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組織の全員が自ら変化を引き起こす

組織が生き残りかつ成功するには、チェンジ・エージェントすなわち変革の機関とならなければならない。変化をマネジメントする最善の方法が自ら変化をつくりだすことである。

こちらもまたP.F.ドラッカーの有名な一節ですね。

ということは、変化が常態であるこの激動の時代にあって生き残るためには自ら変化を引き起こさなければならないということです。

実際、ここ20年ほどの進歩はすさまじいものでした。ロボット化、IT化、自動化、etc.…おそろしく変化してきました。変化に取り残されてしまうと私生活にもビジネスにも支障をきたすほど大きな変化だったのではないでしょうか。

これはすなわち「自らチェンジ・エージェントたれ」、ということでもあります。変化に適応するだけでなく、変化を生み出す側の人間でありなさいということです。

なにも社会に変化を及ぼすようなことをしようというわけではありません。普段から

 「現状維持に固執しない」
 「常に(良い方向に)変化しようという気概を持つ」

姿勢のことを言っているのです。悪い意味での「保守的になるな」と言っているわけですね。

組織もまた、時代の最先端にあって自ら変化を引き起こすときに主役として変化を楽しむことができるようになるべきだと言っています。

しかもドラッカーによれば、そのための方法はあるといっているんです。

 第一に、成功していないものはすべて廃棄していくことである。
 第二に、あらゆる製品、サービス、プロセスを改善していくことである。
 第三に、あらゆる成功を追求して、新たな展開を図っていくことである。
 第四に、体系的にイノベーションを行なっていくことである。
 そして第五に、思考態度を根本から変えることである。

成功していないものはすべて廃棄していくこと

自分の考えや経験に固執してしまって「以前はこうだったから」「前はこれで成功したから」と言い訳して、今目の前で起きた失敗を正当化しようとするシーン…よく見かけます。

ですが、どんなにご立派な言い訳を並べ立てたとしても結果は『失敗』であり、そのやり方は『失敗するやり方』であることに変わりはありません。

まったく同じ方法が過去に成功したというのであれば、過去と現在とでは

 成功するための条件

が変わったか、整っていなかったかのどちらかということです。条件を特定できない、あるいは条件を満たせないのであれば同じ方法を採用するべきではありません。少なくとも失敗した際には要因分析を行い、

 条件を特定できない方法は今後採用しない
 条件を特定できた場合は、条件を満たさない限り採用しない

としなければまた同じ失敗を繰り返すだけでしょう。「考えを改めない」という無変化を選択すれば、自ずと社会、お客さま、企業に損失を与え続けることを確信犯的に実施するのと同じ結果を生み出します。


あらゆる製品、サービス、プロセスを改善していくこと

当たり前ですがどんなに定型化、定常化されたプロセスであっても、時代の変化に伴っていずれはインピーダンスミスマッチを起こすものです。

たとえばビジネスにおける「紙文化」
たとえばビジネスにおける「はんこ文化」

商取引においては物的証拠を残すという意味で未だに必要性が求められていますが、取引証跡以外においてはほぼほぼその必要性が無くなってきたと言っても過言では無いほどITの恩恵が広く浸透してきました。

むしろそのためだけに資源を無駄遣いしたり、コストをかけることが「本当に企業のためになるのか?」ということが問われる時代となってきているわけです。

製品にしても、サービスにしても同様です。

そもそもロボット化やIT化、自動化などというのは、人の利便性を高めるために求められるニーズです。もっとわかりやすく言うと人の

 「とことん楽をしたい」

という欲求から生み出されているものです。逆に言えばその欲望が無くならない限り、「前より今」「今よりもっと」と際限なくその要求はエスカレートしていくことでしょう。

にもかかわらず「いや、うちはこの製品一筋だから」「この技術一本で今後もやっていくから」「これ以上は知らん」と言っていたのでは、顧客ニーズを満たすことができなくなっていくのは当然です。


あらゆる成功を追求して、新たな展開を図っていくこと

以前にも何度か書いてきましたが失敗した場合の要因特定手段の1つとして

 「なぜなぜ分析」

というものがあります。他にも多種多様な分析手法がありますが、意外と誰も考えようとしない、採用しようとしないのが

 『成功要因に対する分析』

です。もちろん失敗に比して成功は要因特定が非常に難しいので、実施するコストに対して得られる恩恵を考えればなかなか実施しにくいのかもしれません。ですが、その成功体験を紐解き、分解して、より大きな成功やまったく異なる成功を導き出すための礎にしようとしないのはどうかと思うわけです。

