうと
経済に与える影響も大きく、
一度途絶えた技術などを
もう一度蘇らせるのは、
困難を極めることになってしまいます。

そこで考えられる方法が
親族内への承継
従業員への承継
外部(M&A)への引継ぎ
となります。

今回は、そのうち
「親族内や従業員への承継」について、紹介します。


事業承継は、期間がかかる

事業承継といっても、
ただ株式を移転して経営権を譲るだけではなく、
様々な物や事を引き継ぐ必要があります。

中小企業庁 事業承継マニュアルより

主には
人や経営に関する事項
資産
知的資産

中小企業庁 事業承継マニュアル

このように、承継するのは
目に見える物だけでなく
目には見えない知的資産
まで多岐にわたり、
それらをもれなく引き継ぐには、
かなりの時間を要することは
想像に難しくありません。


後継者を育成するには、
経営理念を理解・実践し、
従業員との信頼関係を築き、
先代経営者に匹敵する信用力をつけるまで、
相当な時間と労力を要します

先代経営者の想いとして、
今まで積み上げてきた会社を
後世にも残すために、
後継者に引き継いでほしい部分も
多いかと思います。

その想いを書き出し、共有することは
後々、重要になってきます。

まずは、絶対に守ってほしい想いや
経営課題などを書き出し、
「見える化」するところから
はじめてみましょう。



次に、経営者の個人資産を
どのように移転するかも重要です。

特に会社の株式は、
金額も大きく、期間も長くなりがちで
タイミングについても重要となります。

後継者に残せる経営資源を
明らかにできれば、
後継者の不安も軽減します。

財産の内容を、明らかにしていきましょう。


活用したい事業承継税制

ここからは、会社の株式について、
活用を考えたい「事業承継税制」についてです。

法人版事業承継税制のあらまし

この事業承継税制ですが、
後継者が贈与などで取得した自社株式等について、
後継者の事業継続などの要件を満たせば
相続税・ 贈与税の納税が猶予・免除される制度です。

この制度は、子や親族に限らず、
親族外承継でも適用できます。

よって、先代の経営者が
完全に引退する前に
後継者へ株式を移転することができます。


では、先代経営者が
生前に贈与をした場合の要件を見ていきます。

◆先代経営者の要件

・会社の代表権を有していた
・贈与の直前において、総議決権数の50%超の議決権数を保有していた
・後継者を除いた者の中で最も多くの議決権数を保有 していた
・贈与の時において、会社の代表権を有していない

◆後継者の要件

・贈与の時において、会社の代表権を有している
・贈与の日において、18歳以上である
・贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること
・贈与の時において、総議決権数の50%超の議決権数を保有する
・贈与の時において、後継者の有する議決権数
 イ 後継者が1人の場合
  最も多くの議決権数を保有する
 ロ 後継者が2人又は3人の場合
  総議決権数の10%以上の議決権数を保有
  他の後継者を除き、最も多くの議決権数を保有する

上記の要件から
・50%超の議決権
・代表権が先代から後継者へ
・筆頭の議決権
が必要となります。

また、注意点として後継者は
・18歳以上
・3年以上役員である
ことも要件となります。

このことから、前もって後継者として
役員に就任し、最低限3年は
従事しておく必要
があります。


この税制は、
特に「身内」である必要はありませんので、
従業員への承継も可能です。

それでは、従業員へ承継した
場合の懸念点を考えてみます。


買い取り資金は?

会社の事業承継で、
会社のキーパーソンとなる人に
経営を承継することで
得られるメリットもあります。
・経営を理解している
・従業員や取引先の理解を得やすい

その一方、懸念点もあります。

株式を引き継がずに経営者になる
事も可能ですが、
その場合は、その株式を誰が相続するかで
今後の経営の舵取りにも影響します。


そして、後継者が株式を取得する場合、
株式の移転時の資金をどうするかです。

無償の場合は、贈与税の負担が必要で
有償の場合でも、買い取り資金が必要です。

事業承継税制を適用する場合でも、
納税は猶予されますが、
担保が必要となります。

このあたりの資金計画は、
早めに取り掛からないと
すぐには準備が難しいです。


親族の理解が得られるか

親族の立場からすると
先代経営者が苦労して育ててきた
会社の株式を無償で承継することに、
抵抗があることもあり得ます。

従業員への贈与を行う場合、
事前に関係者への説明と理解を
得ることが非常に重要となります。

その為には、その他の親族が
損を被らない為の財産を
早い段階から用意しておくことを
忘れないようにしましょう。


納税猶予の打ち切り

納税猶予を受けた場合、
その後の保有要件も存在します。

もし、M&Aなどにより
一部の株式を売却した場合、
納税猶予が打ち切りとなります。

打ち切りとなった場合、
その時点で納税が必要となります。

もし仮に、先代経営者がなくなっていたら、
相続税が2割加算で納税する必要があります。

事業承継税制を適用した場合、
その後のスケジュールも注意する必要があります。


後継者が先に亡くなってしまったら

先代の経営者より先に
後継者が亡くなった場合、
会社とは全く関係のない後継者の親族が
株式を取得してしまう可能性があります。

その場合、本来期待していた
効果が発揮されない事が想定されます。

それについて、
事前に対策を練ることは難しいですが、
リスクとして、把握しておきましょう。


まとめ

今回は、事業承継について紹介しました。

事業承継税制を適用すると
後継者に株式を引き継ぐ際の税金が
猶予・免除されます。

現在、特例措置も設けられていますが、
期限も設けられています。
(特例承継計画の策定)

適用したい場合、
期限切れにならないよう
準備を進めていきましょう。


今後は、以下のような内容の
記事もアップしていこうと思います。

・M&A
・少数株主への対応
・生前贈与

次回以降も、お読み下さい。



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