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部下の退職に慌てないための心得

企業には年度替わりやボーナス支給時期など「人の移動シーズン」が必ずあります。

いわゆる退職者が増える時期です。

とはいえ、退職そのものは企業・個人双方にとってネガティブなことばかりではありません。個人の志向と会社の方針にズレが生じたのであれば、我慢を続けるよりも別の道を歩んだほうがお互いにとっていいことも多いからです。組織としても人の入れ替わりがないと思考の停滞を招くため、一定の新陳代謝は必要でしょう。

その一方で「会社からの評価も高い優秀な部下が突然辞意を伝えてきた」と、マネジメントが慌てふためいてはいないでしょうか。

現場レベルではたいてい悪いことのほうが多くなっていたりするところも多いと思います。なぜなら欧米に比べ、日本の企業文化においてはとかく属人的な任せ方になっていることが多いからです。

しかし退職の意思を示されてからでは引き止めるのはほぼ不可能であり、大抵の場合少し退職時期を延長できる程度です。もし、退職者が出ることであわてるようなことがあれば、それは上司のマネジメントが機能していない、あるいは行きわたっていない証拠です。

人によってはギリギリまで辞意を溜め込む人もいるので、普段からコミュニケーションを増やしたり、その人に興味を以って好き嫌いやモチベーション上下のトリガーなどを見ておく必要があります。

また、辞める側も会社やマネジメントとの日頃からの接し方のポイントを押さえることで、お互いにしこりの残らない退職をすることが可能になります。私自身も過去に4度転職をしていますが、そのどれもがおよそ半年~1年近くかけて時期調整をしました。さすがにこの歳になるとそこまで人生に余裕があるわけではありませんが、辞めるとなれば可能な限りしこりが残らない時期を選びたいものです。


部下の退職は、組織や自身のマネジメントスタイルを見直す格好の機会かもしれません。まずは「よい退職」「悪い退職」について考察を進めてみましょう。

「よい退職」とは、前向きに雇用関係を解消する状態を言います。

社員が働くうちに見つけた新しいキャリアの方向性やさらなる高みを目指すために、心から「よい経験をさせてもらいました。お世話になりました」と感謝と希望に満ちた退職です。惜しい人材なのは間違いないのですが、個人の夢や希望を理解していれば気持ちよく次のステージへ送り出すこともできることでしょう。

「悪い退職」とは何かと言えば、「もう我慢できない」と一方的に退職の意思を突き付けられたような状態です。前述とは真逆でとにかく今の現状に悪い印象しかなく、自分が活き活きと働いている未来を描けなくなったがゆえの退職です。

悪い退職は、退職自体の心証が悪いこともありますが、そもそも

  • 原因が内在しているため、ほかの社員にも再発の可能性がある

  • ほかの社員もすでに限界が近い場合、誘発されてしまう可能性がある

  • 企業側の都合まで考慮してくれない可能性がある

  • 転職先やSNSなどでそれとなく悪い評判が広がる可能性がある

等、ちょっと考えるだけでもネガティブな可能性に満ち溢れているわけですからとにかくリスクだらけとなることが懸念されます。企業はというとついつい退職側のほうに何かしらのアクションを起こそうとしがちですが、本来は企業内のほうにリスクの根本的な原因があるわけですから、その点に向き合おうとしない限りリスクの加速を止めることは難しいのではないでしょうか。

大抵は組織やその人を取り巻く人的環境に問題があることが多いため、こうした不満や我慢はこれまで「見ようともしなかった」あるいは「見ていて放置していた」と判断されかねません。そのまま会社への不信感と比例します。また、そう感じた周囲の社員にとっても同様の不安が広がる可能性もあります。

我慢が爆発した時と言うのは、つまりは「会社への信頼残高がゼロになった」と言うことですので、そこから現状改善しようとしても十中八九意味がありません。

特に不満や我慢が爆発した人がネガティブな理由を説明してくれても、それが上司への批判であったり、会社への指摘であったりした場合、大抵上司や企業は良い印象を持ちません。

ですから、仮に残留したところで今までのような関係を構築することもできず、また先入観をもって評価等に影響を与えることになりますから残留しても得することは何一つありません。

そして、優秀な社員にこのような気持ちで突然辞められるのはとても大きなリスクがあります。なぜならパフォーマンスの高い人材が抜けることは組織の業績に痛手になるだけでなく、そのしわ寄せを残った社員が被ることになるからです。

突然の優秀人材の流出は、その企業にとって

 『悪夢の始まり』

にすぎないことが多いものです。優秀な人材というのは市場価値も高く、転職先を見つけるのも比較的容易だからです。そういう人を適切に評価・待遇できない企業はいつまで経っても優秀な人材が企業の中核を担ってくれることはありません。そしてエースが抜けたことで次々と優秀な人材が芋づる式に流出するケースも珍しくありません。こうなると組織として崩壊するだけではなく、上司そのものへの抜本的なテコ入れが必要となってきます。

さらに危険なのは、エース級が抜けても何とかなってしまう状態です。

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