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短編:【薔薇は赤いと誰が決めた?】

また一社、不正が見つかり騒ぎとなった。氷山の一角?ほんの一握り?何を言っている!今の世界の常識だろう。

『営業マニュアルを直ちに回収してください』

組織ぐるみの犯罪か、一部社員の反乱か。いまの時代、ほぼ会社ぐるみで間違いない。そもそも会社組織は損することはしない。沈黙をしてしばらく経ったら違う名前で活動を再開する。それがいまの世の中。

「AIの指示通りにやりました」
面会室の若者が、女性弁護人に語る。
「生成的人工知能…それに何と聞いたのですか?」
若者は何も語らない。
「…言いたく無い?」
「いえそうじゃない。その検索ワードが有害とされて規制される。そもそも、生成的人工知能に問うことが問題視されることがわからない!」
若者はスイッチが入ったように語り出す。
「例えばフェイクニュースに上がった画像が、生成AIで作られた場合、人類は非常にリアルに見える加工画像を作るAIを目の敵にします。しかし、今や小学生ですら画像加工を出来るソフトがある。SNSの個人画像ですら、大なり小なり手を加えている…人がやるのは良くて機械がやればダメな意味がわからない!」

長めの沈黙。
「人の領域を凌駕しているからです」
「人が求める答えを、ビッグデータを基本に導き出す。その答えがこれまで生存した人類の答えなのでしょ?それを否定すること自体ナンセンスです」
「リアルな人間はお淑やかで、言葉や思想とせず、静かに内に秘める生き物なのです」
「関係無いです。AIは過去の文献、呟かれたネットの言葉、一部の人間の思想から最適な考えを導きます。人類の総意なのです」

「うるさい騒ぐな」

「いまの政治家だってそうでしょ?民意の総意ですよね?選ばれたのでしょ?」

「うるさい騒ぐな」

「文句を言う人がいますけど、他人と同じでいたい人類が、マイノリティを主張するのは…」

「うるさい騒ぐな」

「ダメですね…古いAIと最新のAIでは、ディベートになりませんね」
面会室の画像を見ている研究者たち。最新AIを若者に設定し、正論を述べるひとつ前のAIシステムを弁護士として表し研究に臨んだ。
「昔はそれで良かった訳ですよね」
「所長…それも同じですよ。求める答えがどこにあるのか。結局、人がやるのか、デジタルがやるのか。そのデジタルをどう使いたいか、何をしたいのか…」

「うるさい騒ぐな」

所長もバグとなった。
解決できない感情、想定を越えた思想が罵っている。過去はそれで良かったという考えは、いまや通用しない。そして今はすぐに過去となる。正義がもの凄いスピードで変化していて、さっきまでOKだったことが、次の瞬間にはNGとなっている。そんな時代。

「うるさい騒ぐな」
「騒ぐな」
…音もなく静かになる。
無音。つまり言葉を発しない。しかしそれは考えてないワケではなく、グルグルと様々な思想が続いている。それはマシンも人間も同じこと。そして爆発し大声を出す。

「うるさい騒ぐな!」

     「つづく」 作:スエナガ

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