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ChatGPT時代の企画能力の磨き方2.

将棋界からのシミュレーション

前回、これからの企画業務において、ChatGPTとのタッグの組み方について述べました。

その要諦は、
第1段階は、まずはChatGPTに任せて市場の四隅まで調べる
第2段階は、自分の問題意識や仮説をぶつけてChatGPTから知恵を引き出す
第3段階は、それらをもとに自ら整理し書き直す

個人的には、中でも、第2段階でいかに有効な対話を繰り返すかが重要になってくると思っています。

何故このような関係がベストだと思ったか?についてお話しします。

それにはヒントがあって、将棋界の実情から引っ張ってきているのです。

実は私は50年来の将棋ファン。将棋界をウオッチし続けています。
でも将棋をやって楽しむのではなく、専ら棋士と棋譜を見続けている「観る将」と言われるタイプです。

AIが棋士を追い越したのは5年前。ご存知の方も多いと思いますが、2017年、時の名人佐藤天彦が電脳戦でAI将棋に敗れたのが象徴的な出来事でした。

言ってみれば、将棋界はシンギュラリティを迎えて、もう5年も経っているのです。

その間、将棋界はどうなったか、

当然ながら、AIは益々強くなっています。
藤井聡太という天才が現れ、7つの棋戦で頂点に立つというトピックは周知の事実ですが、その彼をしても、決してAIには勝てないと言われています。
(彼のレーティングは2000を超えており、将棋界の中では図抜けている)

将棋はもはや人間はAIに勝てない



しかしこのことで、将棋のエンタメとしての魅力がなくなったのかと言うと、実は全くその逆で、むしろ盛り上がっているのが現状です。

これも興味深い事象で、これはこれでいずれ見解を述べますが、まずは、AIが入った業界で、人間とAIの関係、付き合い方はどうなるかについて、将棋界を例に考察してみたいと思います。

将棋界で起った事


まず言っておかなくてはいけないのは、その後、将棋界全体のレベルも紛れもなく上がっている事実です。

いわゆる定石が進化し、どんどん高度な戦いになっているのです。

例えば、今は居飛車党のほとんどの棋士が、序盤戦を4七銀、3七桂、2九飛という構えを理想とするのが常識となっていますが、これもAI後に進化した定石です。

4七銀、3七桂、2九飛という構え



何故、全体のレベルが上がっているのかと言うと、
もちろん、棋士がAIの知を取り入れて勉強しているからです。

では棋士はAI使って、どのように勉強しているのか、その作業を整理すると概ね以下のようになります。

棋士の勉強の仕方


1)まずは当日将棋界で起った対局をAIを使いながらチェックする
(AIは評価値というのを示すので、その日の注目の一手がAI的にはどうだったのかを瞬時にチェックできる)

2)それに紐づいた自分の気づきや考えをAIでシミュレーションする
(局面局面で自分の問題意識をぶつけてAIに聞いてみる。すると、AIはこう思うという答えを瞬時に出してくれる。それを見て、じゃあ、こうならどうかと再び問いかけるという繰り返し)

3)以上の学習を元に、次の戦いに向け、作戦を練る

この学習の結果、棋士の棋力もどんどん上がっていきます。

一方、ライフスタイル的な変化も見逃せません。
特徴は、半端ない勉強量です。ほぼ四六時中勉強していると言っても過言じゃないでしょう。

何故なら、毎日行われる実戦の世界では、こうして勉強した棋士たちの最新の手が次々と繰り出され、それで常識が更新される事態が頻繁に起っているからです。
それらをウオッチし続け、理解し、取り入れてていかないと、瞬く間に追いていかれる世界が現出しているのです。

棋士たちは本当に大変だろうなと頭が下がる思いですが、見る将としては、その様相をウオッチするのは大変面白いです。
毎日のように作戦が進化していくというその変化を楽しむことができるからです。
ちなみに、将棋の番組には、評価値という指標が導入されていて、例えば、A棋士が50%、B棋士が50%だと全くの互角、70% vs 30%だとA棋士が勝つ確率が7割。99% vs 1% だとA棋士がAIのシミュレーション通り指せば、必ず勝つという判断ができ、これが我々素人にもわかりやすく、楽しむことができるようになっています。

さて、このような将棋界の状況から、AIとの付き合い方の心構えとして、以下のようなことが大切なのかなと思っています。

AIとの付き合い方


1)日常からのAIとの対話で考えを深めたり、新しい知を生み出したりする習慣が大事
(同様な行為を最前線の他者も行うので、そこでの勉強量や継続性が大切になる。とは言え、AIを使えば最新の知を入手する行為自体は楽に行える)

2)AIと自分の対話やその結果を溜めておき、いざという時に使えるようにしておくことが大事
(棋士のように外部のアンチョコが効かない業界は自分の脳に溜めておくほかないが、我々のような凡人はクラウドなど外部ストレージを使って、結果をどんどん溜めておき、いざという時に使えるようにしておくといいのではないかと個人的には思っています)

もちろん、将棋のような勝ち負けとルールが明確な世界だからこそ、AIが人間の上を行くのであって、我々が生きているような複雑系に世界では、AIの貢献度やその内容は異なるとは思います。

前章で整理したように、企画の世界では、ChatGPTが得意な事に対し、人間が得意な事がまだある状況なので。

しかし、将棋も企画もシミュレーションだとすると、いずれはAIが色々なパターンを学習し、瞬く間に秀逸な企画を作る時代が来てもおかしくはないとは言えるでしょう。(お~、怖!)


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