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短編:【2023 夏】

暑中お見舞い申し上げます。

2023年、今年の夏は暑い日々が続いています。
毎年毎年、暑いだの雨が多いだの、梅雨が無いだのと様々な感想や世相がありますが、きっと秋になったら忘れてしまうのでしょうね。
あれから日本国内も、私個人的にも、様々なことがあり、日々色々なことを考えながら生活しております。
十年、十五年、本当に一気に変わったかも知れません。
大きな地震が来たり、全世界を一変させるウイルスが蔓延して、いまだにこの暑い中、マスクをしてる方がいるような感じです。

プライベートでは、相変わらず独身で、ひとりと猫一匹で生きています。この仕事を行い三十年以上、様々な挑戦を続けて来ましたが、この夏、さらに新たなチャレンジをすることとなります。縁あって、実写の人間ドラマだけではなく、アニメ等を頑張る皆さんと一緒にバックアップをするような立場で、この国の文化を残すために働くことを報告致します。

いつもCM最後の商品を動かしたり、コマドリをする人をテーマにした脚本も作っていた監督にしてみたら、こうなるストーリーは分かっていたのかも知れませんし、どこか自然の流れではないチカラが働いたのかもと思うことも。

ケータイ電話も年々進化しています。電話をする。会話をする。そんなツールから、画像や動画を撮影する、それらを共有して伝える。当時の技術が一層加速しました。確かに役割は同じなのかも知れません。声だけでなく、表情を見ながらの会話、画像や映像で届けた方が伝わる情報は多いでしょうね。滑稽なのが、リアルタイムで表情を見ながらのはずが、結局マスク姿で本心が隠れた会話になってしまい逆に心が伝わらないなんてこともあります。フィルムで撮影していた時代が一気にデジタルとなりました。何をどう伝えるかという本質は、今も昔も変わらないと思っていますが、ありがたみや貴重性は薄くなったのかも知れませんね。

まだ何とか引っ越しせずに同じ部屋に住んでいます。ですから夏から秋にかけては毎年、あの日の朝のことを思い出します。早朝5時、ケータイが鳴って飛び起きました。その日、帰宅したのが3時頃だったために、ウトウトと仮眠を取った程度でした。
第一声の言葉に対し、
「え、でも12時過ぎまで一緒にいましたよ?」
と答えた所、電話口から聞こえた涙声で全てを理解し、急いで喪服をクローゼットの奥から出し慌てて窓際にかけて風通しをしました。あの日は9月とは言え暑い朝でした。
8時には家を出ようと思っていたのに、気がつけば7時過ぎには家を出ていました。電車に乗って、ラッシュと逆方向に向かう電車内。座れた座席で、今朝の会話、昨夜の様子、これからのこと…本当に頭が混乱し、そこではじめてひとり声を立てずに泣いていました。

早く家を出たのに、目的地の集合時間より30分も遅れており、先方に電話をすると、
「慌てなくてもイイから…お前は生きて来い!」
と言って頂き、さらに泣き崩れたことを覚えています。
その日昼のネットニュースで訃報が流れ、関係者から電話での問合せが次々と来て、その対応で悲しんでいる場合ではないと確信。そこから葬儀まで、泣いている時間はなく。

編集終わりに肩を揉みながら
「あと、よろしく」
という言葉を残して出て行った、少し猫背の後ろ姿。

あれから、もう15年。
本当に本当に、色々なことが日々あって、何とか生きています。

考えてみたら、8月は終戦の日もあったり、歴史的にも暑いとか、ツライとか、そんな弱音を言えるような季節ではないような気もします。

日々の出来事を綴ることは、生きる者の役割なのでしょうね。
文章でも、写真でも、動画でも…電話が声で繋がるだけの物から、画像や動画になったように、これからもどんな方法でも、次の世代に残して行く使命があるように思います。

2023年・夏。どうにか一生懸命、生きています。

これからも心の中で常に報告をしながら、いつかどこかで一緒にハイボールでも飲みたいですね。

まだまだ暑い毎日が続きますが、ご自愛ください。

     「つづく」 作:スエナガ

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