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スケジュールの甘さと余裕は違う
契約したプロジェクト、依頼された仕事についてまずすべきは
必要なプロセスを分解する(WBSの作成)
ことですが、それができたら次にやるべきことは「スケジュールを作ること」です。言い換えるなら、時間の見積もりを考えていくことといってもいいでしょう。
「それぞれのプロセスは、どのくらいの時間がかかるのか」
「どのプロセスが、最も手間がかかるのか」
といったことをここで見極めなければなりません。いわゆるクリティカルパスを見極めるということですが、これができていない場合、リスクが顕在化するとあっという間にスケジュールが完全崩壊を起こします。
これは個人タスクでも、プロジェクトタスクでも同じです。
ここで甘い作業見積りを作ってしまうと「最終的に時間が足りなかった」ということになってしまいます。個人レベルであっても正しい作業見積りをしていないと、
「前半に時間を掛けすぎて、
後半に時間が足りなくなってしまった」
なんてことになってしまいかねません。
作業見積りの重要性
プロセスをパッと見て即座にどのくらいの時間がかかるのかを判断することは、仕事を進める上で最も難しいことといえるでしょう。やったことのない仕事は「どのくらいの時間がかかるのか」がわからないからです。
ベテランになればテキパキと仕事を進められるのは、業務能力が高まっていることのほかに、作業見積りが過去の経験則からすぐにできることだと思います。その意味で経験を蓄積することは極めて重要であり、経験を次に生かしていくプロセスの可視化も大きな意味を持ってきます。
経験が浅いうちは、プロセスにどのくらいの時間がかかるのか、周囲の先輩や上司に聞いてみるのもひとつの方法です。
ただし、そのときはプロセスの分解をしっかり自分でやっておくことです。その上で、
自分なりに作業見積りを立ててから相談してみる…つまりはクローズドクエスチョンにすることです。なんでもかんでも答えだけをもらおうとしないことです。そうすることで実際の経験者との考え方の差を把握することができます。逆にそうしなければ相手の時間を大量に奪うだけであなた自身の成長にもなりませんし、今後もただの重荷になっていくだけです。
私自身も過去を振り返ってみると、トラブルプロジェクトの解決をたくさんしていた時代に、この作業見積りの感覚を磨けたことが大きいと思っています。
とにかくできるところまでやる…ではなく、限られた時間のなかで確実に解決しなければならないというミッションを課せられるため、最初のころはなかなか予定通りに進められずその遅れを取り戻すために昼もなく夜もなく働いていた時期もありました。
幾度となくトラブル解決を繰り返していく中で、その経験から「このくらいの問題ならどのくらいで解決できるのか」という相場を自分の中に作ることができたのです。
作業見積り精度を高める隠し味
そしてもうひとつ、私なりのやり方として続けてきたのは
「30分単位」
という時間割を頭の中に必ず入れて作業見積りを作っていることです。
ダラダラと仕事をしてしまわないためにも、一日のタイムスケジュールはほぼすべて30分単位で作っています。
「(ちょっと厳しいかもしれないけど)この仕事はこの30分でやってしまおう」
「この仕事は(2時間でもいいかもしれないけど)この1.5時間でやってしまう」
というように、ある程度の作業見積りを30分単位でタイムスケジュールとして組み込んでしまうのです。こうすることで何時までに何をやらなければならないかということが日々明確になります。スケジュールをしっかり作ったら、そのノルマをしっかり完遂することを意識します。
「スケジュール通りになるかならないか」論を持ち出して計画を軽視する人も中にはいらっしゃいますが、視座が全く違います。スケジュール通りにならないなんてことは往々にしてよくあることです。ですが、それが「=スケジュールを作る意味がない」ということにはなりません。
あらかじめ立てた計画やスケジュールというのは、自分自身の現在のタイムマネジメント能力に対する答え合わせ用の答案用紙のようなものです。
その通りにやって実現できれば、それだけ計画精度が高いということ。
実現できなければ、その現実とスケジュールを比較してギャップを測ることが可能になります。また原因特定を行い、次回計画時にはその内容を反映することが可能になります。
つまり、冒頭にも述べましたように「経験則」を確実に身につけて、ベテランになるための手順を踏むということです。
計画やスケジュールは未熟であればあるほど、その通りにならないことがたくさん出てきます。企業や組織としてそうなることが嫌なら、ベテランを起用すればいいだけです。そうしないのはある程度の計画乖離が起きてもフォローできるし、そういった経験を積ませることで若手や未熟なメンバーを育成するという側面もあるのでしょう(…と信じたい)。
そのためにもスケジュールを軽視するということは、この先も信頼を得にくくなるということでもあるので、自らの将来性を踏まえ、もう少し別の観点からも考えられるようにしたほうが良いと思います。
