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組織を細らせる上司
上司になるということを何か勘違いしている人…というのが一定数存在します。
どんなに個人能力が優れているとしても、組織としてのパフォーマンスを上げられない人は上司に向いていません。ということを理解していない経営者もかなり多いように見受けられます。
たとえば、昔からサラリーマンの生涯稼ぐ報酬は平均3億…なんて話を聞いたことがある人もいるかと思います(今でもそうなのかどうかは知りませんが)。
ちょっと調べてみると、男性で約2.7億円、女性で約2.2億円とありましたね。
下がっとるやん!?
…とまぁそれはともかく。
さらに給与3倍則というものもあって、サラリーマン1人の報酬はその3倍の収益をあげることで初めて支払われる(販管部門は除く)というものがあります。
つまり、サラリーマン1人が生涯年収3億を稼ぐためには9億の売上を上げているというわけです。たった1人で9億…けっこー大きな数字ですよね。
そしてこの9億の中から販管費や役員報酬も支払われることになります。当然、実務から離れた上司の報酬もここから按分されることになります。
もし、部下1人をつぶすことなく最大限価値発揮させて企業貢献に従事してもらえればおよそ30~40年かけて部下は9億もの売上を稼いできてくれているということになります。
9億ですよ、9億。
たった1人で9億。
20代の頃になかなか覚えの悪い新人や若手がいたとしても、所詮一時的なものです。正しく育成をおこない、平均程度の能力に引き上げるだけでおよそ9億の貢献をしてくれる大事なリソースです。
ですが、会社に害をなす上司はそのような考え方ができません。
自分にとって都合がよくなければ「つぶす」ことを何とも思っていません。
好き嫌いで部下とのコミュニケーション量を変えたり、必要な情報の連携が滞ったり、求めるハードルの度合いを変えたり、適切な評価のしたりしなくなったり、過度な負担をかけたり…結果、部下1名離職させるたびにおよそ40年で9億の機会損失を作ることになります。
そんな上司って企業にとって本当に必要ですか?
また、非常に多くの上司が
部下が自分よりも優秀になり、
上に上がっていくことを積極的には認めようとしない
ことが原因で部下を潰してしまうという事例もあります。
実力や能力、役割の定義として、上司の方が部課よりも常に上位であり続けるためには部下がどれだけ努力して能力や実績を上げ続けても、それ以上の能力や実績を上げ続ける必要があります。
部下よりも
知識が乏しければ、上司として適切な判断ができません。
判断力が乏しければ、部下をより不幸な状況に追いやってしまいます。
スキルが乏しければ、困っている部下に適切なアドバイスができません。
誠実さが足りなければ、いざというときに部下を切り捨てる選択をしかねません。
しかし、すべての上司がそれを行うのは無理な話です。
「部下は、いつも、いつでも、いつまでも、自分より下にいるべき」
という非常に質の悪い勘違いをしてしまっている時点で、その上司は組織にとって癌細胞となり果ててしまうからです。
そうした上司に顕著にあらわれる傾向として"部下に自己批判させる"と言うものがあります。部下を潰しまくる上司の特徴の1つともいえるでしょう。
上司である自分のメンツをつぶしたことを認めさせ、反省させるのです。
たとえば、1対1で話し合うときなどに、こう詰め寄ります。
「今、どう思っているんだ?」
「どこがいけなかったのか、わかっているのか?」
部下が何かを答えると、さらに追及を…
「その言い分は、俺へのあてつけか?」
「何を言っているのか、わからない」
上司は「自分が正しい」「部下が誤っている」ということが大前提で話をします。実際には正しい/正しくないに関係なく、上司の言い分を「正」にしたいだけであったとしても『それを汲み取らない部下が悪い』という自己主張を押し通そうとするのです。
要は、部下が何も答えることができないところまで追いつめて何も言わせないようにする「正しいのは俺で、間違ってるのはお前」と言うわかりやすい構図を何かしらの形で明確に線引きするわけです。
