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読み書きを鍛えるには「要約」が最強

読解力のない人は物事の本質をとらえていないので、発言も浅いものになりがちです。

そしてなにより、私たちのように

 お客さまの声を聴き
 それらのニーズを正しく理解し
 理解した内容を実現可能な仕様にあらため
 さらにその仕様を具体的な設計に落とし込む

までに度重なる翻訳作業が必要になるようなソフトウェア開発業では、この能力があるかないかはまさに生命線と言えるでしょう。その証拠に、採用時には「理系!理系!」とバカの一つ覚えのように騒いでいても、いざ「優秀な人材」「マネジメントが得意な人材」はというと

 「お客さまと話ができてー」
 「コミュニケーション能力が優れたー」

…いわゆる文系能力の高い人材のほうを評価しがちですし、出世させがちだったりする企業が非常に多かったりします。生粋の理系出身者で文系素養が低い人は、実務担当者として重宝されはするのですが、よほど突き抜けた実力を有しない限り、案外あまり良い扱いを受けなかったりします。

特に体質の古い企業では。

採用時だけ、若干理系が優先されがちなのは、コンピューターに触れる機会が圧倒的に多く、基本情報技術者資格などを持っている可能性が高いため、配属時に教育の手間が緩和されるため"上司が楽できる"から、という一点のみメリットがあるというだけにすぎません。非常に利己的な考え方でできた仕組みなんです。
現在、IT企業は大小合わせて43,000社ほどあり、そのうちの42,500社ほどが中小企業と言われていますが、それら多くの中小企業において「マネジメントが弱い」と言われている企業は本当に多く、その理由の大半が理系優遇神話を妄信しすぎて、文系素養を軽視し続けてきたからではないか…と私は考えています。

まぁ、妄信それ自体が完全な思考停止に陥っていることを指しますので、結果としてマネジメントの弱い組織になってしまう実態も、そんな思考停止しかできない人を重用するような人事制度しか作れない仕組みも自業自得としか言えないんですけど。


新聞や本を読むにしても、漫然と読んでいるだけでは情報は流れていってしまいます。

また、せっかく正しい読解をしていても、感覚や感情に頼りすぎるとその正しい読解をアウトプットとして表現できる力を持ちません。相手の表現を正しく読み取り理解する『読解力(≒inputする力)』と、相手の読解レベルに合わせて適切に表現し、伝える『表現力(≒outputする力)』は常に一対のものとしてバランスよく磨く必要があるのです。

そして読む力だけでなく、書く力も鍛える一石二鳥のトレーニング方法、それが『要約』です。会話の中で

 「要するに…」
 「つまり…」

から始まる表現がありますよね。アレだと思ってください。

もちろん、そう言った接頭句をつけていても全然要約されていない文章をだらだらと続ける人や中身が空っぽの人もいますが、まずはシンプルにこうした接頭句から始まるものが要約なんだと認識しておくといいでしょう。

まず、要点の探し方を理解しましょう。その文章を読んでいない人にも文章の内容が伝わるように抽出するのがポイントです。

 [話題]何について述べているのか
 [結論]結局どのようなことを言いたいのか

この2点を探します。

話題と結論があれば、「何の話?」「要は何が言いたいの?」という疑問に答えることができます。

 ・タイトルや小見出し
 ・導入部
 ・太字などで強調している箇所
 ・締めくくり部分

に注目すれば、早めに見当をつけることができるでしょう。

そして要約の練習に適した教材が新聞です。特に「社説を100字程度で要約する」という方法が、要点を見つけ、簡潔にまとめる練習になるでしょう。社説は1つの文章で1つの主張を述べており、練習をするにはもってこいの素材です。

また、事件などを報道する記事も5W1Hを意識しながら読みすすめ、まとめることで正確に情報の全体像を把握するという練習に使うことができます。リード文(記事冒頭の要約)の付いている記事を使うと便利です。

リード文は別名「導入文」とも呼ばれ、その名のとおり記事の冒頭部分の文章を指す

最初はリード文を隠し、自力で要約を書いてからリード文を見れば、答え合わせをすることもできます。

また、文章の要約とは別に本1冊の感想をコンパクトに書く習慣を通じても、要約力を鍛えることができます。1冊の書籍にはさまざまな内容が詰まっていますので、その全部を拾うことはできませんが、

