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短編:【見た目好感度】

「見た目年齢」があるのなら、私は「見た目好感度」は高いようです。風貌が良いとかではなく、とくに外国の方に良く声をかけられます。いえいえ、私は英語を始め、諸外国の言葉は喋れません。ただ昔から韓国を始め海外映画も好きで、中国の友達に悪い噂をされないように言葉を理解する訓練と、まあ元々海外に行くお仕事も多かったこともあり、声をかける外国の方が見たら、臆すること無く堂々としていて何だか対応してくれそうに思えるのかも知れません。
そして観光地の近所に住んでいて、ウロウロしていることも多くよほどヒマそうに見えるのか、お人好しに見えるのか。はたまたこいつならば騙せると思われているのかも。そして全然家の近くではない場所でも良く声をかけられるのだから、間違いなく「見た目好感度」が高いのでしょう。

直近では欧米風親子6名の母親らしき女性に声をかけられました。こちらはたまたま土地勘のある浅草だったのですぐに解決できました。彼女からは「TAITOタイトー」と「ASAKUSAアサクサ」というワードが出ており、その場所がズバリ台東区だったので、近くまでは来ていたことはわかります。全部英語の誰かのSNSをスマホ画面に映しており指をさします。そこにある写真が参道だったので、きっと「浅草寺」か「伝法院通り」を探していたのでしょう。笑ってはいけないが、そこは裏浅草で道を2つ渡れば浅草寺の裏に出ます。しかし始めてで土地勘の無い人には分からないのです。
「オッケー」と声をかけて手招きをして今来た道を戻ります。ちょっと行って「浅草寺!」と屋根瓦を指さします。本当ならば、こちらは裏側で…と英語で格好良く話ができると良いのでしょうが、まあ仕方有りません。

先日は始めて行く街の地下鉄で声をかけられました。長距離移動だったこともあり、終点駅からそのままのホームで乗り継ぎをする所でした。来たことのない場所だったため、スマホでルート検索していると、中国の方。「あの〜」から後は中国語でした。たぶん海外で「Excuse me…」から後が日本語の私たちと同じ感覚でしょう。スマホに住所が書かれていました。日本語でやり取りをしている個人チャットのようでした。少なくとも同じ状況で終点で降ろされてしまい、行きたい場所へはどう行くのかが知りたいのでしょう。まずはその住所を私のスマホに打ち直し、マップアプリで検索。最寄り駅でルート検索。
「ネクストステーション!降りて、歩いて、ココ!」
スマホで見せながら手振りを付けて日本語で伝える。
「ココドコ?」
駅名を何度の言いながら、掲示板にある駅名と、次の駅で降りることを伝える。ひとつ怖かったのが、彼が向かいたいその住所がなんの変哲もない本当に住宅地の場所で、中国の方ひとり、そこに何をしに向かっているのかが分からなかったこと。どう考えても観光やイベントではないのだが、そんな出会いもあるものだ。

中には、写真を撮ってくれという人もいました。女性2人旅のようで、一緒に映りたいという感じでした。おせっかいな私は、ちょっとこっちへと手招きして、バックにスカイツリーが入る開けた場所に2人を連れて行きます。2人は大喜びです。私はスカイツリーまで入る引いた画と、2人の笑顔がわかる2枚撮影します。喜んで頂けるとこちらも笑顔になります。

結構専門的な質問で声をかけられることもあります。打合せの合間に時間があると、私は拓けた公園や寺院仏閣に足を運びます。そこで2名組の女性から声をかけられました。最初の「Excuse…」まではわかったのですが、後の質問意図がわかりませんでした。何度か聞いた所であちらもこちらが英語がわからないことに気付きます。
「あ〜…キリスト教…日蓮宗…」
勘は良い方です。この人たちは「ここはどこの宗派の寺か?」と聞いていたようです。それこそ「Sorry…」と答えます。日本人はそこまで信心深くないないのです。このお寺が何宗のどんなお寺かを説明する能力は、英語で語る以上に持ち合わせていないのです。鳥居近くの案内所にお連れしました。勉強不足でスミマセン。

海外ロケで忘れられない声がけがあります。もう30年くらい前のことです。当時はまだ海外出張がありました。アジアのとある国へ向かう国際線の中です。ご存知「チキンorフィッシュ?」という機内食の一幕です。座席の前から順番に声がけが行われます。シミュレーションでは「チキン」と答える予定でした。順番に「鳥?魚?」と聞いていたCAさんが、私の番に突然現地の人種だと思ったようで、母国語で語り、二択ではなく「魚でもイイ?」的な言葉に変わったのです。一瞬面食らいましたが「OK!」とニッコリ。一緒に同行していた先輩が「日本人に見えなかったんだね…」と笑いながら言われたのでそのことに気が付きました。そんな時でもなんでしょう、細かなニュアンスはともかく言葉がわかってしまうのです。その機内で移動中は、到着まで現地の言葉で質問され、飛行機を降りる時に出口の所で「私、日本人です」と話がけたら驚いた顔をして笑いながら謝られました。

よく外国の方から声をかけられる「見た目好感度」指数高めの私。何の得もありませんが、そういう特殊な人もいるというお話でした。

     「つづく」 作:スエナガ

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