最も希少なリソースは「時間」
「組織に働く者は、成果には何も寄与しないが
無視することはできないという種類の仕事に時間をとられる。
膨大な時間が、当然に見えながら、実は、ほとんど役に立たない仕事、
あるいはまったく役に立たない仕事に費やされる」
─────ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』
ドラッカーには、とかく「時間」に関する名言が多いことをご存知でしょうか。その多くは、ドラッカー自身が"万人の帝王学"と位置づけるロングセラー『経営者の条件』で述べられています。
「経営者?私には関係ないかな」
と思った人は、そこでマネージャーとしての力量も頭打ちです。
なぜなら「マネジメント」とは一般的によく訳される日本語の『管理』とは似て非なるものだからです。たまたま日本語には「管理」という言葉しかなかっただけで、マネジメントには多くの意味合いが込められています。そしてその本質は「運営」や「経営」の方がよほど近しいのです。
ただ、言葉としてとても重い言葉になりがちなので、私は普段
"(目的達成のための)やりくり"
と呼んでいます。
時間をマネジメントできなければ金があっても労働力があってもなにもできません。マネジメントすらできないのですから当然といえば当然です。時間のマネジメントこそ、仕事ができるようになるための第一の条件であると言っても過言ではありません。
この理由の一端については、これまでの中でも少し触れてきたかもしれません。
世のため人のためにせよ
優れた財・サービスを提供するためにせよ
仕事を生産的なものにして充実した仕事をできるようにするためにせよ
何をするにしてもすべて時間を必要とします。
予算(コスト)は場合によって一切必要としないケースもありますが、時間はそうはいきません。常に、限られた時間的リソースの減算方式によってしか、目的は実現できないのです。
そもそも時間のマネジメントは、ありとあらゆる自己実現の大前提です。
時間は
買えない
借りられない
貯めてもおけない
しかも、その時間は等しく誰にとっても1日に24時間しかありません。そのうち3分の1は眠っています。そこで文字どおり、眠る時間を削って働いている人もいれば、勉強している人もいるわけです。
しかしドラッカーはこう語っています。
「成果を上げる者は、仕事からスタートしない。
時間からスタートする。
計画からもスタートしない。
まず、何に時間がとられているかを知ることからスタートする。
次に、時間を奪おうとする非生産的な要求を退ける。
そして、得られた自由な時間を大きくまとめる」
もちろん、この3つのステップだけで時間を使いこなせるようになるわけではありません。ステップを踏んだうえで、さらに頭を使わなければならないからです。
「時間の使い方を知っている者は、考えることによって成果を上げる。
行動する前に考える。
繰り返し起こる問題の処理について、体系的かつ徹底的に考えることに
時間を使う」
つまり、未来を具体的に予測し、さらに予測通りにいかなかった場合(リスク)に対しても具体的な活動を予測(対策案を検討)し、それでもうまくいかなかった場合のための保険(リスク影響の疎結合)まで視野に入れようということです。
よく巷では「まず行動する」ことを推奨する人がいますが、本当にそんなことしたら時間の無駄遣いになってしまうので危険ですね。おそらくは行動する(0→1にする)ことの重要性を説きたいのでしょうが、思考停止して行動を起こしたところで収拾のつかない状況を呼び込み、その対応だけで大きく時間を損なってせっかくのチャンスすらふいにしてしまうことになるでしょう。
「汝自身を知れという昔からの知恵ある処方は、
悲しい性の人間にとっては、不可能なほどに困難である。
だが、その気があるかぎり、汝の時間を知れという命題には、
誰でも従うことができる。
その結果、誰でも貢献と成果への道を歩むことができる」
結局のところ、その気が有るか/無いかなのです。"やる気"という意識が働かない限り、マネジメントの基本理念を修得することは絶対にできません。なぜなら「やる気がない」ということは「行動に移す気がない」と言うことであり、「行動に移さない」ということは「結果が必ずゼロになる」ということだからです。
そして、やる気が起きない最大の要因は、いつの時代も
『めんどくさい』
と言う理由でしかありません。高尚な理由も、そうならざるを得ない事情も大抵の場合は存在することはありません。どんなに能力が高い人間でも、行動に移さない人間は絶対に結果を出せません。だから、能力の高低だけで人を評価すると、多くのシーンで誤った結果がついてくるのです。
ゼロには何をかけてもゼロです。
この不変の真理を変えることは誰にもできません。その場から動かないと言うことは、絶対に経験を積まないと言うことであり、経験を積まないと言うことは、絶対に成長しないと言うことだからです。
おそらくは多くの社会人がドラッカーの言うところの「悲しい性の人間」なのでしょう。皆が皆、その気があれば一角の経営者しかいなくなってしまいます。
しかし、実際には数万、数十万の企業に経営層は数人~十数人しかいません。残りは全て労働層です。だれでもできるはずのこの「やる気」を出すことが、意外なまでにどれだけ困難なものかがこの差からもよくわかります。
・行動に移す
・そのための時間を管理する
・そのために作った時間を無駄にしない進め方に頭を使う
大事なのはこの3つの軸をバランスよく成立させることです。どれか1つ欠けても上手くはいきません。それは経営でも、仕事でも、仕事の管理でも、日頃の生活でも、趣味でも、遊びでも、どれでも同じはずなのです。
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