 [話題]何についての本なのか
 [見どころ]この本の面白い点はどこか
 [感想]自分はどう感じたか

という3点に絞って、100字にまとめてみるのもいいでしょう。
新聞などに掲載される「書評」のようなスタイルです。

なぜ100字がいいのか。

それはサウンド・バイトにも関係します。

日本語で説明する際、早くもなく遅くもなくちょうどよい感じで話すとおよそ10秒で60字前後を表現できます。そうすると15秒前後で90~100字ということになるわけです。


そして、一人ひとりの読解力を支える縁の下の力持ちが語彙力…すなわちボキャブラリです。

英単語を知らなければ英文が読めないように、日本語の単語や表現を知らなければ日本語の文章は読めないものです。昨今では、母国語に関してこの点を軽んじている人は多いように思います。

特に意識高い系の人は横文字好きですもんね。

日常会話…しかも家族や友人、仲の良い同僚などの固定メンバー、同じような年齢のメンバーとの会話だけではなかなか語彙は増えていきません。どうしても今使える範囲の言葉で居心地よく会話をするだけになるからです。

自分にとって都合のいい人たちだけとしか交流を持たなくなってしまうとあっという間にボキャブラリが低下していきます。結果、数少ないボキャブラリでは読解力の向上も見込めず、要約するスキルが身につくこともありません。


そこで、本や新聞を読むことが必要になってくるわけですが、漫然と文章を読んでいるだけでは語彙力は少しずつしか伸びません。成長を速くするには、言葉を調べたりメモしたりすることを習慣化すべきです。ボキャブラリが低いからと言って

 ・初めて見る言葉
 ・よく意味がわからない言葉

を放置しないようにしてください。新人がわからないことを周囲に聞こうとしないのを見て、みなさんが先輩や上司ならどう思いますか?それとおなじことです。

気になったその瞬間をやり過ごしてしまわないようにし、その都度何かしらの解決を図るのです。

 付箋を貼る。
 調べる。
 考える。
 覚える。
 打ち込む。
 書き留める。

自分なりのストック方法を見つけましょう。
こうしてnoteに思ったことを綴っていくのもいいでしょう。

ちなみに私はGoogle Keepを使っています。
基本的に付箋紙アプリです。

画像くらいしか添付できず、また直接的な仕事に一切用いなければ、情報セキュリティにも抵触しません。

私は、このGoogle Keepを使って、仕事中・移動中・プライベート中、様々なところで

 ・調べ物したいと思ったモノ
 ・忘れたくないと思ったモノ
 ・いずれ参考にしたいからURLだけ押さえておこうと思ったモノ

などを雑多に書きうつし備忘録としています。リマインダーの機能を使えば、アラームもくれるので大変重宝します。

また、私はスマホの辞書アプリやGoogle検索で調べるのが習慣です。1つの辞書で十分に納得できなかったときのために複数の辞書を使える環境にしています。そして調べたり気に入ったりした言葉も、そのままGoogle Keepの語彙ノートに記録しています。

他にも、上級編の語彙力増強法になりますが

 「辞書を読む」

という方法もあります。
本を読むように、辞書を頭から読んでいくのです。

基本的には普通の読書と同じですが、もちろん一字一句追おうとするとなかなか読み終わりませんので濃淡を付けながら読みます。辞書がつらいなら、最初は図鑑でもいいと思います。

私が辞書を読む場合にも、まずは見開き全体をざっと眺めます。そこで初めて知った語や気になる語に特に注目します。そして、これから使いたい言葉や定義が新鮮に感じられた語、面白い例文を見つけるとページを折ったり付箋を貼ったりしています。

なんかこう…イメージ的には、子供の頃に流行ったアドベンチャーブック?みたいなノリで読んでます。

そして、読み終えた辞書は折り目と付箋でさらに分厚くなってくるので、キリのいいところで自炊(背表紙を切り落とし、スキャナで読み取って電子化)します。


"読む力"は、ある程度の量の文章を読んでこそ培われます。
読まずに読む力が養われることは決してありません。

「量より質」という考え方もありますし、実際「質」を意識しないで「量」だけ増やしても効果は薄いものですが、それでもやはり「質」の高い「量」を読まずして上質の文章だけを読んだとしても、それを読みこなすというのは不可能な話です。

「質」を常に意識しながらたくさん読んで、その経験の中で語彙を増やしたり視野を広げたりすることが、名著を理解するうえでの下地になります。

「量」に触れる

ことによって読解力や思考力といった質的能力を育てていきましょう。

もしかしたら子どものときの読書指導のイメージから、「読書=小説を読む」というイメージがある人もいるかもしれません。もちろん小説を読むのも重要なことなのですが、多様なジャンルの活字に触れることを心がけると、トータルの読書量が多くなります。

