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謝罪に対する姿勢の究極の姿

ビジネスにおいては、できることならば一生する機会が無い方が望ましいイベント、それが「謝罪」ですが、やむなくせざるを得なかったことがある人もいらっしゃると思います。

そもそも、ビジネスでは見積り時も、計画時も、ちょっとした不良が混入することは想定していても、

 「謝罪する」

ことに対する工数や予算を見積もることはありません。

裏を返せば

 "謝罪しなければならないような状況を作り出さない"

ことを前提とした契約や仕事ぶりでなければならないと言うことです。一生のうちに何度かは決して避けられないものかもしれませんが、それでも常日頃から謝罪しなければならないような仕事への取り組み姿勢が習慣化できるようになって、初めて一人前のビジネスパーソンと言えるでしょう。


一時期、“お笑い芸人の闇営業問題”がテレビやSNS等で頻繁に話題に上りました。

ここ数年、不正や不良による経営層の謝罪会見、あるいは引責辞任なども過去例を見ないくらい多かったと思います。この騒動を見て、

 「謝罪のタイミングや方法って大切だな」

と考えさせられた人も多いのではないでしょうか。

人間はミスをなくせない生き物である以上、ミスを犯した時に"正しい謝り方"でリカバーすることは優秀なビジネスパーソンの必須条件と言えそうです。

グッドマンの法則などを理解していれば自ずと、

  • 適切な仕事を模索し、徹底すること

  • それでも問題があれば、適切な謝罪を用いること

  • 謝罪するような問題は、二度と起こさない組織にすること

の大切さは嫌と言うほどわかります。それができない企業や組織は、顧客を含むステークホルダー全員から見放されていくことになります。

なぜか?

社会的に不誠実だからです。

統計的にみると、見放されやすい態度がどのようなものかが簡単にわかります。これは対顧客だけでなく、対従業員でも同じことが言えるのではないでしょうか。

グッドマンの第一法則

「謝罪」は一種のスキルであり、技術です。

もちろん心の底から反省し、二度とご迷惑をおかけしない気持ちが無ければこのスキルはただの形式だけになってしまいますが、気持ちだけがあっても感情のおもむくままに行動しているだけではやはりお客さまには伝わりません。

 「誠意」「スキル」

の2つが伴い、相乗効果をあげることで初めて"謝罪"という姿勢や礼儀が成り立つのです。しかし意外なことに世の中にはそれができないビジネスパーソンが多く存在します。

一分一秒を争う

"すぐに対応してもらえないと、
 「自分たちは見下されている」
 とお客さまに思われる可能性が出てくる"

謝罪で最も大切なのはスピードです。

そもそも謝罪しなければならない状況というものができ上がった時点で相当時間的にひっ迫している状況のはずです。とてもではありませんが責任の所在をどうこう言っている場合ではありませんし、言い訳しようなんて発想自体がナンセンスです。

謝罪しなければならないほどまでに取り返しのつかない状況は早急に解決する必要がありますし、そのためにもより可及的速やかに

  • 解決する手順の説明

  • その間のフォロー

ができていなければ、もしもお客さまの業務が止まるようなことがあれば損害賠償請求されても文句は言えません。社会的な問題にまで発展するようなことがあればレピュテーションリスクも避けられないでしょう。

お客さまにも、お客さまの業務があります。生活があります。人生があります。

少しでも待たせてしまうと相手に不快感や不信感を与えてしまったり、相手の生活や寿命を奪うことにもなるため、その影響度に比例するかのように速やかな対応が求められます。

なんでもかんでも「責任を取らなくていい方向に誘導」したい気持ちもわかりますが、日頃からきちんと管理できていれば謝罪しなければならないような状況になるなんてことはありません。

そもそもそんな状況を産み出した時点で、謝罪するには十分なほど怠慢なのです。その時点で責任があるということを自覚するべきです。

「なぜ謝罪をしなければいけないのか?」を整理し「どう謝るべきか?」を吟味したい気持ちもわかりますが、謝罪の場は一分一秒を争うので悠長なことは言っていられません。


満点ではなく「及第点」の謝罪を目指す

"完璧を求めて一喜一憂するのではなく、
 合格点を出すことを目指す"

先述のなかでスピードが大事と言いました。

当然、ここで完璧を求めようとして時間をかけるのは、愚の骨頂です。
相手の満足度を理解していない証拠です。

もし、完璧であることがお客さまの及第点であると言うのであればそうするのもいいでしょう。しかしそんなお客さまは存在しません(厳密には、自社のビジネスモデルも理解できず、高圧的になりたがるだけの老害担当者もたまにいます)。

ただでさえ限られた時間の中で完璧を目指すと心に余裕が持てなくなってしまい、また必要以上にスケジュールを要するため誠心誠意対応しているつもりでも、どんどん時間を費やすだけでますます謝意が伝わりにくくなります。

求められてもいないのに勝手に完璧を目指すことは十分に身勝手な活動であり、逆にお客さまや相手の信用や信頼を失うことにもなりかねないことを自覚しましょう。

 “合格点ギリギリくらいの謝罪”

を目指し、大筋の合意が取れれば大丈夫という意識で事に当たれば、対応する人たちの気持ちも楽になって適切な対応がとりやすくなりますし、そうしたからと言ってお客さまが怒ることはありません。