これで、論破したと思い込んでいるふしがあるのが、部下を潰す上司の典型です。
しかし、注意しましょう。
相手に「納得」してもらうための説明責任を果たすのは、お客さま相手であっても、部下相手であっても同じことです。相手の納得を引き出さずに最初から「相手が悪い」と決めつけて、自己批判させるように誘導し、追い込むのはパワハラ以外のなにものでもありません。
上司としても人としても3流…いえ、それ以前の問題です
実際には、結果論的に部下に問題があったとしてもそう認めさせるために手順を省いて決めつけ、押し付けるのではなく、
「なるほど、確かに自分に非があったんだ」
と納得してもらうための努力が必要です。人は腹落ちしなければ、素直に相手の言葉に耳を貸しません。どんなに正しいことを言っても相手の中に吸収されません。吸収されなければ次回以降も同じ失敗をするだけです。
そうして『納得』が得られないと、人はなかなか改善に進めません。
悪いことしたと、心の底から認められていないわけですから当然です。
組織において、部下に説明責任を果たすのは上司の義務です。
納得もなく、無理やり自己批判させること自体に「百害あっても一利もない」のです。
こういう上司は、部下とコミュニケーションをとっていくなかで部下がストレスを抱え精神疾患などになったとしても、態度をあらためることはほとんどしません。
自分 vs 部下
という構図において、常に自分のほうが正しいと考えているのですから当然です。むしろ「あいつはもともと心の病だった」などと言って自己正当化することすらあります。
仮に「心の病」であったことをあらかじめ承知していたうえで実施していた確信犯だとすると、他の部下に対しても同様のことを行って再発は免れないことになり、事態は一段と深刻になります。
いずれにしろ、「常に自分は正しく、常に部下が悪い」という考えに凝り固まっているから悪びれません。自分が悪いだなんて毛ほども考えていません。
「今の自分を企業に認めてもらった」
「企業から今の自分のやり方が許されている」
「だから自分こそが正しいのだ」
と考えてしまいます。
むしろ、何かがあると必ず「あの社員は前の部署のときから、こうだった」などと嘯いたり、誇張・捏造などを用いたりして、自分がいかに正しいかを押し通そうとします。
一方で、自分よりも上にいる立場の人の前では「いい上司」であろうとします。
上の人の顔色をうかがうことは、会社員である以上多少は仕方がないとしても、それが行き過ぎるとやはり問題です。
上司が部下を厳しく鍛えることそのものは、会社の成長のためにもむしろ当前のことであり、責められるべきものではありません。ですが、それが許されるのは「上に立つ肩書」だからではなく、鍛えることができるほど「相手より上の実力」「相手より優れた人柄」「相手より豊富な経験・知識」があるからです。そうでない上司には、組織貢献を行ううえで部下を適切にマネジメントすることは不可能でしょう。
上司が部下を育てることは会社から望まれていることで、多くの企業で部下の育成は役割定義で求められているほど重要な役目の1つでもありますが、それは上司が部下よりも圧倒的に優れていなければ実現することはできません。
そのことも理解できず、自らの立場もわかっていない上司では、組織を率いること、管理することは絶対にできません。結果、組織を細らせていくだけとなっていきます。
大切なことは、本当に
組織(部下の集まり)を育てようとする気があるのかどうか。
組織の価値を最大化する気があるのかどうか。
そして部下が育つということは、いずれ自分よりもさらに上に行く可能性もあるということ。そうして部下が巣立つことを本気で認められるか否かにあります。
部下をつぶすばかりの上司を増長させてしまって改善させられないのは、「昇格させた」あるいは「降格させない」企業にも責任があります。
人事の失敗…自分の非を認めたくないだけなのかもしれませんが、日本の場合は「一度昇格した人間は滅多なことで下げない」という文化が根付いているため、誤った判断を認めようとしないのは上司だけでなく企業そのものの昔からの悪習から来ているものなのかもしれません。
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