 「読書するか、しないか」の二択でなく「何を読むか」。

そういう状況を作れば「読まない」という選択肢は取らなくなります。

具体的には、常に何冊かの本を持ち歩くようにしましょう。
電子書籍を併用すれば、軽くて済むはずです。

最悪、本でなくても構いません。

Webなどでのニュース記事やコラムなどでも、基本的には同じ効果を得ることが可能です。Twitterなどでも「楽しい/楽しくない」ではなく「有益な情報がないか」という視点で読んでみるとそれなりに効果があるかもしれません。たった140文字で伝えたいことを表現するというのもまた要約のセンスが磨かれる土壌として秀逸なのですから。

移動時間やちょっとした空き時間に、その時々の気分に合った本を読むようにすることでトータルの読書時間を伸ばしていくといいでしょう。必ずしも集中して何十分も何時間も読む必要はありません。

また本を選ぶ際、私が意識していることに、

 ・知性につながる読書か、感性につながる読書か
 ・ストックの読書か、フローの読書か

という2つの軸があります。ストックは「自分の中に蓄積され、長期的に生きてくるような本質的なもの」、フローは「ニュースのように日々流れてくる情報」です。

この分類を掛け合わせると、

 ・知性 × ストック(学術書、哲学書、普遍的なテーマのビジネス書など)
 ・知性 × フロー(トレンドの話題や人のビジネス書、ビジネス系雑誌など)
 ・感性 × ストック(小説、詩歌など)
 ・感性 × フロー(軽めのエッセイ、ライフスタイル誌など)

という4領域に分けられます。

本を選ぶときに、このバランスが大体取ると良いと言います。

 「最近はビジネス書(知性×フロー)ばかりで、近視眼的になっている気がする
  …よし、前に買っておいたあの小説(感性×ストック)を読もう」

といった次第で使い分けるのです。

重い読書ばかりでなく、心理的負担の軽い読書も採り入れる。
ある領域に疲れたら別の領域に移る。

そういう工夫で、全体として読書を続けている状態を作るようにするわけです。

しかし、最近では、読書は基本的に自分の能力に対する栄養分という考え方が強いため、ストーリー性を重視した小説や文庫本を基本的に読まなくなりました。

ビジネス書や技術書、情報誌などが殆どです。

私はさほど本で読書する方ではありません。

Webで読む記事等を含めると倍では収まらないかもしれませんが、過去に引っ越しが多かったせいか「本は管理の邪魔になる」という意識が強いため、最近では年間100冊程度にとどめています。

あと、数回読み終わると大抵自炊します。

そして最後に、読解力を培ううえで実は良い方法が

 自分でも文章を書いてみること

です。教育などでも、実際には受ける人より教える人の方が数十倍理解が深まり、伸びると言われています。

実際にやってみることで初めてわかることというものは多いものです。
読解力を鍛えるのも同じで、

 ・どうしてこんな文体を取るのか
 ・どうしてこんな文章構成なのか

などについて自分が書くからこそ、他の人の文章の技術に気づきやすくなり、模倣できる手本が増えます。また書く側に回ってこそ、書き手の工夫や苦悩が感じられるようになるのです。

私も昔は、他人の書いた設計書や仕様書を読んで「何コレ、プロならもっとうまく書けるだろうに……」とよく毒づいていました。内心「私のほうが絶対うまいんだけど」とイライラしていました。いや、今でもたまに思うことがあります(本当に優秀な人から見たら、どんぐりの背比べ、目糞鼻糞を笑うレベルかもしれませんが)。

しかし、いざ自分が仕様書や設計書を作成してみると必ずしもきれいな表現だけになることもなく、相手の読解力を見誤って、結果として誤解されることも多々ありました。

自分で書いてみると、どれぐらい時間を費やすものなのか、どれだけ悩むものなのかを実感できるのです。

私たちソフトウェア開発の現場では、その規模が大きくなるにつれて工程全体のドキュメント作成割合は指数関数的に増加します。100万、200万程度のプロジェクトでは、プログラムを作って終わり…と言うこともあったでしょう。

しかし、1億、2億のプロジェクトでは、プログラミング工程は全工程の1割程度しかありません。5割は設計、2~3割はテストです。あとは会議体や調整などの雑多な作業で埋め尽くされます。

すなわち、プログラミング"だけ"できても、ソフトウェア開発は素人…と言うことになりかねません。

「読解力」と「表現力」…プログラムで言えばインプットとアウトプットの部分を人としてしっかりと押さえておくことは、関数同士が重なり合ってシステムができるのと同じように、チーム作業において欠かせないものなのです。

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