なぜなら「合格ラインを超えている」からです。

そもそも「完璧な謝罪は存在しない」ということも併せて覚えておくと良いでしょう。


装飾品はできるだけ外す

"顧客は研ぎ澄まされた視覚や聴覚で、こちらの様々な情報を敏感にチェックする。
 面着で謝罪する場合は、必ず腕時計は外すこと。
 特に高級腕時計を装着しているのはもってのほか"

「謝罪に来た」ということを自覚していない人は、謝罪時ですら己を良く見せようとします。まず間違いなく謝意を持っていません。少なくともそうみられます。

しかし、謝罪する予定になかったにもかかわらず、謝罪しなければならないような状況を産み出した事実に対しては、当然のことですがお客さまはとても厳しい態度をとられます。そして同様に謝罪をしている人の見た目や言動には厳しい視線が送られます。

あたりまえですよね。

お客さまがあえて謝罪を求めているようなときは、我々の言葉が聞きたいのではなく、謝意の有無やその形を見たいのです。

ですので、装飾品はできるだけ外しておくと良いでしょう。交際相手に見せるのであれば高級腕時計や華美なブランドものに頼って自分を大きく見せるのもいいかも知れません。けれども少なくとも謝罪を求めているお客さまに対して行う服装ではありません。

「空気が読めないにもほどがある」

と思われるだけです。何が相手の不快感を刺激するのかはわからないので、波風を立てないビジュアルを装うことが大切です。


菓子折りや接待はネガティブな印象を与えることもある

"菓子折りや接待はあくまで問題解決後における
 関係構築のためのコミュニケーションツールと考える"

一般的に「交際費」費目でかかる経費は、良好な関係を築くための必要経費という意味合いが強いものです。にもかかわらずそれ以外の目的で用いたとしても、適切な効果は発揮されません。むしろ、現代ではマイナスに働きやすいと言うことを覚えておきましょう。

一昔前、二昔前はそれでもいい時代がありました。

今でも古い体質の企業の中にはそう言った文化が残っているかもしれません。

しかし、次代の変化の速さについていこうと舵取りをしている企業は「スピード」「変化」にどれだけ対応できるかが生存戦略の1つになっていて、それを阻害する要因を嫌います。古き良き時代に固執し、相手もそれが同様であると錯覚している時点で企業にとってはすでにリスクでしかない可能性もあるのです。

問題解決が終了していないにもかかわらず、問題解決のための時間を無駄遣いして、

「菓子折り持って、謝罪しに来た。
 けど、具体的な今後の対応策については何も決まっていない」

「接待された。
 けど、それで許してくれと言うだけで生じた問題が何一つ解決されていない」

等という日には今後の契約はすべて白紙にされてもおかしくありません。

問題を起こし、謝罪しなければならないような状況にしておいて、問題を解決するでもなく「許してくれ」と言っても許されることは決してありません。ビジネスをナメているとしか思えませんし、相手もそう思っていることでしょう。

許してもらい、今後も良好な関係を築いていくためには、

 "お客さまの"被害を最小限にとどめ、まず目の前の問題を早急に解決する

しかありません。本来、解決もしないうちから「とりあえず謝罪」をしても意味はありません。本当に最初にすべきは問題解決です。

初回の謝罪時に菓子折りや接待案を持っていくと、相手に「これで勘弁して」という逃げようとしている印象を与え、誠意が伝わらなくなる恐れが多分にあります。

菓子折り…はまぁ仮に渡すのだとしても問題が解決したら渡す物なので、「何が問題になっているのか」「どうやって解決するものか」も不透明な段階では持っていかないほうが無難です。

まずは目の前の問題解決に集中しましょう。

古き良き菓子折りや接待は、すべて解決してお客さまにご迷惑をおかけする前の状態まで回復してからでも遅くはありません。


最後に

「ピンチはチャンス」という言葉があるように、“正しい謝り方”ができればミスで失った以上の信頼感を獲得することができます。

多くの企業では『謝罪』そのものをスキルやノウハウとは捉えていません。

ですから従業員に対して『謝罪』の仕方を教えるようなことはまず100%ありません。

それは「そもそも謝罪しなければならないような状況を作るのはビジネスとして二流以下」という意味で正解ではあるのですが、そんなことを企業側が考えているとも思えません。

だからこそ、いざというときに企業の誠実さ、真摯さに差が出ます。

“正しい謝り方”ができる企業は当然のことをしているにもかかわらず、お客さまから見ると新鮮で、誠実な企業であると受け止めてもらうことができるわけです。

日頃、謝罪しなければならないような状況を生み出すことが無いよう注意深く、慎重に業務に従事しながらも、いざという時には謝罪をネガティブなものと考えず、自分のビジネスパーソンとしての価値を高める機会と捉え活用しましょう。

謝罪の仕方すら味方にすることができれば、ただの失敗も「ただの失敗でした」で終わらせず、余すことなく今後へ有効に活用することができるようになるでしょう。

謝罪するスキル、謝罪しなくてもいいような仕事の仕方を身につける努力は、言ってみればビジネスパーソンとして当然のスキルです。

しかし、それができてもプロフェッショナルにはなりません。

謝罪しなくて済む仕事ができるようになると言うビジネスの姿勢は商取引において当たり前のことであり、一人前のスタートラインです。その程度ができるようになってもプロフェッショナルには全く届きません。けれどもそういった姿勢が当たり前に貫けることはプロフェッショナルとなるためには必要な通過儀礼でもありますので、その先にプロフェッショナルが存在していると考えていいでしょう。

つまり謝罪しなくて済む仕事ができるようになることは

 必要条件ではあっても、十分条件ではない

ということですね。

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