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体制図をナメた時から組織の形骸化が始まる

運営がうまくいっていないプロジェクトは「プロジェクト体制」が良くないところが少なくありません。

もう少しわかりやすく言うと

 『役割と権限と責任の分担ができていないために
  一人ひとりが責任意識を持てず、受動的になるものが多く
  組織が上手く回らなくなる』

わけです。
組織体制をナメる人が組織の中枢を担っていたりすると、いずれ組織は弱体化していることでしょう。ほぼ間違いなくです。

体制の悪さはプロジェクト計画書等に記載される「体制図」を見るとすぐにわかります。システム開発プロジェクトでなくても同様のことが言えますが、活動を行う際に責任者(オーナー)をハッキリと決め、オーナーに権限と責任を集中させないとプロジェクトは上手くドライブできません。

仮に、業務オーナーを2人に指名したとしましょう。

「2人で協力するように」

よくある上司の一言ですが、これがおかしな結末を生むことも珍しくありません。2人にまったく同じ責任と権限を与えて1つの業務を達成させようとするからです。

この時、2人がまったく同じベクトルを向き、まったく同じ作業を想定していて、まったく同じ結果/成果をイメージしていて、お互いに協力的であればおそらくは上司がイメージしたような素晴らしい成果を上げてくれることでしょう。実際、上司はそれを期待して「2人で協力するように」と言っているはずです。

ですが、実際には「まったく同じ」となることはありません。

責任や権限が大きくなればなるほど、自分の得意なやり方やイメージした進め方に固執し、結果の帳尻だけあわせればいいや…という形になるはずです。当然、協力体制は望めません。一方が遅れようものなら「自分はできています(遅れたのはアイツのせいです)」と言い出すかもしれません。

それもこれも誰を責任者にするか?という一点において、明確に定めなかったことが原因です。

プロジェクトの責任が分割されている

最終的な意思決定者が1人でないため

 プロジェクトの方針がなかなか決まらない
 一旦決まってもすぐに変わる

といった事が頻繁に起き、プロジェクトの進行に支障が出ます。

また、責任も持てないのに自由に発言をさせるような空気はプロジェクト活動では設けるべきではありません。決めるべきことを決められなくなりますし、下手に阻害すると人間関係がギクシャクするからです。


体制において上下が明確でない

通常、体制図では上下に先があるので指揮命令系統が明確になりますが、たまに左右に線が伸びていることがあります。

 「お客さまとのコミュニケーション」

というのであればまだわかります(本当はそれすらも上下で記載するべきですが)。ですが同じ会社内、同じチーム内、同じグループ内で体制が真横にあるというのは、権限と役割において混乱を生み出します。どちらからどちらへの意思決定、指示を優先すべきか不明確なのです。

また、酷いことにこうした横の繋がりは、そこで完結せずに一方の先が更に分岐していたりするので、もはや線でないを表現したいのか、その意味が分からなくなっていることもしばしばです。

体制図を作る際に

 「自信がない」「念のために」と言ったあいまいな理由や
 本来の目的を忘れてただのコミュニケーション上のパスとして活用する

ことによって、自分の分担や責任を薄める目的でこうした線を引いてしまう人がいます。こういう人は今一度『体制図』が何のためにあるのか勉強し直した方がいいかもしれません。


役割や責任がはっきりしない名称がある

たとえば「プロジェクト責任者」や「開発担当者」といった名称であればなんとなく役割がわかります。また「明確にしろ」と言われれば容易に明確化できるでしょう。

ですが、たとえば「支援チーム」という名称はどうでしょう。

 ・誰の指示で動くのか
 ・何の支援をするのか
 ・どこまでの権限があるのか

説明できますか?

何かを支援するのは間違いありません。でも「何を?」と聞かれると答えられないのではないでしょうか。もしマネージャーを支援するのであれば「PMO」という名でもいいわけです。エンジニアを支援するとしたら何をするチームなんでしょう?

当然、こうした不透明な組織を作るのには理由があります。

要は、この体制図を作った人にとって、都合のいい時に、都合のいいように使い倒す「便利屋」が欲しいだけなのでしょう。そもそも“支援チーム”という名前が漠然としており果たすべき機能も不明確です。

これではプロジェクトメンバーによって「支援チーム」に求めることがバラバラになり「支援チーム」に対しての評価は低くなる可能性も出てきます。不当な扱いをすると宣言しているようなものです。

これはプロジェクト全体にとっても良いことではありません。


意味の不明な線がある

たまに見かけるのが、点線・破線などによる表現です。

先ほども書きましたが、体制図の主な目的は

 役割、権限、責任

の3つの要素を明確にさせて、それらがあいまいな活動を抑止するために作成するものです。決して「コミュニケーションパス」を記載するところではありません。

仮に情報共有や報連相などの関係性を示したいのであれば、コミュニケーションプランで明らかにするとか、エスカレーション方式を定めればいいだけです。何も体制図を混乱させるような使い方はしなくてもいいはずです。

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たとえばこんな図のように、いっそのことそれぞれの線に「アクション」まで明記すればいいのです。そうすれば、意味不明な線は自ずとなくなるはずです。

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