たとえばあるプロジェクトで成功した体験とそのノウハウは、「プロジェクト」という単位で見ようとすると他のプロジェクトに転用することは難しいのかもしれません。

ですが

 「マネジメント」
 「〇〇工程」

という単位に切り分けてみたり

 「共通部品」
 「開発ルール」

と言った切り口で見てみると再利用性の高いノウハウは山のように存在しているはずです。なかにはただのコピペで大丈夫と思って失敗するケースも多々見受けられますが、正しく「再利用」の条件特定とその条件を満たすノウハウの採用ができれば、成功しやすい体質を生み出すことも不可能ではありません。

そして、

 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

というオットー・ビスマルクの言葉にもあるように、広く様々な組織、様々な人たちの経験(自分にとっては他人の経験は「歴史」と解釈できる)を取り込み、多くの成功の歴史から学び、変化することを忘れてはなりません。

 真に成功に貪欲な者は、あらゆる失敗、あらゆる成功をも糧にする。
 そしてそれは必ずしも自分自身の体験だけを基にするものではない。

のだと個人的には考えています。そしてそれができない、したくないというのは、企業に対して「良い変化」「貢献」をこれ以上もたらすつもりはないと言っているに等しいわけです。


体系的にイノベーションを行なっていくこと

イノベーションとは

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wikipediaには上記のように書かれていましたが、要するに「新しい変化を生み出す」ことです。

とはいえ、私生活や広く社会的なイノベーションであればどのような形でも構わないと思いますが、ことビジネスにおいてはあまりにも自由過ぎては困ります。ビジネスの中で活かすためにはどうしても

 「再利用性」

の高い内容でないといけないからです。特定の誰かだけがイノベーションを起こせて、それを活用できたとしても、広く組織の中で適用できなければ受け入れられませんし、結果として個人主義に頼った脆弱な組織にしかなりえません。企業の場合は

 いつでも
 だれでも
 何度でも

できるイノベーションでないと効果が薄いのです。

効果が薄いだけならまだいいでしょう。

結果的に個人主義が蔓延し、「できる人に仕事を集める」ようになり、個人に依存することで成立してしまった組織では、その"個人"が抜けてしまった瞬間ビジネスが成り立たなくなってしまい、事業継続すら困難となってしまうことも珍しくありません。

リスクマネジメントもロクにできない企業のできあがりです。

したがって、イノベーションによって引き起こされる変化は、できるだけ体系的になっている必要があり、個人が変化するだけでなく、組織としてそれらが受け入れられ、浸透していくようになっていなくてはなりません。

そうしなければビジネスとしては成立しなくなる時が必ずきます。


思考態度を根本から変えること

これが一番難しいかもしれませんね。

頭の中にある「考え方」というのは個人個人がそれぞれ持っているもので、他人の考え方をインストールして上書きできる…という類のものではありません。

どんなに小手先の手順やノウハウを教えたところで、当の本人の思考がその方法に嫌悪感を持っていたり、無価値だと決めつけてしまっていたり、自分流を貫きたいなんて考えを持っていたら、何もイノベーションは起きません。

だからこそ、「意識改革」「意識づけ」といったところから始めたり、あるいは最初からそういった意識や姿勢を持っている人材のみで構成しないと、なかなか組織的な変化を生み出すのは難しいのです。

ただ「スキルがある」「実力が高い」というだけでは、組織的な実力向上に貢献することはありませんし、組織の変革には何も貢献できません。

仮に、個人の平均的な実力を"1.0"とし、それらの人たちが5人いる組織があったとしましょう。特に個々人の考え方や価値観には触れられておらず、ただ単に日々の役割、業務を5名に配分し実施しているグループです。

そこに有能な人材(実力"3.0")の人を追加したとします。

すると組織全体の実力は

 1+1+1+1+1+3 = 8.0

となるだけです。
それぞれの実力にしか注目していないので、3.0の実力があれば、相応のタスク量を分配していることでしょう。今までの方法を変える気が無いのであれば、当然そうなります(しかも、日本の場合であれば3.0の実績を果たしても、待遇等は他の人たちとさほど変わらないのではないでしょうか。だから有能な人材からどんどん離れていってしまい、外資系企業に移ってしまうんですけど)。

組織全体へのイノベーティブな意識改革を行った場合、個々人が「自分の実力分だけの仕事をすればいい」と考えるのではなく、もっと効率的に、もっと組織のパフォーマンスが最大値化できるようにと考えられるようにならなければなりません。いわゆるTeam+Work(私が勝手に作った造語ですが…Teamworkではありません)になっていなければならないわけです。

チェンジ・エージェントたるための要点は、組織全体の思考態度を変えることである。全員が、変化を脅威でなくチャンスとして捉えるようになることである。


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