無理なスケジュールは百害あって一利なし
ただし、いくらスケジュールが大事といっても、
最初から無理なスケジュールを組む
というのはまったく意味がありませんし、価値がありませんし、それで周囲を巻き込むのは社会悪でしかありません。それだけは絶対にしてはなりません。
どんな仕事にも「仕事」である以上、常に締め切り…期限がつきまといますが、私はここ10年…いえ15年くらいを振り返ってみると1度もトラブル解決に関する業務で期限を守れなかったことはありません(いえ、若かりし頃や目も当てられなかった時がありましたし、今でも雑多な業務はド忘れして1日遅れた…なんてことはありますけども)。
それどころか設定された期限より常に前倒しにするよう心がけています。
相手「今週中にできる?」
私 「いえ、1…2時間後にいったんお出しします」
相手「そんなに急がなくてもいいよ?」
私 「あー…何かあった時の修正も考えると、
早いうちに認識を合わせておいたほうがいいと思うので。
いきなり全部作ってやり直しもアレなので、3割ほどできたら持っていきます」
というのは日常茶飯事です。
案外ビジネスとしては、ソフトウェア開発プロジェクトを見てもそうですし、IT業界全体を見てもそうなのですが、期限遅れの常習者が非常にたくさんいる業界なので、私のスタイルはとても珍しがられますし、同じことをしている人をまず見かけません。
「どうしてそんなことができるのか」と問われたり、「変人」と詰られたり、「お前だからできるんだよ」と突き放されたりすることも少なくありません。
私がやっていることは極めてシンプルで、
・「small start, small win」を徹底する
・「quick & dirty」を徹底する
・それぞれのスケジュールについて無理な見積もりを作らない
というだけしかやっていません。少なくとも技術的に非常に高い何かを使うようなことは一切ありません。これは何度か20代、30代、40代の人たちの前で実際にやって見せた結果、彼らの感想からもわかっています。
最初のうちは「このプロセスはこのくらいでできるな」というイメージを持ったときに、それよりも2割増し程度のバッファを見込んだスケジュールをいつも作るようにしておくといいでしょう。期限ギリギリに追われるようなスケジュールはリスク管理ができていないのと同じです。
いつもゆとりを持って行動をしたいから、ゆるめのスケジュールを作るようにしておくといいでしょう。
ただ、リスクを想定してバッファを設けるのはいいのですが、それだけに甘えていると業務効率の向上は一切しなくなってしまいます。常にゆとりのあるスケジュール内にいるために急ぐ必要性を感じなくなるからです。それだけで許されるのは最初のうちだけです。
自らの能力を向上させ、周囲や他社との差別化戦略を図りたいのであれば、バッファを積むだけで満足してはいけません。そうやってリスクを回避しておきつつも、効率…スピードを上げることも同時に進行していく必要があります。
最終的には過去の自分よりも、周囲よりも、正確さを維持しつつもスピードを向上していく取り組みが必要になっていきます。
何歳になっても若い子と同じスピードでしか仕事ができない。
半分も報酬をもらっていない子と業務効率が変わらない。
そんなベテランが会社にとって大事な存在になることは難しいでしょう。
スケジュールマネジメントはリスクマネジメントにも大きく寄与する
そしてだいだいにおいて、突発的な事態は必ず起きてくるものです。
本当に無理ならお断りしますが、「普通の人であればちょっと頑張ればできる」というときには急な依頼でもお受けします。そういうことができるのも、もともとゆとりを持ったスケジューリングであったり、一般的な水準以上のパフォーマンスが出せるよう常に自身の作業効率向上を徹底しているからです。
いつも予定がぎっしりでパンパンというのではコーヒーブレイクの時間すらなくなっ
てしまいます。時間的なゆとりを持ってスケジューリングをすることは、精神衛生上もとても大きな意味があります。
また、コーヒーブレイクを挟んでいるほど余裕がある割にパフォーマンスは人並み以下というのでは、いい仕事ができているとはとても言えません。いくら精神衛生上のゆとりを確保できても、仕事そのものがきちんと完結できていないのでは意味がありません。
仕事のプロセスを洗い出したら、それぞれにどのくらいの時間がかかりそうかしっかりと見積もることが大切です。
ただ漫然とゆっくりやればいいということではなく、早めに終われるならどんどん前倒しでやっていけばいいわけですし、日頃からそうあるよう努力し続けていればそうしない多くの人たちを押しのけて高いパフォーマンスが出せていることでしょう。
それに早く終われば、それだけゆとりの時間が持てるわけですしね。
突発的な事態にも対応できるし、締め切り間際にもっと精査してクオリティを高
めていくこともできるようになります。
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